休業損害は主婦でも受け取れる!交通事故の主婦休損の計算方法を解説!
もし、主婦の方が交通事故で主婦業が出来なくなると、家事や育児などに支障が出てしまいます。
主婦にとって、家事や育児を十分にできないのは非常につらいことだと思います。
会社員などで収入を得ている人は、休んだ分の損害を請求することができますが、現実的な収入がない主婦はどうなのでしょうか?
- そもそも主婦も休業損害を請求できるのか?
- 請求できるならば、どのように計算すれば良いのか?
- 兼業主婦でパートもしているが、休業損害は十分にもらえるのか?
など、分からないことがたくさん出てきますよね。
ここでは、休業損害について主婦ならではの疑問を解決できるよう詳しく説明していきます。
なお、専門的な部分の解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いいたします。
家庭を内側から支えている主婦の方が事故によるケガで家事や育児ができなくなってしまうと、家庭全体にも影響が出かねません。
それでは、主婦の休業損害について分かりやすく解説をしていきたいと思います。
目次
インターネット上においても、主婦の休業損害についてお悩みの方を発見することが出来ました。
https://twitter.com/kei618hyuk_ELF/status/216500955754135552
皆様のお悩みが解決できるよう、しっかり解説をしていきます!
交通事故における休業損害とは?
そもそも休業損害ってなに?
休業損害とは、交通事故によるケガにより仕事ができなくなり、治癒あるいは症状固定までの期間働くことができずに収入が減少したことによる損害のことです。
たとえば、被害者が会社員であった場合、事故で働けなくなるとその分の収入が得られなくなり、生活が出来なくなってしまいますよね。
事故に遭わなければ、本来得られていたはずの給料を保険会社から休業損害として支払われることになります。
専業主婦やパートをしている主婦も休業損害をもらえる?
それでは、会社員とは違い、元々現実的な収入がない主婦の場合はどうなるのでしょうか?
主婦の場合であっても、事故により家事ができなくなった場合、休業損害をもらうことができます。
なぜなら、主婦がしている家事労働は、社会的に金銭的に評価できるものと考えられているからです。
下記の最高裁判例でも同様のことが述べられています。
家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げている
出典:最判昭和49年7月19日
たしかに、家政婦の方に家事をお願いした場合、もちろん給料が発生していますよね。
それを考えれば、主婦が休業損害を受けられるのも当然のことといえます。
しかし、現実には、主婦の方も休業損害を受け取れることを知らない方もいらっしゃいます。
示談の際には、休業損害も金額の内訳に含まれているのかしっかり確認するようにしましょう。
休業損害をもらえる対象者は、簡潔に言うと仕事をしている人と家事をしている人ということになるようです。
よって、アルバイトをしていない学生、年金生活者、生活保護受給者、不動産オーナーなどは交通事故に遭っても収入が減らないので休業損害はもらえません。
まとめ
休業損害の基礎知識
意味 | 事故でケガをしたことにより、治癒あるいは症状固定までの期間、働くことができずに収入が減少したことによる損害。 |
---|---|
支給対象者 | ・仕事をしている人 ・家事をしている人 |
支給対象外 | ・アルバイトをしていない学生 ・年金生活者 ・生活保護受給者 ・不動産オーナー |
休業損害の計算方法とは?
休業損害の計算方法
それでは次に、主婦の休業損害(主婦休損)の計算方法について見ていきましょう。
休業損害の計算方法には3つの基準があります。
まずは、その基準について簡単に説明しましょう。
3つの基準とは?
