交通死亡事故の損害賠償金・示談金相場|払えない・払わない場合の対応策は?
「死亡事故の損害賠償金や示談金の相場はいくらくらいなのだろうか・・・」
「死亡事故の加害者が損害賠償金を払えないことがあるって聞いたけれど本当なのだろうか・・・」
「死亡事故の加害者が損害賠償金を払えない場合にはどう対応すればいいのだろうか・・・」
このページをご覧の方には、交通事故による死亡事故の相続人の方で示談交渉を始めたものの、よくわからずお困りの方もいるかと思います。
このページでは、そんな方のために
- 交通事故の死亡事故の損害賠償金・示談金の相場
- 死亡事故の加害者が損害賠償金を払えないことがある理由
- 死亡事故の加害者が損害賠償金を払えない場合の対応策
といった事柄についてお伝えしていきたいと思います。
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
よろしくお願いします。
交通事故による死亡事故で大切なご家族を失われた方に対しましては、心よりお悔やみ申し上げます。
突然ご家族を失われた悲しみは計り知れないものとお察しいたします。
残されたご家族の悲しみは決して癒えないことかと思いますが、今後の生活に向け、適正な損害賠償金や示談金を受け取る必要があります。
こちらの記事では、そのために必要となる損害賠償金・示談金の相場や加害者が損害賠償金を払えない場合の対応策をお伝えしたいと思います。
目次
交通事故の死亡事故が発生した場合、被害者の相続人が加害者側から損害賠償金や示談金を受け取れるのはご存じかと思います。
もっとも、具体的な損害賠償金や示談金の内訳や相場がいくらくらいかについてまではよくご存じでない方も多いかと思います。
そこで、まずは死亡事故の損害賠償金・示談金の内訳や相場についてお伝えしていきたいと思います。
死亡事故の損害賠償金・示談金の相場は?
死亡事故の賠償金額の主な内訳
交通事故による死亡事故についての損害賠償金・示談金の主な内訳としては
- 葬儀費用
- 死亡慰謝料
- 死亡による逸失利益
の三項目になります。
ただし、死亡事故といっても、当然治療が施され、一定期間入通院をしたのちにお亡くなりになるケースもあります。
そういった場合の治療費や入通院慰謝料などについても、相当な範囲で損害賠償金・示談金に含まれることになる点は注意しましょう。
葬儀費用
死亡事故が発生した場合、当然葬儀が執り行われることになります。
かつては、死亡事故がなくとも人はいずれ亡くなるため、葬儀費用が損害賠償金に含まれるか議論もありました。
もっとも、現在では、葬儀費用が損害賠償金に含まれることについてはほぼ争いがないことになっています。
また、死亡事故の損害賠償の判例に墓碑建設、仏壇購入の費用につき、損害賠償金として認められる葬儀費用に含まれるとするものがあります。
人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもつてその霊をまつることは、わが国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、不法行為によつて死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によつて生じた損害でないとはいえない。
死が何人も早晩免れえない運命であり、死者の霊をまつることが当然にその遺族の責務とされることではあつても、不法行為のさいに当該遺族がその費用の支出を余儀なくされることは、ひとえに不法行為によつて生じた事態であつて、この理は、墓碑建設、仏壇購入の費用とその他の葬儀費用とにおいて何ら区別するいわれがない(以下略)
出典:最判昭和44年2月28日
なお、香典に関しては、葬儀費用から控除しない一方、香典返しは損害賠償金として認められる葬儀費用には含まれないとしています。
ただし、後ほど詳しくお伝えしますが、特殊な事情がない限り、損害賠償金として認められる葬儀費用の相場は一定額に定められています。
死亡慰謝料
当然のことですが、死亡事故とは、人の生命を失わせる事故です。
その生命を失ったこと自体に対する精神的苦痛を填補するための被害者本人の死亡慰謝料が損害賠償金の項目の内訳として認められます。
また、突然ご家族を失われた近親者の悲しみや怒り、苦悩といった精神的苦痛を填補するための近親者の慰謝料も死亡慰謝料に含まれます。
