30歳主婦の交通事故慰謝料|1億6463万円の判例を弁護士が解説
このページでは、30歳主婦の事故の判例についてご紹介します。
交通事故はどれだけ自分自身が注意して運転していたとしても、遭遇してしまうことがあります。
こちらの被害者は、追突事故によって重い後遺障害が残ってしまいました。
被害者やご家族にとってその悲しみは大きく、納得のいく慰謝料を支払われるべきといえます。
この判例では、損害総額は1億6463万円となりましたが、金額の計算においてどのような点が考慮されたのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
主婦(女・30歳)損害額1億6463万5154円の判例
こちらは、東京地方裁判所の民事第27部の判決、平成18年(ワ)第5621号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、頚髄損傷となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害車が停止中に追突された。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 休職中の主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 30歳 |
事故の内容 | 被害車が停止中に追突された。 |
傷害の内容 | 頚髄損傷、外傷性顎関節炎および頬骨骨折 |
後遺障害等級 | 3級3号 |
入院 | 144日 |
被害者は、頚髄損傷によって両手足に後遺症が残り、3級の後遺障害等級が認定されたようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億6463万5154円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2240万円 |
うち将来介護費 | 5440万9820円 |
うち逸失利益 | 6150万1518円 |
損害総額は1億6463万5154円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億6463万5154円になりました。
- 慰謝料として、入院に対する慰謝料が250万円、後遺障害の慰謝料が1990万円認められました。
- 将来介護費として、付添いを要する期間は55年であり、被害者母は既に高齢(62歳)であり、将来的には職業介護人による介助が必要となる可能性が高いことを考慮すると、日額は余命期間を通じて8000円として計算されました。
- 逸失利益は、兼業主婦として稼働する見込みがあったとして、30歳~34歳女子の平均賃金371万6800円を基礎収入とし、労働能力を100%喪失、労働能力喪失期間を67歳までの36年として算定し、6150万1518円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの主婦の方は停止中の追突事故で大怪我を負われたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
追突事故でここまで重大な後遺症を負うケースは珍しいですね。
この判例では、被害者の介護費用の日額が争点となりました。
被害者は3級の後遺症により随時介護を要する状態でした。
高齢の母親が介護に当たる期間が限られていることから、判例では介護日額を全期間にわたり8000円と認定されました。
将来の介護費用の算定にあたっては、介護を要する程度が大きな影響を与えることがわかりますね。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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主婦の慰謝料計算の特徴は?
主婦の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
主婦が交通事故の被害者になった場合には、家事に支障が出て家族全体が影響を受けます。
慰謝料の計算方法については、他の被害者の方とほとんど変わりませんが、休業損害と後遺症逸失利益の計算方法が特徴的です。
というのは、家事労働には賃金が発生していませんが、家政婦というお仕事があることからも分かるとおり、家事労働は社会的にみて経済的価値のあるものとみられています。
もっとも、休業損害を計算する上で、その家事労働の価値を幾らと考えるかが問題となります。
この点、保険会社は自賠責保険の基準である日額5,700円で計算してくることが多いですが、裁判では、賃金の統計を取っている賃金センサスというものを用いており、年によって金額は変動しますが、日額9,000円〜10,000円程度となります。
また、パートに出られている主婦の方でも、週に30時間未満の方で、パートの収入が賃金センサスの女性の平均賃金よりも少ない場合には、金額の大きい賃金センサスを基礎に休業損害を請求できることが多いです。
もっとも、実際にお仕事を休まれて収入が減った場合と異なり、家事労働の場合は、どれ位の期間、どの程度支障が出たかが分かりにくいため、このことをどれだけ具体的に主張できるかがポイントとなります。
ただし、今申し上げたポイントはあくまで一般論であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方の職業や収入は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがよろしいでしょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。