交通事故で脳死に…植物状態とは違う!?損害賠償請求のポイントについて解説

  • 交通事故,脳死

交通事故で脳死に…植物状態とは違う!?損害賠償請求のポイントについて解説

ある日突然、大切なご家族が交通事故の被害に遭い、脳死と診断されたら…。

ご家族の方の悲しみは想像もできません。

また、

  • 脳死植物状態違いは?損害賠償請求も違うの?
  • 脳死では後遺症等級認定されるの?
  • もしも死亡してしまった場合の慰謝料相場は?

など、わからないこともたくさんあり、そんな中、相手側の保険会社と交渉をしなければならず、精神的な負担も計り知れません。

それでは、ご家族が交通事故により脳死と宣告され、お悩みの方へ。

脳死に対する損害賠償や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。

ぜひご一読ください。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

大切なご家族が交通事故により脳死状態となり、さらに、保険会社と連絡を取ることによる精神的な負担も非常に大きいものとお察しします。

そのような負担を少しでも軽減できるよう具体例も交えながら、しっかりと解説していきたいと思います。

ところで、脳死という言葉は聞いたことがあるという方がほとんどのはずです。

しかし、同じく意識不明状態が続いてしまう植物状態との違いについては意外とわからない方も多いそうなのです。

まずは、脳死に関する基礎知識について一緒に勉強してみましょう。

脳死についての基礎知識~脳死と植物状態の違いとは~

脳死についての基礎知識~脳死と植物状態の違いとは~

人間の「死」とは

従来から、人間の死とは心停止のことであるとされてきました。

医学的には、一般に、脳、心臓、肺すべての機能が停止した場合と考えられているそうです。

医師が死亡確認を行う際には、

  • 肺機能の停止
  • 心臓機能の停止
  • 脳機能の停止

という過程で判断を下します。

「脳死」とは

しかし医療技術の発達により、脳の心肺機能を制御する能力が失われても、人工呼吸器により呼吸と循環が保たれた状態が現れたのです。

つまり、

脳幹機能が停止→本来ならば心肺機能が停止するはずだが、人工呼吸器により呼吸が継続→心臓機能も維持される

ということが起こったのです。

そして、これらが一定の手順によって確認された状態が脳死とされるようになりました。

脳死の症状

繰り返しになりますが、脳死とは、呼吸や循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です。

心肺機能に致命的な損傷はないが、交通事故などで頭部にのみ強い衝撃を受けた場合や、くも膜下出血などの脳の病気が原因で発生することが多くなっています。

脳幹が機能しなくなってしまった場合、回復する可能性はなく、二度と元には戻らないのだそうです。

薬剤や人工呼吸器などによってしばらくは心臓を動かし続けることはできますが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止してしまいます。

ただし、心停止までに、3ヶ月など長時間を要する例も報告されているそうです。

https://twitter.com/aoyamaume/status/940198190548074496

「脳死」と「植物状態」の違い

ところで、交通事故などで頭部を強打した場合、意識が戻らない状態が続くこともあります。

その状態は、植物状態遷延性意識障害と呼ばれます。

どちらも意識不明の状態が続くことになりますが、何が違うのでしょうか?

調べてみたところ、植物状態とは、

意識は戻らないものの、脳幹の機能は残っていて、自ら呼吸できることも多く、回復する可能性がある状態

のことなのだそうです。

つまり、脳幹の機能が失われた脳死と植物状態は、根本的に全く違うものになります。

https://twitter.com/airchair1215/status/663996593763315713

欧米をはじめとする世界のほとんどの国では「脳死は人の死」とされ、大脳、小脳、脳幹のすべての機能が失われた状態を「脳死」としています。

とはいえ、国や宗教によって賛否はさまざまなのが現実です。

日本においては、臓器提供時を除き、脳死を「個体死」とすることは法律上いまだに認められていません。

ちなみに、臓器提供時における「脳死」の定義は以下のように定められています。

第六条 医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。

一 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。

二 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。

2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。

つまり、心肺が停止するまでは法律上死亡となりませんが、本人と家族の同意があれば、臓器移植を行うことは可能ということなんですね。

【重要】脳死は後遺症に認定される!?その場合の等級や認定基準は?

