3歳幼児の交通事故慰謝料|2億1228万円の判例を弁護士が解説
このページでは、3歳幼児の事故の判例についてご紹介します。
小さなお子様の行動範囲は、時に保護者の目の届かないところにまでおよびます。
もし交通事故に巻き込まれてしまったとしたら、被害者本人だけでなく保護者の苦痛も計り知れないものです。
わが子の将来のことを考えると、補償は十分になされるのか不安になりますよね。
こちらの判例は、2億1228万円以上の損害総額となったようですが、金額算定においてどのような点がポイントとなったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
幼児(男・症状固定時3歳)損害額2億1228万3752円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成18年(ワ)第8903号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、外傷性窒息となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「生活道路上で遊んでいた被害者に気付かず、普通乗用車を発進させ衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 幼児 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 3歳(症状固定時) |
事故の内容 | 生活道路上で遊んでいた被害者に気付かず、普通乗用車を発進させ衝突。 |
傷害の内容 | 外傷性窒息、頭部挫創、背部熱傷、右肩・顔面・左下腿擦過傷 |
後遺障害等級 | 1級1号 |
入院 | 414日 |
被害者は、3歳にして1級1号という非常に重い後遺障害が残ってしまいました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 2億1228万3752円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3770万円 |
うち将来介護費 | 8311万9181円 |
うち逸失利益 | 4742万8724円 |
損害総額は2億1228万3752円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2億1228万3752円になりました。
- 慰謝料としては、入院に対する慰謝料が470万円、後遺障害の慰謝料が2800万円、両親固有の慰謝料が各250万円認められました。
- 将来介護費としては、介護費用が7610万4581円、リハビリ費用が701万4600円認められました。
- 逸失利益は、基礎収入を男子の学歴計全年齢平均賃金542万7000円とし、労働能力喪失を100%、18歳から67歳までの就労可能年数として算定し、4742万8724円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男の子は1年以上も入院していたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、3770万円という相場水準を超える高額な慰謝料が認定された点がポイントといえます。
その理由として、判決では、加害者が幼児に重度のやけどを負わせて植物状態に陥らせたにもかかわらず、4日後まで病院へ来ず、それ以降の交渉を弁護士に一任して自らは被害者家族に一切連絡をとらない不誠実な態度であったことが指摘されています。
被害者側として慰謝料を増額させるためには、加害者側のこのような不誠実な態度を詳しく主張立証していくことがポイントになるでしょう。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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幼児の慰謝料計算の特徴は?
幼児の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
幼児が交通事故でケガを負った場合、保護者による通院時の付き添いが必要なため、慰謝料とは別に、別途通院付添費も請求することができます。
また、付添のためにお仕事を休まなければいけなくなった場合には、保護者の休業損害を請求できる可能性もあります。
軽傷の事案でのポイントは、一般的に大人に比べて幼児の体は柔らかく、怪我をしにくい体ということで、お医者様があまり通院しなくてもよいとおっしゃることがあります。
慰謝料の金額には通院日数が影響するため、お医者様とよく話し合った上で、お怪我の程度に見合った通院日数を確保する必要があります。
重傷の事案のポイントは、大人に比べて治療による回復の見込みが大きい傾向にあるので、保険会社から治療打ち切りの打診があっても、安易には応じず、お医者様とよく話し合った上で、通院期間を確保することです。
また、後遺障害が残った場合、将来の収入の減少をカバーする逸失利益は、将来どれ位の収入が見込めるか不明確なため、計算にも工夫が必要となります。
例えば、女の子の場合、将来男の子の場合よりも見込める収入が低いと言われることがありますが、幼児の場合には十分反論の余地があります。
なお、通常、示談後に治療の必要性があったとしても、その治療費相当額は請求できませんが、幼児の場合、体の成長と共に将来的な治療や手術が必要になる可能性が大人より大きいため、大人の場合に比べて、将来的な治療費を請求できる余地が大きいといえます。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。