後遺障害8級の交通事故慰謝料|6905万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害8級の判例についてご紹介します。
もし8級の後遺障害が残ってしまった場合、慰謝料などはどのくらい支払われるのか知らない方がほとんどではないかと思います。
ここでは、後遺障害8級が認定された実際の裁判例をもとに、慰謝料を含めた損害総額はどのようにして計算されているのか見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
障害等級8級(男・12歳)損害額6905万8378円の判例
こちらは、岡山地方裁判所倉敷支部の判決、平成20年(ワ)160号・平成22年(ワ)537号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、左大腿骨開放骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者運転の自転車の左側面が、対向してきた加害車両の左側と接触して転倒した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 中学生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 12歳 |
事故の内容 | 被害者運転の自転車の左側面が、対向してきた加害車両の左側と接触して転倒した。 |
傷害の内容 | 左大腿骨開放骨折、左下肢デグロービング損傷など |
後遺障害等級 | 併合8級(左膝関節機能障害:10級11号、左足関節機能障害:10級11号、左右下肢長差による障害:13級9号、背部及び臀部の醜状障害:14級、右下肢の醜状障害:12級、左下肢の醜状障害:12級) |
入院 | 525日 |
被害者は事故によって500日以上の入院が必要となり、8級という大きな後遺障害が残ってしまいました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 6905万8378円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1450万円 |
うち付添看護費 | 684万0400円 |
うち逸失利益 | 4075万5301円 |
損害総額は6905万8378円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6905万8378円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が550万円、後遺障害の慰謝料が900万円認められました。
- 付添看護費としては、本件事故日から平成18年6月20日までの入院期間中は、近親者の入院付添看護の必要があったものと認められるが、徐々に付添介護の必要な程度も減少していったものとして算定されました。
- 逸失利益としては、後遺障害の程度や、被害者の状態に照らすと、労働能力喪失率は45%と認められ、基礎収入は被害者らの主張する男子全年齢賃金月額である41万5400円、労働能力喪失期間は67歳までの49年間として算定されました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男子中学生は事故により下肢に大きなケガを負い、併合8級が認定されたようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者の負った後遺障害は、主に加害車両と接触した左脚に集中しております。
慰謝料は障害の部位や程度等を考慮して8級の基準より若干増額され、他方将来の労働能力喪失率は8級の基準で認定されました。
ただ、本件の被害者が県立高校に入学できなかった精神的苦痛は、本件後遺障害の慰謝料の計算から除外されています。
このように事故後、入学試験や資格試験に合格できなかった場合、その原因が事故であるとして慰謝料計算に考慮してもらうことは困難なことも少なくないです。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害8級の慰謝料計算の特徴は?
8級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に8級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、8級の場合、裁判基準では830万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、8級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を45%としています。
しかし、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることも多いです。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、これらのポイントは一般的・総論的なお話ですので、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情によっては変わることもあります。
交通事故のお悩みについて、より詳しいアドバイスがお聞きになりたい場合は、まずは弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。