関節の可動域制限|肩・手首・指・肘…交通事故の後遺障害診断書のポイントは?
交通事故の被害に遭い、肩関節や手首の靭帯を損傷してしまったら…。
指や肘を骨折してしまったら…。
怪我から復活したとしても、関節が以前のように動かなくなってしまうことがあるそうです。
それを、関節の可動域制限と言います。
関節の可動域に制限が生じるという後遺障害が残ってしまった場合、日常生活にも大きな支障が出てきそうですよね…。
もしもそうなってしまった場合、
- 生活への復帰に向けたリハビリや治療費
- これまでの生活や仕事ができなくなったことに対する慰謝料や賠償
- 将来の平穏な暮らしを確保するための生活費
の問題を避けて通ることはできません。
ではここで、生活費や治療費の悩みを解決する方法を次の中から選んでみてください。
選択肢①:
可動域制限について、後遺障害認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
可動域制限の後遺障害によって失った現在・将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
可動域制限の後遺障害を負うことになった原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
裁判、増額請求、再計算…。
正解は、この記事の後半で弁護士の先生に詳しく解説してもらいましょう!
それでは、可動域制限による負担や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。
ぜひご一読ください。
目次
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故の被害に遭われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、関節の可動域制限という後遺障害が残ってしまった場合、ご本人への負担は非常に大きいものと考えられます。
今回は、後遺障害に関しての相談を受けてきた経験を踏まえ、具体的な事例も紹介しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
人間の身体には、指、手首、肩、肘、足、膝…と非常に多くの関節が存在していますね。
それらの関節周辺の靭帯を損傷してしまったり、骨を骨折してしまった場合に、完治すれば良いですが、以前のように関節が動かせなくなってしまうこともあるそうなのです。
骨折は治るまで大変だと思うから安静が1番です。
自分も交通事故で開放骨折で治るのに3年かかりました。
左足首の可動域が右と全然違います。リハビリしてもダメでした。— ぴっぴ@初日だけポル超参加 (@this_is_rotten) August 27, 2017
そのように可動域制限が残ってしまえば、日常生活にも支障が及びますし、仕事なども以前のようにできなくなってしまう可能性があります。
そのことに対する補償を受け取らなければいけませんよね。
しかし、後遺障害が残ったことに対する補償を受け取るためにはまず、後遺障害認定を受けなければならないようなのです。
では、交通事故が原因で関節の可動域に制限が残ってしまった場合、すべてのケースで後遺障害の認定がされるのでしょうか??
首の可動域制限が認定されました(・ω・)
あとは椎弓形成術があるので、何かしら後遺障害等級がつくかな?— さかぴぃ🍀🐰💧🐧💎🐨⛅🌙🐾❄️ (@sakappengin) July 8, 2016
重要な知識となりますので、可動域制限の後遺障害の認定について一緒に詳しく見ていきましょう。
【注目】可動域制限の後遺障害の等級認定について、肩と手首では等級が違う!?
