理容師の交通事故による骨折の慰謝料|9963万円の判例を弁護士が解説
このページでは、19歳理容師が骨折した事故の判例についてご紹介します。
骨折とはいっても、粉砕骨折のような重症なものから、骨のヒビのような軽症のものがあります。
どの部位を骨折したのかによって後遺障害の重さも大きく異なり、慰謝料の金額も変わってきます。
こちらの判例は、総額で9963万円の損害賠償金が認められたようですが、どのような点がポイントとなったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
理容師(男・19歳)損害額9963万4813円の判例
こちらは、さいたま地方裁判所の判決、平成15年(ワ)第806号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、左下腿骨折や左下腿切断となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「交差点を直進しようとした普通乗用車(加害車)と右折しようとした原付自転車(被害車)とが衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 理容師 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 19歳 |
事故の内容 | 交差点を直進しようとした普通乗用車(加害車)と右折しようとした原付自転車(被害車)とが衝突した。 |
傷害の内容 | 左下腿骨折、左下腿切断、左膝拘縮 |
後遺障害等級 | 一下肢を足関節以上で失ったもの5級5号、一下肢の三大関節中の機能に著しい障害を残すもの10級11号、左下肢の長管骨に変形を残すもの12級8号、左下肢の露出面に手のひらの大きさを超える瘢痕12級 |
入院 | 176日 |
被害者は事故時19歳で、すでに理容師として就労していたようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 9963万4813円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1672万円 |
うち休業損害 | 279万8516円 |
うち逸失利益 | 7377万0774円 |
損害総額は9963万4813円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額9963万4813円 になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が272万円、後遺障害の慰謝料が1400万円認められました。
- 休業損害としては、症状固定日までの間、日額4492円の割合で現実の収入を失ったとして279万8516円が認められました。
- 逸失利益としては、被害者は事故当時19歳の若年者であること、大学には進学せずに、既に理容師として働いていたことからすれば、男子高卒全年齢平均賃金は519万3300円であるから、これを被害者の基礎収入とすべきとして、7377万0774円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は事故によって左足の骨折や切断など大怪我を負われていますが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件のように、足の骨折の程度が酷い場合には、足が壊死してしまうことがあるため、最終的には足を切断する必要が出てくる場合があります。
足を切断すると、それだけで5級の後遺症が認定されます。
義足の訓練により歩行できるようになるとはいえ、仕事や日常生活に与える影響は甚大であるため、労働能力喪失率は79%と判断されました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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骨折の慰謝料計算の特徴は?
骨折の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
骨折を伴うケガを負った場合、骨が癒合するまでに数ヶ月以上の期間がかかることが多いです。
ケースによっては、1年以上の治療を要することもあります。
交通事故の慰謝料は、治療期間によって比例的に増えていく傾向にありますが、実際の通院日数が少ないと、慰謝料の減額を主張されることがあります。
そのため、お医者様とよく話し合った上で、定期的に通院し、お医者様の指示があれば、リハビリもしっかりと行う必要があります。
なお、骨折の治療期間中にギプスで骨を固定し、自宅で安静にしていた期間は、入院と同視できる期間として慰謝料の算定の際に考慮されます。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話ですので、ご自身のお悩みについて具体的なアドバイスがお聞きになりたい場合は、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。