【重要】脳死は後遺症に認定される!?その場合の等級や認定基準は?

以上、「脳死」に関する基礎知識を見てきました。

大切なご家族が交通事故で脳死状態となってしまった場合…。

お金ですべてが解決するわけではありませんが、残された家族の皆さまの今後の生活を続けていくためにも、相手側や保険会社に損害賠償を請求する必要があります。

ここで疑問なのは、「脳死は人の死」という考えもあれば、日本の法律上は、死亡とはされていないようですし…。

交通事故の損害賠償においては、脳死は後遺症と考えられるのでしょうか?

それとも、死亡と考えられるのでしょうか?

おっしゃる通り、日本では、脳死を「個体死」とする明記した法律はありません。

よって、脳死状態が続いている場合には、死亡に対する損害賠償ではなく、後遺症に対する損害賠償を請求するということになります。

とはいえ現実には、脳死状態となった場合には、数日以内で亡くなられてしまう方が多いということでした。

その場合には、死亡に対する損害賠償を請求することになります。

ではここからは、後遺症と死亡それぞれに対する損害賠償について詳しく見ていきましょう。

脳死の後遺症に対する慰謝料

交通事故の後遺症に対する補償を受け取るためには、後遺症の等級認定を受ける必要があるそうなのです。

ここで、後遺症の等級は1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。

残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。

では、脳死の場合の等級認定の基準はどのようになっているのでしょうか?

脳死を後遺症の等級認定基準に当てはめるのであれば、脳の神経系統の機能が失われ、常時介護を要する状態に該当すると考えられます。

ということで、自賠法施行令別表第1の1級1号が認定されるそうです。

脳死の後遺症の等級
11号(別表第1
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

そして、この等級に応じて、後遺症慰謝料の金額が決まっているそうなのです。

その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?

慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~

慰謝料には、

  • 自賠責保険に請求する場合
  • 任意保険会社が提示する場合
  • 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合

の3つの基準が存在しているそうなのです。

自賠責基準

自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。

自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。

任意保険基準

保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。

ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。

よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。

弁護士基準

保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。

これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。

ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。

よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。

慰謝料金額の基準
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準
内容 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの 営利企業の保険会社が支払うもの 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの
金額 金額は低め 自賠責基準よりは高いが、金額は低め 自賠責基準や任意保険基準よりも高い

では、それぞれの基準ごとの後遺症慰謝料の相場について、以下の表に示しました。

脳死に対する後遺症慰謝料※1
後遺症等級 自賠責基準※2 任意保険基準※3 弁護士基準
1 1600 1300 2800

※1 単位:万円

※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。

※3 旧任意保険支払基準による。

一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。

ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。

加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。

弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!

死亡してしまった場合の慰謝料

では、非常に残念なことですが、脳死状態のまま、被害者の方が死亡されてしまった場合にはどうなるのでしょうか?

その場合には、死亡慰謝料を受け取ることができます。

死亡慰謝料についても、3つの基準が存在しているそうです。

以下にまとめてみましたので、ご覧になってみてください。

自賠責基準による死亡慰謝料
被害者本人一律 遺族※ 被扶養者がいる場合
350万円+ 1 550万円 200万円
2 650万円
3人以上 750万円
任意保険基準と弁護士基準による死亡慰謝料
任意保険基準 弁護士基準
一家の支柱 1700 2800
母親・配偶者 1400 2500
その他 12501450 20002500

死亡慰謝料についてもやはり、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。

死亡慰謝料については、ご遺族の方への慰謝料や増額事由などもあるようなので、詳しくはこちらの記事もご覧になってみてください。

自分で慰謝料を計算してみたい

ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。

今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。

このホームページでは、後遺症慰謝料だけでなく、後で説明する入通院慰謝料も含めた賠償金総額がわかる計算機を設置しています。

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入院日数や通院日数、後遺症の等級など数項目を入れるだけで、弁護士基準の賠償金を計算できます。

また、年齢などを入力すれば、死亡慰謝料についても確認することができます。

自分やご家族の事故ではどれくらいの金額が請求できるのか…。

登録などは不要なので、ぜひ一度試してみてください!