後遺障害の認定にあたっては、等級の認定を受ける必要があります。
ここで、後遺障害の等級は1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。
残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。
交通事故による後遺障害における可動域制限ではまず、上肢の3大関節(肩、肘、手首)、もしくは下肢の3大関節(股、膝、足首)が、
- 用を廃した場合
- 著しい機能障害を残した場合
- 機能障害を残した場合
に、それぞれ認定されます。
上肢と下肢で分かれており、その程度によっても異なってくるのですね。
上肢と下肢で、それぞれの等級認定基準を詳しくみていきましょう。
上肢(肩、肘、手首)の可動域制限
まず、肩、肘、手首の関節の可動域に制限が残った場合には、以下のような等級が認定されるそうです。
等級 | 後遺障害 |
---|---|
1級4号 | 両上肢の用を全廃したもの |
5級6号 | 1上肢の用を全廃したもの |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級 10号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級 6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
鎖骨骨折による可動域制限
ちなみに交通事故の場合、身体の前面にある鎖骨骨折を負ってしまうことも多いようです。
そして、鎖骨骨折を負った場合も、肩関節の可動域制限が残ってしまうことがあるそうです。
ところで、鎖骨骨折の場合には、その他に、鎖骨の変形障害や鎖骨骨折部の痛みなどが残存する可能性もあるとのこと。
たとえば、鎖骨骨折により、肩関節の可動域制限と鎖骨の変形障害が残存した場合には、両者は併合して等級認定がされるようです。
等級併合の詳しいルールは、以下のようになっているそうです。
例
等級併合のルール
ケース | 等級併合の方法 | 具体例 |
---|---|---|
13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 | 重い方の後遺障害を1級繰り上げる | 11級と12級の後遺障害 ⇒併合10級 |
8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 | 重い方の後遺障害を2級繰り上げる | 8級と7級の後遺障害 ⇒併合5級 |
5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 | 重い方の後遺障害を3級繰り上げる | 5級と4級の後遺障害 ⇒併合1級 |
ちなみに、1つが14級の認定であった場合には、等級は繰り上がらず、重い方の等級のまま認定されるということです。
たとえば、14級と11級の後遺障害を負った場合には、併合11級の認定を受けることになります。
下肢(股、膝、足首)の可動域制限
続いて、股、膝、足首の関節の可動域に制限が残った場合には、以下のような等級が認定される可能性があるそうです。
等級 | 後遺障害 |
---|---|
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したもの |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級 11号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級 7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
しかし、「用を廃した」や「著しい機能障害」と言われても、いまいちピンときませんよね。
よって、以下にもっとわかりやすくまとめてみました。
上肢の用を全廃したもの |
---|
肩、肘、手首の関節がまったく動かない場合(弛緩性麻痺により自力で動かすことができない場合も含む)かつ全手指の末節骨の長さの1/2以上を失った場合、もしくは近位指節間関節、中手指節関節、指節間関節の可動域が健康な指の1/2以下になった場合。 |
上肢の用を廃したもの |
肩、肘、手首の関節がまったく動かない場合(弛緩性麻痺により自力で動かすことができない場合も含む)、もしくは人工関節を挿入置換した結果、関節の可動域が通常の1/2以下となった場合。 |
上肢の著しい機能障害 |
肩、肘、手首の関節の可動域が通常の1/2以下となった場合、もしくは人工関節を挿入置換したが可動域が1/2以下に制限されていない場合。 |
上肢の機能障害 |
肩、肘、手首の関節の可動域が通常の3/4以下となった場合。 |
下肢の用を全廃したもの |
---|
股、膝、足首の関節がまったく動かない場合(弛緩性麻痺により自力で動かすことができない場合も含む)。 |
下肢の用を廃したもの |
股、膝、足首の関節がまったく動かない場合(弛緩性麻痺により自力で動かすことができない場合も含む)、もしくは人工関節を挿入置換した結果、関節の可動域が通常の1/2以下となった場合。 |
下肢の著しい機能障害 |
股、膝、足首の関節の可動域が通常の1/2以下となった場合、もしくは人工関節を挿入置換したが可動域が1/2以下に制限されていない場合。 |
下肢の機能障害 |
股、膝、足首の関節の可動域が通常の3/4以下となった場合。 |
指の可動域制限
他に、手足の指にも関節が存在しています。
そして、指の関節も日常生活において重要な機能を果たしていますよね。
手や足の指の関節の可動域が制限された場合でも、後遺障害の認定がされることはあるのでしょうか?
