後遺障害14級の交通事故の慰謝料相場ランク、判例から厳選した5選
このページをご覧になっているということは、ご自身またはご家族が交通事故の被害に遭われて、後遺障害14級のお怪我を負われたということでしょうか。
長期間にわたる治療や通院、とても大変な思いをされた方もたくさんいらっしゃると思います。
それに後遺障害が残ってしまうと、今までのような生活を送ることがむずかしくなってしまいますよね。
今後のことを考えると、後遺障害に対して慰謝料はしっかり支払われるのか、仕事への影響についてはちゃんと考慮されるのか、不安になってしまうでしょう。
このページでは、後遺障害14級が残ってしまった方の慰謝料についてのお悩みを解決すべく、私たち弁護士カタログの編集部が行なった判例調査の結果をまとめてあります。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
それでは、後遺障害14級の慰謝料の相場をみてみましょう!
後遺障害14級の交通事故の慰謝料相場を判例をもとにまとめました!
そもそも交通事故の慰謝料はどうやって決まるの?
交通事故にあった場合、慰謝料がもらえるというのをご存知のかたは多いかと思います。
でも、ちょっと待ってください。
慰謝料金額の相場に基準ってあるのでしょうか?
後遺障害14級の交通事故の慰謝料の決まり方なんて、普通の人はなかなか知らないですよね。
まずは、慰謝料の金額がどうやって決まるのか、専門家の先生に聞いてみましょう。
慰謝料の決まり方には、3つの種類があります。
①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準と呼ばれるものです。
慰謝料の計算方法を自賠責保険の基準に拠るのか、任意保険の基準に拠るのか、弁護士(裁判所)の基準に拠るのかによって①②③の違いが生じます。
慰謝料の計算の基礎になるのは、ケガや後遺障害の程度といった事実関係です。
慰謝料の計算の仕方にもいろいろとあるのですね。
後遺障害が残ってしまった場合、これからの人生ずっと後遺症と付き合っていかなくてはなりません…
交通事故の被害者としては、被害者にとって一番有利な基準を採用して欲しいものです。
簡単に慰謝料の計算をしてみたい方は、以下の「交通事故慰謝料の相場計算機」を試してみてください^^
この相場計算機は、③の弁護士基準を採用するものなので、保険会社が提示する慰謝料よりも大きな金額になる可能性が大きいです!
任意保険基準と慰謝料相場の関係は?
慰謝料の決まり方には3つの種類があるということが分かりました。
ここで興味があるのは、私たち事故の被害者にとって一番有利な基準はどれなのか?ということですよね。
後遺障害14級が残ってしまった場合、今後の日常生活や仕事などにも影響を与える可能性もあります。
被害者にとって一番有利な慰謝料の基準を教えてください。
裁判所でも採用される弁護士基準が被害者の方にとって一番有利です。
③の弁護士基準は、民事裁判になった時も採用される、一番公平で、かつ公正な基準です。
これに対して、②の任意保険基準は、保険会社が業界で勝手に採用する基準です。
任意保険基準は、支払われる慰謝料などが低くなる点で、被害者にとって不利です。
慰謝料や示談金の増額が可能なのは、弁護士が示談交渉をすることで、②の任意保険基準から③の弁護士基準に慰謝料の計算方法を変えることが可能だからです。
裁判所も採用する弁護士基準が、私たち事故の被害者にとっては一番有利ということなんですね。
弁護士基準だと、民事裁判になったときも採用されるということで、安心ですよね。
慰謝料の計算基準についてより詳しく知りたい方のために、以下に関連ページをまとめておきました。
後遺障害14級の慰謝料の計算方法は?
慰謝料相場や慰謝料計算の一般論についてはよく分かりました。
後遺障害14級に特化したポイントは、どのような点になるのでしょう?
