後遺障害5級の慰謝料ガイド 等級別の慰謝料(1級~7級)
交通事故や弁護士の情報を検索中の方へ。このページでは、「後遺障害5級の慰謝料」について徹底調査した結果を報告しています。
目次
後遺障害5級の症状ってどんなもの?
交通事故による後遺障害で5級と認定されるものには、どういったものがありますか?
1つの後遺症のみで5級が認定される場合、傷害を負った部位や程度によって8種類に分類されています。以下、簡単に説明いたします。
単に5級といっても8種類もあるんですね!
交通事故で後遺障害を負ってしまい、自賠責で認定される場合、障害の部位や程度等によって最も重い1級から軽度の14級までのいずれかに該当することになります。
第5級の障害―8種類―
単体で第5級に認定される後遺障害は、8種類に分類されていますが、いずれも ごく簡単な労務しかできない程度の重症といえます。以下、5級の後遺障害の内容について簡単にみていきましょう。
この他に、5級より下位の複数の障害を併合して5級と認定されることもあります。また、等級表には明確に定めがない障害でも、労働能力との関係で同程度と判断される障害については準用5級相当との判断をされることもあります。
視力障害(第5級1号)
視力障害もそれが両目か片目か、あるいは視力低下の程度によって、1級から13級まで細かく基準が存在します。第5級1号は、片眼が失明して、かつもう片方の眼の視力が0.1以下になった場合認定されます。
尚、視力障害の検査は、裸眼の状態ではなく、原則として矯正視力 で行われますので、第5級1号に認定される視力障害も相当に重いものということができます。
神経・精神障害(第5級2号)
脳や神経の障害により、簡単な作業程度しかできなくなった場合、この等級に該当することになります。この場合、事故前の労働能力の1/4程度になったというのが目安にはなります。
しかし、この「簡易な労務」というのが曖昧であるため、これに該当するかという判断が後遺障害診断書を作成する医師によって差が出やすいといえ、認定が難しい事案も多いといえます。
臓器の機能障害(第5級3号)
第5級2号の障害(脳や神経の障害)以外の臓器の障害により、 簡単な作業しかできなくなった場合に、この等級の認定が検討されることになります。第5級3号に該当することが多いのは、泌尿器系臓器の障害のようです。
例えば、交通事故によって肛門や尿道などに重傷を負うと、人工肛門やパウチなどをつけざるを得ないことがあります。これにより、排泄のコントロールを失うと、労働能力の喪失につながることが多いようです。
前腕の欠損障害(第5級4号)
交通事故で、ひじから手首までの間で片方の前腕を失って しまうものが第5級4号に該当します。この場合は、失っていることが明らかですので、欠損障害の存在自体が争われることはほぼありません。
下腿の欠損障害(第5級5号)
こちらは、交通事故でひざから足首までの間で、片脚を失って しまった場合に認定されます。第5級4号と同様、失われていることが外見上明らかですので、障害の存在自体が争われることは殆どありません。
腕の機能障害(第5級6号)
第5級4号のように腕自体は失っていないケースでも、片腕の肩・ひじ・手首の各関節と全ての指が完全麻痺又は可動域が10%以下になってしまった場合、片腕の用を廃したものとして第5級6号に該当することになります。
脚の機能障害(第5級7号)
腕と同様、第5級5号のように脚自体は失っていないが、片脚の股・ひざ・足首及び足指全ての関節が 完全麻痺又は可動域が10%以下 になってしまった場合、片脚の用を廃したものとして第5級7号に該当することになります。
足指の欠損障害(第5級8号)
交通事故で両足の指を失った 場合は、第5級8号に認定されることになります。「両足の足指」とは、外見上見える足の指のみでなく、足の甲の中央部あたりにある リスフラン関節より足先を失った場合も含まれます。
これに対して、両足の足先をリスフラン関節から足首までの間で失った場合は、第4級7号の基準に該当します。
特に立っている状態や歩行する際にも、足先の役割は非常に大きいものとなりますので、両足の足先を失った場合の影響は非常に大きいものといえるでしょう。
分類 |
障害の種類 |
障害の概要 |
1号 |
視力障害 |
1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
2号 |
神経・精神障害 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
3号 |
臓器の機能障害 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
4号 |
前腕の欠損障害 |
1上肢を手関節以上で失ったもの |
5号 |
下腿の欠損障害 |
1下肢を足関節以上で失ったもの |
6号 |
腕の機能障害 |
1上肢の用を全廃したもの |
7号 |
脚の機能障害 |
1下肢の用を全廃したもの |
8号 |
足指の欠損障害 |
両足の足指の全部を失ったもの |
後遺障害5級の慰謝料の計算方法は?