手指や足指の関節が「用を廃したもの」について、後遺障害が認定されます。
具体的には、以下に示すような等級が認定されるそうです。
4級6号 |
---|
両手の手指の全部の用を廃したもの |
7級7号 |
1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの |
7級11号 |
両足の足指の全部の用を廃したもの |
8級4号 |
1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの |
9級13号 |
1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの又は親指以外の3の手指の用を廃したもの |
9級15号 |
1足の足指の全部の用を廃したもの |
10級7号 |
1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの |
11級9号 |
1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
12級10号 |
1手の人差指、中指又は薬指の用を廃したもの |
12級12号 |
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
13級6号 |
1手の小指の用を廃したもの |
13級10号 |
1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
14級7号 |
1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
14級8号 |
1足の第3足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
指に関しても、「用を廃した」と言われてもあまりピンときませんよね。
よって、以下にわかりやすくまとめてみました。
手指の用を廃したもの |
---|
末節骨の長さの1/2以上を失った場合、もしくは近位指節間関節、中手指節関節、指節間関節の可動域が健康な指の1/2以下になった場合。 |
足指の用を廃したもの |
親指では末節骨の長さの1/2以上、その他4本の指では遠位指節間関節以上を失った場合、もしくは指節間関節の可動域が健康な指の1/2以下になった場合。 |
各関節の可動域制限が後遺障害として認定される基準について、なんとなくイメージをつかんでいただけたでしょうか?
頚椎捻挫による頚部の可動域制限は後遺障害に認定されない?
ところで、交通事故の怪我で一番多いむちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫を負った場合、頚部や腰も動かせなくなってしまうと思うのですが…。
他に、もっと大きな事故であれば、頸椎などの脊柱を骨折してしまう可能性も考えられます。
脊柱の骨折が原因で、やはり頚部や腰が動かせなくなってしまうこともありそうです。
頚部や腰の可動域制限は後遺障害として認められないのでしょうか??
脊椎圧迫骨折などや脊椎固定術、または項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化による頸部や腰の可動域制限は、後遺障害が認められる余地があります。
具体的には、可動域制限が頸部と腰の双方か一方か及び可動域制限の程度により6級5号または8級2号の後遺障害の認定の可能性があります。
一方、むちうちや腰椎捻挫による痛みに伴う頸部や腰の可動域制限は、後遺障害は認められず、神経症状の後遺障害が認められる余地があるのみです。
似たような症状が残っていても、その原因によっては後遺障害認定の是非が変わってくることがあるのですね。
被害者ご本人だけでは、自分の後遺障害が認定の対象となるのか判断が難しいこともあるかと思います。
不明な点がある場合には、ぜひ弁護士などの専門家に相談してみてください!
脊椎圧迫骨折 | |
---|---|
脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | 脊柱に運動障害を残すもの |
6級5号 | 8級2号 |
むちうち | |
認定されない |
(参考)労災における可動域制限の後遺障害認定基準
ちなみに、仕事をしている最中に、転倒して肘や膝を骨折してしまう…という状況もあり得ますよね。
@mimin_chu
仕事中に脚立から落ちて肘を骨折してもうた💦ずっと痛い(´・_・`)
何をするにも時間かかるし不自由💦— すがっち (@Na51o15ki22) July 10, 2012
父が仕事中に転倒して膝を強打し、膝の皿を骨折しました。これからいろいろと大変になりそうです。
— hiranori (@hrnri) June 2, 2013
もちろん、業務で車を運転することもあるでしょうし、その際に交通事故に遭い、骨折してしまうことも考えられます。
その骨折が原因で後遺障害が残った場合…。
先ほど説明した後遺障害の申請は自賠責でのものでしたが、仕事中の事故で可動域制限が残ってしまった場合には、労災でも後遺障害の認定を受けることができるそうです。
