交通事故による手首・手指の後遺障害とは?慰謝料はいったいいくら?
交通事故によって手の指や手首の骨を骨折すると、最終的に指や手首に後遺障害が残ってしまうことがあります。
とくに、親指や手首など、仕事や家事でよく利用する部分に後遺障害が残ると、その後の生活に大きな不便を伴うことになりますね。
たとえば、ビンのふたを開けられない、ドアノブを回せないなど手全体に力が入りにくくなってきてしまいます。
また、指が曲がらなくなってしまうと、指先を使った細かい携帯電話での操作もしずらくなってきてしまいますよね。
手首や指は、様々な怪我のパターンがある為、慰謝料もそれに応じて相当な差があります。専門家の力を借りる必要性が高い手首と手指についての、後遺障害の認定と慰謝料について詳しくご紹介いたします。
目次
手首・手指の外傷の基礎知識
手首・手指の構造
前腕は、親指側の橈骨、小指側の尺骨という2本の長い骨からなっています。そして手首は、橈骨遠位端(とうこつえんいたん)と手根骨(しゅこんこつ)により形成される関節で、尺骨は関節形成していません。
また、いわゆる手の甲の部分は、各5本の中手骨からなっており、指の根元から見て、基節骨(きせつこつ)、中節骨(ちゅうせつこつ)、末節骨(まっせつこつ)という骨により手指が形成されています。
骨の構成については、以下の図をご参照下さい。
▼ 橈骨
▼ 尺骨
▼ 1:橈骨遠位端、2:尺骨遠位端、3:中手骨、4:基節骨、A~H:手根骨
ここからは、交通事故でよくある手首・手指の骨折について説明します。いずれの骨折も、ひびが入るのみのもの、レントゲン撮影しないと発覚しないといった軽度のケースもあります。
手首の骨折(橈骨遠位端骨折)
手首の骨折といわれるのは、主に橈骨遠位端骨折のことを指します。これは、親指側にある橈骨の手首近くの部分で発生する骨折をいいます。
この骨折は、主に転倒して手を強くついたときの衝撃により発生することが多いです。
特に、高齢者の場合、骨密度の低下等のため軽い転倒でも発生してしまうことがあります。一方で若者の場合は、かなり強い衝撃が加わったときに発生することが多く、交通事故もその原因の一つに数えられます。
症状としては、その程度により異なりますが、傷みや腫れがひどい場合もあれば、軽く痛む程度の場合もあります。
手の甲の骨折(中手骨骨折)
手の甲の骨折は、中手骨(ちゅうしゅこつ)骨折のことをいいます。こちらも、転倒して手を付き打撲した際に発生することが多いです。
中手骨骨折は、骨折する部位により数種類に分類されますが、症状としては、骨折した部分が強く腫れて痛み、関節が曲がらなくなることもあります。
しかし、中手骨とは手の甲にある骨で、指部分に比べ、骨折しても腫れや変形が目立ちにくいため、骨折が見落とされがちです。打撲と勘違いされるケースも多いです。
指の骨折(手指基節骨骨折)
手の指は、片手に5本ずつありますが、その手指の根元を構成する基節骨の骨折を手指基節骨骨折といいます。
指は、外部に突出しており、外見からも確認できるとおり、細い骨が組み合わさってできています。そのため、衝撃による骨折のリスクは、日常生活においてもいたるところに潜んでいるといえますが、転倒の際強い衝撃が加わる交通事故において発生することも多いです。
症状としても、腫れや傷みが強く指が通常とは異なる曲がり方をしている等外見から明らかに骨折と分かるものから、骨にひびが入った程度で腫れ、痛みがそれほどないケースまであります。
種類 | 主な原因 | 症状 等 |
---|---|---|
橈骨遠位端 骨折 |
転倒により地面に手をつく | ・手首の変形 ・手首に強い腫れや痛み |
中手骨骨折 | 手の甲部分を強打する | ・手の甲部分に腫れや痛み ・指が動かしにくくなる |
手指基節骨 骨折 |
転倒の際の衝撃 | ・指の根元部分が変形 ・指の根元部分に腫れや痛み |
※いずれも軽度の場合、骨折と発覚しにくい場合あり。
手首・手指の後遺障害と等級
手首の欠損障害
交通事故が原因で、手を手関節以上で失ってしまった場合、手首の欠損障害として後遺障害認定がされることになります。
失ったのが手関節以上(具体的には手首とひじ関節の間)である場合、それが両手か片手かによって2級あるいは5級の後遺障害が認定されることになります。
欠損障害の場合、手が失われているのが外から見ても明白であることから、障害の存在自体に争いはないでしょう。ただし、ケースによっては交通事故との因果関係が争われることがあります。
ご参考までに、自賠責の認定基準は、以下の通り規定されています。
● 2級4号・・・両上肢を手関節以上で失ったもの
● 5級4号・・・1上肢を手関節以上で失ったもの
手首の機能障害
交通事故が原因で、手首の関節にある骨が損傷し、あるいは周辺の筋肉や神経が損傷することにより手首の可動域に制限が生じた場合、手首の機能障害として後遺障害の認定がされることがあります。
この場合は、人工関節使用の有無と可動域制限の程度により異なる等級が認定されることになります。具体的には、8級から12級までの異なる認定基準が存在します。
8級6号は、手首関節の「用を廃したもの」にあたる場合で、より詳しい基準は以下の通りです。
● 関節が強直したもの
