後遺障害12級の交通事故慰謝料|5034万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害12級の判例についてご紹介します。
もし交通事故によって、12級の後遺障害が残ってしまったとき、被害者には後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が支払われます。
被害者に支払われる損害賠償金はそれぞれの事情が考慮され、金額が算定されます。
こちらの判例では、損害総額は5034万円となったようですが、算定においてどのような点がポイントなったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級12級(女・症状固定時34歳)損害額5034万4989円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成14年(ワ)第16644号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、右膝挫傷となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者が「いかないで」と車両のドアノブを握ったまま、併走しているにもかかわらず、加害者がそのまま、発進・走行させて被害者を転倒させ、礫過した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 看護師 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時34歳 |
事故の内容 | 被害者が「いかないで」と車両のドアノブを握ったまま、併走しているにもかかわらず、加害者がそのまま、発進・走行させて被害者を転倒させ、礫過した事故。 |
傷害の内容 | 右膝挫傷 右下肢の反射性交感神経性ジストロフィー |
後遺障害等級 | 12級12号(現在の12級13号に相当) |
入院 | 99日 |
恋愛のトラブルが事故の原因となってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 5034万4989円 |
---|---|
うち慰謝料 | 620万円 |
うち休業損害 | 1464万4249円 |
うち後遺障害逸失利益 | 975万7336円 |
損害総額は5034万4989円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5034万4989円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が320万円、後遺障害の慰謝料が300万円認められました。
- 休業損害としては、1464万4249円が認められました。
- 後遺障害逸失利益としては、基礎年収を627万4460円とし、後遺障害は長期化することが予想されるので、労働能力喪失率は10年間は14%、その後の10年間は10%として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの被害者は右膝痛、右膝の異常知覚等の症状について12級12号(現12級13号)が認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件は、恋愛関係のもつれから、被害者が「いかないで」と言いながらドアノブを握っていたにもかかわらず、運転手が意に介さず車を発進させてことが事故の原因となりました。
発進する可能性のある車のドアノブを握り続けていた被害者側にも、事故についての過失があったのではないかが大きな争点となりました。
裁判所は、恋愛関係のもつれが背景にある本件において、運転手が被害者の様子を気にすることなく車をそのまま発進させた点を重視し、直ちには過失相殺を認めませんでした。
しかしながら、本件の通院が長期化したことの原因は、本件の背景にあった恋愛関係のもつれが一部影響しているとして、心因的減額として20%の損害を減額する判断を行いました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害12級の慰謝料計算の特徴は?
12級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に12級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、12級の場合、裁判基準では290万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、12級13号の神経症状の場合には、一生症状が残るものではないとして、計算の基礎となる労働能力喪失期間が制限されることが多いです。
むち打ち症の場合、裁判では、10年程度とされることが多いですが、保険会社からはより短い期間を主張されることも多いので、安易に示談には応じないほうがいいでしょう。
また、12級13号の神経症状であっても、その症状が骨折等の器質的損傷に基づくものである場合には、むち打ち症の場合よりも労働能力喪失期間を長く考える傾向にある点にも注意が必要です。
さらに、12級3号の歯科補綴、12級5号及び8号の変形障害や12級14号の外貌醜状の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方々によってさまざまな事情があるかと思います。
もし、ご自身の交通事故についてのお悩みがある場合は、まずは一度弁護士等の専門家に直接相談してみるとよいでしょう。