自賠責と労災の違い
ところで、1つ重要なポイントがあります。
それは、労災保険において後遺障害が認定された場合に受け取れる金額には、慰謝料は含まれないそうなのです。
よって、労災保険において後遺障害が認定された場合、慰謝料は別途、自賠責保険や任意保険、加害者本人に請求する必要があります。
また、勤務中や仕事中の労災事故で後遺障害が残ったことに対し、会社に責任がある場合には、会社に慰謝料を請求することも考えられます。
労災保険において後遺障害が認定され、一定の金額を受領した場合でも、自賠責保険や任意保険などに慰謝料を別途請求できるので、忘れずに請求しましょう。
ちなみに、労災でも「後遺障害の等級」が「1級~14級」まで定められており、それぞれの等級の認定基準が存在しているということです。
というのも実は、自賠責保険の後遺障害認定基準は、労災の認定基準を準用しているようです。
等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
つまり、労災と自賠責の認定基準については、基本的に違いはないということになりそうです。
しかし、実際には労災の方が高い等級が受けられやすいという声もあるようです。
また、後遺障害の認定においても、労災保険の方が高い等級を認定してもらえることが多いと言われていますよ。
— かやのなおき@大田区 (@mrjunon) November 21, 2017
実際、認定のされやすさに違いはあるのでしょうか。
あくまで「準じて」ということなので、違いがある部分もあります。
また、自賠責と労災では審査主体や審査方法などが異なります。
そのため、認定基準がほぼ同じであっても、労災と自賠責とで、後遺障害の等級の認定に差が出る可能性は十分にあり得ます。
労災と自賠責について、これまでご紹介した違いの他も含め、表にまとめてみましたのでご覧になってみてください。
まとめ
労災と自賠責との後遺障害の違い
労災 | 自賠責 | |
---|---|---|
慰謝料 | 含まれない | 含まれる |
申請先 | 労働基準監督署 | 相手方自賠責保険会社※ |
認定基準 | 労災の認定基準 | 労災の認定基準を準用 |
時効 | 症状固定時から5年 | 症状固定時から3年※ |
※ 被害者請求の方法の申請の場合
ここで、労災からは慰謝料は支払われないため、慰謝料については自賠責保険などに請求する必要があるということでした。
ただし、労災と自賠責では等級認定の結果に差があり、労災の方が認定を受けやすいという話でしたね。
もし、労災では14級の認定を受けられたのに、自賠責では等級が認められなかった場合、自賠責保険には14級で後遺障害慰謝料を請求することが可能なのでしょうか?
保険会社から支払われる後遺障害慰謝料は、あくまで自賠責保険で認定された等級に応じて支払われます。
ただし、自賠責保険に後遺障害の申請をする際に、労災から受けた認定結果を参考資料として提出することは可能です。
よって、等級認定を受けやすい労災でまずは後遺障害認定を受けてから、保険会社に後遺障害の申請を行うといった方法をお勧めしています。
後遺障害の認定が受けられないかもしれない怪我であっても、労災で認められていれば、認定の可能性が高まるということなんですね。
労災について「もっと詳しく知りたい!」という方は、こちらの記事もご覧になってみてください。
労災における可動域制限の後遺障害の等級認定
では、労災における可動域制限の後遺障害等級や認定基準を見ていきましょう。
先ほども話にあった通り、「号」の違いはあるものの、基本的には自賠責の等級と同じになっています。
上肢の可動域制限 |
---|
1級7号、5級4号、6級5号、8級6号、10級9号、12級6号 |
下肢の可動域制限 |
1級9号、5級5号、6級6号、8級7号、10級10号、12級7号 |
手指の可動域制限 |
4級6号、7級7号、8級4号、9級9号、10級6号、12級9号、 13級4号、14級7号 |
足指の可動域制限 |
7級11号、9級11号の1、11級8号、12級11号、13級10号、 14級8号 |
頚部の可動域制限 |
6級4号、8級2号 |
後遺障害診断書を作成する際のポイントについて解説
可動域制限があるのに等級が認められないことがある!?
ところで、上記のような後遺障害の等級認定を受けるためには、自賠責保険に対し、後遺障害診断書を提出する必要があります。
しかし、後遺障害診断書に記載された関節可動域の測定結果が、認定基準を満たしている場合でも、自賠責保険が非該当と認定するケースもあるそうなのです。
後遺障害の申請を被害者請求で行いましたが、非該当という結果となりました。
後遺障害診断書の内容としては以下のとおりです。
傷病名:右肩鎖関節脱臼
自覚症状:肩のROM制限
(略)
角度が3分の2以下に制限されているので12級6号と考えていましたが、非該当となり混乱しております。
(略)
後遺障害診断書で可動域が制限されているのにも拘らず、非該当となることが他の事例でもあるのでしょうか?