後遺障害5級と認定された場合の慰謝料はだいたいどれくらいなんですか?
弁護士の交渉や裁判で使用される弁護士基準では、5級ですと後遺障害慰謝料は1400万円 が基準となります。
相場が分かれば後の見通しが立てやすいですね!
後遺障害に関する慰謝料とは
慰謝料とは、精神的苦痛 を被ったことに対する賠償金のことをいい、財産的な損害と区別されます。交通事故での怪我に対する慰謝料は、入通院(傷害)慰謝料、後遺障害慰謝料、そして死亡の場合の死亡慰謝料に分けることができます。
後遺障害慰謝料 とは、交通事故に起因する後遺障害を負ってしまったことに対する慰謝料のことをいいます。実務上は、自賠責で認定された後遺障害の等級ごとに、慰謝料額の基礎となる相場が存在し、これに基づいて金額が算定されることになります。
入通院慰謝料 とは、交通事故で怪我を負ってしまったことに対する慰謝料で、通常は治療期間や実際の入通院日数を基に算定されることになります。後遺障害慰謝料との区別時期は、医師による症状固定の判断日を境に、それ以前は入通院として、それ以後は後遺障害として扱われることになります。
また、不幸にも被害者の方が死亡してしまった場合には、死亡慰謝料 が認められることになります。こちらは、被害者自身の慰謝料と近親者固有の慰謝料とを含んだ金額の相場が存在しており、家計における被害者の役割を基に算定されることになります。
慰謝料の種類 |
内容 |
後遺障害慰謝料 |
交通事故に起因する怪我の治療後も後遺障害 が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する賠償金 |
入通院(傷害)慰謝料 |
交通事故で怪我をしてしまったことによる精神的苦痛に対する賠償金 |
死亡慰謝料 |
被害者が死亡したことによる精神的苦痛に対する賠償金 |
5級の後遺障害慰謝料相場
実務上、後遺障害慰謝料の額は、認定された等級によって基準額が存在します。弁護士が交渉の際に根拠とし、また裁判の際に裁判所に重視される基準が、過去の判例を分析して編集された「赤い本」記載の弁護士基準です。これによれば、第5級は1400万円となります。
以下、まとめましたのでご参照ください。
等級 |
弁護士基準 |
3級 |
1990万円 |
4級 |
1670万円 |
5 級 |
1400 万円 |
6級 |
1180万円 |
7級 |
1000万円 |
判例からみる5級の慰謝料額の傾向
以下では、裁判において後遺障害5級と認められた件について、その後遺障害慰謝料の額を表にまとめてみました。裁判においても原則として上記の5級の 弁護士基準である1400万円を基礎として算定されていることがお分かり頂けると思います。
こうして後遺障害慰謝料の基準額が決定された後、個別具体的な案件ごとに、弁護士基準で想定されている一般的な精神的苦痛と具体的なケースでの精神的苦痛に差がある等、 慰謝料額を増減額すべき事情があればそれを斟酌して最終的な金額が認定されることになります。
例えば、以下の横浜地判平成16.6.25の事案で、被害者は航海士でしたが、事故の後遺障害により事務員として働くことを余儀なくされた事案で、一生の職であった航海士の仕事を奪われた精神的苦痛、及び事務員として働く上での支障等も勘案して慰謝料を増額しています。
一方で、事故態様や症状固定の時期、治療過程等の事情によっては、5級と認定されながら減額される事例もあります。
判例年月日 | 怪我の部位・程度 | 後遺障害慰謝料 |
東京地判平成12.5.16 |
神経障害(第5級2号) |
1100万円 |
東京地裁平成14.4.16 |
左膝関節機能障害、顔面醜状障害など(併合5級) |
1700万円 |
横浜地判平成16.6.25 |
右上肢全廃(第5級6号) |
2000万円 |
仙台地判平成17.2.23 |
神経障害(併合5級) |
1400万円 |
高松高裁平成18.7.11 |
高次脳機能障害(第5級2号) |
1400万円 |
京都地判平成27.5.18 |
高次脳機能障害(第5級2号) |
1440万円 |
5級の逸失利益の計算方法は?
