交通事故の慰謝料相場|専業主婦・兼業主婦(追突事故を含む)【判例5選】
このページをご覧になっているということは、主婦の方が交通事故に遭われたということでしょうか…
主婦の方であるなら、家事や子育て、お仕事などで日々汗を流していらっしゃることと思います。
交通事故に遭われてしまうと、ただでさえご自身も辛いのに、家のことも心配になりますよね。
ご夫婦やお子様の将来のことを考えると、事故による示談金や慰謝料は納得のいく金額を支払ってもらえるのか不安になると思います。
このページでは、主婦の交通事故でお困りの方のお役に立てるようにと、主婦の交通事故の慰謝料相場を判例をもとにまとめてみました。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
主婦の交通事故の慰謝料相場を判例をもとにまとめました!
それでは、慰謝料の相場をみてみましょう。
そもそも交通事故の慰謝料はどうやって決まるの?
交通事故にあった場合、慰謝料がもらえるというのは、ある程度一般的な知識だと思います。
でもちょっと待ってください。
そもそも慰謝料って何なんでしょうか?
主婦の交通事故の慰謝料の決まり方なんて、普通の人はなかなか知らないですよね。
慰謝料の金額がどうやって決まるか、専門家の先生に聞いてみましょう。
慰謝料の決まり方には、3つの種類があります。
①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準と呼ばれるものです。
慰謝料の計算方法を自賠責保険の基準に拠るのか、任意保険の基準に拠るのか、弁護士(裁判所)の基準に拠るのかによって①②③の違いが生じます。
慰謝料の計算の基礎になるのは、けがや後遺障害の程度といった事実関係です。
慰謝料の計算の仕方にもいろいろとあるのですね。
主婦の場合は、現金としての収入がない家事労働についてもきちんと考慮されるのでしょうか…
交通事故の被害者としては、被害者にとって一番有利な基準を採用して欲しいものです。
簡単に慰謝料の計算をしてみたい方は、以下の「交通事故慰謝料の相場計算機」を試してみてください^^
この相場計算機は、③の弁護士基準を採用するものなので、保険会社が提示する慰謝料よりも大きな金額になる可能性が大きいです!
任意保険基準と慰謝料相場の関係は?
慰謝料の決まり方には3つの種類があるということが分かりました。
ここで興味があるのは、私たち事故の被害者にとって一番有利な基準はどれなのか?ということですよね。
特に、主婦の交通事故の場合は、家事ができなくなることで家族にも影響を与えてしまうのでとても重要です!
被害者にとって一番有利な慰謝料の基準を教えてください。
裁判所でも採用される弁護士基準が被害者の方にとって一番有利です。
③の弁護士基準は、民事裁判になった時も採用される、一番公平で、かつ公正な基準です。
これに対して、②の任意保険基準は、保険会社が業界で勝手に採用する基準です。
任意保険基準は、支払われる慰謝料などが低くなる点で、被害者にとって不利です。
慰謝料や示談金の増額が可能なのは、弁護士が示談交渉をすることで、②の任意保険基準から③の弁護士基準に慰謝料の計算方法を変えることが可能だからです。
裁判所も採用する弁護士基準が、私たち事故の被害者にとっては一番有利ということなんですね。
弁護士基準だと、民事裁判になったときも採用されるということで、安心ですよね。
慰謝料の計算基準についてより詳しく知りたい方のために、以下に関連ページをまとめておきました。
それでは、本題です。
主婦の交通事故の慰謝料相場を判例にもとづいてみていきましょう。
主婦の慰謝料の計算で、ポイントとなるのはどのような点でしょうか?
