交通事故での脊柱管狭窄症の後遺障害|手術後の後遺症は?事故との因果関係は?
ある日突然、交通事故で脊柱管狭窄症の後遺症が残ってしまったとしたら…。
これからも長く続く治療やリハビリの生活では、
- 脊柱管狭窄症から回復するために支払う治療費
- 怪我をしたことや後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料
- 将来の平穏な暮らしを確保するための生活費
の問題を避けて通ることはできません。
さて、ここで問題です。
脊柱管狭窄症の後遺症との関係で、
リハビリ中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
※ 知っている人はみんな利用している方法です!
生活費や治療費の悩みを解決する方法を次の中から選んでください。
選択肢①:
脊柱管狭窄症との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
脊柱管狭窄症によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
脊柱管狭窄症を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
裁判、増額請求、再計算…。
正解は、この記事の後半で弁護士先生に詳しく解説してもらいましょう!
それでは、脊柱管狭窄症の後遺症でお悩みの方へ。
脊柱管狭窄症による負担や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。
ぜひご一読ください。
目次
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故の被害に遭われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、脊柱管狭窄症の後遺症により、日常生活への負担を感じられている方も多いはずです。
実際に、後遺症でお悩みの方から、これまでに相談を受けてきた経験があります。
今回はその経験も踏まえ、具体的な事例も紹介しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
ところで、脊柱管狭窄症とは、あまり馴染みのない病名ではないでしょうか。
腰部脊柱管狭窄症:
脊柱管が狭くなることで、脊髄やその他の神経が押されて、腰や脚にしびれや痛みがでる病気です。
なんとなくわかりましたが、具体的な症状や治療法にまで詳しいという方は少ないかもしれません。
まずは、脊柱管狭窄症についての基礎知識から詳しく見ていきましょう。
交通事故による脊柱管狭窄症の後遺症|治療や回復に向けたリハビリの大切なポイント
脊柱管狭窄症の症状とは!?
まず、脊柱管とは、脊椎の椎孔が連なってできている細長い空間のことです。
脊柱管狭窄症とは、その脊柱管の一部が狭くなってしまったことにより、神経が圧迫され、腰や脚に痛みが出ている状態のことになります。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/30/Gray82.png
主な原因としては、加齢や運動、交通事故などで、
- 背骨が変形してしまった場合
- 背骨と背骨の間にある椎間板が変形してしまった場合
- 背骨と背骨をつないでいる靭帯が肥厚した場合
となっているようです。
高齢者の方がなりやすく、腰痛や脚のしびれなどの症状が現れてしまうのですね。
具体的な症状は以下の通りということです。
●主な症状
〇腰痛
〇歩いていると増してくる脚の痛み(痛くて休み休みでしか歩けなくなる:間欠性跛行)
〇脚のしびれや感覚の異常
●痛みは多くの場合、前かがみになったり、座ったりすると楽になる
〇腰が前に曲がると狭くなった脊柱管が広がるため
診断方法としては、
- 脊柱管が狭くなっている度合いや、脊髄の圧迫の度合いなどを調べるための画像検査
- 骨の変形や靭帯の骨化を確認するレントゲン検査やCT検査
- 脊髄の状態を調べるためのMRI検査
となります。
事故後、腰や脚の痛みやしびれがおさまらない場合には、病院へ行き、画像検査やCT、MRIなどの検査を受けた方が良いでしょう。
脊柱管狭窄症の治療法|手術後に後遺症が残る可能性も…
では、脊柱管狭窄症に対する治療法はどのようになっているのでしょうか??
完治することは可能なのでしょうか…。
脊柱管狭窄症は手術すれば治るの?痺れや痛みは無くなるの?
