交通事故で流産した場合の慰謝料請求|因果関係・金額・妊婦の夫の請求の可否
「交通事故で流産してしまったことに対する慰謝料も支払ってもらえるの?」
「交通事故で流産してしまったことに対する慰謝料も支払ってもらえるとしたら、その金額は?」
「妊婦の夫の交通事故で流産してしまったことに対する慰謝料請求は認められるの?」
妊娠中の妊婦の方が交通事故にあった場合、残念ながらその後流産してしまうということもあります。
そこで、このページでは、
- 交通事故で流産してしまった場合の慰謝料の基礎知識
- 交通事故で流産してしまったことによる慰謝料請求が認められる場合の金額
- 妊婦の夫の交通事故で流産してしまったことに対する慰謝料請求の可否
についてご紹介していきたいと思います!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
妊娠中の妊婦の方が交通事故にあい、流産してしまった場合の悲しみは計り知れないことかと思います。
大変残念なことであり、お金では解決できない問題ではありますが、せめて適正な慰謝料を受け取りたいと思われるのも当然のことでしょう。
また、妊婦ご本人は当然のことながら、その夫の方の悲しみもまた大きいことかと思います。
そのような深い悲しみの中にいる妊婦の方やその夫の方の役に少しでも立てるよう、できるだけわかりやすくお伝えしていければと思います。
交通事故にあうと色々な問題が生じますが、妊娠中の妊婦が交通事故にあうと、さらに流産という深刻な問題が生じる場合があります。
実際、妊娠中に交通事故にあい、流産してしまったという事件も耳にします。
京都でまた交通事故ですか…妊娠中だったひとも巻き込まれて流産。女児意識不明。運転手無免許の疑いあって携帯電話で話してたって…
— さくらん (@c50sca) April 23, 2012
このような場合に、交通事故による流産により辛い思いをすることになった被害者の方は、その分の慰謝料を請求できるのでしょうか?
交通事故で流産した場合の慰謝料について
流産した胎児固有の慰謝料請求権は発生しない
交通事故で人が死亡した場合、法的には、その人に死亡慰謝料請求権が発生し、その人の遺族がその請求権を相続する形になります。
とすれば、交通事故により流産した場合は、死亡した胎児に死亡慰謝料請求権が発生し、胎児の両親がその請求権を相続するようにも思えます。
しかし、法律上、交通事故により流産し、胎児が死亡した場合でも、その胎児固有の慰謝料請求権は発生しないことになっています。
民法では、慰謝料請求権を含む様々な権利が認められる「人」となるのは、出生後と定められています。
第二章 人
第一節 権利能力
私権の享有は、出生に始まる。
出典:民法第一篇第二章第一節第3条1項
そして、流産により、出生する前の胎児の段階で死亡した場合、民法上「人」とはいえないため、胎児固有の慰謝料請求権は発生しないことになります。
流産は妊婦への傷害についての慰謝料増額事由
とはいえ、妊娠中の妊婦の方が交通事故により流産してしまった場合、その妊婦の方は多大な精神的苦痛を負うことになります。
そのような新たな命の誕生を期待していた体内の胎児を失ったことに対する精神的苦痛について、その妊婦の方自身の慰謝料請求権が認められます。
法的には、胎児は妊婦の方の体の一部を構成していたとして、妊婦の方の体に対する傷害についての慰謝料という形になります。
もっとも、妊娠中の妊婦の方が交通事故にあった場合は当然、胎児以外の部分の妊婦の方の体にも傷害を負い、そのことに対する慰謝料請求もできます。
そのため、交通事故により流産したことは、妊婦の傷害に関する慰謝料増額事由という形で機能することになります。
交通事故と流産の因果関係の証明が争いになる
もっとも、妊娠中の妊婦の方が交通事故にあった後に流産してしまった場合に、必ず慰謝料請求が認められるとは限りません。
交通事故と流産との間の因果関係を証明できなければ、慰謝料請求は認められないことになります。
交通事故にあった妊婦が常に流産するわけではなく、流産の原因には様々なものが考えられるからです。
実際、裁判においても、交通事故で流産したことによる慰謝料請求に対し、加害者側が因果関係を否定し、争いになることも多いようです。