逸失利益
交通事故による死亡事故が発生すると、被害者が生存していれば得られたであろう経済的利益が失われることになります。
子の損害を補填するために、逸失利益が、死亡事故の損害賠償金・示談金の内訳に含まれることになります。
この逸失利益は後遺障害が残存した場合にも認められますが、死亡による逸失利益は後遺障害による逸失利益とは異なる点があります。
それは、被害者が死亡した場合、収入がなくなる一方、被害者が生存していれば生じる生活費が発生しなくなるという点です。
後ほど詳しくお伝えしますが、この点を損害賠償金・示談金に反映させるため、死亡による逸失利益の計算にあたっては生活費が控除されます。
死亡事故についての損害賠償請求はそれぞれの項目ごとに別個にできるので、忘れずに全て請求するようにしましょう。
ここまでは、交通事故による死亡事故についての損害賠償金・示談金の主な内訳についてお伝えしてきました。
ここからは、各項目ごとの具体的な相場をお伝えしていきたいと思います。
もっとも、損害賠償金や示談金の相場には
- 自賠責保険から支払われる際に用いられる自賠責基準
- 任意保険会社が示談金を提示する際に用いられる任意保険基準
- 弁護士が相手側や保険会社と示談交渉する際や裁判となった場合に用いられる弁護士基準(裁判基準)
という3つの基準の相場があります。
そのため、各基準ごとに具体的な相場をお伝えしていきたいと思います。
死亡事故の葬儀費用の相場
自賠責基準
まず、葬儀費用の項目に関し、自賠責基準では以下のように算出すると定められています。
1.葬儀費
(1)葬儀費は、60万円とする。
(2)立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
任意保険基準
続いて、葬儀費用の項目に関し、各任意保険会社がかつて共通で使用していた任意保険基準では以下のように算出すると定められています。
60万円とする。ただし、立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、社会通念上必要かつ妥当な実費とする。
弁護士(裁判)基準
そして、葬儀費用の項目に関し、弁護士基準では以下のように算出すると定められています。
原則として150万円とする。ただし、これを下回る場合は、実際に支出した額とする。
もっとも、裁判においては、相場である150万円を超える葬儀費用が損害として認められた事例も複数存在します。
葬儀費用が150万円以上掛かってしまっている方は、領収証などをしっかり保管した上で弁護士に相談してみることをおすすめします。
最後に、3つの基準の葬儀費用に関する相場について、表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
原則 | 60万 | 150万 (下回る場合は実際の金額) |
|
上限 | 100万 | 社会通念上必要かつ妥当な額 |
死亡事故の慰謝料の相場
自賠責基準
自賠責基準では、死亡した場合の慰謝料の金額について
- 死亡本人
- 遺族
の二つに分けて基準を設けています。
死亡本人の慰謝料
死亡本人の慰謝料の金額は、以下のとおり、350万円と定められています。
「死亡本人の慰謝料は、350万円とする。」
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
遺族の慰謝料
また、遺族の慰謝料の金額は、以下のとおり定められています。
これを整理すると、請求権者は被害者の父母、配偶者、子となります。
金額は、
- 1人の場合:550万円
- 2人の場合:650万円
- 3人の場合:750万円
- 被害者に被扶養者(被害者に養われていた人)がいるとき:+200万円
となります。
被害者本人一律 | 遺族※ | 被扶養者がいる場合 | |
---|---|---|---|
350万円+ | 1人 | 550万円 | +200万円 |
2人 | 650万円 | ||
3人以上 | 750万円 |
※ 被害者の両親、配偶者、子のみ
任意保険基準
続いて、旧任意保険基準での死亡事故の慰謝料の示談金の相場は以下の表のようになっています。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 1500万〜2000万 |
