交通事故の後遺障害|相手方加入の保険会社に申請?通勤災害の労災も申請可?
「交通事故の怪我の後遺症が残っているけど、後遺障害の申請の方法はどうなっているの?」
「自賠責保険への後遺障害の申請は被害者請求の方がいいって聞いたけど本当なの?」
「後遺障害の等級認定の結果に納得がいかない場合、何か申請方法はあるの?」
交通事故にあわれて後遺症が残ってしまった方の中には後遺障害の申請を検討されていらっしゃる方もいるかと思います。
しかし、交通事故に巻き込まれたのは、はじめての方も多いでしょうから、後遺障害の申請の方法がよくわからないという方もいるのではないでしょうか?
このページでは、そんな方のために
- 交通事故での後遺障害の申請方法
- 自賠責保険への後遺障害の申請方法
- 後遺障害の等級認定に異議がある場合の申請方法
について、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
適切な後遺障害の等級が認定されるかどうかによって、受け取れる交通事故の損害賠償額は大きく変わることになります。
そして、適切な後遺障害の等級が認定されるためには、後遺障害の申請の方法をしっかりと理解しておくことが必要です。
適切な損害賠償額を受け取れるよう、後遺障害の申請の方法をしっかり理解しておきましょう。
目次
交通事故の後遺症について、後遺障害の申請をしようと思っても、申請方法や申請先がわからないという方もいるかもしれません。
そこで、まずは、後遺障害申請方法や申請先から確認していきましょう。
交通事故での後遺障害の申請方法
原則は自賠責保険
交通事故の場合、通常、相手方は法律上、加入が義務付けられている自賠責保険に加入しています。
そして、原則としては、後遺障害の申請は、相手方加入の自賠責保険会社に行うことになります。
もっとも、実際に後遺障害の等級認定をするのは、損害保険料率算出機構という第三者機関になります。
なお、義務に反して、相手方が自賠責保険に加入していなかった場合、救済策として政府保障事業に後遺障害を申請するという方法があります。
また、相手方が自転車の場合、自賠責保険は適用外ですので、違った申請方法を検討する必要があります。
通勤災害等では労災にも後遺障害申請可
また、交通事故が
- 業務中
- 通勤途中
に発生し、業務災害や通勤災害として認定される場合には、労災保険に対しても、後遺障害の申請を行うことが可能です。
労災への後遺障害申請方法
もっとも、労災保険に対して後遺障害を申請する場合には、自賠責保険の場合と書式が異なります。
一例としては、申請の必要書類の一つである後遺障害診断書につき、労災の場合は、以下のページの書式の診断書の提出が求められます。
申請先が自賠責と異なる
また、労災保険の場合は、申請先も自賠責保険の場合とは異なり、労働基準監督署に申請を行うことになります。
なお、実際に後遺障害の等級認定も労働基準監督署が行うことになります。
交通事故が労災にも該当し、労災保険にも後遺障害の申請が可能な場合、労災保険への申請を先行させたほうがいいケースもあります。
自賠責保険と労災保険の両方に申請が可能で、申請をどうすればいいかお悩みの方は、まず弁護士に相談してアドバイスを求めてみましょう。
自賠責保険 | 労災保険 | |
---|---|---|
申請先 | 相手方加入の自賠責保険 | 労働基準監督署 |
認定機関 | 損害保険料算出機構 | 労働基準監督署 |
申請条件 | 相手方が自賠責保険加入 | ・業務中 ・通勤途中 |
後遺障害を申請しないメリット・デメリット
もっとも、後遺障害の申請は必ず行わなければいけないものではありません。
では、後遺障害を申請しない方がいい場合もあるのでしょうか?