3つの基準というのが自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準です。
自賠責基準
自賠責保険会社が定めている基準のこと。
自賠責保険に対して請求する際に用いる。
任意保険基準
各任意保険会社が独自で定めている基準のこと。
かつては任意保険支払基準と呼ばれる各任意保険会社共通の基準があり、現在もその基準が基礎になっていると考えられている。
弁護士基準
弁護士が保険会社と交渉する際に用いる基準のことであり、過去の裁判例が基になっている。
それでは、3つの基準ごとに計算方法を見てみましょう。
自賠責基準の場合
自賠責基準における休業損害の計算方法は原則として以下のようになっています。
5,700円×休業日数
ただし、1日の休業損害が5,700円を超えることを資料などで証明できれば、1日あたり19,000円を限度に増額が可能です。
自賠責基準の場合、日額が5,700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5,700円で計算されるので、収入の低い人にとって有利な計算方法といえます。
任意保険基準の場合
任意保険基準の場合、各任意保険会社ごとに計算方法が異なります。
自賠責基準と同じく、5,700円×休業日数で計算しているケースや1日あたりの基礎収入×休業日数で計算しているケースもあるようです。
1日あたりの基礎収入とは、事故前3か月分の収入の平均を用います。
実際の収入が5,700円以下の人にとっては、自賠責基準で計算されるより不利といえます。
一方で、基礎収入の上限がないため、収入を証明できれば19,000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとっては有利といえます。
弁護士基準の場合
弁護士基準における休業損害の計算方法は以下のようになっています。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入とは、任意保険基準でも申し上げたように、基本的には事故前3か月分の収入の平均を用います。
また、賃金センサスと呼ばれる厚生労働省が実施している「賃金基本構造の統計調査」を用いて計算されることもあります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5,700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5,700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や裁判基準が用いられることになります。
他の項目では任意保険基準や裁判基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いるといういいとこ取りはできないので注意が必要です。
まとめ
3つの基準における休業損害
請求先 | 日額 | |
---|---|---|
自賠責基準 | 自賠責 | 原則5,700円 上限19,000円 |
任意保険基準 | 任意保険 | ・5,700円 ・1日あたりの基礎収入 |
弁護士基準 | 任意保険・裁判所 | ・1日あたりの基礎収入 ・賃金センサス |
専業主婦の場合
休業損害の計算方法を見ていきましたが、主婦の場合、会社員のように休んだ日数や1日あたりいくら支払われるのかは簡単に分かりませんよね。
まずは、専業主婦の計算方法から見ていきましょう。
1日あたりの基礎収入
専業主婦の1日あたりの基礎収入は、
- 自賠責基準・任意保険基準では日額を5,700円
- 弁護士基準では、事故前年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額を365日で割ったもの
を日額として計算します。
なお、平成28年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は376万2300円であり、365日で割ると、日額は10,307円となります。
追記:平成30年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は382万6300円であり、365日で割ると、日額は10,483円となります。
賃金センサスによる日額は年によってばらつきがありますが、およそ1万円程度となることがほとんどです。
兼業主婦(パート)の場合
主に主婦として働きながらも、午前中だけ、あるいは午後だけパートをされている主婦の方も多いのではないでしょうか。
次は、パートタイマーで働いている兼業主婦の計算方法について見ていきましょう。
なお、週30時間以上フルタイムで働かれている人は、原則、給与所得者(サラリーマン)として扱われることになります。
1日あたりの基礎収入
兼業主婦の1日あたりの基礎収入は、
現実の収入額あるいは女性労働者の全年齢平均の賃金額の金額が高い方
を基礎とします。
休業日数の決め方
次に、休業日数については、
入院していた日数・実通院日数
を基礎にすることが多いです。
また、
事故から完治あるいは症状固定までの期間において、段階的に休業割合を減らし休業日数を計算する
という方法をとることもあります。
完治や症状固定まで徐々に症状が和らいでいった場合、その間何%家事ができなかったのかを数値として出し計算します。
たとえば、事故から症状固定まで160日とした場合で見てみましょう。
症状固定までの期間160日を4等分し、最初の40日間は100%休業、次の40日間は75%休業、その次の40日間は50%休業最後の40日間は25%休業となります。
賃金センサス日額10,307円を用いて計算すると、計算式は以下のようになります。
- 10,307×100%×40日=412,280
- 10,307×75%×40日=309,210
- 10,307×50%×40日=206,140
- 10,307×25%×40日=103,070
よって、休業損害の合計額は412,280円+309,210円+206,140円+103,070円=1,030,700円となります。
専業主婦の1日あたりの基礎収入において、賃金センサスによる「女性労働者の全年齢平均の賃金額」は約1万円前後になるとお話しました。
週30時間未満のパートであると、1日に1万円以上の収入を得ることは少ないため、パートをされている主婦は賃金センサスで計算される方が有利です。
任意保険から示談金が提示されたら、休業損害の計算の根拠を確認するようにしましょう。
また、主婦の休業日数はサラリーマンのように明確ではないので、保険会社と争われることもあります。
休業日数を証明するために、診断書や通院したことが分かる書類はとっておくようにしましょう。
まとめ
主婦の休業損害
専業主婦 | 兼業主婦 | |
---|---|---|
基礎収入 | 賃金センサス | 以下のどちらか高い方 ・賃金センサス ・現実の収入額 |
休業日数 | 以下のいずれか ・入院していた日数、実通院日数 ・段階的に休業割合を減らし休業日数を計算 |
以下のいずれか ・入院していた日数、実通院日数 ・段階的に休業割合を減らし休業日数を計算 |
休業損害の請求方法や支払い時期を知りたい方は「交通事故の休業損害|仕事別計算方法を紹介!補償期間がいつまでかのカギは!?」の記事をご覧ください。
判例で見る!主婦の休業損害
主婦の休業損害の計算方法について説明してまいりました。
それでは、実際の裁判では主婦の休業損害はどのくらいの認められているのでしょうか?
