上腕骨顆上骨折の後遺症|症状や治療・リハビリ方法は?慰謝料・示談金相場
上腕骨顆上骨折の後遺症でお悩みでしょうか?
これからも長く続く治療やリハビリの生活では、
- 上腕骨顆上骨折から回復するために支払う治療費
- 怪我をしたことや後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料
- 将来の平穏な暮らしを確保するための生活費
の問題を避けて通ることはできません。
さて、ここで問題です。
上腕骨顆上骨折の後遺症との関係で、
リハビリ中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
※ 知っている人はみんな利用している方法です!
生活費や治療費の悩みを解決する方法を次の中から選んでください。
選択肢①:
上腕骨顆上骨折との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
上腕骨顆上骨折によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
上腕骨顆上骨折を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
裁判、増額請求、再計算…。
正解は、この記事の後半で弁護士先生に詳しく解説してもらいましょう!
それでは、上腕骨顆上骨折の後遺症でお悩みの方へ。
上腕骨顆上骨折による負担や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。
ぜひご一読ください。
目次
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故の被害に遭われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、上腕骨顆上骨折の後遺症が残ってしまった場合、日常生活への影響も大きく、ご本人やご家族への負担は非常に大きいものです。
実際に、後遺症でお悩みの方から、これまでに相談を受けてきた経験があります。
今回はその経験も踏まえ、具体的な事例も紹介しながら解説していきたいと思います。
まず、上腕骨顆上骨折とは、腕の骨折であることは想像できますが、あまり馴染みのない病名かもしれません。
上腕骨顆上骨折:
小児に最も多い骨折のひとつ。上腕骨(肩と肘の間の骨)のうち、肘に近い部分に起きる骨折
また、具体的な症状や治療法にまで詳しいという方は少ないかもしれません。
まずは、上腕骨顆上骨折についての基礎知識から詳しく見ていきましょう。
上腕骨顆上骨折の後遺症|治療や回復に向けたリハビリの大切なポイント
上腕骨とは、肩と肘の間の骨のこと。
上腕骨顆上骨折とは、そのうち、肘に近い部分の骨折のことになります。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/bc/Sailsign.PNG
肘周辺で起こる骨折のうち、60%を占めるそうです。
骨折でズレた骨により、神経や動脈が損傷したり圧迫されたりすることもあるとのこと。
では、上腕骨顆上骨折ではどのような症状が現れるのでしょうか。
調べてみたところ、以下の通りということです。
●肘の腫れ
●痛み
●皮下出血
●骨折部の異常な動き
●神経や血管に合併損傷が起こると以下の症状が出る場合もある
〇手首の脈拍が弱くなる
〇手や指のしびれ、異常感覚、運動障害が起こる
〇色が蒼白や暗青紫色になる
上記のような症状が見られ、上腕骨顆上骨折が疑われた場合には、整形外科や、お近くの救急外来を受診するのがベストということです。
骨折の有無や程度を調べるために、レントゲンやエコー、CTなどの画像検査が行われます。
上腕骨顆上骨折の治療法|後遺症が残らないこともある?
では、上腕骨顆上骨折に対する治療法はどのようになっているのでしょうか??
調べてみたところ、以下の通りということです。
●以下の応急処置を行うことが大切である
〇肘を直角にして段ボール紙と一緒に包帯で巻いて固定する
●折れた部分がずれていない場合は、そのままギプス固定とする
●骨のずれがあるが、神経や血管に異常のない場合は骨のずれを直して固定する
〇まずは医師の手の力でズレを戻す
〇必要であれば皮膚の上からワイヤーを刺して固定するなどの処置が必要になることがある
●神経や血管が損傷したり圧迫されている場合には緊急で手術を行う
〇徒手整復(手で整復)が困難な場合も手術を行うことが多い
●幼稚園児では3週間、小学生では4週間程度固定することで治癒する
ごく軽度の骨折であれば手術をせずに、ギプスで固定して治すそうです。
それ以外の場合には、手術が必要となります。
治療の結果、骨片のズレの整復がうまくいかなかった場合には、肘を伸ばした時に内側に曲がる変形(内反肘)が残ってしまう可能性もあるということです。
【注目】上腕骨顆上骨折に対する後遺症等級認定基準について解説
完治も望めるようですが、内反肘変形が残ってしまった場合には、後遺症となってしまう可能性があります。
また、骨折部の血流が阻害されたことにより、コンパートメント症候群やフォルクマン拘縮が発症することもあるようです。
他にも、橈骨神経、正中神経、尺骨神経といった後遺症が残ってしまうケースも考えられるということです。
《コンパートメント症候群、フォルクマン拘縮(前腕部のコンパートメント症候群)》
交通事故などによる打撲、骨折、脱臼などで出血したことにより、組織内圧が上昇し、細動脈の血行障害を引き起こし、筋腱神経組織が壊死に陥る障害のこと。
壊死した組織の末梢に、拘縮や麻痺が生じる。
では、上記のような後遺症が残った場合、どのような後遺症の等級が認定されるのでしょうか?
上腕骨顆上骨折による後遺症では、6級~12級に認定される可能性があります。
また、橈骨、正中、尺骨神経麻痺が残った場合には、
- 各神経の支配領域の可動域制限により10級10号、12級6号
- 局部に神経症状が残った場合には12級13号、14級9号
の認定となる可能性があります。
それぞれの認定基準について、下の表にまとめてみましたので、ご覧ください。
傷害の状態 | 後遺症等級 |
---|---|
上腕骨の骨折部などに癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの | 7級9号 |
上腕骨の骨折部などに癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としないもの | 8級8号 |
・上腕骨に15°以上の変形を残すもの ・上腕骨の骨端部に癒合不全を残すもの ・上腕骨の骨端部のほとんどを欠損したもの ・上腕骨の直径が2/3以下に減少したもの ・上腕骨が50°以上外旋または内旋変形癒合しているもの |
12級8号 |
フォルクマン拘縮が進行し、手関節・手指が用廃した場合 | 併合6級 |
障害の状態 | 後遺症等級 |
---|---|
神経麻痺により手関節の可動域が通常の1/2以下に制限される場合 | 10級10号 |
神経麻痺により手関節の可動域が通常の3/4以下に制限される場合 | 12級6号 |
局部に神経症状を残すもの | 12級13号 |
14級9号 |
上腕骨顆上骨折の後遺症に対するリハビリ
保存療法や手術をすれば完治する可能性も大きく、後遺症が残ることは稀ということですが、残ってしまった場合には、リハビリをすることになります。
骨折とはいえ、あまり安静にし過ぎているとかえって関節が固まって動かしづらくなってしまうため、痛みに耐えられる範囲で早期からリハビリを開始するようです。
できれば2週間後には開始するのが望ましいとのこと。
リハビリの内容
骨折の治療をした場合、ギプスなどで幹部が固定されていたため、その周りの筋肉が弱まり、関節も固まってしまいます。
リハビリでは、その弱まった筋肉や固まってしまった関節の回復が目的となります。
よく知られている方法としては、リハビリの専門医などに関節が動かないよう押さえてもらい、自力で動かせるよう力を入れるなどして、筋肉の回復を目指すという方法のようです。
また、関節に関しては、力を抜いている間に、専門医などに少しずつ関節を動かしてもらい、可動域を広げていくという方法が主なようです。
他人や器具により、無理やり動かすようなリハビリを行った場合、関節の周囲に異所性骨化(筋肉などに骨ができる)が起き、さらに動かなくなってしまうことがあるとのこと。
よって、あくまでも自分の筋力で行う自動運動を心がけることが重要ということです。
知らないと損する①上腕骨顆上骨折の治療に対する慰謝料や治療費は?
上腕骨顆上骨折の症状や治療法について理解を深めていただけましたでしょうか。
しかし、手術やリハビリをすることになった場合、その間の生活費や治療費、仕事を休まなければならないことに対して、不安ばかりですよね。
最初に、
リハビリ中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
とお聞きしました。
ここからは、その答えを、岡野弁護士に話を聞きながら、詳しく見ていきましょう。
治療費は誰が支払うのか!?
まずは、入通院中の治療費についてです。
交通事故によるケガの治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
「自由診療」か「保険診療」か
また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。
ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。
交通事故による怪我は、国民健康保険、社会保険証が使えない、全部、10割の医療費。中学生らよ、そういうのを知っておけば、無免許運転なんぞまずしないかと思うが…。学校で、保険証の使用できる範囲は教えておくべきじゃないのか。
— mai (@yononakase) July 2, 2018
しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。
そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。
病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!
支払いが困難な場合には…
しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要があります。
それは注意が必要ですね!
とはいえ、支払いが困難な場合にも補助してもらえる制度があるというのは安心できますね。
入通院慰謝料の相場について解説
治療費の他に、ケガの痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。
この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。
以下に、入通院慰謝料の相場を示しましたので、ご覧になってみてください。
表の見方としては、たとえば入院を5ヶ月、通院を12ヶ月した場合には、280万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
ちなみに、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!
では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。
しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。
通院頻度と慰謝料の関係
- ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
- ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合
の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。
もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、①のケースを考えてみます。
極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。
原則 | 例外 |
---|---|
通院期間により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 |
このように、慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。
適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
知らないと損する②上腕骨顆上骨折の後遺症に対する慰謝料・示談金・保険金は?
治療中の費用の補償については、わかってきました。
ではここからは、最初の質問に対する回答について解説してもらおうと思います!
選択肢①:
上腕骨顆上骨折との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
上腕骨顆上骨折によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
上腕骨顆上骨折を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
費用に関する悩みを解決するための正解は、上記の選択肢のうちのどれなのでしょうか…。
正解は、上記の選択肢①~③のすべてになります。
なるほど!?
では、正解の内容について、詳しく解説してもらいましょう。
選択肢①後遺症の等級認定を獲得し、慰謝料を増額請求する
完治することもありますが、もしも関節に可動域制限や神経症状などの後遺症が残ってしまったとしたら…。
その場合の後遺症の等級についてはすでにお伝えしました。
その等級に応じて、後遺症慰謝料の金額が決まっているということでしたね。
その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?
慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~
慰謝料には、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているそうなのです。
自賠責基準
自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。
自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。
任意保険基準
保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。
ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。
よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。
弁護士基準
保険会社の基準と検証して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。
これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。
ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。
よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
では、それぞれの基準ごとの後遺症慰謝料の相場について、以下の表に示しました。
後遺症等級 | 自賠責基準※2 | 任意保険基準※3 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
6級 | 498 | 600 | 1180 |
7級 | 409 | 500 | 1000 |
8級 | 324 | 400 | 830 |
10級 | 187 | 200 | 550 |
12級 | 93 | 100 | 290 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
※1 単位:万円
※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
※3 旧任意保険支払基準による
一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。
これは、入通院慰謝料についても同じことが言えるということです。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
自分で慰謝料を計算してみたい
ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。
今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。
このホームページでは、後遺症慰謝料だけでなく入通院慰謝料も含めた賠償金総額がわかる計算機を設置しています。
かんたん1分!慰謝料計算機
通院期間などを入れるだけでかんたんに慰謝料の相場がわかる人気サービス!あなたが保険会社から提示されている慰謝料は正しいですか?
入院日数や通院日数、後遺症の等級など数項目を入れるだけで、弁護士基準の賠償金を計算できます。
自分やご家族の事故ではどれくらいの金額が請求できるのか…。
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選択肢②休業損害や逸失利益
治療費や慰謝料以外にも、上腕骨顆上骨折によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求めるという方法もあるのですね。
主には、休業損害と逸失利益の主張をするということになるそうです。
休業損害
まずは、休業損害について見てみましょう。
休業損害
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。
では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。
自賠責保険での計算方法
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。
上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。
任意保険での計算方法
一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
逸失利益
次に、逸失利益とは、以下のようなものになります。
逸失利益
後遺症により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。
上腕骨顆上骨折による後遺症が原因で、
- 会社の部署を異動させられた
- 職業選択の幅が狭くなった
- 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった
など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。
一方で、実際に後遺症が残っていても、労働能力に与える影響が小さく、逸失利益が十分に得られないこともあるそうです。
すると、被害者の方は逸失利益を得られず、実際に残っている後遺症に対する補償として明らかに不十分になってしまいます。
そのような場合には、後遺症の慰謝料を相場よりも増額させることで、賠償のバランスが取られることもあるそうです。
ただし、そのような証明や交渉を自分ひとりで行うのは難しいですよね。
この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!
選択肢③裁判を起こす
ここまでで、保険会社との交渉にあたっては、弁護士に入ってもらうことで弁護士基準の賠償が受け取れるということがわかってきました。
しかし、保険会社と争いのある部分については、裁判でしっかり主張立証しなければ、増額が認められない場合があるそうなのです。
実際、示談交渉だけの場合と、裁判を起こした場合で、弁護士基準の賠償額がどれほど受け取れるのかまとめた表があります。
弁護士基準の 賠償額との比較 |
|
---|---|
弁護士が保険会社と交渉 | 9~10割※1 |
弁護士をつけて裁判 | 10割 + 弁護士費用※2 |
※1 保険会社との争いの度合いや、弁護士の方針により異なるケースもある。
※2 交通事故の損害賠償請求においては、その裁判のための弁護士費用も損害として認められる場合がある。
また、休業損害や逸失利益についても、裁判を起こさなければ、増額を認めてもらえないことも多いようです。
つまり、確実に賠償額を受け取りたい場合には、上腕骨顆上骨折を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こすことも一つの方法となります。
しかし、すでにお伝えの通り、被害者ご本人やご家族だけで裁判を起こすのは困難が多いはずです。
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最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、上腕骨顆上骨折の後遺症でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
まずは、医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。
それでも残念なことに上腕骨顆上骨折の後遺症が残ってしまった場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
なぜなら、日常生活に支障が及ぶような後遺症が残るような場合、適正な金額の補償を受けるべきだからです。
しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
そうなる前に、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 上腕骨顆上骨折の症状や治療法、リハビリなどの基礎知識
- 上腕骨顆上骨折による後遺症の等級や認定基準
- 上腕骨顆上骨折に対する慰謝料などの示談金の相場
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
また、上腕骨顆上骨折の後遺症について、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるでしょう。
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上腕骨顆上骨折の後遺症についてのQ&A
上腕骨顆上骨折になるとどんな症状が出る?
上腕骨顆上骨折とは、肩と肘の間にある上腕骨の肘に近い部分が骨折することです。骨折の影響で骨がずれることによって、神経や動脈が損傷したり圧迫されます。肘の痛み・腫れ・皮下出血などがみられ、神経や血管にも損傷が及ぶと手のしびれといった違和感も現れるようになります。上腕骨顆上骨折は整形外科・救急外来によるレントゲンといった画像検査で診断されます。 上腕骨顆上骨折の症状
上腕骨顆上骨折の応急処置と治療法は?
上腕骨顆上骨折の応急処置では、肘を直角にし、段ボール紙など固定できるものと一緒に包帯で肘を固定します。軽度であればズレを治した後にギプスの固定による治療が行われますが、骨折がひどい場合や、神経・血管に損傷や圧迫が見られれば手術が行われます。 上腕骨顆上骨折の処置方法
上腕骨顆上骨折には後遺症のリスクがあるの?
折れた箇所の整復がうまくいかなかった場合、「内反肘変形」という肘の変形の後遺症が残ることがあります。さらに、骨折による出血で血行障害が起こり、神経組織が壊死してしまう「コンパートメント症候群」を発症した場合には、関節が動かしにくくなるなどの拘縮(こうしゅく)や麻痺といった後遺症が残ります。 上腕骨顆上骨折の後遺症と等級
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。