後遺障害11級の交通事故慰謝料|4582万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害11級の判例についてご紹介します。
後遺障害11級の中でも、11級7号「脊柱に変形を残すもの」がもっとも多く認定されているようです。
11級が認定されると、後遺障害慰謝料は裁判基準で420万円とされ、労働能力は20%喪失したとして逸失利益が計算されます。
こちらの判例では、総額4582万円の損害賠償金が認められましたが、算定のポイントはどのような点だったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級11級(男・症状固定時39歳)損害額4582万9472円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成17年(ワ)第25538号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、第十二胸椎圧迫骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「片側4車線の第四通行帯から第三通行帯に低速で進路変更した加害貨物自動車と左後方の第四通行帯を後続した被害自動二輪が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 給与所得者 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時39歳 |
事故の内容 | 片側4車線の第四通行帯から第三通行帯に低速で進路変更した加害貨物自動車と左後方の第四通行帯を後続した被害自動二輪が衝突した。 |
傷害の内容 | 第十二胸椎圧迫骨折 |
後遺障害等級 | 11級7号 |
入院 | 0日 |
被害者は圧迫骨折による脊柱の変形障害によって11級の後遺障害が残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 4582万9472円 |
---|---|
うち慰謝料 | 470万円 |
うち休業損害 | 0日 |
うち逸失利益 | 4093万9502円 |
損害総額は4582万9472円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額4582万9472円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が50万円、後遺障害の慰謝料が420万円認められました。
- 逸失利益としては、労働能力喪失率は症状固定後10年間は14%、その後の10年間は7%、基礎収入は2897万6067円として算定し、4093万9502円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は事故後もケガで苦しい中、自宅で仕事を行っていたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
胸椎の圧迫骨折の場合、骨の変形自体は労働能力に影響を与えないとして争われることが多いです。
本件においては、裁判所は労働能力に影響を与える期間を20年間と設定し、労働能力喪失率は11級の標準喪失率よりも低い基準で認定しました。
被害者の年収が約3000万円と高額であったことも、裁判所の控えめな認定に影響している可能性がありますね。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害11級の慰謝料計算の特徴は?
11級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に11級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、11級の場合、裁判基準では420万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、11級4号の歯科補綴や11級7号の変形障害の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
また、11級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を20%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。