この点、裁判所では
- 妊婦の受傷部位
- 受傷直後の子宮からの出血などの異常所見の有無
- 妊娠してからの経過期間(妊娠初期の方が流産しやすい)
- 妊婦の年齢や出産経験(高齢や出産経験が多い方が流産しやすい)
などの事情を総合考慮し、産婦人科医の意見も聴いた上で、交通事故と流産との因果関係を判断しているようです。
因果関係否定例
ここからは、実際に交通事故と流産との因果関係を否定した裁判例をいくつかご紹介したいと思います。
まずは、こちらの裁判例です。
原告(略)は、(略)信号待ちのため停車していたところ、加害車両を運転していた被告(略)が、前方案内板に気がとられ、被害車両が停車していることに気づかず、そのまま時速約六〇キロメートルの速度で同車の真後ろに追突したこと、同原告は、右追突時に座席のヘツド部分に後頭部を激しく当てたこと、治療に当たつた担当医は、腟炎等の治療費を除外した上で、右入院に関する部分を含めて、自賠責保険診療報酬明細書を作成したことが認められ、右事故の態様や担当医の診療報酬明細書の記載からすれば、事故と切迫流産との間に因果関係があると見れないわけではない。
しかし、右担当医は本件事故との間におよそ因果関係があるとは認められない腟炎等の治療費を除外したものの、切迫流産については本件事故との間の因果関係を明確には否定し得ないことから、これに要した費用を右診療報酬明細書中に含ましめたとも考えることができ(略)、また、同原告は本件事故の発生後約一カ月を経過してから出血しているのであつて、前示の事故の態様を斟酌しても、本件事故と発生時期のずれの長さからすると、因果関係に関する医師の的確な証明書等のない本件にあつては、同原告の切迫流産が本件事故により生じたものと認めるのは困難である。
出典:東京地判平成5年12月7日
こちらは
- 子宮からの出血が交通事故の約1か月後とずれがある
- 因果関係に関する医師の的確な証明書を欠く
ことなどが因果関係を否定する根拠となったようです。
続いては、こちらの裁判例です。
発育が大幅に遅れていたことは明らかである。
(略)
更に、胎盤については、その唯一の目撃者である鵜池医師は、妊娠月数に比して標準よりかなり小さい感じであつた旨証言している。
(略)死因が、胎児ないし胎児附属物の何らかの異常に起因するものと推認できる蓋然性は、きわめて高いといわざるを得ない。
(略)
何よりもまず、看過できない点は、本件事故により原告(略)が被つた衝撃の部位、程度であつて、右事故により、原告道代は、上半身が前かがみになつて倒れ、前部座席の背もたれに両手をついたにとどまり、腹部には直接的に何らの打撃も受けなかつた(略)こと、右車両は、車体後部に凹損を受けたが、事故後そのまま原告道代の実家まで走行するのに支障がなかつた原告道代の本人尋問の結果によつて認められる(略)ところである。
こうしてみると、医学上のみならず吾人の日常経験則上、右の程度の外力が、果たして、子宮内の胎児の死亡を来たすべき主要な要因たり得るかについては、疑いを差し挟まざるを得ない。
(略)
そうとすれば、原告(略)の死産が、右子宮内胎児死亡の必然的な結果にほかならない本件において、右死産と本件事故との間に相当因果関係の存在を肯認することは許されないものといわなければならない。
出典:旭川地判昭和54年8月6日
こちらは
- 腹部には直接的に何らの打撃も受けていないこと
- 追突の衝撃の度合いがそれほど強いものではないこと
ことなどが因果関係を否定する根拠となったようです。
因果関係肯定例
反対に、実際に交通事故と流産との因果関係を肯定した裁判例をいくつかご紹介したいと思います。
まずは、こちらの裁判例です。
本件事故当時原告(略)はシートベルトをして助手席に座つていたが、本件事故による衝撃を受けベルトが締まつた。
本件事故は被告が居眠り運転で時速50㎞の速度のままで対向車線に進出したために発生したもので、原告車も直前にブレーキをかけたとはいえほぼ同速度で進行していたもので、両車両とも大破している。
(略)
その後、原告(略)は(略)8月29日から出血があり、9月7日、出馬病院において診察を受け、同月11日同病院に入院し、堕胎手術を受けた(略)。