後遺障害を申請する場合と申請しない場合のメリット・デメリットをそれぞれお伝えしたいと思います。
後遺障害を申請する場合
この場合のメリットとしては、何といっても後遺障害が認定されれば、賠償額の大幅な増額が見込めるという点です。
たとえ後遺症が残っても、それに対する賠償が受け取れるのは、原則、後遺障害として認定された場合のみになります。
具体的には、後遺障害が認定されると、
- 今後、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛を補うための後遺障害慰謝料
- 後遺障害の影響で仕事に支障が生じることにより生じる将来的な減収分を補うための逸失利益
というものが請求できることになります。
そして、後遺障害が認定されるためには、当然その前提として後遺障害の申請が必要となります。
他方、デメリットとしては
- 申請に費用が掛かる
- 申請しても後遺障害が認定されないこともあり、時間だけが掛かることになる
ことなどが挙げられます。
後遺障害を申請しない場合
この場合のメリット・デメリットとしては、基本的に後遺障害を申請した場合のメリット・デメリットの逆になります。
具体的には、メリットとして
- 費用がかからない
- 時間がかからず早期に解決できる
ことなどが挙げられます。
他方、デメリットとしては、後遺障害が認定される可能性がなくなり、賠償額の大幅な増額の可能性もなくなるという点です。
申請する | 申請しない | |
---|---|---|
メリット | 賠償額増額の可能性 | ・費用掛からない ・時間掛からない |
デメリット | ・費用掛かる ・時間掛かる |
賠償額増額の可能性なし |
残念ながら、後遺障害を申請しても認定の見込みが低いケースもあります。
そういったケースでは、後遺障害の申請をしても、費用と時間が無駄になってしまう可能性が高くなります。
交通事故に強い弁護士であれば、後遺障害の等級認定の見込みを立てられることも多いので、申請前に弁護士に相談するのがいいかと思います。
自賠責保険への後遺障害の申請方法
そして、原則である自賠責保険への後遺障害の申請の方法には
- 事前認定
- 被害者請求
という二つの方法があります。
ここからは、それぞれの方法について、詳しく説明していきたいと思います。
後遺障害申請方法①事前認定
事前認定とは、簡単に言うと相手方任意保険会社が窓口となって、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認する方法のことです。
交通事故の加害者が、自賠責保険だけではなく任意保険にも加入している場合、被害者は、任意保険会社から
- 自賠責保険金分
- 自賠責保険金分を超える任意保険会社負担分
を一括して支払ってもらうことになります。
この制度のことを一括払制度といいます。
相手方任意保険会社は、被害者に一括払いをした後、自賠責保険から、自賠責保険金分を回収します。
この制度のことを加害者請求といいます。
この制度が自賠法15条を根拠としていることから15条請求とも呼ばれています。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
出典:自動車損害賠償保障法第15条
この加害者請求の前提として、一括払いをする相手方任意保険会社は、自賠責から支払われる保険金分をあらかじめ確認する必要があります。
その一環として、被害者の後遺障害の等級認定を事前に確認する事前認定という方法があります。
後遺障害申請方法②被害者請求
それに対し、被害者請求とは、簡単に言うと
被害者が自分で直接相手の自賠責保険に後遺障害の等級認定を請求する
方法のことです。
各方法のメリット・デメリット
上記のとおり、自賠責保険への後遺障害の申請の方法が二種類あることはわかりました。
もっとも、この二種類の方法は、具体的にはどういった点に違いが出てくるのでしょうか?