主婦が交通事故の被害者になった場合には、家事に支障が出て家族全体が影響を受けます。
慰謝料の計算方法については、他の被害者の方とほとんど変わりませんが、休業損害と後遺症逸失利益の計算方法が特徴的です。
というのは、とくに専業主婦には年収がありませんが、社会的にみて経済的価値のある家事労働を行っているとみることができます。
そこで、仮定的に年収を女性の平均賃金である360~370万円で計算することが一般的です。
そのため、無職の女性の被害者の方が示談金を多く取得できるかどうかは、主婦業や家事労働を行っているかどうかに大きく影響するわけです。
判例から厳選した主婦の交通事故の慰謝料ランク5選
①兼業主婦(女・症状固定時45歳)損害額2億4497万2004円の判例
まず、東京地方裁判所の判決、平成15年(ワ)第13195号事件をご紹介します。
兼業主婦が脳挫傷や頭蓋骨骨折などのけがを負った事故です。
属性 | 兼業主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時45歳 |
事故の内容 | 加害者は、加害車両を飲酒運転して暴走させ、事故現場に停止していた被害車両の右側後部に加害車前部を衝突させ、衝突の反動で押し出された被害車両を、さらに前方に停止していた第三車両に衝突させた。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、急性硬膜外血腫、頭蓋骨骨折など |
後遺障害等級 | 併合1級(頭部外傷に伴う躯幹失調、四肢不全麻痺、言語障害、頻尿等により1級3号、複視の症状等により12級相当) |
入院 | 481日 |
損害総額 | 2億4497万2004円 |
---|---|
うち慰謝料 | 4160万円 |
うち将来介護費・雑費 | 1億2510万5522円 |
うち逸失利益 | 4631万0066円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2億4497万2004円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が360万円、後遺障害の慰謝料が2800万円、夫の慰謝料が400万円、子2名の慰謝料が各200万円、両親の慰謝料が各100万円認められました。
- 将来介護費・雑費としては、将来の付添介護費が1億1362万3551円、将来の雑費が合計1148万1971円認められました。
- 逸失利益は、症状が固定した年の女子の学歴計全年齢平均年収351万8200円を基礎とし、労働能力喪失期間は症状固定時から67歳まで22年間として計算し、4631万0066円が計算されました。
弁護士先生、こちらの兼業主婦の方は事故により、併合1級の後遺障害認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、後遺症1級に対応する慰謝料として、本人分と家族分を合わせて合計3800万円の慰謝料が認められたことが特徴的です。
主婦は、家計を支える大黒柱ではないものの、家庭生活においては父親以上に中心的で重要な役割を果たしています。
本件は、家族にとっての精神的苦痛や悲しみが十分に考慮された判例であるといえそうです。
②専業主婦(女・症状固定時53歳)損害額1億8949万7380円の判例
次に、神戸地方裁判所の第1民事部の判決、平成20年(ワ)第1555号事件をご紹介します。
専業主婦が脳挫傷や急性硬膜下血腫などのけがを負った事故です。
属性 | 専業主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時53歳 |
事故の内容 | 自転車を避けるため、優先道路の中央線にまたがって東進した加害者運転の普通乗用車と交差道路を北進した被害者の運転する原付自転車が衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、左下腿骨骨折 |
後遺障害等級 | 1級1号 |
入院 | 200日 |
損害総額 | 1億8949万7380円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3080万円 |
うち介護費用 | 1億0166万0165円 |
うち逸失利益 | 3594万8745円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億8949万7380円になりました。
- 慰謝料として、入院に対する慰謝料が260万円、後遺障害の慰謝料が2800万円認められました。
- 介護費用としては、被害者の平均余命33.55年であり、成年後見人が67歳になるまでの約1年は成年後見人が介護を行い、その後の32年は職業付添人による介護が必要であるとし、1億0166万0165円が認められました。
- 逸失利益は、女子の学歴計50~54歳平均賃金363万1700円を基礎収入とし、労働能力喪失期間が67歳までの14年、労働能力喪失率は100%喪失したものとして算定し、3594万8745円が認められました。
弁護士先生、こちらの専業主婦は広範囲の脳損傷により高次脳機能障害などの後遺障害で1級1号が認定されたようなのですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
たしかに、被害者はこの事故で脳に重大な損傷を受けましたので、多額の損害が発生しています。
しかし、本件では被害者側に一時停止規制のある交差点での事故でしたので、被害者の過失が何割になるかが重要な争点となりました。
裁判所は、被害者の原付が一時停止義務を怠った一方、加害車両においても中央線をまたいだ状態で走行していたため、被害者の過失を55%と認定しました。
そのため、被害者が既払い金を除いて判決で認められた金額は4400万円となりました。
③主婦(女・症状固定時66歳)損害額1億7760万5320円の判例
3つ目に、神戸地方裁判所の第1民事部の判決、平成20年(ワ)第592号事件をご紹介します。
主婦が第9胸椎脱臼骨折などのけがを負った事故です。
属性 | 主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時66歳 |
事故の内容 | 夜間、道路中央付近を歩行していた被害者に普通乗用車(加害車)が衝突した。 |
傷害の内容 | 第9胸椎脱臼骨折、胸髄損傷、脊髄損傷、深部静脈血栓症、肺塞栓症、右腋窩神経麻痺、頭部打撲挫傷など |
後遺障害等級 | 併合1級(胸髄損傷による両下肢麻痺、右肩外転障害について1級1号、深部静脈血栓症、肺塞栓症のため、下大静脈フィルターの留置について11級10号、右外転神経麻痺による複視について13級2号) |
入院 | 341日 |
損害総額 | 1億7760万5320円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3565万円 |