岡野弁護士とともに判例を見てみましょう。
判例①被害者:パートタイマー主婦(女・症状固定時46歳)
東京地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第11447号の判例です。
被害者 | パートタイマー主婦(女・症状固定時46歳) |
---|---|
事故の内容 | 被害者が自転車に乗って横断歩道上を横断中、対向車線から右折進行しようとした加害車両と衝突した。 |
ケガの内容 | 左側頭骨骨折、頭蓋底骨折、急性硬膜外血腫、気脳症、左顔面神経麻痺、外傷性両感音性難聴等 |
後遺障害 | 併合8級相当 |
入院や通院 | 入院36日、通院実日数199日 |
総損害額 | 3934万9703円 |
こちらの被害者の女性は、パートをしながら主婦業もこなしていたようです。
この判例の休業損害の計算方法を教えてください。
被害者は、時給770円の約定で週6日間生産職に従事していたが、事故により529日間、仕事が出来なかったようです。
事故と相当因果関係のある休業損害は、
- 1日あたりの基礎収入を賃金センサス平成12年学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金額
- 休業日数を529日間
として、506万9993円が認められました。
計算式は以下のようになります。
349万8200円÷365日×529日≒506万9993円
判例②被害者:主婦(女・症状固定時64歳)
東京地方裁判所民事第27部の判決、平成21年(ワ)第47564号の判例です。
被害者 | 主婦(女・症状固定時64歳) |
---|---|
事故の内容 | 加害者が普通乗用車を運転し、T字路交差点を左折進行しようとしたところ、交差点入口の横断歩道上を左方から右方へ横断していた被害自転車に衝突。 |
ケガの内容 | 左大腿骨頸部骨折、左膝打撲、腰部打撲、閉鎖性腹部損傷 |
後遺障害 | 併合9級 |
入院や通院 | 入院66日、実通院日数94日 |
総損害額 | 2774万3585円 |
こちらの被害者の女性は、左足のケガにより左股関節に可動域制限が残ってしまったようです。
この判例の休業損害の計算方法を教えてください。
症状の内容・程度等に照らし、
- 事故日から精神症状が明確に現れる前までの882日間の休業割合を30%程度
- その後症状固定日までの323日の休業割合を60%程度
- 基礎収入を平成17年の賃金センサス女子学歴計全年齢平均賃金年額343万4400円
として、431万3229円が認められました。
計算式は以下のようになります。
343万4400円÷365日×(882日×30%+323日×60%)=431万3229円
判例③被害者:専業主婦(女性・29歳)
京都地方裁判所の第4民事部の判決、平成23年(ワ)180号の判例です。
被害者 | 専業主婦(女性・29歳) |
---|---|
事故の内容 | 交差点において、直進しようとした被害者車両と交差道路から右折しようとした加害者車両が衝突したもの。 |
ケガの内容 | 頸椎捻挫・腰椎捻挫、右肩・右上腕・右手打撲、右拇指捻挫、右肩関節周囲炎 |
後遺障害 | 14級9号 |
入院や通院 | 実通院日数429日 |
総損害額 | 485万5681円 |
こちらの被害者の女性は、ケガにより14級9号の後遺障害が残ってしまったようです。
この判例の休業損害の計算方法を教えてください。
- 本件事故当日から症状固定日までの297日の休業割合を40%
- 基礎収入を平成20年の賃金センサスの産業計・企業規模計・女子・学歴計・全年齢の平均給与349万9900円
として、113万9145円が認められました。
計算式は以下のようになります。
349万9900円×40%×297÷365=113万9145円
計算機を使って休業損害を計算してみよう!
判例では、どのくらいの休業損害が認められたのかお分かりいただけたかと思います。
やはり1番気になるのは、自分自身の休業損害の金額ですよね。
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なお、慰謝料計算機での金額は基本情報をもとにした概算となります。
被害者一人ひとりのご事情は考慮されていないことをあらかじめご了承ください。
納得できる休業損害を獲得するには?
示談金の内訳をしっかり確認しよう!
主婦の交通事故の場合、保険会社はそもそも示談金に休業損害を入れていなかったり、低い金額で提示してくることが多くあります。
もし保険会社から示談金が提示された場合、
- 示談金に休業損害が含まれているか?
- 1日あたりの基礎収入はいくらになっているか?
- 休業日数は何日になっているか?
の3点を確認するようにしましょう。
弁護士に相談してみよう!
もし、休業損害についての疑問が出てきたら、示談する前に弁護士に相談するようにしましょう。
適正な休業損害を獲得するためにも、専門家の意見を聞くことは最も重要です。
まとめ
納得できる休業損害を得るためのポイント
1 | 示談金に休業損害が含まれているか確認 |
---|---|
2 | 1日あたりの基礎収入はいくらで計算されているか確認 |
3 | 休業日数は何日になっているか確認 |
4 | 適正な金額なのか弁護士に確認 |
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ここまで、交通事故における主婦の休業損害について解説してきました。
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最後に一言アドバイス
では、岡野先生、最後にまとめの一言をお願いします。
家庭を支える主婦がケガにより家事労働ができなくなってしまうのは、ご本人にとってもご家族にとっても辛いことです。
家庭のためにも、損せず十分な休業損害を獲得することがとても大切といえます。
特に、主婦の休業損害の場合、会社員等の給与所得者と基礎収入や休業日数の算出方法が異なります。
納得できる示談を目指すためにも、弁護士などの専門家に一度相談してみましょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
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