出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1418070789
理由としては、「医師による可動域測定値の信用性を認めないと判断されたからだと考えられます。
- 可動域の測定方法が認定基準に従っていない場合
- 器質的損傷の内容と可動域制限の内容に整合性が認められない場合
には、自賠責の調査事務所がそのように判断することになるでしょう。
つまり、後遺障害診断書の提出に際しては、
- 認定基準で定められた測定方法で可動域を測定すること
- 測定された可動域の値の信用性を裏付ける身体の組織の損傷などの所見も一緒に示すこと
がポイントとなってくるのですね。
また、症状固定時の測定結果の信頼性としては、1回の検査結果ではなく、治療中に何回か可動域の測定がなされていることも重要になってきます。
毎回、もしくは医師が変わるたびに数値がバラついている場合には、信頼性が疑われる可能性があります。
逆に、症状固定までに可動域の改善が見られているようであれば、症状固定時の測定値の信頼性も高まるでしょう。
もちろん、可動域にずっと改善が見られることもあれば、当初より悪化してしまうこともあり得ます。
「数値に改善が見られないから認定されない」ということではなく、それらを総合的に考慮して判断されることになるそうです。
後遺障害診断書作成に必要な参考可動域|自動と他動って?
ということで、後遺障害の認定にあたって重要となる可動域の測定。
可動域制限の後遺障害認定にあたっては、「健康な側の1/2や3/4」という基準で判断するという話でしたよね。
では、両方の手や足の関節に可動域制限が生じた場合には、どのように判断するのでしょうか?
ちなみに、可動域には、
- 自動値:自分の力で動かした場合の可動域
- 他動値:多くの場合、主治医などが力を加えて動かした場合の可動域
の2種類があるそうです。
保険の指定で足の指の可動域を自動・他動で測られ中。なんの意味があるかわからないと測りながら呟く先生達…
— Tadayuki@雪オトコ (@yukiotoko214) September 13, 2011
基本的に、後遺障害の認定評価に必要なのは他動値となるそうです。
ただし例外として、麻痺などがある場合には、自動値によって評価されるとのことです。
上肢の参考可動域
ではここからは、参考可動域について少し詳しく見ていきましょう。
まず、上肢については以下のようになっているそうです。
部位名 | 運動方向 | 参考可動域 |
---|---|---|
肩 | 前方挙上 | 180° |
後方挙上 | 50° | |
側方挙上 | 180° | |
内転 | 0° | |
外旋 | 60° | |
内旋 | 80° | |
肘 | 屈曲 | 145° |
伸展 | 5° | |
前腕 | 回内 | 90° |
回外 | 90° | |
手 | 掌屈 | 90° |
背屈 | 70° | |
橈屈 | 25° | |
尺屈 | 55° |
下肢の参考可動域
続いて、下肢の参考可動域については以下の通りということです。
部位名 | 運動方向 | 参考可動域 |
---|---|---|
股 | 屈曲 | 125° |
伸展 | 15° | |
外転 | 45° | |
内転 | 20° | |
外旋 | 45° | |
内旋 | 45° | |
膝 | 屈曲 | 130° |
伸展 | 0° | |
足 | 底屈 | 45° |
背屈 | 20° |
指の参考可動域
手と足の指の参考可動域はどうでしょうか。
部位名 | 運動方向 | 参考可動域 |
---|---|---|
親指 | 橈側外転 | 60° |
掌側外転 | 90° | |
屈曲(MP) | 60° | |
伸展(MP) | 10° | |
屈曲(IP) | 80° | |
伸展(IP) | 10° | |
その他4本の指 | 屈曲(MCP) | 90° |
伸展(MCP) | 45° | |
屈曲(PIP) | 100° | |
伸展(PIP) | 0° | |
屈曲(DIP) | 80° | |
伸展(DIP) | 0° |
※ MCP:中手指節間関節、PIP:近位指節間関節、IP:指節間関節、DIP:遠位指節間関節
部位名 | 運動方向 | 参考可動域 |
---|---|---|
親指 | 屈曲(MTP) | 35° |
伸展(MTP) | 60° | |
屈曲(IP) | 60° | |
伸展(IP) | 0° | |
その他4本の指 | 屈曲(MTP) | 35° |
伸展(MTP) | 40° | |
屈曲(PIP) | 35° | |
伸展(PIP) | 0° | |
屈曲(DIP) | 50° | |
伸展(DIP) | 0° |
※ MTP:中足指節関節
脊柱の参考可動域
最後に、脊柱の参考可動域です。
部位名 | 運動方向 | 参考可動域 |
---|---|---|
頚部 | 屈曲(前屈) | 60° |
伸展(後屈) | 50° | |
回旋(右) | 60° | |
回旋(左) | 60° | |
側屈(右) | 50° | |
側屈(左) | 50° | |
胸腰部 | 屈曲(前屈) | 45° |
伸展(後屈) | 30° | |
右回旋 | 40° | |
左回旋 | 40° | |
右側屈 | 50° | |
左側屈 | 50° |
以上、後遺障害診断書の作成に必要な参考可動域を見てきました。
運動方向などの詳細について、より詳しく知りたいという方は、こちらもご覧になってみてください。
知らなきゃ損!!関節の可動域制限の後遺障害に対する慰謝料や示談金の相場とは?