ここからは、事前認定の場合と被害者請求の場合のメリット・デメリットをそれぞれお伝えしたいと思います。
事前認定の場合
事前認定のメリットとしては、担当者に後遺障害診断書を提出しさえすれば、その後は保険会社が資料の取り寄せや申請手続を行ってくれるため
- 資料収集の負担がない
- 費用負担がない
ことが挙げられます。
一方、デメリットとしては、
- 後遺障害が認められにくい方向に働く内容の相手方保険会社の顧問医の意見書をつけられるおそれがある
- 相手方保険会社との示談が成立するまでお金が入ってこない
ことが挙げられます。
被害者請求の場合
被害者請求のメリット・デメリットとしては、基本的に事前認定の場合のメリット・デメリットの逆になります。
具体的には、メリットとして
- 提出書類や時期を決定できる
- 相手方との示談前に自賠責保険から保険金を受け取れる
ことなどが挙げられます。
他方、デメリットとしては、
- 資料収集の負担
- 費用負担
などが挙げられます。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
申請主体 | 任意保険会社 | 被害者本人 |
メリット | ・資料収集の負担少ない ・費用負担なし |
・提出書類や時期を決定できる ・示談前にお金が入る |
デメリット | ・意見書つけられるおそれ ・示談までお金入らない |
・資料収集の負担大きい ・費用負担 |
事前認定の場合、相手方任意保険会社は必要最低限の書類しか提出してくれません。
それに対して、被害者請求の場合、必要資料以外に認定に有利な医療関係の資料や意見書の添付も可能になります。
そのため、後遺障害の等級認定に争いのあるケースでは被害者請求の方が望ましいといえます。
さらに、弁護士に依頼をすれば
- 書類収集の手間が省ける
- 認定に有利となる医療関係の資料や意見書の収集やアドバイスを受けられる
というメリットがあります。
被害者請求をする場合には特に弁護士に依頼するメリットが大きいといえるでしょう。
後遺障害の等級認定に異議がある場合の申請方法
後遺障害の申請をしたものの、等級認定に異議がある場合もあるかと思います。
そういった場合、認定結果を争うための方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
後遺障害申請の結果に対して異議申し立て
まず、相手方の加入する自賠責保険会社に異議申し立てをするという方法があります。
異議申し立てを受けた自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構に書類を転送し、再度の判断を依頼することになります。
判断するのは、最初に判断をした損害保険料率算出機構になりますが、事案によっては上部機関によって判断されます。
費用は無料であり、原則として書面のみで判断され、当事者の出席は不要です。
また、異議申立は何度でも行うことが可能です。
もっとも、前回の申請とは異なる新たな有力資料を提出しないと、何度申立をしても結果は変わらないことがほとんどです。
紛争処理機構への申し立て
また、自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理申請をするという方法もあります。
紛争処理申請を受けた自賠責保険・紛争処理機構は、
- 弁護士
- 医師
- 学識経験者
が紛争処理委員を務める紛争処理委員会が提出された書面などで審査を行い、調停結果を通知します。
費用は無料であり、原則として書面のみで判断され、当事者の出席は不要です。
また、異議申し立てと異なり、紛争処理申請は1度だけしか行えません。
裁判の提起
さらに、裁判所に訴訟を提起するという方法があります。
訴訟の提起を受けた裁判所は自賠責保険の認定結果に拘束されず、判決などにおいて、後遺障害の判断をすることになります。
とはいえ、裁判所は自賠責保険の認定結果を重視していると考えられます。
そのため、自賠責保険の申請時とは異なる新たな有力資料を提出しないと、自賠責保険の認定結果と変わらない認定になることがほとんどです。
費用は有料であり、当事者の出席が必要となります。
判決内容に不服がある場合には上訴という制度が設けられています。
これらの三つの方法を検証したものを表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。
異議申し立て | 紛争処理機構 | 裁判の提起 | |
---|---|---|---|
判断権者 | 損害保険料率算出機構 | 紛争処理委員会 | 裁判所 |
費用 | 無料 | 有料 | |
当事者の出席 | 不要※ | 必要 | |
不服申立 | 何度でも可能 | ☓ | 上訴 |
※醜状障害などでは面談行われる場合あり
このように、後遺障害の等級認定に異議がある場合の申請方法は複数ありますが、実際に等級認定の結果が変わるケースはほんの一握りです。
後遺障害の等級認定の結果を覆すためには、弁護士などの専門家による
- 認定結果の正しい分析
- 分析結果を踏まえた新たな資料や検査の収集・依頼
が必要不可欠といえます。
そのため、後遺障害の等級認定結果を争う場合には特に弁護士に依頼する必要性が大きいと考えられます。
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最後に一言アドバイス
岡野弁護士、読者の方に、最後にアドバイスをお願いします。
適切な後遺障害の等級が認定されるかどうかによって、受け取れる交通事故の損害賠償額は大きく変わることになります。
しかし、後遺障害の申請の方法次第では本来認定されるべき等級が認定されない可能性もあります。
適切な損害賠償額を受け取れるよう、後遺障害の申請の方法でお悩みの際には、弁護士に相談してみましょう。
また、後遺障害の等級認定に異議がある方も、弁護士に依頼することで認定結果が変わる可能性があるので、諦めずに弁護士に相談しましょう。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。