後遺症は・・・
2週間で決めなければならない。私の将来はどうなるんだろう。— アネモネとオレンジ色 (@kyouko218y) May 7, 2015
調べてみたところ、以下の通りということです。
●まずは腰に巻くコルセット(サポーター)を装着して経過をみることが多い
〇前かがみになると脊柱管が広がりやすいので、腰に巻いた時に前傾姿勢となるようにサポートする
●症状がよくならない場合は、背骨の一部を切り取ることで、脊柱管を広げるような手術を行う場合もある
〇ただし手術による合併症(出血・術後の筋力低下・誤嚥性肺炎など)も多く、ほとんどの場合には保存的治療が選択される
●内服薬で根本的に治療することは難しい
〇症状に合わせて痛み止めが使われる
・NSAIDs:痛み止め
・プレガバリン:神経の障害による痛みを抑える
・血管拡張薬(鎮痛作用があるもの)
・ビタミンB12:神経の回復を促す
痛みやしびれの症状が出るのが、歩いたり、立ちっぱなしの時に限定される場合は、手術をすれば、間欠性跛行などの症状は、ほぼなくなるそうです。
ただし、安静時にも痛みなどの症状がある場合など、一部では手術を行っても症状が後遺症として残ってしまったり、悪化してしまうこともあるようです。
特に、しびれは残りやすいということです。
また、神経の圧迫を完全に取り除いたとしても、脊髄や神経が回復できないほど損傷している場合には、しびれや麻痺が後遺症として残る可能性があるということです。
脊柱管狭窄症の後遺症に対するリハビリ
手術前の保存療法時や、後遺症が残ってしまった場合には、リハビリをすることになります。
一般的なリハビリ方法をご紹介
電気治療やマイクロ波による温熱療法などの物理療法や、マッサージ、ストレッチ、鍼灸治療などの手技療法で、症状の軽減、改善を目指すそうです。
また、ある程度運動していないと、基礎体力や足腰の筋力が落ちてしまいます。
そうならないために、無理のない程度で、運動療法も行われるそうです。
ただし、誤った運動により腰に負担をかけてしまうと、痛みの再発や悪化につながってしまうようなので、最初は専門家指導の下で行った方が良いかもしれません。
具体的には、腹横筋や内腹斜筋といったローカルマッスルを鍛えたり、背筋を強化するために猫背の改善を行ったりするそうです。
症状の辛さでくじけてしまいがちですが、運動療法に取り組むことで、実際に症状が改善したというケースもあるようです。
無理はせず、ご自身のペースで運動療法に取り組んでみてください。
知らないと損する①交通事故による脊柱管狭窄症の治療に対する慰謝料や治療費は?
脊柱管狭窄症の症状や治療法について理解を深めていただけましたでしょうか。
しかし、手術やリハビリをすることになった場合、その間の生活費や治療費、仕事を休まなければならないことに対して、不安ばかりですよね。
最初に、
リハビリ中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
とお聞きしました。
ここからは、その答えを、岡野弁護士に話を聞きながら、詳しく見ていきましょう。
治療費の支払いは誰が?
まずは、入通院中の治療費についてです。
交通事故によるケガの治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
交通事故でも健康保険で通院できる!?
また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。
ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。
https://twitter.com/Kagiroi21/status/948741605384642560
しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。
そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。
病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!
支払いが困難な場合には…
しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。
入通院慰謝料の相場について解説
治療費の他に、ケガの痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。
この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。
以下に、入通院慰謝料の相場を示しましたので、ご覧になってみてください。
表の見方としては、たとえば入院を5ヶ月、通院を12ヶ月した場合には、280万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
ちなみに、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!
では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。
しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。
通院頻度と慰謝料の関係
- ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
- ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合
の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。
もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、①のケースを考えてみます。
極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。
原則 | 例外 |
---|---|
通院期間により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 |
このように、慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。
適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
知らないと損する②脊柱管狭窄症の後遺症に対する後遺障害慰謝料・示談金・保険金は?
治療中の費用の補償については、わかってきました。
ではここからは、最初の質問に対する回答について解説してもらおうと思います!
選択肢①:
脊柱管狭窄症との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
脊柱管狭窄症によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
脊柱管狭窄症を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
費用に関する悩みを解決するための正解は、上記の選択肢のうちのどれなのでしょうか…。
正解は、上記の選択肢①~③のすべてになります。
すべてが正解なのですね!?
では、正解の内容について、詳しく解説してもらいましょう。
選択肢①後遺症の等級認定を獲得し、慰謝料を増額請求する
手術をすれば、完治することもありますが、後遺症が残ってしまう可能性も考えられるということでしたね。
では、交通事故が原因の脊柱管狭窄症による後遺症では、どのようなものが考えられるのでしょうか?
まず考えられるのは、脊髄やその他の神経が圧迫されることにより生じる、腰や脚のしびれや痛みといった神経系統の障害の後遺症の可能性です。
そして、脊柱管狭窄症の治療として脊椎固定術が行われた場合には脊柱の変形障害という後遺症が残る可能性があります。
さらに、脊椎固定術によりせき柱の可動域制限が生じるという脊柱の運動障害といった後遺症が残る可能性があります。
【注目】脊柱管狭窄症に対する後遺症等級認定基準について解説
ここで、後遺症の等級は1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。
残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。
脊柱管狭窄症の場合の等級認定の基準はどのようになっているのでしょうか?