では、認定される等級がわかったところで、可動域制限の後遺障害に対して、どのような補償がなされるのでしょうか?
ここから詳しく見ていきましょう。
損害賠償①後遺障害慰謝料
可動域制限という後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対しては、後遺障害慰謝料を請求することができます。
そしてその金額は、認定される等級に応じて決まっているそうなのです。
その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?
慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~
慰謝料には、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているそうなのです。
自賠責基準
自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。
自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。
任意保険基準
保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。
ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。
よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。
弁護士基準
保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。
これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。
ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。
よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
では、それぞれの基準ごとの後遺障害慰謝料の相場について、以下の表に示しました。
後遺障害等級 | 自賠責基準※2 | 任意保険基準※3 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1100 (1600) |
1300 | 2800 |
4級 | 712 | 800 | 1670 |
5級 | 599 | 700 | 1400 |
6級 | 498 | 600 | 1180 |
7級 | 409 | 500 | 1000 |
8級 | 324 | 400 | 830 |
9級 | 245 | 300 | 690 |
10級 | 187 | 200 | 550 |
11級 | 135 | 150 | 420 |
12級 | 93 | 100 | 290 |
13級 | 57 | 60 | 180 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
※1 単位:万円
※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
()内は要介護の場合の金額。
※3 旧任意保険支払基準による。
一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということでした。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
損害賠償②逸失利益
その他、後遺障害の認定を受けた場合、逸失利益というものが支払われることになるそうです。
逸失利益
後遺障害により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。
まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。
後遺障害認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。
また、交通事故による関節の可動域制限が原因で、
- 会社の部署を異動させられた
- 職業選択の幅が狭くなった
- 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった
など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。
一方で、実際に後遺障害が残っていても、労働能力に与える影響が小さく、逸失利益が十分に得られないこともあるそうです。
すると、被害者の方は逸失利益を得られず、実際に残っている後遺障害に対する補償として明らかに不十分になってしまいます。
そのような場合には、後遺障害慰謝料を相場よりも増額させることで、賠償のバランスが取られることもあるそうです。
ただし、そのような証明や交渉を自分ひとりで行うのは難しいですよね。
この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!
損害賠償③治療費
残念ながら後遺障害が残ってしまった場合、幸い後遺障害が残らなかった場合、どちらのケースでも、交通事故で怪我をしたことにより入通院しているはずです。
では、入通院中の治療費は誰が支払うのでしょうか。
交通事故による怪我の治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
交通事故でも健康保険で通院できる!?
また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。
ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。
https://twitter.com/Kagiroi21/status/948741605384642560
しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。
そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。
病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!
支払いが困難な場合には…
しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。
損害賠償④入通院慰謝料
治療費の他に、怪我の痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。
この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。
以下に、入通院慰謝料の相場を示しましたので、ご覧になってみてください。
表の見方としては、たとえば入院を6ヶ月、通院を1年(12ヶ月)した場合には、298万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
ちなみに、上記の相場も弁護士基準でのものとなっています。
被害者の方ご自身だけで保険会社と交渉した場合には、もっと低い金額が提示される可能性があります…。
自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!