母親、配偶者 | 1200万〜1500万 |
その他 | 1300万〜1600万 |
弁護士(裁判)基準
そして、弁護士基準の死亡慰謝料の金額は以下の表のとおりです。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万 |
母親、配偶者 | 2500万 |
その他 | 2000万〜2500万 |
【参考】高齢者の慰謝料の相場
なお、慰謝料等の損害賠償に関し、死亡事故の被害者が高齢者であった場合、通常よりも相場を低くすべきとする考え方があります。
その理由として、高齢者は子供や若者よりも長く生きており、すでに人生を享受している度合いが大きいということを挙げています。
もっとも、死亡慰謝料は、生命を失ったこと自体に対する精神的苦痛を補填するためのものであるところ、かかる精神的苦痛は年齢で変わりはありません。
最近の裁判実務でも、高齢者であることのみを理由に、若者や子供と比べて低く慰謝料金額を認定する事例は少ないようです。
お伝えしたとおり、死亡事故の慰謝料には3つの基準がありますが、弁護士基準の死亡慰謝料は過去の裁判の事案を基礎に定められたもののため、
弁護士基準の死亡慰謝料の相場が本来適正な死亡慰謝料の相場
であるといえます。
そして、弁護士に依頼すれば、死亡事故につき、示談交渉のみで裁判をすることなく、弁護士基準に近い金額の慰謝料を受け取れる可能性が高いです。
残されたご家族の今後の生活を考え、本来適正な死亡慰謝料の相場である弁護士基準での死亡慰謝料を受け取れるようにしましょう。
なお、交通事故の死亡慰謝料について、もっと知りたいという方は、以下の記事により詳しく記載されていますので、ご覧下さい。
死亡事故の逸失利益の相場
自賠責基準
自賠責基準では、逸失利益は次のように算出すると定められています。
複雑に定められていますが、大まかに言うと、(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数で計算されます。
収入額は原則として、
- 実際の事故前年の収入
- 全年齢平均給与額(男子415,400円、女子275,100円)×12
- 年齢別平均給与額×12
のうち最も高い金額ということになります。
なお、年金等の受給者は、
(年金等受給額-本人の生活費)×(死亡時の年齢の平均余命年数のライプニッツ係数-死亡時の年齢の就労可能年数のライプニッツ係数)
で計算された額も逸失利益として合算されます。
この場合の年金は、原則として被害者が保険料などを負担していた年金のことをいいます。
また、本人の生活費については、生活費の立証が困難な場合、
- 被扶養者(被害者に養われていた人)がいるとき:年収の35%
- 被用者がいないとき:年収の50%
が生活費として控除されることになります。
任意保険基準
任意保険基準においても、逸失利益は自賠責基準同様、(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数で計算されます。
収入額は原則として、実際の事故前年の収入、本人の生活費については、生活費の立証が困難な場合、
- 被扶養者がいない場合 50%
- 被扶養者が1人の場合 40%
- 被扶養者が2人の場合 35%
- 被扶養者が3人以上の場合 30%
を生活費として控除されることになります。
また、被害者が保険料などを負担していた年金分については、自賠責基準同様、基本的に逸失利益性が認められます。
弁護士基準
弁護士基準においても、逸失利益は他の二つの基準同様、(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数で計算されます。
収入額は原則として実際の事故前年の収入ですが、若年労働者や家事従事者、無職者については賃金センサスを用いることもあります。
本人の生活費については、生活費の立証が困難な場合、
- 被扶養者が1人の場合 40%
- 被扶養者が2人以上の場合 30%
- 女性(主婦、独身、幼児などを含む)30%
- 男性(独身、幼児などを含む) 50%
を生活費として控除されることになります。
また、被害者が保険料などを負担していた年金分については、自賠責基準同様、基本的に逸失利益性が認められます。
