交通事故示談金計算方法を示談金の内訳を踏まえ弁護士が解説します!
交通事故に遭ってしまうと、治療や手続きで被害者は心身ともにストレスを抱えてしまいます。
治療が終わると保険会社から示談金が提示されることになりますが、交通事故は専門用語が多く、理解するのも難しいですよね。
- 示談書が届いたが、示談金の内訳の意味がよく分からない・・・
- 示談金額は妥当なのだろうか?計算方法が知りたい・・・
- 自分で示談金を計算して確かめたい
などなど、分からないことや知りたいことがたくさん出てきますよね。
このページでは、被害者の方々の疑問を解決すべく、示談金の計算方法についてどこよりも詳しく分かりやすく解説していきたいと思います。
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いいたします。
示談金の計算方法を知ることは、被害者が納得して示談するためにも非常に大切といえます。
計算の根拠を知って、示談金が適正なのかどうかご自身でも確かめてみるのはとてもいいことです。
すべての交通事故被害者が納得した示談金を受け取れるよう、しっかりと解説していきます。
目次
保険会社から示談金が提示されたとき、金額に疑問を持つことがあるかと思います。
でもやっぱり保険会社には聞けないという方も実際にはいらっしゃるようですね。
事故の示談金
8400円
どういう計算かは問えず(^_^;)— 花形右京 (@ukhanagata) May 23, 2017
示談で後悔しないために、まずは示談金の基礎知識から一緒に見ていきましょう!
交通事故の示談金計算における基礎知識
示談金を構成するもの
そもそも示談金とは、被害者に発生した損害を加害者が支払う損害賠償金のことをいいます。
交通事故の示談金は、大きく2つの種類に分けられます。
財産的損害
財産的損害とは、交通事故に遭ったことによって財産に発生した損失をいいます。
財産的損害は、さらに積極損害と消極損害の2つに分類することができます。
積極損害
交通事故に遭ったことによって被害者発生した支出のことをいいます。
たとえば、交通事故でケガを負った場合、入院や通院によって治療をしなければなりませんよね。
治療にかかった治療費や通院交通費や雑費など、事故に遭わなければ本来発生しなかった支出です。
消極損害
交通事故に遭わなければ本来得られていたはずの利益のことです。
示談金の中では、休業損害と逸失利益が消極損害にあたります。
精神的損害
精神的損害とは、交通事故によって精神的苦痛受けたことを損害としたものです。
精神的損害に対して支払われるものが慰謝料です。
まとめ
示談金の分類
当てはまるもの | ||
---|---|---|
財産的損害 | 積極損害 | 治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、将来介護費、自宅・車改装費、葬儀費用、弁護士費用など |
消極損害 | 休業損害、逸失利益 | |
精神的損害 | – | 慰謝料 |
慰謝料の算定における3つの基準
精神的損害にあたる慰謝料の相場には3つの基準があります。
自賠責基準
自賠責基準は、その名のとおり自賠責保険が定めている基準です。
自賠責保険は、交通事故の被害者が 最低限の補償を受けられるように、加入が義務付けられている車両保険です。
最低限の補償ができれば良いので、3つの基準の中で最も低い金額となっています。
任意保険基準
任意保険基準は、各任意保険会社が独自で定めている基準であり、詳しい金額は非公開とされています。
なお、平成10年まで各保険会社で使用されていた旧任意保険支払基準というものがあり、今でもこの基準を参考にしているといわれています。
自賠責基準よりは高い金額が設定されているものの、決して高い金額ではないようです。
弁護士基準
弁護士基準は、弁護士が保険会社と交渉する際に用いる基準であり、3つの基準の中でも最も高い金額が設定されています。
過去の裁判例をもとに金額が設定されているため、裁判基準ともいわれています。
金額については、通称赤い本とよばれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に記載されています。
赤い本は、日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年発行しており、表紙が赤いので赤い本と呼ばれています。
まとめ
3つの基準
金額 | 主な特徴 | |
---|---|---|
自賠責基準 | 低い | 加入が強制されている |
任意保険基準 | 中間 | 詳しい相場金額は非公開 |
弁護士基準 | 高い | 弁護士に依頼することで請求できる基準 |
慰謝料の計算方法とは
交通事故の慰謝料には3つの種類があります。
入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つです。
