交通事故による四肢麻痺|脊髄損傷の後遺症でお悩みの方はコチラ
交通事故で脊髄損傷の大怪我を負ってしまった場合、身体に麻痺が残ってしまう可能性があります。
麻痺にも種類がありますが、損傷部位によっては、首から下が麻痺してしまう非常に重い四肢麻痺となってしまう可能性も考えられます。
もしも四肢麻痺の後遺症が残ってしまった場合…。
- 四肢麻痺の症状やリハビリの方法は?
- 四肢麻痺は後遺症として認定される?その場合の等級は?
- 四肢麻痺が残ったことに対する慰謝料などの損害賠償請求は?
など、わからないこともたくさんあると思います。
不明点をなくし、治療やリハビリに専念するためにも、交通事故で四肢麻痺の後遺症が残った場合の損害賠償についてここから一緒に見ていきましょう。
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故で四肢麻痺の後遺症が残った場合、ご本人だけでなくご家族の皆さまも心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
不幸にも四肢麻痺の後遺症が残ってしまった場合、まずは治療・リハビリに励む必要があります。
もっとも、四肢麻痺が残った場合、被害者の方が受ける精神的苦痛なども大きいと考えられるため、その点に対する慰謝料もしっかり受け取る必要があります。
ここで、交通事故による四肢麻痺についてしっかり理解し、リハビリ及び慰謝料の請求のどちらでも適切な対応が取れるようにしましょう。
目次
脊椎(背骨)とは、上から頸椎(7椎、まれに8椎)、胸椎(12椎)、腰椎(5椎)、仙椎(5椎)および尾椎(3~6椎)で構成されるものです。
その中を、脊髄という非常に重要な神経が通っています。
交通事故などにより脊椎に損傷を負った場合、中の脊髄も損傷してしまう可能性があります。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/14/Blausen_0822_SpinalCord.png
脊髄が傷付いた場合、そこから下にある神経が麻痺してしまうため、損傷箇所が上になるほど障害レベルは高くなるそうです。
つまり、背骨の上部にある頚椎を損傷してしまった場合、首から下が麻痺してしまう四肢麻痺となる恐れがあります。
しかし、日本における脊髄損傷のうち約75%が頸髄損傷となっているそうです…。
もしも交通事故による頚髄損傷が原因で四肢麻痺の後遺症が残ってしまった場合には、加害者側(相手側の保険会社)に損害賠償請求を行う必要があります。
では、いったいどのような損害賠償が受けられるのか、ここから一緒に見ていきましょう。
交通事故による四肢麻痺|症状やリハビリの方法とは
その前に、被害者の方がこれからの生活を行うにあたって非常に重要な、四肢麻痺の症状やリハビリについて見ていきましょう。
麻痺には、
- 片麻痺:片側の上肢と下肢の麻痺
- 対麻痺:両側の下肢の麻痺
- 四肢麻痺:両側の上肢と下肢の麻痺
- 単麻痺:片側の上肢または下肢だけの麻痺
の4種類があります。
その中でも、高い位置にある脊髄(頚髄)を損傷してしまった場合に起こる四肢麻痺は、非常に重いものとなりますね。
頚髄とは、下図の赤い部分で、上から第1頚髄~第7(まれに第8)頚髄となっています。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/54/Cervical_vertebrae_lateral2.png
四肢麻痺を負った場合、四肢への神経伝達に麻痺が生じ、損傷部位より下の部位に運動機能障害、排泄機能障害、感覚機能障害、消化機能障害、発汗体温症性機能障害、自律神経障害などが生じます。
第3頚髄よりも上に損傷がある場合には、横隔膜も麻痺してしまうため、人工呼吸器が必要となる場合もあるそうです。