ただし、年金部分についての生活費控除率は、先ほどの割合よりも高くする例が多いようです。
ご覧いただいたとおり、逸失利益の計算式自体はどの基準でも基本的に同じです。
もっとも、収入の額や生活費控除率、就労可能年数を何年と考えるかで実際の逸失利益の金額がいくらになるかは大きく異なります。
そして、逸失利益は死亡事故の損害賠償金・示談金において大きな割合を占める項目になります。
そのため、示談交渉や裁判においても、収入の額や生活費控除率、就労可能年数を何年と考えるかが争いになることも多いです。
争いになった場合には、適切な主張・立証が不可欠であり、そのためには専門家である弁護士への依頼・相談を検討されることをおすすめします。
死亡事故の損害賠償金を簡単に計算するなら
死亡事故の損害賠償金・示談金の相場は以上のとおりとなります。
お伝えしたとおり、任意保険会社は任意保険基準の相場に沿って、死亡事故の慰謝料などの賠償金の示談提示をしてきます。
しかし、任意保険会社の提示額は、本来適正な死亡事故の賠償金の相場である弁護士基準の相場の金額よりも低額であることがほとんどです。
もっとも、具体的な差額を算出するには弁護士基準の賠償金の計算をする必要がありますが、ご自身で具体的な金額を計算するのはお手間かと思います。
そういった方におすすめなのが、以下の慰謝料計算機のサービスです。
被害者の方の年齢・性別・年収などいくつかの項目を入力するだけで、死亡事故の弁護士基準での損害賠償金・示談金の相場が簡単に計算できます。
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参考|死亡事故の損害賠償金の相続及び税金
死亡事故の損害賠償金の相続権者
交通事故の損害賠償請求は、原則として被害者本人が行うものです。
しかしながら死亡事故の損害賠償請求においては、当然被害者本人は請求を行えないため、被害者の損害賠償請求権の相続人が請求を行います。
そこで、誰が死亡事故の被害者の損害賠償請求権を相続するのかをお伝えしていきたいと思います。
相続人の範囲や相続分については、民法で定められており、亡くなった被害者の配偶者は常に相続人になることができます。
また、配偶者のほかに、子・直系尊属(父母や祖父母など)・兄妹姉妹の順番で相続人となります。
それでは、ケースごとに遺族の相続分を見ていきましょう。
被害者に子がいた場合
この場合には、配偶者と子に2分の1ずつ相続されます。
直系尊属と兄弟姉妹には相続されません。
立場 | 相続分 |
---|---|
配偶者 | 1/2 |
子 | 1/2 |
直系尊属 | なし |
兄弟姉妹 | なし |
※被害者に配偶者がいる場合を想定
被害者に子がおらず、直系尊属がいる場合
この場合には、配偶者に3分の2、直系尊属に3分の1が相続されます。
兄弟姉妹には相続されません。
立場 | 相続分 |
---|---|
配偶者 | 2/3 |
直系尊属 | 1/3 |
兄弟姉妹 | なし |
※被害者に配偶者がいる場合を想定
遺族が配偶者と兄弟姉妹のみの場合
被害者に子どもと直系尊属がおらず、遺族が配偶者・兄弟姉妹であった場合には、配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1が相続されます。
立場 | 相続分 |
---|---|
配偶者 | 3/4 |
兄弟姉妹 | 1/4 |
近親者固有の慰謝料請求権
冒頭でお伝えしたとおり、死亡事故の場合、被害者本人だけでなく、近親者にも固有の慰謝料請求権が認められます。
そして、民法711条は、近親者固有の慰謝料請求権について以下のように規定しています。
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
出典:民法第711条
もっとも、被害者との関係が深い場合には、民法に規定されていない兄弟姉妹、祖父母、内縁の妻等にも固有の慰謝料請求権が認められる場合もあります。
このように、民法上の被害者の相続人に該当しない場合でも、固有の慰謝料請求権が認められる場合があるので、その点は注意しましょう。
なお、死亡事故の損害賠償請求権の時効は通常亡くなった日から3年になります。
ただし、ひき逃げのように加害者がわからない場合には、加害者が判明した時から3年になります。
死亡事故の損害賠償金に税金は?