● 関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にある(自動運動で、可動域が健康な方と比べて10%程度以下に制限された)もの
● 人工関節・人工骨頭に置換したもので、その可動域が、健康な方と比べて1/2以下に制限されたもの
10級10号は、手首関節の「機能に著しい障害を残すもの」にあたる場合認定されます。この「著しい障害」の内容は、以下の通りです。
● 関節の可動域が健康な方と比べて1/2以下に制限されたもの
● 人工関節・人工骨頭に置換したもので、8級6号にあたらないもの
12級6号は、手首関節の「機能に障害を残すもの」にあたる場合です。具体的には、上記以外のもので、関節の可動域が健康な方の3/4以下に制限されている場合です。
可動域制限の程度を測定する場合、その検査結果が認定を受ける上で極めて重要となりますので、専門の医師に角度計を用いて正確に測ってもらうようにしましょう。
手指の欠損障害
交通事故が原因で、手の指の全部又は一部を失ってしまった場合、手指の欠損障害として後遺障害の認定がされます。
そして、この場合の後遺障害等級については、失った指の本数や種類、片手か両手かにより異なる認定がされることになります。具体的には、3級から14級までの異なる認定基準が存在します。
原因としては、交通事故で直接失ってしまうこともありますが、骨折した後に細胞が壊死し切断することになることもあります。
なお、手指の欠損障害にいう「手指を失ったもの」とは、分かりやすくいうと親指の場合第1関節よりも根元側で(第1関節で失ったものも含む)、その他の手指については第2関節よりも根元側(第2関節で失ったものも含む)で切断されたものを意味します。
また、13級7号、14級6号の「指骨の一部を失ったもの」とは、手指を根元から失った場合や手指の先端の骨を1/2以上失った場合に至らない程度で指の骨の一部を失ったものをいい、かつそれがエックス線写真等で確認できるものをいいます。
● 3級5号・・・両手の手指の全部を失ったもの
● 6級8号・・・1手の5の手指 又は 親指を含み4の手指を失ったもの
● 7級6号・・・1手のおや指を含み3の手指を失ったもの 又は おや指以外の4の手指を失ったもの
● 8級3号・・・1手のおや指を含み2の手指を失ったもの 又は おや指以外の3の手指を失ったもの
● 9級12号・・・1手のおや指 又は おや指以外の2の手指を失ったもの
● 11級8号・・・1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
● 12級9号・・・1手のこ指を失ったもの
● 13級7号・・・1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
● 14級6号・・・1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
手指の機能障害
交通事故が原因で、手の指の関節が硬直し、あるいは指の骨や筋肉、神経が損傷して、指が動かなくなったり、その可動域が制限されたりした場合、手指の機能障害として後遺障害の認定がされることがあります。
この場合の等級は、事故により動かなくなりあるいは可動域制限を受けた指の本数・種類や、指の感覚の有無等により異なる認定がされることになります。
具体的には、4級から14級まで認定基準が細かく分類されています。
● 4級6号・・・両手の手指の全部の用を廃したもの
● 7級7号・・・1手の5の手指 又は おや指を含み4の手指の用を廃したもの
● 8級4号・・・1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの 又は おや指以外の4の手指の用を廃したもの
● 9級13号・・・1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの 又は おや指以外の3の手指の用を廃したもの
● 10級7号・・・1手のおや指 又は おや指以外の2の手指の用を廃したもの
● 12級10号・・・1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
● 13級6号・・・1手のこ指の用を廃したもの
● 14級7号・・・1手のおや指以外の手指の(第1関節)を屈曲することができなくなったもの
なお、ここでいう「手指の用を廃したもの」とは、具体的に以下の場合をいいます。
・手指の末節骨(指の先端の骨)の長さの1/2以上を失ったもの
・指の付け根の関節 又は 手指の第2関節(おや指にあっては第1関節)の可動域が、健康な方と比べ1/2以下に制限されるもの
・おや指については、橈側外転又は掌側外転のいずれかが健康な方と比べて1/2以下に制限されているもの
・手指の指先の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの(外傷による感覚神経が断裂した場合)
障害の種類 | 内容 | 認定される等級 |
---|---|---|
手首の 欠損障害 |
手を手首以上で喪失すること。 後遺障害等級認定は、失ったのが両手か片手かで異なる。 |
2級 又は 5級 |
手首の 機能障害 |