14級は後遺障害等級の中で最も認定件数が多い等級です。
14級の中でも最も認定されることが多い後遺障害は、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」となっています。
いわゆるむちうち症(頚椎捻挫や外傷性頚部症候群とも呼ばれる)のうち、レントゲン画像等で痛みの原因を明確に把握できないものがこれに当たり、他覚的所見のないむちうち症が14級に認定されるか予測することは、非常に難しいといわれています。
後遺障害14級に該当するケガには、つぎの9パターンがあるようです。
後遺障害14級 | |
---|---|
1 | 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2 | 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
3 | 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
4 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
6 | 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
7 | 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
8 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの |
9 | 局部に神経症状を残すもの |
後遺障害の慰謝料は、等級ごとに相場が決められています。
14級の慰謝料の相場は弁護士基準で110万円とされており、裁判官はこの相場水準を基本として被害者の具体的症状や不利益の内容を考慮して慰謝料を増減しています。
しかし、14級が認定されれば自動的に慰謝料相場の110万円を払ってもらえるわけではなく、被害者が自分で保険会社と交渉すると、任意保険基準であるたった40万円の水準でしか示談してもらえないことが多いのです。
そこで、弁護士に交渉を依頼することで慰謝料が3倍近く増額させることが可能になります。
そんなに増額する可能性があるんですね。
後遺障害14級の慰謝料の相場や計算についてより詳しく知りたい方のために、関連ページをまとめておきました。
判例から厳選した後遺障害14級の交通事故の慰謝料ランク5選
①障害等級14級(女・症状固定時38歳)損害額3156万1544円の判例
まず、東京地方裁判所の民事第27部の判決、平成17年(ワ)第14623号事件をご紹介します。
医学部大学院生の女性が頸椎捻挫などのケガを負った事故です。
属性 | 医学部大学院生 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時38歳 |
事故の内容 | 首都高速料金所で追突された。 |
傷害の内容 | 頸椎捻挫、外傷性頸部症候群、腰部打撲、腰椎椎間関節捻挫 |
後遺障害等級 | 14級 |
入院 | 81日 |
損害総額 | 3156万1544円 |
---|---|
うち慰謝料 | 290万円 |
うち休業損害 | 1069万4828円 |
うち逸失利益 | 324万7125円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3156万1544円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が180万円、後遺障害の慰謝料が110万円認められました。
- 休業損害は、基礎収入は、卒業予定日までは現実収入の週当たり9万9500円、それ以降は大学同期生の年収を参考に1500万円として、退院までの83日間は100%、退院後から卒業予定日までの324日間は平均して50%、その後の症状固定時まで585日間は30%の就労制限割合として算定されました。
- 逸失利益としては、基礎収入は1500万円、労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は5年として、324万7125円が認められました。
弁護士先生、こちらの女性は医学部の大学院生だったようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
医学部の大学院生は、将来医者として働く可能性が高いため、基礎収入をいくらと認定するかがポイントになります。
本件では、大学同期生の収入を参考にして年収1500万円と高額な認定がなされましたが、もう少し保守的な判断をする裁判官も少なくないでしょう。
②障害等級14級(女・45歳)損害額2513万6789円の判例
次に、東京地方裁判所の民事第27部の判決、平成21年(ワ)26349号事件をご紹介します。
内科開業医の女性が外傷性頸部症候群などのケガを負った事故です。
属性 | 内科開業医 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 45歳 |
事故の内容 | 加害者がタクシーを運転して走行中、スリップして中央分離帯の側壁に衝突し、被害車の後部座席に客として乗車していた被害者が受傷した。 |
傷害の内容 | 外傷性頸部症候群、頭部打撲、両側下腿打撲、右下腿切創、頸部捻挫、腰部挫傷、両下腿挫傷、右腓腹筋不全断裂、両びまん性表層角膜炎、外傷性歯牙打撲(3本)、外傷性歯牙脱臼、(1本)、外傷性歯牙破折(2本)、上下口唇部裂傷、外傷性顎関節症(開口障害を含む) |
後遺障害等級 | 14級 |
入院 | 0日 |
損害総額 | 2513万6789円 |
---|---|
うち慰謝料 | 270万円 |
うち休業損害 | 949万8803円 |
うち逸失利益 | 1041万8701円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2513万6789円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が150万円、後遺障害の慰謝料が120万円認められました。
- 休業損害としては、代診費用が90万円、休業損害が859万8803円認められました。
- 逸失利益としては、労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は5年、基礎収入は被害者が主張する申告所得額である4812万8888円として算定されました。
弁護士先生、こちらの女性は、事故によるヘルニアは認められず後遺障害は14級相当とされたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
こちらの女性は、内科開業医として事故当時5000万円弱の年収があったため、14級の後遺症でも高額な賠償が認められました。
裁判所によっては、14級でも労働能力喪失期間を67歳まで認めるケースもあります。