同病院医師(略)は、胎児の大きさから妊娠8週前後で胎児が死亡したとの判断を示している(略)。
他方、金井産婦人科医師(略)は「事故前に診察をしていないので、流産と本件事故との因果関係は、不明というしかない。」としている
(略)
医師は胎児の大きさによって胎児の死亡時期を第八週と推定しており、第八週とは(略)8月5日から11日までの間を指すことになるが、個体差があるため、(略)医師の診断も右期間内において胎児が死亡したという確定的判断を示したものとは解されない。
したがって「本件事故前に胎児が死亡していた。」との被告の主張は根拠が薄いというべきである。
個体差や受胎時期のずれを考えた場合、7月末ころから8月中旬ころまでに死亡したと推認するのが相当である。
他方、本件事故は8月13日に起きたものであり、本件事故の大きさからして原告の腹部に加わった圧力が大きかつたこと、妊娠初期における腹部への圧力は流産の要因となりうること(略)、他に同時期に流産の原因となる出来事も証拠上窺えないことからすると、本件事故による衝撃によつて胎児が死亡したと考えるのが合理的である。
出典:大阪地判平成8年5月31日
こちらは
- 事故の大きさからして原告の腹部に加わった圧力が大きかつたこと
- 腹部への圧力が流産の要因となりやすい妊娠初期であったこと
などが因果関係を肯定する根拠となったようです。
続いては、こちらの裁判例です。
本件では、(略)証拠から胎児の染色体異常を認めることはできない。
そこで、次に本件事故の程度や原告の受診状況を検討する。
(略)
本件事故時の衝撃は、急ブレーキを掛けて滑走する被告車が原告車に衝突し、更に両者とも交差点北西角のコンクリート柱に衝突するといったものであり、車両同士の衝突時及びコンクリート柱との衝突時に相当の衝撃があったものと考えられる。
また、通院状況から、原告が本件事故で受けた頸椎捻挫、両手・両下腿挫傷の傷害は軽微とは言い難く、事故直後の警察の把握した原告の症状としても腰部打撲が疑われることからみて、原告が述べる下腹部の青あざに関しては否定しがたい。
他方、本件事故前後の原告の生活状況から直接流産の原因となるような事情は窺われない。
そうすると、本件事故時の衝撃は重視せざるを得ず、不正出血の確認まで3ないし4日の間があること、米田産婦人科では明確に流産の原因を特定していないことを考慮しても、本件事故がなければ原告は流産しなかったものと推認される。
出典:大阪地判平成18年2月23日
こちらは、妊娠7週目の41歳の女性が4日後に不正出血を開始し流産した事案でしたが、
交通事故により下腹部に青あざができるほどの強い衝撃を受けた
ことを重視して、因果関係を肯定したものと考えられます。
交通事故で流産した場合、胎児固有の慰謝料請求権は発生しませんが、妊婦の方の傷害に関する慰謝料増額事由となる可能性があります。
ただし、交通事故と流産との因果関係を証明できなければ、慰謝料の増額を主張することはできません。
因果関係の判断は非常に難しいため、交通事故による流産を理由とする慰謝料請求を考えられている方はまず弁護士への相談をおすすめします。
問題 | 結論 | 理由 |
---|---|---|
請求主体 | 妊婦 | ・胎児は「人」ではない ・胎児は妊婦の体の一部を構成 |
争点 | 因果関係 | ・交通事故にあった妊婦が常に流産するわけではない ・流産の原因には様々なものが考えられる |
交通事故と流産の因果関係が証明された場合の慰謝料額
妊娠初期の交通事故の流産だと慰謝料は低額!?
では、交通事故と流産との因果関係が証明され、慰謝料が請求できる場合、受け取れる金額はいくら位になるのでしょうか?
この点につき、決まった基準はありませんが、裁判例では、妊娠初期の交通事故での流産より、出産間近の方が高額になりやすい傾向にあります。
これは
- 妊娠初期よりも出産間近の方が(交通事故以外の原因で)流産する可能性が低く、その分生まれてこなかった場合の悲しみが大きい
- 同じ胎児でも妊娠初期よりも出産間近の方がより「人」に近づいていたといえる
ことなどが理由と考えられます。
具体的な裁判例で認められた慰謝料の金額については、後ほど詳しくご紹介いたします。
その他慰謝料の金額に影響を与える事情とは?