また、死亡事故の損害賠償金・示談金を受領した場合に、税金が掛かるのかどうか気になるという方もいらっしゃるかと思います。
結論から申し上げますと、原則として死亡事故の損害賠償金には税金は掛からないことになっています。
このことは国税庁のホームページにも以下のように明記されています。
被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の対象とはなりません。
この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定がありますので、原則として税金はかかりません(略)。
なお、被相続人が損害賠償金を受け取ることに生存中決まっていたが、受け取らないうちに死亡してしまった場合には、その損害賠償金を受け取る権利すなわち債権が相続財産となり、相続税の対象となります。
なお、死亡事故の損害賠償金に対する相続税については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。
死亡事故の加害者が損害賠償金を払えないことがある!?
死亡事故の損害賠償金は高額|高額事例紹介
ここまで、死亡事故の損害賠償金・示談金の相場についてお伝えしてきました。
専門家からもご指摘のあったとおり、逸失利益は死亡事故の損害賠償金・示談金において大きな割合を占める項目になります。
亡くなられた方の年齢や収入次第では、逸失利益は数億という高額な金額になることもあります。
損害保険料算出機構の発行する「自動車保険の概況」によると、死亡事故の損害賠償の最高額は41歳男性の開業医の方で
5億2583万円
という事例になります。
また、「自動車保険の概況」に記載されている死亡事故の損害賠償の第二位の高額事例の被害者の立場や金額の内訳は以下の表のようになります。
被害者の立場 |
---|
年齢・性別:38歳 男性 職業:開業医 家族構成:妻、娘(事故当時6歳) |
死亡逸失利益 |
30,475,981(基礎収入)×(1–0.3)×15.141(29年間のライプニッツ係数)=3億2300万5779円 |
死亡慰謝料 |
2800万円 |
葬儀費用 |
150万円 |
弁護士費用 |
1500万円 |
認定総損害額※ |
3億6750万5779円 |
※遅延損害金を含まない、過失相殺前、既払い金・自賠責保険金控除前の金額
自転車編|死亡事故の賠償金を払えない理由
このように、死亡事故の損害賠償金は高額になることが多くなります。
そのため、死亡事故の加害者が損害賠償金を払えないという事態も発生してきます。
特に、自転車の運転者が死亡事故の加害者の場合に損害賠償金を払えないという事態が発生することが多いようです。
自転車の場合、自動車等とは異なり、自賠責保険のような加入が罰則付きで義務付けられている保険はありません。
また、高額な賠償金が命じられたニュース等により、認知度は高まってるものの、任意保険である自転車保険の加入率は2割程度のようです。
全体(1,000人)でみると、自転車保険に加入しているのは176人(17.6%)となり、まだ加入者は少ないという傾向が明らかになった。
出典:https://www.au-sonpo.co.jp/corporate/news/detail-136.html
使える保険がない場合は、加害者自身で賠償金を支払う必要がありますが、高額になることが多いため、資力の関係で払えないことが多くなります。
このように、自転車の運転者が死亡事故の加害者の場合、保険未加入の場合が多いことが、加害者が賠償金を払えないことの多い理由といえます。
二輪車編|死亡事故の賠償金を払えない理由
一方、二輪車の運転者が死亡事故の加害者の場合、通常は強制保険である自賠責保険に加入しています。
もっとも、自賠責保険は、法律で限度額が決まっており、死亡事故の場合は3000万円となっています。
責任保険の保険金額は、政令で定める。
出典:自動車損害賠償保障法第13条