それでは、それぞれの計算方法について1つずつ解説していきましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故によって余儀なく入院または通院せざるを得なくなった精神的苦痛に対して支払われるものです。
入通院慰謝料は、入院や通院の日数によって金額が異なります。
自賠責基準と弁護士基準では、それぞれどのようにして計算されるのか具体例をあげながら見ていきましょう。
自賠責基準
自賠責保険では、入通院慰謝料は1日あたり4,200円が支払われます。
入通院の日数については次の2つのうち、少ない方が使われます。
- ① 総治療日数(入院日数+通院期間の合計)
- ② 実通院日数(入院日数+実通院日数×2)
たとえば、入院20日、通院期間250日、実通院日数90日であった場合
- ① 270日
- ② 200日
であるため、より少ない②200日が使われることになります。
よって、4,200円×200日=84万円が入通院慰謝料となるのです。
任意保険基準
任意保険基準については現在金額は公表されていないため、旧任意保険支払基準を見ていきましょう。
以下の表が、旧任意保険支払基準となっています。
弁護士基準
弁護士基準では、入通院慰謝料は赤い本(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」)に記載されている表を用いて計算されることになります。
以下が表になります。
上記の表が入通院慰謝料の計算で使われるものです。
表が重傷用と軽傷用で分かれていますが、違いは何なのでしょうか?
軽傷用は他覚的所見が見られない場合に用いられます。
他覚的所見とは、病院でのレントゲンやMRIなどの検査によって、客観的に症状を確認できることをいいます。
事故のケガで最も多いむちうちは、痛みがあるにも関わらずレントゲンやMRIに写らないことが多いです。
よって、その場合は軽傷用の表で慰謝料が算定されます。
骨折などの明らかな負傷が見られる場合は、重傷用が用いられます。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料のことです。
後遺障害は認定されると1~14級の等級がつくことになりますが、その等級によって慰謝料の金額が異なります。
等級 | 自賠責 基準 |
任意保険 基準 |
弁護士 基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1100 | 1300 | 2800 |
2級 | 958 | 1120 | 2370 |
3級 | 829 | 950 | 1990 |
4級 | 712 | 800 | 1670 |
5級 | 599 | 700 | 1400 |
6級 | 498 | 600 | 1180 |
7級 | 409 | 500 | 1000 |
8級 | 324 | 400 | 830 |
9級 | 255 | 300 | 690 |
10級 | 187 | 200 | 550 |
11級 | 135 | 150 | 420 |
12級 | 93 | 100 | 290 |
13級 | 57 | 60 | 180 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故によって亡くなってしまったことに対する慰謝料です。
また、死亡慰謝料は、本人だけでなく遺族も請求することができます。
請求できる遺族は、基本的に被害者の父母・配偶者・子ですが、場合によっては兄弟姉妹・祖父母・内縁の妻も認められるようです。
自賠責基準
自賠責基準の場合、被害者の立場に関係なく一律350万円と決められています。
自賠責保険は最小限の補償をするためのものとは言え、とても低いように思います。
しかし、慰謝料を請求できる遺族の人数によって、金額が加算されるようです。
任意保険基準
任意保険基準では、被害者の立場によって金額が変わってくるようです。
一家の支柱であった場合は1700万円、それ以外は各々の事情を考慮し1250~1400万円程度とされています。
弁護士基準
弁護士基準も任意保険基準と同じく、被害者の立場によって金額が変わってきます。
一家の支柱であった場合は、2800万円と最も高くなっています。
家族の生計を支えていた大黒柱となると、最も高いのは当然ともいえます。
母親や配偶者は2500万円、その他独身男女や子供、幼児等は2000~2500万円となっています。
なお、各々の事情によっては金額が増減されることがあります。
被害者の立場 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
一家の支柱 | 1700万円 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 1250~1450万円 | 2500万円 |