もっとも、交通事故により流産した場合の慰謝料の金額は、妊娠の期間だけで決まるわけではありません。
流産したことによる精神的苦痛は人それぞれであり、通常以上に精神的苦痛を受ける事情があることを証明できれば、その分慰謝料も増額します。
たとえば、
- 不妊治療を長年受けており、ようやく妊娠できた
- 交通事故により流産しただけでなく、今後妊娠できない体になってしまった
という事情がある場合には、さらに慰謝料が高額になる可能性が大きいと考えられます。
また、場合によっては、初産であったことなども慰謝料のさらなる増額事由として認められる可能性があります。
流産した場合に裁判例で認められた慰謝料の額
そして、実際の交通事故と流産との因果関係が証明された場合に、裁判例で認められた慰謝料の金額は以下の表のとおりです。
判決日 | 金額 | 妊娠期間 | その他事情 |
---|---|---|---|
大阪地判H8.5.31 | 150万円 | 妊娠2か月 | |
大阪地判H18.2.23 | 200万円 | 妊娠12週未満 | ・被告の救護義務違反 ・妊婦の通院慰謝料含む |
大阪地判H13.9.21 | 350万円 | 妊娠18週 | ・初産 ・流産後妊娠できていない |
高松高判H4.9.17 | 800万円 | 出産予定日4日前 |
表をご覧いただいてお分かりのとおり、妊娠期間が長くなるにつれて慰謝料も高額になる傾向が見られます。
また、初産であることを慰謝料の考慮要素として挙げている裁判例も見られます。
交通事故で流産した場合の慰謝料の金額は妊娠期間が大きく影響することがお分かりいただけたのではないかと思います。
もっとも、それだけではなく、流産により、通常以上に精神的苦痛を受ける事情があることを証明できれば、さらに高額な慰謝料が認められます。
そのような事情があるかどうかの判断やその立証は、専門家でなければ難しい面もあるので、お困りであれば、弁護士に相談してみるべきでしょう。
妊婦の夫は交通事故で流産した場合慰謝料請求できる?
妊娠中の妊婦が交通事故により流産した場合、妊婦本人は当然のことながら、その夫の方も精神的苦痛を受けることになります。
では、妊娠中の妊婦が交通事故により流産した場合、その夫による慰謝料請求は認められるのでしょうか?
最後に、こちらの問題についてお伝えしていきたいと思います。
妊婦も交通事故で亡くなった場合は請求できる
まず、妊娠中の妊婦が交通事故にあった場合、不幸なことに流産だけでなく妊婦本人も死亡してしまう場合も考えられます。
未成年が無免許で集団登校時の児童の列に突っ込み、児童らや引率していた妊婦を死亡させた交通事故を覚えてらっしゃる方も多いかと思います。
京都府亀岡市で小学生の列に軽自動車が突っ込み10人が負傷した事故で、意識不明の重体だった市立安詳小2年の(略)さん(7)と、同小に通う児童の母の(略)さん(26)が23日午後、搬送先の病院で死亡が確認された。
(略)さんは妊娠中で、胎児(26週)も助からなかった。
(以下略)
出典:時事通信社 2012/4/23
このように、妊婦も交通事故により亡くなった場合、流産したことによる慰謝料請求権も含め、民法上の相続権者である夫(配偶者)が相続します。
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
出典:民法第890条本文
そのため、妊婦も交通事故により亡くなった場合は、妊婦の夫が流産したことによる慰謝料請求できることに争いはありません。
問題は、妊婦の夫固有の交通事故により流産したことに対する慰謝料請求権が認められるかであり、以下のとおり裁判例でも判断が分かれています。
妊婦の夫の流産した場合の慰謝料請求|否定説
まずは、妊婦の夫固有の交通事故により流産したことに対する慰謝料請求権を否定した裁判例をいくつかご紹介したいと思います。
最初は、こちらの裁判例です。
原告(略)については、妻である原告(略)が前記の次第で胎児を失つたことに関し、そのことから原告(略)本人においてもその固有の慰藉料請求権を有するものとすべき事情を未だ認めるには足りず、原告(略)の慰藉料請求は理由がないものというべきである。
出典:東京地判昭和60年7月26日
こちらの裁判例では、妊婦の夫固有の交通事故により流産したことに対する慰謝料請求権を否定する明確な根拠は示されていません。
続いては、こちらの裁判例です。
本件事故によつて胎児が死亡したことが認められるが、これによる損害は原告徳美の慰謝料によつて填補できるものであつて、原告稔に固有の慰謝料を認める必要性はない。
出典:大阪地判平成8年5月31日
こちらは、流産したことによる慰謝料は、妊婦への慰謝料増額によりカバーされており、別途妊婦の夫固有の慰謝料を認める必要はないという考えです。
妊婦の夫の流産した場合の慰謝料請求|肯定説
反対に、妊婦の夫固有の交通事故により流産したことに対する慰謝料請求権を肯定した裁判例をいくつかご紹介したいと思います。
