一歳幼児の交通事故慰謝料|1億6212万円の判例を弁護士が解説
このページでは、1歳女児の事故の判例についてご紹介します。
かわいい盛りの我が子が交通事故に巻き込まれてしまったら、親としては気が気でないですよね。
特に、事故の影響が大きく残ってしまっていたとしたら、これからの未来のことを考えると、被害者の補償は十分になされなければなりません。
こちらの判例では、1億6212万円以上の損害総額となったようですが、どのような点が算定のポイントとなったのか、専門の先生に詳しく聞いてみましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
幼児(女・症状固定時1歳)損害額1億6212万3183円の判例
こちらは、さいたま地方裁判所の判決、平成13年(ワ)第1895号事件です。
この事故による主な怪我は、外傷性脳挫傷となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者を同乗させ歩道を走行していた自転車が、バランスを崩して車道側に転倒し、車道を走行してきた加害車(普通乗用自動車)の側面に接触した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 幼児 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 1歳(症状固定時) |
事故の内容 | 被害者を同乗させ歩道を走行していた自転車が、バランスを崩して車道側に転倒し、車道を走行してきた加害車(普通乗用自動車)の側面に接触した事故。 |
傷害の内容 | 外傷性脳挫傷、くも膜下出血、頭蓋骨骨折、硬膜下膿瘍、てんかんおよび精神遅滞 |
後遺障害等級 | 1級3号 |
入院 | 109日 |
判例で認められた賠償金・慰謝料
被害者母の落ち度と加害者の過失を検証し、自動車と自転車の事故であることも考慮し、過失割合は被害者3割5分と加害者6割5分とされたようです。
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億6212万3183円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2900万円 |
うち将来介護費 | 7117万2768円 |
うち逸失利益 | 4116万9538円 |
損害総額は1億6212万3183円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億6212万3183円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が200万円、後遺障害の慰謝料が2500万円、両親固有の慰謝料が各100万円認められました。
- 将来介護費としては、7117万2768円が認められました。
- 逸失利益は、基礎収入494万6300円を全労働者学歴計全年齢平均とし、労働能力喪失率は100%、労働能力喪失期間は49年間(18歳から67歳まで)と算定し、4116万9538円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの女の子は事故によりてんかんや精神遅滞などの障害が残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件は、母親が1歳の娘を後ろ側に乗せた自転車を運転中に、車道側に自転車を転倒させたことにより発生した事故です。
加害者側には、子乗せ自転車を前方に発見した場合、速度を落とすなどの注意義務を怠った過失があるとされた一方、被害者側にも自転車を転倒させた過失があるとして、35%の過失相殺がなされました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
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- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
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といった人たちです。
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幼児の慰謝料計算の特徴は?
幼児の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
幼児が交通事故でケガを負った場合、保護者による通院時の付き添いが必要なため、慰謝料とは別に、別途通院付添費も請求することができます。
また、付添のためにお仕事を休まなければいけなくなった場合には、保護者の休業損害を請求できる可能性もあります。
軽傷の事案でのポイントは、一般的に大人に比べて幼児の体は柔らかく、怪我をしにくい体ということで、お医者様があまり通院しなくてもよいとおっしゃることがあります。
慰謝料の金額には通院日数が影響するため、お医者様とよく話し合った上で、お怪我の程度に見合った通院日数を確保する必要があります。
重傷の事案のポイントは、大人に比べて治療による回復の見込みが大きい傾向にあるので、保険会社から治療打ち切りの打診があっても、安易には応じず、お医者様とよく話し合った上で、通院期間を確保することです。
また、後遺障害が残った場合、将来の収入の減少をカバーする逸失利益は、将来どれ位の収入が見込めるか不明確なため、計算にも工夫が必要となります。
例えば、女の子の場合、将来男の子の場合よりも見込める収入が低いと言われることがありますが、幼児の場合には十分反論の余地があります。
なお、通常、示談後に治療の必要性があったとしても、その治療費相当額は請求できませんが、幼児の場合、体の成長と共に将来的な治療や手術が必要になる可能性が大人より大きいため、
大人の場合に比べて、将来的な治療費を請求できる余地が大きいといえます。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている判例のように、事故に遭われた方のご事情はそれぞれ異なります。
もし、交通事故による慰謝料でお悩みでしたら、まずは一度、弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。