手首の骨・筋肉・神経等の損傷により生じる可動域制限。 後遺障害等級認定は、人工関節使用の有無や可動域制限の範囲により異なる。 |
8級 又は 10級 又は 12級 |
手指の 欠損障害 |
手の指の全部又は一部を喪失すること。 後遺障害等級認定は、失った指の本数や種類、両手か否かにより異なる。 |
3級 又は 6~9級 又は 11級~14級 |
手指の 機能障害 |
手指の骨・筋肉・神経等の損傷により生じる可動域制限。 後遺障害等級は、可動域制限された指の本数・種類や指先の神経断裂の有無により異なる。 |
4級 又は 7級~10級 又は 12級~14級 |
弁護士相談のメリット
手首・手指の後遺障害慰謝料の相場
一口に手指・手首の後遺障害といっても、手や指全てを失ってしまうものから、可動域制限・又は神経症状を残すものまで具体的なケースに応じて様々ですが、実務上、慰謝料の金額は、認定された後遺障害の等級を基に計算されるのが普通です。
例えば、裁判で認められる慰謝料額のおおよその目安としては、手首から先の手を失ったケース、両手や、片手の指全てを失ったケースなど、7級以上と認定されるような重い障害であれば、1000万円を上回る高額な後遺障害慰謝料が相場となっています。
また、手首・手指の可動域の制限がある場合、制限の範囲や部位、本数などに応じて、110万円から1670万円の慰謝料が支払われるのが相場です。
後遺障害の慰謝料相場
障害の分類 | 裁判における相場水準 |
---|---|
手首の
欠損障害 |
1400~2370万円 |
手首の機能障害 | 290~830万円 |
手指の欠損障害 | 110~1990万円 |
手指の機能障害 | 110~1670万円 |
弁護士相談のメリット
以上の慰謝料の相場は、あくまで弁護士基準であり、弁護士に依頼した場合に認められる目安です。
実際に、被害者やそのご家族の方が、弁護士に依頼せずご自身で保険会社と直接交渉した場合に提示を受ける額は、裁判での相場の半分以下と上記の相場をはるかに下回る水準であることがほとんどです。
弁護士に依頼すれば、まず適切な後遺障害等級の認定がされるようサポートすることが可能です。
そして、そのあるべき等級の認定の他、被害者が仕事やプライベート等の日常生活でどれほどの支障をきたしているかを、裁判で適切に主張・立証することが可能です。
特に、手首や手指は、同じ可動域制限の症状でも、それが少し違うように認定されるだけで慰謝料の額もかなり変わってくる等、裁判所での具体的な事実認定が慰謝料の額に大きく影響する可能性があり、そのために、裁判所で適切な主張・立証を要することも多いため、専門家である弁護士に依頼するメリットが大きいといえます。
このように適正な慰謝料額への増額をするためには、交通事故に強い弁護士に依頼し、裁判で必要十分な主張・立証を行うことが重要といえるでしょう。
弁護士に 依頼する メリット |
・適切な等級認定を受けられるようサポート ・等級認定に基づき保険会社提示額をはるかに上回る水準の慰謝料を期待できる ・等級以外にも、裁判で被害者の精神的苦痛を具体的に主張・立証することで、適正な慰謝料額に増額する活動が可能(交通事故に強い弁護士) ・相談により不安が和らぐ |
---|---|
慰謝料額に影響する 要素 |
・後遺障害等級 ・労働能力への影響 ・日常生活上の不利益 ・精神的苦痛の程度 |
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いかがでしたか?
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手首・手指骨折の後遺障害Q&A
手首・手指の骨折は後遺障害が残りますか?
治療経過次第で後遺障害が残る可能性があります。手首骨折(橈骨遠位端骨折・とうこつえんいたんこっせつ)では、手首の強い腫れや痛みにつながる恐れがあります。手の甲部分の骨折(中手骨骨折)は指が動かしづらくなったり、手指骨折も変形・腫れや痛みなどの症状が表れることがあります。そして、動かしづらさや変形などの後遺症として残ってしまう可能性が考えられます。 手首・手指骨折の基本情報をおさえる
手首が曲がらない場合は後遺障害認定される?
後遺障害認定される可能性があります。手首・手指の後遺障害には、欠損障害と機能障害の2つがあります。欠損障害は、手首や手指を失ってしまうことや、指骨の一部を失った状態を含みます。機能障害は、曲がらない・動かしづらいなど、程度によって後遺障害認定されます。 手首・手指の後遺障害の内容と後遺障害等級
後遺障害慰謝料を増額したいときはどうすべき?
①適切な等級で後遺障害認定を受けること②慰謝料などの損害賠償を弁護士基準で交渉することが必要です。そして、実現するためには弁護士に依頼することが重要ポイントです。被害者自身で直接保険会社と交渉すると、受けとる損害賠償は裁判での相場の半分以下になってしまう可能性があります。 手首・手指の後遺障害は弁護士相談すべき
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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