本件では労働能力喪失期間は5年間に制限されていますが、裁判官によっては倍増して金額を判断する場合もあると思われます。
③障害等級14級(男・症状固定時41歳)損害額1926万0665円の判例
3つ目に、名古屋地方裁判所の判決、平成17年(ワ)第3110号事件をご紹介します。
会社役員の男性が、脳震盪症などのケガを負った事故です。
属性 | 会社役員 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 41歳 |
事故の内容 | 信号待ちのため7台ほど停車したところ、加害A車が急ハンドルで右車線に出ようとし、折から右折専用車線を後方から進行してきた加害B車と接触し、B車が4台目付近に停止していた被害車に右後方から追突した。 |
傷害の内容 | 脳震盪症、頚部挫傷、腰部・顔面打撲、歯牙インレー脱離 |
後遺障害等級 | 14級 |
入院 | 204日 |
損害総額 | 1926万0665円 |
---|---|
うち慰謝料 | 381万円 |
うち休業損害 | 163万4999円 |
うち逸失利益 | 280万3125円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1926万0665円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が281万円、後遺障害の慰謝料が100万円が認められました。
- 休業損害としては、症状固定まで539日間を休業日数として、163万4999円が認められました。
- 逸失利益としては、390万円全部を基礎収入とし、労働能力喪失期間を67歳までの26年間、労働能力喪失率は5%として算定されました。
弁護士先生、こちらの会社役員の男性は、14級相当として後遺障害が認められたようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、被害者は会社を経営しており、事故後に会社の売上げが大きく減少しました。
そこで、被害者が会社の売上げ減少分を企業損害として請求しました。
裁判所は、事故後2年間にわたる売上げの減少分を企業損害として認める判断を行いました。
④障害等級14級(男・17歳・症状固定時19歳)損害額1364万5832円の判例
4つ目に、横浜地方裁判所の第6民事部の判決、平成23年(ワ)3757号事件をご紹介します。
男子高校生が右下腿挫創などのケガを負った事故です。
属性 | 高校2年生 |
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性別 | 男 |
年齢 | 17歳(症状固定時19歳) |
事故の内容 | 加害者が道路右側の路外駐車場に向かい右折進行した際、対向車線を直進してきた被害者と衝突した。 |
傷害の内容 | 右下腿挫創、右腓骨脛骨開放骨折、側頭骨骨折および顔面挫創など |
後遺障害等級 | 併合14級(右下腿部の醜状痕、顔面部の醜状痕) |
入院 | 34日 |
損害総額 | 1364万5832円 |
---|---|
うち慰謝料 | 380万円 |
うち休業損害 | 58万2967円 |
うち逸失利益 | 472万7300円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1364万5832円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が200万円、後遺障害の慰謝料が180万円認められました。
- 休業損害は、アルバイト収入を日額7571円、休業日数を77日間として算定されました。
- 逸失利益としては、基礎収入は男性の学歴計全年齢平均賃金である523万0200円、労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は67歳まで48年として算定されました。
弁護士先生、こちらの男性は、ケガによる醜状障害によって後遺障害14級が認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、被害者が大企業の営業職についていることから、事故で負った顔の傷が将来の労働能力に影響すると判断されました。
当時は、男性の単なる醜状としての顔の傷は14級とされていましたが、現在は12級に格上げされています。
現在の等級を前提にすると、労働能力喪失率は何パーセントと評価されるのかは興味深いところです。
⑤障害等級14級(女・症状固定時41歳)損害額1361万0470円の判例
最後に、神戸地方裁判所の判決、平成19年(ワ)第15号事件をご紹介します。
生保外交員の女性が、頚椎捻挫などのケガを負った事故です。
属性 | 生保外交員 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時41歳 |
事故の内容 | 信号のない三叉交差点で右折の加害車が直進の被害車に衝突し、被害車は更に駐車中の他車に接触した上沿道建物フェンスに接触した。 |
傷害の内容 | 頚椎捻挫、左肩打撲捻挫 |
後遺障害等級 | 14級 |
入院 | 101日 |
損害総額 | 1361万0470円 |
---|---|
うち慰謝料 | 320万円 |
うち休業損害 | 522万1755円 |
うち逸失利益 | 333万3270円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1361万0470円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が210万円、後遺障害の慰謝料が110万円認められました。
- 休業損害としては、基礎収入は463万7562円、休業日数657日のうち最初の165日間は100%、次の164日間は75%、次の164日間は50%、残りの164日間は25%の労働能力を喪失したものとして算出されました。
- 逸失利益は、基礎収入は休業損害と同じく463万7562円、労働能力喪失率は5%、後遺障害の内容・程度、更に症状固定時の年齢が41歳であることを総合的に考慮すると労働能力喪失期間は26年として算定されました。
弁護士先生、こちらの女性は頚椎捻挫と左肩打撲捻挫によって後遺障害14級相当が認められたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者は事故当時、生命保険会社の外交員として勤務していましたが、事故後に2年以上の期間にわたり休業しました。
本件では、2年間の休業損害が、損害として認められるか否かが争点となりました。
裁判所は、休業による減収の全額を損害として認める判断はせず、休業期間に応じて割合的に休業損害を認める折衷的な判断をしました。
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まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。