まずは、こちらの裁判例です。
被控訴人(略)は妻(略)が妊娠していることによつて自分と一番血縁の深い子供を得られようとしていたのに控訴人の不法行為のため妻(略)が流産を余儀なくされ、当然得られるはずであつた子供を失つたのであるから、この場合の被控訴人(略)は本件事故と相当因果関係の範囲内にある損害の直接の被害者であると解するのが相当でこれを間接被害者だという控訴人の主張は採用できない。
(略)
流産に伴う生理的病理的苦痛は父と母で異なるが、胎児を失つたということ自体の苦痛については父と母を区別する理由がないことは出生後の子供を失つた場合と同じであるから妻の流産によつて胎児を失つた父の苦痛を間接被害だという主張は採用できない。
(以下略)
出典:高松高判昭和57年6月16日
こちらは、慰謝料は精神的苦痛に対するものであるところ、生理的病理的苦痛と違い、胎児を失つた精神的苦痛は父と母で変わらないという考え方です。
続いては、こちらの裁判例です。
本件において死亡した胎児は、まさに新生児と紙一重の状態にあり、これを失った両親とりわけ母親の悲しみ、落胆は相当なものであるというべきである。
このように考えると、法律の建前として法人格を有する新生児と胎児の取扱いに区別を設けることはやむを得ないとしても、出産を間近に控えた胎児の死亡についての損害賠償額は、それなりに評価されるべきと考える。
このような観点から、本件においては,慰謝料として母親(略)については金700万円、父親(略)について半額の300万円を相当な額として認める。
出典:東京地判平成11年6月1日
こちらも、程度の違いはあれ、胎児を失った父親の悲しみ、落胆についても慰謝料として評価されるべきという考え方をしているようです。
ご覧いただいたとおり、妊婦の夫固有の流産した場合の慰謝料請求は、裁判例でも判断が分かれている難しい問題です。
妊婦の夫固有の流産した場合の慰謝料請求が認められる可能性を上げるには、個々の事案や類似裁判例の分析が必要になります。
このような分析を一般の方が行うのは難しいかと思いますので、妊婦の夫固有の流産による慰謝料請求をするなら、弁護士に依頼すべきと考えられます。
否定説 | 妊婦の慰謝料増額でカバーできている |
---|---|
肯定説 | 胎児を失う精神的苦痛は夫も受ける |
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それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。
妊娠中の妊婦の方が交通事故にあい、流産してしまった場合、その分につき慰謝料を増額して請求することが可能になります。
また、妊婦ご本人は当然のことながら、その夫の方の慰謝料についても増額の余地があります。
ただし、どちらの場合においても請求が認められるには適切な主張・立証が必要になりますので、専門家への相談・依頼のご検討をおすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故で流産してしまった場合の慰謝料は因果関係が証明できれば、妊婦の増額事由として認められる
- 交通事故で流産してしまったことによる慰謝料請求が認められる場合の金額には妊娠期間が大きく影響する
- 妊婦の夫の交通事故で流産してしまったことに対する慰謝料請求の可否は裁判例でも判断が分かれている
ことについて理解を深めていただけたのではないかと思います。
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交通事故で流産した場合の慰謝料請求に関するQ&A
交通事故で流産したら慰謝料は請求できる?
交通事故で流産した場合、妊婦の体への傷害に対する賠償として慰謝料の請求が可能です。法的に胎児は妊婦の体の一部と考えられているからです。そのため、胎児固有の死亡慰謝料請求権は発生しません。流産で胎児を失ったことは妊婦の精神的苦痛に対する慰謝料増額事由という形で機能します。流産に対する慰謝料請求が認められるためには、交通事故と流産の因果関係の証明が重要です。 交通事故で流産した場合の慰謝料の考え方
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妻の流産による慰謝料を「夫」も請求できる?
母子ともに死亡した場合、胎児のみ死亡した場合で異なります。母子ともに死亡した場合、夫が妻の流産について慰謝料請求を相続し、交通事故の加害者に対して請求することが認められています。一方、胎児のみ死亡した場合、夫固有の慰謝料請求権を認めるかどうかは判断が難しいのが実情です。個々の事案や類似裁判例の分析が必要になります。 流産に関する夫の慰謝料について
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。