後遺障害による逸失利益と後遺障害慰謝料は、違いますか?
別物です。後遺障害による逸失利益とは、後遺障害によって失った、将来得られたはずの収入の減額分の利益のことをいい、財産的損害ですので、精神的な損害である慰謝料とは区別されます。
そうなんですね。逸失利益について色々教えてください。
後遺障害の逸失利益とは、後遺障害を負ったことにより失った、将来得られたであろう収入等にあたる利益のことをいい、財産的損害に分類されます。上で説明した後遺障害慰謝料は、精神的苦痛に対する賠償金ですので、両者は明確に区別されます。
逸失利益の計算方法
逸失利益の計算には、一般的に以下の式を使用します。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
この式に用いられている用語の解説は以下の通りになります。
基礎収入
基礎収入 とは、逸失利益の計算の基礎となる収入のことをいい、基本的には事故直前に得ていた実際の収入 が用いられます。ただし、無収入の場合(例えば、主婦や学生)でも、年齢別の平均賃金 を基礎収入として計算することもあります。
労働能力喪失率
労働能力喪失率 とは、事故前と比べてどれくらい労働する能力が低下したかを示す割合です。これは、認定された後遺障害の等級ごとに基準値が定められております。
ですが、特に裁判では、被害者の具体的な仕事への支障の程度や事故後実際に得ていた収入等の個別具体的な事情によって、同じ5級であってもこの割合が異なって認定されることもあります。
労働能力喪失期間
労働能力喪失期間とは、原則として67歳までの期間 となります。ただし、高齢者の場合は、平均余命を基準として、その1/2の年数が使用されます。
ライプニッツ係数
将来得られたはずの収入を現時点で、一括で手にすることになる関係で、そのままでは、本来得られたはずの収入以上の、例えば運用利益等を被害者が余分に受け取ることになってしまいます。この過剰な利益分控除し 現在価値に換算するための係数として通常ライプニッツ係数が使用されます。
5級の労働能力喪失率とは
後遺障害5級に認定されるケースの労働能力喪失率は原則79パーセント とされています。つまり、労働能力が1/4未満に低下することと考えられているのです。
判例からみる5級の労働能力喪失率認定の傾向
以下、裁判で5級の後遺障害として認定されたケースにおける労働能力喪失率を何件かまとめてみました。上記の通り、5級 の労働能力喪失率が79パーセントですので、多くがこれに沿った形で認定されていることがお分かりになると思います。
ただ、個別具体的な障害の部位や程度と被害者の職種との関係や、被害者が事故後に働いて得ていた収入がある場合等ケースによっては、若干喪失率が異なることがあります。
例えば、上記「判例からみる5級の慰謝料額の傾向」 でも触れましたが、横浜地判平成16.6.25においては、航海士として就労不可能となった後に、事務職として収入を得ていた点が考慮され、労働能力喪失率としては、5級としてはかなり低い30パーセントと認定されている反面、この点も考慮して慰謝料は大幅な増額が認められています。
判例年月日 |
職業 |
怪我の部位・程度 |
労働能力喪失率 |
東京地判平成12.5.16 |
会社員 |
神経障害(第5級2号) |
70% |
横浜地判平成16.6.25 |
航海士 |
右上肢全廃(第5級6号) |
30% |
広島高裁松江支判平成16.11.5 |
会社員 |
高次脳機能障害(第5級2号) |
79% |
大阪地裁堺市判平成18.4.14 |
電車車掌 |
高次脳機能障害 (第5級2号) |
79% |
大阪地判平成18.4.26 |
不明 |
神経障害(第5級2号) |
79% |
神戸地判平成20.9.30 |
会社員 |
左上肢機能障害(併合5級) |
62% |
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まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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