法第13条第1項 の保険金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。
一 死亡した者
イ 死亡による損害(ロに掲げる損害を除く。)につき三千万円
(以下略)
出典:自動車損害賠償保障法施行令第2条
そして、二輪車の場合、自動車に比べて任意保険の加入率が低く、対人賠償保険は自動車の約半分の42.0%にとどまります。
種目 | 普及率 |
---|---|
対人賠償保険 | 42.0% |
対物賠償保険 | 42.6% |
搭乗者傷害保険 | 27.4% |
人身傷害保険 | 11.5% |
車両保険 | 1.1% |
任意保険に加入していない場合は、加害者は自賠責の範囲を超える金額を自身で支払う必要があります。
そして、死亡事故の賠償金は自賠責の限度額である3000万円を大きく超える高額になることが多いため、資力の関係で払えないことが多くなります。
最近の死亡事故の賠償金の相場は1億くらいらしいですね。自賠責の3000万じゃ足りないから絶対に加入しろと。
— Gaze (@xGazex) February 26, 2017
このように、二輪車の運転者が死亡事故の加害者の場合、自賠責保険にしか加入していない場合が多いことが、賠償金を払えない理由といえます。
自動車編|死亡事故の賠償金を払えない理由
一方、自動車の運転者が死亡事故の加害者の場合、通常は強制保険である自賠責保険に加入しており、任意保険の加入率も高いです。
そのため、自動車の運転者が死亡事故の加害者の場合、示談金を任意保険会社から支払ってもらえる可能性が高いといえます。
もっとも、高いとはいっても加入率は約8割であり、約5台に1台は任意保険に加入していないため、加害者が任意保険未加入の可能性は十分あります。
また、任意保険に加入している場合でも、限度額を設定している場合があります。
特に、営業用乗用車は保険料を抑えるためか、限度額を1億以下に設定している車が比較的多いようです。
金額 | 台数(割合) |
---|---|
~2000万 | 169台(0.1%) |
2000万超~5000万 | 236台(0.1%) |
5000万超~1億 | 25,639台(14.6%) |
1億超~ | 644台(0.4%) |
無制限 | 148,733台(84.8%) |
※「2018年度 自動車保険の概況」損害保険料算出機構参照
任意保険に加入していない場合や限度額を設定している場合、加害者は自賠責の範囲や任意保険の限度額を超える金額を自身で支払う必要があります。
そして、死亡事故の賠償金は自賠責の範囲や任意保険の限度額を超える高額になることも多いため、加害者が資力の関係で払えない場合があります。
自動車の運転者が死亡事故の加害者の場合、自賠責保険のみや任意保険に限度額を設定している場合があることが、賠償金を払えない理由になります。
このように、死亡事故の賠償金については、金額がいくらかという問題だけでなく、加害者が払えないという問題が出てくることがあります。
そのため、加害者が損害賠償金を払えない場合の対応策も覚えておく必要があるといえます。
死亡事故の加害者が損害賠償金を払えない場合の対応策
お伝えしたとおり、死亡事故の加害者が損害賠償金を払えない場合があります。
ここからは、そのような場合にどのような対応策が考えられるかについてお伝えしていきたいと思います。
①会社の労災から死亡事故の損害賠償金補填
まず、会社の業務中や通勤中の死亡事故の場合、労災から損害賠償金を補填してもらうという対応策が考えられます。
労災からは一定の条件を満たしている場合には、年金の形式で保険金が支払われるため、今後の生活の保障には適しているといえます。
また、加害者に対する賠償金請求とは異なり、過失相殺されないというのも労災からの補填のメリットといえます。
ただし、労災から支払われる保険金には慰謝料に相当する金額は含まれておらず、慰謝料の補填は受けられない点には注意が必要です。
なお、労災から受け取れる死亡事故の保険金に関しては、以下の記事により詳しく記載されていますので、もっと知りたいという方はぜひご覧ください。
