43歳主婦の交通事故慰謝料|1億5203万の判例を弁護士が解説
このページでは、43歳主婦の事故の判例についてご紹介します。
突然の事故は被害者の人生だけでなく、ご家族の人生も変えてしまうことがあります。
家庭を守る主婦の事故は、夫や子どもたちも大きなショックを受けることとなりますよね。
この判例では、主婦の事故によって慰謝料や 逸失利益などはどのようにして算定されたのか、専門の先生とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
主婦(女・症状固定時43歳)損害額1億5203万9480円の判例
こちらは、東京地方裁判所八王子支部の判決、平成16年(ワ)第269号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害車が交差点を左折する際、左方道路横断歩道付近を歩行横断していた被害者に衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時43歳 |
事故の内容 | 加害車が交差点を左折する際、左方道路横断歩道付近を歩行横断していた被害者に衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、急性硬膜外血腫 |
後遺障害等級 | 2級3号 |
入院 | 182日 |
被害者は頭部へ大きな傷害を負い、高次脳機能障害となってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億5203万9480円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3210万円 |
うち将来の看護費 | 5123万4028円 |
うち逸失利益 | 4860万4188円 |
損害総額は1億5203万9480円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億5203万9480円になりました。
- 慰謝料として、傷害慰謝料が340万円、後遺障害の慰謝料が2370万円、夫固有の慰謝料が200万円、子3名の慰謝料が各100万円認められました。
- 将来の看護費としては、被害者の両親は高齢であり、子供らも就学期にあることを考慮すると、職業介護人に介護を依頼せざるを得ない状況にあるので、介護に必要な費用は1日当たり8000円、平均余命は43年として計算されました。
- 逸失利益は、女子労働者学歴計全年齢平均賃金である352万2400円を基礎年収として、症状固定時から24年間就労可能、労働能力を100%喪失として算定し、4860万4188円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの主婦の方は、事故により高次脳機能障害2級3号が後遺障害として認定されたようなのですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、被害者の将来の介護にかかる介護日額が大きな争点となりました。
判例は、将来的に職業介護人に依頼せざるを得なくなる状況を考慮して、43年間にわたって日額8000円の介護費用を認めました。
被害者側は、介護日額について1万円を超える額を主張していましたので、判決との金額の開きは大きくなりましたね。
また、被害者は道路を横断中に、横断歩道上を歩行していませんでしたが、その付近を歩行していたため、「横断歩道上の通行と同視できる」として、被害者側に過失はないと判断されました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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主婦の慰謝料計算の特徴は?
主婦の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
主婦が交通事故の被害者になった場合には、家事に支障が出て家族全体が影響を受けます。
慰謝料の計算方法については、他の被害者の方とほとんど変わりませんが、休業損害と後遺症逸失利益の計算方法が特徴的です。
というのは、家事労働には賃金が発生していませんが、家政婦というお仕事があることからも分かるとおり、家事労働は社会的にみて経済的価値のあるものとみられています。
もっとも、その家事労働の価値を幾らと考えるかが問題となり、保険会社は自賠責保険の基準である日額5,700円で計算してくることが多いですが、裁判では、賃金の統計を取っている賃金センサスというものを用いており、金額の変動はありますが、日額9,000円〜10,000円程度となります。
また、パートに出られている主婦の方でも、週に30時間未満の方で、パートの収入が賃金センサスの女性の平均賃金よりも少ない場合には、金額の大きい賃金センサスを基礎に休業損害を請求できることが多いです。
もっとも、実際にお仕事を休まれて収入が減った場合と異なり、家事労働の場合は、どれ位の期間、どの程度支障が出たかが分かりにくいため、このことをどれだけ具体的に主張できるかがポイントとなります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがおススメです。