左拇指不全切断の後遺障害により、労働能力低下
認容額 | 286万4364円 |
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年齢 | 31歳 |
性別 | 男性 |
職業 | ダンプカー運転手 |
傷病名 | 左拇指不全切断 |
障害名 | 左拇指不全切断 |
後遺障害等級 | 10級 |
判決日 | 昭和63年7月26日 |
裁判所 | 東京地方裁判所 |
交通事故の概要
昭和60年3月26日午前10時過ぎ、東京都杉並区の建築工事現場において、加害者が工事現場における木造建物の解体により発生した鉄筋、ブリキ等のスクラップを、被害者が運転する4トン積みダンプカーに積み込むため、その右側方にフオークグラブ(パワーシヨベルのアームにグラップルを取り付けたもの)を停車させた。
そして、そのグラップル(以下「爪」という。)でスクラップを掴んで積み込む作業をしていた際、被害者が、積込作業を誘導するため、ダンプカーの左側面において、右足を後輪のタイヤに左足を鉄製のバーにそれぞれかけて、左手で荷台のあおりを逆手(拇指を荷台の内側に向け、その余の指を荷台の外側に向けた状態)に握って、右手で加害者に対して合図を送っていたところ、約3回の積込作業が終わり、4回目の積込作業のときに、スクラップを掴んだままの爪が突然降りてきて、被害者の左拇指に当たった。
被害者の入通院治療の経過
被害者は、本件事故により全治7ヶ月を要する、左拇指不全切断の傷害を負った。被害者は、本件事故により傷害を被り、昭和60年3月26日、T大学病院に入院して再接着手術を受け、同年10月29日に症状が固定するまで約14日間の入院治療及び約40回の通院治療を受けた。
後遺障害の内容
被害者は、左拇指の知覚がほぼ失われたほか、左拇指の指節間関節(IP)の可動範囲が伸展及び屈曲ともに制限され、中手指節間関節(MP)が一五度に固定される本件後遺障害が残存するに至ったこと、労災保険において、後遺障害は障害等級第10級に該当すると認定された。
また、自賠法施行令二条別表所定の後遺障害等級10級7号に該当する後遺障害と認定された。
判決の概要
被害者(男性、症状固定時31歳、ダンプカー運転手)には、事故により左拇指の知覚がほぼ失われたほか、左拇指の指節間関節の可動範囲が伸展および屈曲ともに制限され、中手指節間関節が15度に固定される後遺障害(障害等級第10級該当)が残った。被害者の逸失利益としては、事故前の月収を基礎に、満67歳まで36年間につき労働能力喪失率を20パーセントとし、ライプニッツ方式により中間利息を控除して算定するのが相当であるとした。
また、フォークグラブ(パワーショベルのアームにグラッブルを取り付けたもの)によるダンプカーの荷台へのスクラップの積込・押込作業中、押込作業によって撥ねたスクラップが、荷台の袖から荷台に上がろうとした被害者の左手の拇指に当たった事故において、被害者には、フォークグラブの爪およびこれが押さえ込んでいるスクラップ等との接触ないし衝突を避けるように慎重に行動すべき義務を怠った過失があり、5割の過失相殺が相当であるとした。
認容された損害額の内訳
入院雑費 | 1万4000円 |
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逸失利益 | 656万5757円 |
慰謝料 | 400万円 |
損害の填補 | - 267万 5514円 |
弁護士費用 | 25万円 |
過失相殺 | - 528万9879円 |
※その他、既払い額や損益相殺がなされ、判決認容額となります。