死亡慰謝料…後遺症慰謝料…どちらを請求すべき?

以上、後遺症が残った場合と、死亡してしまった場合に対する慰謝料の相場を見てきました。

ところで、脳死の場合、回復することはなく、必ず死期が訪れます。

しかし、場合によっては長期間、脳死の状態が続くということでした。

では、そのような場合、後遺症の慰謝料を受け取るべきなのでしょうか?

後遺症の慰謝料を受け取る場合には、担当の医師に症状固定をしてもらう必要があります。

後遺障害等級認定の流れ

それとも、まだ回復の希望を捨てきれないので、死亡と判定されるまでは延命を続け、残念ながら亡くなってしまった場合に死亡慰謝料を受け取るべきなのか…。

非常に判断しかねるところだと思います。

どちらも受け取るということはできないと思うのですが、後遺症と死亡慰謝料、どちらを受け取るかによって何か今後に違いはあるのですか?

被害者の年齢などにもよりますが、一般的には後遺症による損害の方が、逸失利益や将来介護費などにより、損害賠償額が高額になると考えられます。

ただし、脳死の場合には、平均余命まで生きられる可能性が低いとして、逸失利益や将来介護費の期間を相手側が争ってくることが予想されます。

また、症状固定としてしまうと、症状固定後の治療費を少なくとも一旦立て替えなければいけなくなる可能性が出てくるというリスクもあります。

どちらを選択するかは上記の点などを総合的に考慮して決定する必要があります。

大切なご家族が脳死状態となってしまった場合、何も考えられないかもしれませんが、保険会社との交渉は避けて通れません。

ご家族の皆さまだけで困難な場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください!

残された家族に対する支援

後遺症が残ってしまったり、死亡されてしまった場合に、慰謝料が受け取れることはわかりました。

しかし、もしお子様がいる家庭の一家の大黒柱の方が脳死となり、死亡してしまった場合…。

慰謝料だけで今後の生活が補償されるかというと、そうではないのが現実のはずです。

その場合、お子様(交通遺児)に対する支援制度などもあるようです。

こちらの記事にまとめられているので、良ければご覧になってみてください。

後遺症・死亡慰謝料以外の損害賠償

後遺症・死亡慰謝料以外の損害賠償

以上、脳死となってしまった場合の後遺症や死亡慰謝料について見てきました。

その他受けられる損害賠償にはどのようなものがあるのでしょうか。

その他の賠償①治療費などの実費

まずは、入通院中の治療費についてです。

交通事故による怪我の治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。

よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。

ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。

この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります

交通事故でも健康保険で通院できる!?

また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。

ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。

しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。

犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています

ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。

健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。

ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。

自由診療と健康保険診療との比較
自由診療 健康保険診療
費用 高額 低額
治療方法 制限なし 制限有り

病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。

そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。

病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!

支払いが困難な場合には…

しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。

そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?

被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。

また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。

仮渡金制度とは、

損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる

という仕組みのことです。

ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。

その他の賠償②入通院慰謝料

治療費の他に、怪我の痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。

この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。

以下に、入通院慰謝料相場を示しましたので、ご覧になってみてください。

重傷の慰謝料算定表

重傷の慰謝料算定表

表の見方としては、たとえば入院を2ヶ月、通院を4ヶ月した場合には、165万円の入通院慰謝料が支払われることになります。

ちなみに、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。

  • 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
  • 総治療期間

長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!