その他(独身男女、子供、幼児等) | 2000~2500万円 |
請求権者の人数 | 金額 | |
---|---|---|
350万円+ | 1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 | |
3人以上 | 750万円 |
慰謝料は弁護士基準で請求すべき
入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の慰謝料金額について、3つの基準で検証しながら見ていきました。
弁護士基準による相場金額が圧倒的に高いことがお分かりいただけたかと思います。
事故被害者の方々にとって、十分な慰謝料を獲得するためには弁護士基準での請求が必要です。
納得できる示談のために、保険会社との交渉を弁護士に依頼することをオススメします。
逸失利益の計算方法
逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の2つがあります。
そもそも逸失利益とは、交通事故に遭わなければ将来得られていたはずの利益のことをいいます。
交通事故により死亡してしまったり、後遺障害が残ったことで、収入が無くなってしまったり、収入が大きく下がってしまうこともあります。
その損失に対して支払われるものが逸失利益なのです。
逸失利益は、示談金の中でもかなり大きい金額を占めるので、とても重要な項目になります。
それでは、逸失利益の計算方法について詳しく見ていきましょう。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益の計算式は、以下のようになります。
基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
それでは、語句の解説からしていきましょう。
基礎収入とは
基礎収入は、その名のとおり逸失利益を算定する上で基礎となる収入のことです。
事故前3ヶ月の収入や昨年度の源泉徴収票などを元に年収を決めます。
主婦などの現実的な収入のない家事労働者や、まだ働いていない子供や学生は賃金センサスを用いて基礎収入を出します。
賃金センサスとは、厚生労働省が昭和23年より毎年実施している賃金構造基本統計調査のことをいい、逸失利益の算定において非常な重要になります。
賃金構造基本統計調査とは、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数及び経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(一部は前年1年間)の状況を調査している調査です。
出典:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/detail/
非常に細かい調査がされているようですね。
会社員などであっても実際の年収より賃金センサスの方が高い場合は賃金センサスで基礎収入を計算することもあるようです。
労働能力喪失率とは
後遺障害によってどのくらい労働能力に影響を及ぼしたのかを数値化したものです。
後遺障害の等級ごとに労働能力喪失率が定められています。
この数字も赤い本に掲載されています。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | |
3級 | |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
ライプニッツ係数とは
中間利息を控除するための指数のことをいいます。
中間利息とは、本来将来にわたって受け取るはずの収入を一括でもらったために得られた利益のことです。
計算においては、症状固定日からの就労可能年数に相応するライプニッツ係数が用いられます。
就労可能年数
就労可能年数は、労働能力喪失期間ともいわれ、その期間について以下のように決められています。
- 原則として死亡時または症状固定時から67歳までの期間
- 未就労者は原則18歳から67歳までの期間
- 症状固定時が67歳以上の者は平均余命年数の1/2
- むちうちの場合、12級は10年程度、14級は5年程度に制限されることもある
具体例を見てみよう!被害者Aさん(給与所得者)のケース
被害者Aさん⇒会社員・年収600万円・症状固定時40歳・後遺障害11級
<計算式>
600万円(基礎収入)×20%(11級の喪失率)×14.643(就労可能年数27年に対するライプニッツ係数)
=1757万1600円
死亡逸失利益の計算式
死亡逸失利益の計算方法は、後遺障害逸失利益と少し違います。
計算式は以下のようになります。
基礎収入×1-生活費控除率×ライプニッツ係数
労働能力喪失率については100%となるので計算式に入れる必要はありません。