うち将来付添看護費用 | 8139万3646円 |
うち逸失利益 | 2361万6449円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億7760万5320円になりました。
- 慰謝料として、傷害慰謝料が385万円、後遺障害の慰謝料が2800万円、夫の慰謝料が200万円、同居の子の慰謝料が100万円、別居の子の慰謝料が80万円認められました。
- 将来の付添看護費用としては、夫と子が症状固定の翌日から2年間介護に当たること、夫の年齢や子の就労の予定に照らすと、その後は夫の勤務時間帯になる平日昼間は職業介護人の必要があること、土日や平日の勤務時間外は子が付添看護に当たることが認められ、8139万3646円となりました。
- 逸失利益は、基礎収入は学歴計女性労働者65歳以上平均賃金284万3300円とし、労働能力喪失期間は平均余命22.32年の約半分11年、労働能力喪失率は100%として算定し、2361万6449円が認められました。
弁護士先生、こちらの主婦の方は、脊髄や内臓にまで大怪我を負われたようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
通常、交通事故の治療費は、事故日から症状固定日までのものしか認められません。
しかし、本件では、症状固定後も内臓の閉塞予防のため、低分子ペパリン注射を生涯にわたつて毎日継続する必要がありました。
裁判所は、この注射代にかかる月額4万円余りを平均余命の22年間にわたり、合計で686万円の将来治療費として認定しました。
重度後遺症のあるケースでは、このように、症状固定後の治療費も認めてもらえるケースがあるということですね。
④主婦(女・30歳)損害額1億6463万5154円の判例
4つ目に、東京地方裁判所の民事第27部の判決、平成18年(ワ)第5621号事件をご紹介します。
主婦が頚髄損傷などのけがを負った事故です。
属性 | 休職中の主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 30歳 |
事故の内容 | 被害車が停止中に追突された。 |
傷害の内容 | 頚髄損傷、外傷性顎関節炎および頬骨骨折 |
後遺障害等級 | 3級3号 |
入院 | 144日 |
損害総額 | 1億6463万5154円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2240万円 |
うち将来介護費 | 5440万9820円 |
うち逸失利益 | 6150万1518円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億6463万5154円になりました。
- 慰謝料として、入院に対する慰謝料が250万円、後遺障害の慰謝料が1990万円認められました。
- 将来介護費として、付添いを要する期間は55年であり、被害者母は既に高齢(62歳)であり、将来的には職業介護人による介助が必要となる可能性が高いことを考慮すると、日額は余命期間を通じて8000円として計算されました。
- 逸失利益は、兼業主婦として稼働する見込みがあったとして、30歳~34歳女子の平均賃金371万6800円を基礎収入とし、労働能力を100%喪失、労働能力喪失期間を67歳までの36年として算定し、6150万1518円が認められました。
弁護士先生、こちらの主婦の方は停止中の追突事故で大怪我を負われたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
追突事故でここまで重大な後遺症を負うケースは珍しいですね。
この判例では、被害者の介護費用の日額が争点となりました。
被害者は3級の後遺症により随時介護を要する状態でした。
高齢の母親が介護に当たる期間が限られていることから、判例では介護日額を全期間にわたり8000円と認定されました。
将来の介護費用の算定にあたっては、介護を要する程度が大きな影響を与えることがわかりますね。
⑤主婦(女・症状固定時43歳)損害額1億5203万9480円の判例
最後に、東京地方裁判所八王子支部の判決、平成16年(ワ)第269号事件をご紹介します。
主婦が脳挫傷などのけがを負った事故です。
属性 | 主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時43歳 |
事故の内容 | 加害車が交差点を左折する際、左方道路横断歩道付近を歩行横断していた被害者に衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、急性硬膜外血腫 |
後遺障害等級 | 2級3号 |
入院 | 182日 |
損害総額 | 1億5203万9480円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3210万円 |
うち将来の看護費 | 5123万4028円 |
うち逸失利益 | 4860万4188円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億5203万9480円になりました。
- 慰謝料として、傷害慰謝料が340万円、後遺障害の慰謝料が2370万円、夫固有の慰謝料が200万円、子3名の慰謝料が各100万円認められました。
- 将来の看護費としては、被害者の両親は高齢であり、子供らも就学期にあることを考慮すると、職業介護人に介護を依頼せざるを得ない状況にあるので、介護に必要な費用は1日当たり8000円、平均余命は43年として計算されました。
- 逸失利益は、女子労働者学歴計全年齢平均賃金である352万2400円を基礎年収として、症状固定時から24年間就労可能、労働能力を100%喪失として算定し、4860万4188円が認められました。
弁護士先生、こちらの主婦の方は、事故により高次脳機能障害2級3号が後遺障害として認定されたようなのですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、被害者の将来の介護にかかる介護日額が大きな争点となりました。
判例は、将来的に職業介護人に依頼せざるを得なくなる状況を考慮して、43年間にわたって日額8000円の介護費用を認めました。
被害者側は、介護日額について1万円を超える額を主張していましたので、判決との金額の開きは大きくなりましたね。
また、被害者は道路を横断中に、横断歩道上を歩行していませんでしたが、その付近を歩行していたため、「横断歩道上の通行と同視できる」として、被害者側に過失はないと判断されました。
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まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。