では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。

しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。

通院頻度と慰謝料の関係
  1. ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
  2. ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合

の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。

もう少し具体的に説明しますね。

たとえば、①のケースを考えてみます。

極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。

通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。

この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。

通院慰謝料の算定ルール
原則 例外
通院期間により算定 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定

脳死となるほどの怪我を負った場合、通院頻度が極端に少ないということはないと思いますが…。

このように、慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。

適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。

その他の賠償③治療中に失った収入「休業損害」

また、治療などで仕事を休んだ場合、休業損害というものも受け取れるそうです。

休業損害

交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。

では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。

自賠責保険での計算方法

自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。

ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。

上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。

任意保険での計算方法

一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。

1日あたりの基礎収入×休業日数

1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。

日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。

この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。

よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。

しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。

損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。

「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。

休業損害の日額
自賠責保険 任意保険
原則 5700 1日あたりの基礎収入
上限 19000

職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。

その他の賠償④失った将来の収入「逸失利益」

次に、後遺症が残った場合や、被害者の方が死亡してしまった場合、逸失利益というものも受け取れるのだそうです。

逸失利益

後遺症や死亡により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。

まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。

後遺症認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。

とはいえ、逸失利益については相手側の保険会社と争いになることも多いようです。

また、もしも被害者の方が亡くなってしまった場合、ご遺族の方が保険会社と交渉すると、連絡を取るたびに亡くなられた被害者の方を思い出してしまうようです。

その精神的な負担は予想以上に大きいもののはずです…。

弁護士に依頼いただければ、交渉を全て任せていただくことも可能です。

交渉による精神的な負担解消のサポートができると考えております。

弁護士に精神的負担も大きく、面倒でもある交渉を全て依頼できれば、ご遺族の方は新たな生活に向けての準備に専念できるという点もメリットですね。

脳死状態となってしまった場合…慰謝料は誰が加害者に請求する?

脳死状態となってしまった場合…慰謝料は誰が加害者に請求する?

以上、受け取れる損害賠償について見てきたものの、被害者ご本人が脳死となってしまった場合、ご本人が保険会社と交渉することが不可能です。

しかし、明確な意思表示ができなければ、直接賠償交渉ができないはずです。

そのような場合、なにか良い解決策はあるのでしょうか?

被害者が脳死状態の場合、誰が請求するの?

代理請求制度を利用する

自賠責の後遺症等級の申請にあたっては、代理請求制度という制度を利用することができるそうです。

この制度を利用すれば、被害者の方配偶者や、親族の方などが被害者ご本人に代わって後遺症の等級申請を行うことができるようになります。

もっとも、上記の代理請求制度は、交通事故の被害者の方が早期に自賠責の保険金を取得するための例外的な制度です。

示談交渉や訴訟を起こす場合には、やはり被害者ご本人が意思表示を行うことが必要となります。

成年後見人の申し立て

とはいっても、意識不明であれば被害者ご本人が意思表示を行うことは不可能です。

そこで、家庭裁判所に対して成年後見人の申立てを行い、本人に代わって意思表示をする成年後見人を選任して貰うことがベストな対応となるようです。

成年後見人の申し立ての際に、被害者ご家族の方を成年後見人の候補者として申し立てすれば、多くの場合ご家族の方が成年後見人に選任されます。

その後、成年後見人に選任されたご家族が、被害者ご本人に代わって弁護士に委任するなどの手続きを行うことになります。

ちなみに、被害者が未成年の場合には、両親が法定代理人として損害賠償交渉を行う権利があるそうです。

よって、特に上記のような手続きを行わなくても問題ないということになります。

基本的には被害者の方のご家族やご親族の方が成年後見人となるケースが多く、手続きは家庭裁判所に申し立てて選任されることになります。

しかしその場合、交通事故の損害賠償請求に限らず、日常生活のすべての契約を行わなくてはなりません。

よって、被害者の方に適当な親族がいない場合も含め、弁護士を成年後見人にすることが良い手段となります。

弁護士が手続きを行った方がより迅速かつ確実に示談を進め、適切な補償を受け取れる可能性が高まるでしょう。

弁護士を成年後見人にすることも可能なのですね。

大切なご家族が交通事故で脳死となってしまったときに、保険会社との示談交渉を行うのは非常にストレスになるのではないかと思います。

そんなとき、弁護士に色々な手続きを依頼できるのであれば非常に心強いですね!

