専業主婦の交通事故慰謝料|1億8949万円の判例を弁護士が解説
このページでは、53歳主婦の事故の判例についてご紹介します。
こちらの判例の被害者は専業主婦ということですが、現実的な収入がない専業主婦の休業損害や逸失利益が計算がどのようにされるのか分からない方は多いのではないでしょうか。
ここでは約1億8949万円の損害賠償金が認められたようですが、金額算定のポイントについて弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
専業主婦(女・症状固定時53歳)損害額1億8949万7380円の判例
こちらは、神戸地方裁判所の第1民事部の判決、平成20年(ワ)第1555号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷や急性硬膜下血腫となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「自転車を避けるため、優先道路の中央線にまたがって東進した加害者運転の普通乗用車と交差道路を北進した被害者の運転する原付自転車が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 専業主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時53歳 |
事故の内容 | 自転車を避けるため、優先道路の中央線にまたがって東進した加害者運転の普通乗用車と交差道路を北進した被害者の運転する原付自転車が衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、左下腿骨骨折 |
後遺障害等級 | 1級1号 |
入院 | 200日 |
被害者は頭部に大きな傷害を負い、重篤な後遺障害が残ってしまいました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億8949万7380円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3080万円 |
うち介護費用 | 1億0166万0165円 |
うち逸失利益 | 3594万8745円 |
損害総額は1億8949万7380円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億8949万7380円になりました。
- 慰謝料として、入院に対する慰謝料が260万円、後遺障害の慰謝料が2800万円認められました。
- 介護費用としては、被害者の平均余命33.55年であり、成年後見人が67歳になるまでの約1年は成年後見人が介護を行い、その後の32年は職業付添人による介護が必要であるとし、1億0166万0165円が認められました。
- 逸失利益は、女子の学歴計50~54歳平均賃金363万1700円を基礎収入とし、労働能力喪失期間が67歳までの14年、労働能力喪失率は100%喪失したものとして算定し、3594万8745円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの専業主婦は広範囲の脳損傷により高次脳機能障害などの後遺障害で1級1号が認定されたようなのですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
たしかに、被害者はこの事故で脳に重大な損傷を受けましたので、多額の損害が発生しています。
しかし、本件では被害者側に一時停止規制のある交差点での事故でしたので、被害者の過失が何割になるかが重要な争点となりました。
裁判所は、被害者の原付が一時停止義務を怠った一方、加害車両においても中央線をまたいだ状態で走行していたため、被害者の過失を55%と認定しました。
そのため、被害者が既払い金を除いて判決で認められた金額は4400万円となりました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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主婦の慰謝料計算の特徴は?
主婦の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
主婦が交通事故の被害者になった場合には、家事に支障が出て家族全体が影響を受けます。
慰謝料の計算方法については、他の被害者の方とほとんど変わりませんが、休業損害と後遺症逸失利益の計算方法が特徴的です。
というのは、家事労働には賃金が発生していませんが、家政婦というお仕事があることからも分かるとおり、家事労働は社会的にみて経済的価値のあるものとみられています。
もっとも、その家事労働の価値を幾らと考えるかが問題となり、保険会社は自賠責保険の基準である日額5,700円で計算してくることが多いですが、裁判では、賃金の統計を取っている賃金センサスというものを用いており、年によって金額は変動しますが、日額9,000円〜10,000円程度となります。
また、パートに出られている主婦の方でも、週に30時間未満の方で、パートの収入が賃金センサスの女性の平均賃金よりも少ない場合には、金額の大きい賃金センサスを基礎に休業損害を請求できることが多いです。
もっとも、実際にお仕事を休まれて収入が減った場合と異なり、家事労働の場合は、どれくらいの期間、どの程度支障が出たかが分かりにくいため、このことをどれだけ具体的に主張できるかがポイントとなります。
ただし、これらのポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまです。
それぞれの事情に合った詳しいお話がお聞きになりたい場合は、一度弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。