では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。
しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。
通院頻度と慰謝料の関係
- ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
- ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合
の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。
もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、①のケースを考えてみます。
極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。
原則 | 例外 |
---|---|
通院期間により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 |
慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。
適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
自分で慰謝料を計算してみたい
ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。
今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。
このホームページでは、後遺障害慰謝料だけでなく入通院慰謝料も含めた賠償金総額がわかる計算機を設置しています。
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自分やご家族の事故ではどれくらいの金額が請求できるのか…。
登録などは不要なので、ぜひ一度試してみてください!
損害賠償⑤休業損害
また、入通院により仕事を休まなければならない場合、休業損害というものも補償されるそうなのです。
休業損害
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。
では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。
自賠責保険での計算方法
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。
上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。
任意保険での計算方法
一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
適切な損害賠償の獲得に向けて!損害賠償請求の裁判を起こす
最後に、最初にした質問を振り返ってみましょう。
選択肢①:
可動域制限について、後遺障害認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
可動域制限の後遺障害によって失った現在・将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
可動域制限の後遺障害を負うことになった原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
なんとなくお察しかもしれませんが、適正な補償を受けながら治療を続けるために行うべき正解は、上記の選択肢のうちのどれなのでしょうか…。
正解は、上記の選択肢①~③のすべてになります。
やはり、そうなのですね!!
ちなみに、選択肢①と②については、これまでの内容でご理解いただけたのではないかと思います。
しかし、保険会社と争いのある部分については、裁判でしっかり主張立証しなければ、増額が認められない場合があるそうなのです(選択肢③)。
実際、示談交渉だけの場合と、裁判を起こした場合で、弁護士基準の賠償額がどれほど受け取れるのかまとめた表があります。
弁護士基準の 賠償額との比較 |
|
---|---|
弁護士が保険会社と交渉 | 9~10割※1 |
弁護士をつけて裁判 | 10割 + 弁護士費用の1割前後※2 |
※1 保険会社との争いの度合いや、弁護士の方針により異なるケースもある。
※2 交通事故の損害賠償請求においては、その裁判のための弁護士費用も損害として認められる場合がある。
また、休業損害や逸失利益についても、裁判を起こさなければ、増額を認めてもらえないことも多いようです。
つまり、確実に賠償額を受け取りたい場合には、可動域制限の後遺障害を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こすことも一つの方法となります。
実際の裁判例を見てみよう
ではここで、可動域制限の後遺障害に関する損害賠償について、実際に裁判で争われた事例を見てみましょう。
ケース① |
---|
職業:短大生・アルバイトホステス(18歳女性) 傷害:左下腿開放骨折、左下腿皮膚欠損創その他 後遺障害:左足関節の機能障害(8級)その他併合7級 《損害賠償》 傷害慰謝料:335万円 後遺障害慰謝料:1100万円 休業損害:787万9288円 逸失利益:2833万30円 付添看護費:212万8902円 |
ケース② |
職業:地方公務員(49歳男性) 傷害:右大腿骨幹部開放骨折、右下腿骨幹部開放骨折、右上腕骨顆上部粉砕骨折、右第4・5指切断、右第5中手骨骨折 後遺障害:右肘関節機能障害(10級10号)、右こ指の切断および右なか指の可動域制限(11級9号)の併合10級その他併合3級 《損害賠償》 傷害慰謝料:379万円 後遺障害慰謝料:2388万円 休業損害:68万364円 逸失利益:7474万8742円 付添看護費:330万456円 将来介護費:569万1372円 |
ケース③ |
職業:グラフィックデザイナー(36歳男性) 傷害:左大腿骨骨幹部骨折、左尺骨遠位骨折、左第5中手骨骨折、左第5肋骨骨折その他 後遺障害:左手関節の機能障害(10級10号)、左膝関節の可動域制限(2級7号)その他併合9級 《損害賠償》 傷害慰謝料:245万円 後遺障害慰謝料:670万円 休業損害:528万7710円 逸失利益:1661万2684円 |
もちろん、これ以外に、治療費や治療器具の購入費などの実費も認められています。
個別の事情にもよりますが、裁判で損害賠償請求の根拠をしっかりと主張することができれば、休業損害や逸失利益も認められています。
また、付添看護費や将来介護費など、個別の事情を考慮した補償が認められているケースもありますね。
将来介護費については、こちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧になってみてください。
しかし、すでにお伝えの通り、被害者ご本人やご家族だけで裁判を起こすのは困難が多いはずです。
最近では、無料相談を行っている弁護士事務所も多いです。
また、被害者の方の自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、保険から弁護士費用が支給されます。
弁護士費用特約の内容は、以下の動画で弁護士がわかりやすく解説しています。
賠償金や保険金について、何か困っていることがあれば、ぜひ弁護士に相談してください!