保険会社との示談交渉にお困りの場合は、ぜひ一度弁護士に相談してみた方が良いかもしれません。

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以上、交通事故で被害者の方が脳死となってしまった場合の後遺症の等級認定や慰謝料の相場などについて理解を深めていただけたでしょうか。

しかし、すでにお伝えの通り、被害者ご本人やご家族だけで保険会社と交渉するのは困難が多いはずです。

最近では、無料相談を行っている弁護士事務所も多いです。

また、被害者の方の自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、保険から弁護士費用が支給されます。

しっかりとした補償を受け取るため、今すぐ弁護士に相談したい!と思われた方もいらっしゃるはずです。

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また、ご家族の方が脳死状態にあり、弁護士事務所に訪問できない方を対象に、無料出張相談も行っているそうです。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故による脳死に対する損害賠償ついてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!

交通事故で大切なご家族が脳死状態となり、さらに保険会社との交渉で辛い思いをされていることと思います。

そんなときは、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。

なぜなら、非常に辛い思いをした分、適正な金額の補償を受けるべきだからです。

しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。

そうなる前に、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。

面倒な手続きや交渉などのお力にもなれるはずです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただけた方には、

  • 脳死植物状態違い
  • 脳死の後遺症に対する等級損害賠償
  • 死亡してしまった場合の慰謝料相場

などについて、理解を深めていただけたのではないかと思います。

また、保険会社との交渉に関しては、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるでしょう。

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そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故の後遺症に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!

交通事故後の脳死についてのQ&A

脳死とは?

脳死とは、呼吸や循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む脳全体の機能が失われた状態をいいます。心肺機能に致命的な損傷はないが、交通事故などで頭部にのみ強い衝撃を受けた場合や、くも膜下出血などの脳の病気が原因で発生することが多くなっています。 「脳死」とは

脳死と植物状態の違いは?

植物状態とは、意識は戻らないものの脳幹の機能は残っていて、自ら呼吸できることも多く、回復する可能性がある状態を指します。つまり、脳幹の機能が失われた脳死と植物状態は、根本的に全く違うものになります。 「脳死」と「植物状態」の違い

脳死の後遺症に対する後遺障害等級は?

脳死の場合、自賠法施行令別表第1の1級1号が認定されます。1級1号の認定基準である「脳の神経系統の機能が失われ、常時介護を要する状態」に該当すると考えられるからです。そして、この等級に応じて、後遺症慰謝料の金額が決まっていきます。 脳死の後遺症に対する慰謝料

脳死の場合、死亡慰謝料と後遺症慰謝料、どっち?

一般的には後遺症による損害の方が、損害賠償額が高額になると考えられます。ただし、脳死の場合には、平均余命まで生きられる可能性が低いとして、逸失利益や将来介護費の期間を相手側が争ってくることが予想されます。また症状固定後の治療費を少なくとも一旦立て替えなければいけなくなる可能性が出てくるというリスクもあります。どちらを選択するかは、総合的に考慮して決定する必要があります。 死亡慰謝料・後遺症慰謝料…どちらを請求?

被害者が脳死の場合は、誰が請求するの?

自賠責の後遺症等級の申請は、代理請求制度を利用して代理人行います。示談交渉や訴訟を起こす場合には、家庭裁判所に対して成年後見人の申立てを行い、本人に代わって意思表示をする成年後見人を選任して貰うことがベストな対応です。 被害者が脳死状態の場合、誰が請求するの?

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

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