②自身の任意保険から死亡事故の賠償金補填
また、死亡事故の加害者の保険から補填を受けられない場合、被害者側の加入している任意保険から補填が受けられる場合があります。
具体的には
- 無保険車傷害保険
- 人身傷害保険
- 搭乗者傷害保険
- 生命保険
などが考えられます。
この場合、加害者の資力にかかわらず、保険金を受け取れるのがメリットといえます。
ただし、損害賠償金としての性質がない保険金については税金が課せられる点には注意が必要です。
なお、死亡事故に対する保険金については、以下の記事により詳しく記載されていますので、もっと知りたいという方はぜひご覧ください。
③死亡事故の加害者と長期間払の内容の示談
死亡事故の加害者が賠償金を払えないのは、金額が高額のため、一括で支払う資力がないからです。
もっとも、加害者としても示談をした方が刑事裁判において有利に働くため、できれば示談をしたいと考えていることが多いようです。
また、加害者は高額な賠償金を一括で支払う資力はないとしても、分割で支払うことは可能な場合もあります。
そこで、死亡事故の加害者に賠償金を一括で支払う資力がない場合には、示談金を分割で支払う内容の示談をするという対応策が考えられます。
示談には加害者との合意が必要であり、示談の内容は加害者が最終的に同意したものになります。
そのため、加害者が十分な保険に入っていなくても、加害者本人から損害賠償金・示談金を払ってもらえる可能性が高いのがメリットといえます。
ただし、死亡事故の場合、示談金総額が高額になるため、支払い期間が長期になることが多い点には注意が必要です。
④死亡事故の加害者の財産に強制執行をする
もっとも、今後の生活のことからあまりに支払い期間が長期にわたる示談には応じにくいという方もいらっしゃるかと思います。
そこで、死亡事故の加害者本人から損害賠償金を受け取るための対応策として、加害者の財産に強制執行を掛けるという方法があります。
強制執行を掛けるためには債務名義という文書が必要であり、その取得には、原則として示談ではなく裁判等の法的手続きを経る必要があります。
示談書を債務名義にするためには、一定の形式を満たした公証人が作成する公正証書(執行証書)の形で作成する必要があります。
加害者に十分な財産があれば、加害者本人から強制的にまとまった損害賠償金を受け取れるのがメリットといえます。
しかし、加害者にどんな財産があるかは被害者側で調査しなければならず、加害者にめぼしい財産がなければ、強制執行しても賠償金は受け取れません。
そのため、強制執行の方法をとったとしても、加害者から損害賠償金を一切受け取れないことも考えられる点には注意が必要です。
なお、交通事故の裁判の流れに関しては、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
労災や被害者側の任意保険から保険金を受け取った場合、金額の調整をする必要がありますが、複雑な判断が必要があります。
また、加害者と長期間払いの内容でも示談すべきか、裁判をして強制執行すべきかについては、様々な事情を考慮して慎重に判断する必要があります。
いずれも、ご遺族の方だけで判断するのは難しいこともあるかと思いますので、一度専門家である弁護士に相談してみるのがよいかと思います。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
①労災を利用 | ・一定の場合は年金 ・過失相殺されない |
・業務中や通勤中の場合のみ ・慰謝料は補填されない |
②被害者側の任意保険を利用 | ・加害者の資力に影響されない | ・税金が課せられることがある |
③加害者と示談 | ・加害者本人から払ってもらえる可能性高い | ・支払期間が長期になることが多い |
④強制執行 | ・加害者から強制的にまとまった賠償金を受け取れる可能性 | ・一切賠償金を受け取れない可能性 |
死亡事故の損害賠償金に関し弁護士に相談されたい方へ!