可動域制限の後遺障害の等級認定や慰謝料について弁護士に無料相談したい方はコチラ!
以上、可動域制限が残ってしまった場合の、治療中の補償や慰謝料の相場などについて理解を深めていただけたでしょうか。
しっかりとした補償を受け取るため、今すぐ弁護士に相談したい!と思われた方もいらっしゃるはずです。
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まずは、電話してみることから始まります。
きっと、被害者の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、可動域制限の後遺障害に関してお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
交通事故で大怪我をされた場合、まずは、医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。
それでも残念なことに可動域制限の後遺障害が残ってしまった場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
なぜなら、日常生活に支障が及ぶような後遺障害が残るような場合、適正な金額の補償を受けるべきだからです。
しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
適正な補償を受けるために、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。
面倒な手続きや交渉などのお力にもなれるはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 交通事故で関節の可動域制限が残った場合の後遺障害
- 後遺障害の等級やその認定基準
- 治療費や慰謝料などの示談金の相場
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
また、保険会社との交渉にあたっては、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるでしょう。
自宅から出られない方や、時間のない方は、便利なスマホで無料相談を利用するのがおすすめです!
そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。
また、このホームページでは、交通事故の後遺障害に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!
交通事故の後遺障害と可動域制限のQ&A
上肢の可動域制限の後遺障害等級は?
認定される可能性がある後遺障害等級は、1級4号、5級6号、6級6号、8級6号、10級10号、12級6号となります。可動域制限がのこった関節は、肩・肘・手首(3大関節)のいずれかによって後遺障害等級は変わります。 一覧|上肢の可動域制限の後遺障害等級
下肢の可動域制限の後遺障害等級は?
認定される可能性がある後遺障害等級は、1級6号、5級7号、6級7号、8級7号、10級11号、12級7号があります。股関節、膝、足首のどこに可動域制限がかかっているかで、認定される後遺障害等級が変わります。 一覧|下肢の可動域制限の後遺障害等級
手や足指の可動域制限は後遺障害にあたる?
後遺障害に認定される可能性があります。4級6号、7級7号、7級11号、8級4号、9級13号、9級15号、10級7号、11級9号、12級10号、12級12号、13級6号、13級10号、14級7号、14級8号になります。指のどの部分の可動域が制限されているのかで、後遺障害等級が変わります。 一覧|手・足指の可動域制限の後遺障害等級
労災と自賠責基準では可動域制限の認定が違う?
可動域制限の後遺障害等級の認定基準に関しては、労災も自賠責も基本的には同じです。しかし、自賠責と労災では審査主体や審査方法などがちがいます。そのため、認定基準がほぼ同じであっても、後遺障害の等級の認定に差が出る可能性は十分考えられます。 後遺障害認定における労災と自賠責の違い
可動域制限の後遺障害慰謝料の相場は?
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて算定されます。また、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準などの算定基準ごとでも違います。後遺障害1級の場合、自賠責基準:1100万円、任意保険基準(以前の基準):1300万円、弁護士基準:2800万円のように、弁護士基準で算定すると最も相場は高くなります。 後遺障害等級ごとの慰謝料の相場をチェック
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。