一方で、生きていれば必要であった生活費がかからなくなるので、生活費を控除しなくてはなりません。
それでは、生活費控除率について詳しく説明していきましょう。
生活費控除率とは
生活費控除率も自賠責基準と弁護士基準で、以下のようにそれぞれ決められています。
自賠責保険
- 被扶養者がいる場合 ⇒35%
- 被扶養者がいない場合⇒50%
弁護士基準
- 一家の支柱⇒30~40%
- 女性⇒30%
- 男性⇒50%
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
被扶養者あり ⇒35% |
一家の支柱 ⇒30~40% |
被扶養者なし ⇒50% |
女性 ⇒30% |
– | 男性 ⇒50% |
具体例を見てみよう!被害者Bさん(専業主婦)のケース
被害者Bさん⇒専業主婦・死亡時56歳
<計算式>自賠責基準
330万1200円(自賠責保険による女子全年齢平均給与額)×{1-50%(生活費控除率)}×8.3064(就労可能年数11年に対するライプニッツ係数)
=1371万0543円
<計算式>弁護士基準
376万2300円(賃金センサスH28年女性平均賃金)×{1-30%(生活費控除率)}×8.3064(就労可能年数11年に対するライプニッツ係数)
=2187万5818円
後遺障害逸失利益・死亡逸失利益を見てきましたが、逸失利益は示談金の中でも増額の余地がある項目です。
特に後遺障害逸失利益は、後遺障害が仕事にどのくらいの影響を与えたのかが重要です。
よって、収入や年齢、職業、後遺障害の症状次第では、相場以上の金額を請求することが可能です。
一方で、傷跡の後遺障害など労働に影響がない、または非常に少ないようなものであると逸失利益として認めてもらえないこともあります。
計算機を使って実際に示談金を算出してみよう!
慰謝料計算機を使ってみよう
ここまで、示談金の基礎知識や計算方法について解説してきました。
それでは、自分の示談金はいくらくらいになるのか以下の慰謝料計算機を使って計算してみましょう。
治療期間・入院期間・通院実日数・休業日数・後遺障害等級・事故時の年齢と年収を入力したら、もう完了です。
利用上の注意事項
なお、慰謝料計算機での金額は基本情報をもとにした概算です。
被害者一人ひとりの事情は考慮されていないことをあらかじめご了承ください。
かんたん1分!慰謝料計算機
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岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
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まとめ
いかがだったでしょうか?
- 示談金の基礎知識
- 慰謝料の計算方法
- 逸失利益の計算方法
について、ご理解いただけましたら幸いです。
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また、下にも示談金の関連記事をご用意しましたので、気になる記事がありましたらぜひご覧ください。
交通事故示談金の計算・内訳Q&A
示談金には何が含まれている?
示談金には大きく分けて①財産的損害と②精神的損害があります。①の財産的損害は「積極損害」と「消極損害」に分けることができます。「積極損害」は、交通事故により発生した支出のことをいいます(例:治療費、通院交通費など)。一方、「消極損害」は交通事故にあわなければ本来得られたはずの利益のことです(例:休業損害、逸失利益)。②の精神的損害とは交通事故によって精神的苦痛をさし、慰謝料が支払われます。 交通事故の示談金に関する基礎知識
交通事故の慰謝料の種類と計算方法は?
交通事故の慰謝料には①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料があります。①は交通事故で入院や通院をしなければならない精神的苦痛に対して支払われます。入院や通院の日数で金額が計算されます。②は後遺障害認定の等級に応じた金額が支払われます。③は交通事故によって亡くなってしまったことに対する慰謝料です。本人だけでなく遺族も請求できます。いずれの慰謝料も、弁護士基準の金額相場が最も高くなります。 慰謝料の計算方法をていねいに解説
逸失利益ってどんなお金?
逸失利益とは、交通事故に遭わなければ将来得られていたであろう収入・利益のことを指します。逸失利益は示談金の中で大部分を占めており、とても重要な項目です。また増額の余地もあるので、しっかり計算すること、弁護士に相談することをおすすめします。 逸失利益の計算方法をわかりやすく解説
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
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