ここまで死亡事故の損害賠償金に関する様々な情報をお伝えしてきましたが、読んだだけではわからない疑問が浮かんできた方もいるかもしれません。
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広告主:アトム法律事務所弁護士法人
代表岡野武志(第二東京弁護士会)
また、諸事情により、弁護士事務所に訪問できない方には、無料出張相談も行っているそうです。
まずは、電話してみることから始まります。
きっと、ご遺族の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。
地元の弁護士に直接相談をしたい方に向けて
もっとも、大事なことなので直接弁護士と会って相談されたいという方も当然いらっしゃると思います。
また、既に弁護士へのご依頼を決めていて、交通事故に強い地元の弁護士をお探しの方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときには、以下の全国弁護士検索サービスがおすすめです。
- ① 交通事故専門のサイトを設け交通事故解決に注力している
- ② 交通事故の無料相談のサービスを行っている
弁護士を特選して、47都道府県別にまとめています。
何人かの弁護士と無料相談したうえで、相性が良くて頼みやすい弁護士を選ぶ、というのもお勧めの利用法です。
最後に一言アドバイス
それでは、最後になりますが、死亡事故でご家族を失われた方に一言アドバイスをお願いします。
交通事故による死亡事故で大切なご家族を失われた方に対しましては、改めて心よりお悔やみ申し上げます。
突然ご家族を失われた悲しみは計り知れないものとお察しいたします。
残されたご家族の悲しみは決して癒えないことかと思いますが、今後の生活のためには、適正な損害賠償金・示談金を受け取る必要があります。
弁護士に依頼することで、損害賠償金・示談金を適正な金額に引き上げることや加害者が払えない場合の適切な対策をとることができます。
また、専門家である弁護士がお力を貸せるお悩みや問題もきっとあるかと思いますので、遠慮することなく弁護士に相談だけでもしてみて下さい。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故の死亡事故の損害賠償金・示談金の相場
- 死亡事故の加害者が損害賠償金を払えないことがある理由
- 死亡事故の加害者が損害賠償金を払えない場合の対応策
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
これを読んで弁護士に相談してみたいと思われた方もいらっしゃるかと思います。
自宅から弁護士と相談されたい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい。
そうではなく、やっぱり直接会ってお話をされたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。
また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください。
皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
死亡事故の示談金に関するQ&A
死亡事故の示談金ってどんなお金?
死亡事故の示談金の内訳は①葬儀費用②死亡慰謝料③死亡による逸失利益の3項目があります。どの項目にも自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があり、弁護士基準で算定するとき最も相場が高くなります。 死亡事故の示談金の内訳
死亡事故の示談金として葬儀費用に相場はある?
葬儀費用の相場は、算定基準ごとに異なります。自賠責基準・任意保険基準:60万円(自賠責基準は上限100万円)、弁護士基準は原則150万円(150万円以下の場合は実費)が相場です。もっとも、裁判では弁護士基準の相場150万円を超える葬儀費用が認められたこともあります。領収書などを保管して、弁護士に相談することをおすすめします。 死亡事故の示談金|葬儀費用の相場
死亡事故の死亡慰謝料に相場はある?
死亡慰謝料の相場は、算定基準ごとに異なります。自賠責基準:350万円~1300万円、任意保険基準:1200万円~2000万円、弁護士基準は2000万円~2800万円が相場とされています。亡くなられた方に扶養者がいたのか、遺族の人数、家庭での役割などで金額は変わります。 死亡慰謝料の詳細を解説
死亡事故の逸失利益に相場はある?
逸失利益は<計算式:(年間収入額-本人の生活費)×就労可能年数のライプニッツ係数>で求めることができます。つまり、亡くなられた方の収入・生活費控除率、就労可能年数などで変動します。そして、これらは示談交渉や裁判においても争いとなることが多い項目です。 死亡逸失利益の詳細を解説
死亡事故の示談金を加害者が払えない時の対応は?
①会社の労災から死亡事故の損害賠償金を補填してもらう、②自身の任意保険から死亡事故の賠償金を補填してもらう、③死亡事故の加害者と長期間払の内容で示談する、④死亡事故の加害者の財産に強制執行をするなどの方法が可能です。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、遺族の方だけで判断しきれないことも多いことと思います。弁護士への相談をおすすめします。 対応策のメリット・デメリット
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。