新生児・赤ちゃん交通事故慰謝料|重い後遺症が残り1億7318万円
このページでは、新生児の事故の判例についてご紹介します。
交通事故による影響は、特に思いもよらぬところにまで出てしまうものです。
こちらの判例は、妊娠中の母親が交通事故によって、赤ちゃんに非常に重い後遺障害が残ってしまったものです。
事故によって親族が受けた苦痛や、将来への不安は計り知れないものです。
被害者たちへの補償はどのような結果になったのか、弁護士の先生の解説とともにご説明いたします。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
新生児(男・0歳)損害額1億7318万2832円の判例
こちらは、名古屋高等裁判所金沢支部の第1部の判決、平成15年(ネ)第127号事件です。
当時、母親のお腹の中にいた男の子が脳挫傷などのけがを負ったという事故になります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者を妊娠中の母が被害車両を運転して優先道路を走行して交差点内に進入したところ、左方の交差道路から交差点に右折進入しようとした加害車両と衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 新生児 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 0歳 |
事故の内容 | 被害者を妊娠中の母が被害車両を運転して優先道路を走行して交差点内に進入したところ、左方の交差道路から交差点に右折進入しようとした加害車両と衝突。 |
傷害の内容 | 低酸素性脳症、てんかん |
後遺障害等級 | 1級3号 |
入院 | 73日 |
被害者が母親の胎内にいたときの事故である点が特徴的です。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億7318万2832円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3250万円 |
うち将来介護費 | 7596万9786円 |
うち逸失利益 | 4458万0655円 |
損害総額は1億7318万2832円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億7318万2832円になりました。
- 慰謝料としては傷害慰謝料が250万円、後遺障害の慰謝料が2600万円、両親固有の慰謝料が各200万円認められました。
- 将来介護費としては、被害者は常時介護を要する状態であるので、24時間の在宅介護料金が1万1235円、訪問看護の利用料金が週1回で4000円であることを考慮し、職業介護人を補う親族らの介護労働もあり得ることを踏まえ、日額1万2000円をもとに算定されました。
- 逸失利益としては、男子の全年齢学歴計年収額の562万3900円を基礎収入とし、稼動可能期間を18歳から67歳までとして算定し、4458万0655円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの新生児は胎児のときの事故によって重度の後遺障害が残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、加害者が任意保険に加入していなかったため、被害者が加入していた自動車保険についていた「無保険車傷害保険」を利用して請求した点が特徴的です。
裁判では、母親のお腹の中にいた胎児が出生後に、無保険車傷害保険の被保険者になり得るかという点が争点となりました。
裁判所は、出生後は母親の子として3号被保険者になるとの見解を採用し、被害者側の請求を認める判断を行いました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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幼児の慰謝料計算の特徴は?
幼児の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
幼児が交通事故でケガを負った場合、保護者による通院時の付き添いが必要なため、慰謝料とは別に、別途通院付添費も請求することができます。
また、付添のためにお仕事を休まなければいけなくなった場合には、保護者の休業損害を請求できる可能性もあります。
軽傷の事案でのポイントは、一般的に大人に比べて幼児の体は柔らかく、怪我をしにくい体ということで、お医者様があまり通院しなくてもよいとおっしゃることがあります。
慰謝料の金額には通院日数が影響するため、お医者様とよく話し合った上で、お怪我の程度に見合った通院日数を確保する必要があります。
重傷の事案のポイントは、大人に比べて治療による回復の見込みが大きい傾向にあるので、保険会社から治療打ち切りの打診があっても、安易には応じず、お医者様とよく話し合った上で、通院期間を確保することです。
また、後遺障害が残った場合、将来の収入の減少をカバーする逸失利益は、将来どれ位の収入が見込めるか不明確なため、計算にも工夫が必要となります。
例えば、女の子の場合、将来男の子の場合よりも見込める収入が低いと言われることがありますが、幼児の場合には十分反論の余地があります。
なお、通常、示談後に治療の必要性があったとしても、その治療費相当額は請求できませんが、幼児の場合、体の成長と共に将来的な治療や手術が必要になる可能性が大人より大きいため、
大人の場合に比べて、将来的な治療費を請求できる余地が大きいといえます。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情はそれぞれ異なります。
もし、交通事故による慰謝料でお悩みでしたら、まずは一度、弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。