腰や脚のしびれが残った場合に認定されるのは、ほとんどの場合局部の神経系統の障害である12級13号または14級9号となります。
ただし、圧迫が脊髄にまで達している場合、まれに7級4号が認定される可能性があります。
また、脊柱管狭窄症の治療として脊椎固定術が行われた場合の脊柱の変形障害としては11級7号が認定される可能性があります。
さらに、脊椎固定術により胸腰部の可動域制限が1/2以下に制限された場合の脊柱の変形障害としては8級2号が認定される可能性があります。
意外と重い等級が認定される可能性もあるのですね。
それぞれの認定基準と認定される等級について、下の表にまとめてみましたので、ご覧になってみてください。
傷害の状態 | 後遺症等級 |
---|---|
神経系統の障害 | 7級4号※ |
12級13号 | |
14級9号 | |
脊椎固定術を実施 | 11級7号 |
脊椎固定術により胸腰部の可動域制限が1/2以下に制限 | 8級2号 |
※ 認定されることは極めてまれ
上記のような基準で等級が認定され、その等級に応じて、後遺障害慰謝料の金額が決まっているそうなのです。
その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?
慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~
慰謝料には、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているそうなのです。
自賠責基準
自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。
自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。
任意保険基準
保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。
ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。
よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。
弁護士基準
保険会社の基準と検証して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。
これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。
ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。
よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
では、それぞれの基準ごとの後遺障害慰謝料の相場について、以下の表に示しました。
後遺症等級 | 自賠責基準※2 | 任意保険基準※3 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
7級 | 409 | 500 | 1000 |
8級 | 324 | 400 | 830 |
11級 | 135 | 150 | 420 |
12級 | 93 | 100 | 290 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
※1 単位:万円
※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
※3 旧任意保険支払基準による。
一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということでした。
これは、入通院慰謝料についても同じことが言えるということです。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
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ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。
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選択肢②失った将来の収入(休業損害・逸失利益)を主張する
治療費や慰謝料以外にも、脊柱管狭窄症によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求めるという方法もあるのですね。
主には、休業損害と逸失利益の主張をするということになるそうです。
治療中に失った収入「休業損害」
まずは、休業損害について見てみましょう。
休業損害
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。
では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。
自賠責保険での計算方法
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。
上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。
任意保険での計算方法
一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
失った将来の収入「逸失利益」
次に、逸失利益とは、以下のようなものになります。
逸失利益
後遺症により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。
まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。
後遺症認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。
また、脊柱管狭窄症による後遺症が原因で、
- 会社の部署を異動させられた
- 職業選択の幅が狭くなった
- 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった
など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。
一方で、実際に後遺症が残っていても、労働能力に与える影響が小さく、逸失利益が十分に得られないこともあるそうです。
すると、被害者の方は逸失利益を得られず、実際に残っている後遺症に対する補償として明らかに不十分になってしまいます。
そのような場合には、後遺症の慰謝料を相場よりも増額させることで、賠償のバランスが取られることもあるそうです。
ただし、そのような証明や交渉を自分ひとりで行うのは難しいですよね。
この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!
選択肢③損害賠償請求の裁判を起こす
ここまでで、保険会社との交渉にあたっては、弁護士に入ってもらうことで弁護士基準の賠償が受け取れるということがわかってきました。
しかし、保険会社と争いのある部分については、裁判でしっかり主張立証しなければ、増額が認められない場合があるそうなのです。
実際、示談交渉だけの場合と、裁判を起こした場合で、弁護士基準の賠償額がどれほど受け取れるのかまとめた表があります。
弁護士基準の 賠償額との比較 |
|
---|---|
弁護士が保険会社と交渉 | 9~10割※1 |
弁護士をつけて裁判 | 10割 + 弁護士費用※2 |
※1 保険会社との争いの度合いや、弁護士の方針により異なるケースもある。
※2 交通事故の損害賠償請求においては、その裁判のための弁護士費用も損害として認められる場合がある。
また、休業損害や逸失利益についても、裁判を起こさなければ、増額を認めてもらえないことも多いようです。
つまり、確実に賠償額を受け取りたい場合には、脊柱管狭窄症を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こすことも一つの方法となります。
実際の裁判例を見てみよう
ではここで、脊柱管狭窄症の損害賠償について、実際に裁判で争われた事例を見てみましょう。
ケース① |
---|
職業:有限会社取締役(男性) 傷害:脊柱管狭窄症その他 後遺症:なし 《損害賠償》 傷害慰謝料:80万円 後遺障害慰謝料:0円 |
ケース② |
職業:個人運送業(61歳男性) 傷害:脊柱管狭窄症その他 後遺症:左足、足趾の痛み、腰痛(14級) 《損害賠償》 入通院慰謝料:170万円 後遺障害慰謝料:110万円 休業損害:587万404円 逸失利益:99万4122円 付添看護費:8万8075円 |
ケース③ |
職業:左官見習い(57歳男性) 傷害:脊柱管狭窄症その他 後遺症:局部に頑固な神経症状を残すもの(12級12号) 《損害賠償》 入通院慰謝料:190万円 後遺障害慰謝料:290万円 休業損害:145万3338円 逸失利益:338万161円 |
もちろん、これ以外に、治療費や通院交通費、治療器具の購入費などの実費も認められています。
個別の事情にもよりますが、裁判で損害賠償請求の根拠をしっかりと主張することができれば、休業損害や逸失利益も認められています。
また、付添い看護費なども認められているケースもありますね。
付添い看護費については、こちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧になってみてください。
一方、脊柱管狭窄症では、交通事故との因果関係が争いになっているケースも多くあるようでした。
脊柱管狭窄症と交通事故の因果関係を証明するために、何かポイントはあるのでしょうか?
脊柱管の狭窄は一瞬で起こるものではなく、年齢変成により進むものと考えられているため、交通事故との因果関係が争いになります。
しかし、裁判所は年齢相応の変性は、素因減額の対象にしないものと考えています。
そのため、脊柱管狭窄症と交通事故の因果関係を証明するためには、
事故前には症状が発生しておらず、通常の日常生活をしており、過去に脊柱管狭窄を原因とする通院歴がない
ことを主張していくことがポイントと考えられます。
また、脊柱管狭窄症が後遺症として認定されないケースも多くあるようでした。
後遺症として認定されなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができません。
後遺症の認定に際しては、何か気を付けた方が良い点などあるのでしょうか?
まず、後遺症の認定の前提として、交通事故との因果関係が認められる必要があるので、後遺症の申請においても上記の点を主張する必要があります。
また、医師の方の中には、画像上、脊柱管が狭くなっていそうというだけで、脊柱管狭窄症と診断していることがあります。
しかし、日本人の脊柱管の平均的な広さは15mmであり、通常は12mm以下の場合に症状が出現した場合のことを脊柱管狭窄症と呼ぶようです。
そのため、後遺症の認定に際しては、脊柱管の広さを画像を明示した上で具体的に記載しておいた方が良いと考えられます。
注意した方が良いポイントについては非常によくわかりました。
しかし、すでにお伝えの通り、被害者ご本人やご家族だけで裁判を起こすのは困難が多いはずです。
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それでは、最後になりますが、脊柱管狭窄症の後遺症や保険金についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!
まずは、医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。
それでも残念なことに脊柱管狭窄症の後遺症が残ってしまった場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
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しかし、保険会社から示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて慰謝料などを請求することは極めて困難になります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 脊柱管狭窄症の症状や治療法、リハビリなどの基礎知識
- 脊柱管狭窄症による後遺症の等級や認定基準
- 脊柱管狭窄症に対する慰謝料などの示談金の相場
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
また、脊柱管狭窄症の後遺症について、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるでしょう。
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また、このホームページでは、交通事故の後遺症に関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!
脊柱管狭窄症の後遺障害Q&A
交通事故の脊柱管狭窄症の治療費は誰が支払う?
原則的な支払方法としては、被害者が病院に治療費を立て替えて支払い、立て替えた分を相手方に請求する形です。もっとも、相手方が任意保険会社に加入している場合、任意保険会社から治療機関に直接支払う一括対応という手続きもあるようです。 健康保険は交通事故の治療に使えます
脊柱管狭窄症で認定される後遺障害とは?
①しびれや痛みなどの神経系統の障害②脊椎固定術が行われた場合の変形障害③脊椎固定術によ可動域が制限される運動障害の3つがあげられます。これらは後遺障害に認定される可能性があり、認定されれば受けとる慰謝料が増額されるでしょう。 後遺障害認定で慰謝料が大幅増額するワケ
脊柱管狭窄症の後遺障害等級と慰謝料の相場は?
しびれや痛み:7級4号、12級13号、14級9号のいずれかに認定される可能性がありますが、7級認定はめったにないようです。その他、変形(脊椎固定術を行った場合):11級7号、可動域の制限:8級2号に認定される可能性があります。後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級を元に算定されます。 等級別|脊柱管狭窄症の後遺障害慰謝料
脊柱管狭窄症の後遺障害に対する補償は何がある?
後遺障害慰謝料のほかには逸失利益を損害賠償として受けとることができます。逸失利益とは、後遺症により労働能力が下がってしまったことによる減収分を補償するためのお金のことです。脊柱管狭窄症による後遺障害で実際に収入減少が発生しているか、労働能力がどれくらい下がったのかなど相手方と争いになることもあります。弁護士に相談して、逸失利益で損をしないような交渉を目指しましょう。 入院・通院で仕事を休んだ場合の補償もあり
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。