また、合併症や併発症といった二次的な症状もあり、呼吸器合併症、循環器合併症、消化器合併症、床ずれなども起こる可能性があります。
四肢麻痺の症状①運動麻痺/感覚障害
お伝えの通り、脊髄が損傷したレベル(髄節)により、運動麻痺や感覚障害の分布が変わってきます。
また、麻痺の重さは、脊髄をどれほど大きく損傷したかによって変わってきます。
第1~第3頚髄を損傷した場合には、身体がほぼ麻痺してしまうことが多いようです。
第4頚髄以下が残存している場合には、一部は動かせる可能性があります。
第4頚髄 | 肩をすくめることが可能 |
---|---|
第5頚髄 | ひじを曲げることが可能 |
第6頚髄 | 手首をそらすことが可能 |
第7頚髄 | ひじを伸ばすことが可能 |
第8頚髄 | 指を曲げることが可能 |
また、運動麻痺の中にも、身体を全く動かすことのできない完全麻痺と、少しは動かすことが可能な不完全麻痺という種類があります。
四肢麻痺の症状②排尿/排便障害
四肢麻痺となった場合、膀胱にも障害が残る可能性も高くなっています。
その場合、
- 過活動性膀胱:膀胱の反射が高まり、尿が少し溜まっただけでも勝手の膀胱が収縮してしまう
- 低活動性膀胱:膀胱の収縮が十分に行えず、尿を出すことができない
のどちらかが起こりえます。
低活動性膀胱の場合、残尿により膀胱感染を起こし、さらには腎臓への感染も起こり、腎不全を起こしてしまうリスクも考えられるそうです。
排尿方法は、患者さんの症状程度によっても異なりますが、自分で尿道からカテーテルを入れ、膀胱に溜まった尿を出す自己導尿が一般的なようです。
四肢麻痺の症状③自律神経症状
また、自律神経にも障害が残る可能性があります。
自律神経過反射
四肢麻痺を起こす頚髄の損傷が原因で起こります。
この場合、血圧上昇、体が赤くなる発赤、冷や汗、脈が遅くなるなどの症状が現れます。
膀胱に尿や便が溜まりすぎたりすることによる交感神経の過反射が原因となることが多いそうです。
ただし、その原因を取り除くことができれば、症状は改善します。
起立性低血圧
脊髄損傷の場合、事故後に救急車で運ばれ、集中治療室(ICU)に入ることが多いと考えられます。
その後、長時間寝ていたことで、血圧が低下しているため、急に体を起こすと脳貧血を起こす恐れがあるということです。
症状としてはめまい、場合によっては意識消失を起こしてしまうこともあるそうです。
ベッドのリクライニング角度を上げていく訓練を行い、身体を慣れさせることが必要となります。
麻痺に対するリハビリの方法
そして、脊髄を損傷した場合、残念ながら元に戻ることはありません。
そのため、治療としてはリハビリが非常に重要となります。
急性期のリハビリ
四肢麻痺となった直後(急性期)には、合併症の発生予防と治療が重要になるそうです。
特に、四肢麻痺の原因となる頚髄損傷を負った場合、横隔膜の麻痺も生じ、人工呼吸器を使用する必要が出てきます。
その他、腹筋も使えなくなるため、息を吐く力が弱く、痰を出すのが困難となり、痰づまりや肺炎を起こしやすくなるそうです。
実際、そのような辛い体験をされた方のブログがありますので、ご覧になってみてください。
以上より、早期の段階から呼吸訓練が必要となります。
また、排尿障害も残った場合、尿路感染の合併症のリスクもあります。
その予防のため、尿道カテーテルの清潔管理とともに、患者さんの残存機能から、適切な排尿手段を選択する必要があります。
そして、ずっと寝たきりでいると、床ずれなどの症状も現れてしまいます。
よって、可能な限り早い段階から起き上がり、リハビリを始め、動かない手足を動かしてあげることが重要となるそうです。
回復期のリハビリ
患者さんの容態が安定した後(回復期)から、本格的なリハビリが開始となります。
両足に麻痺がある場合、上肢を使ってのプッシュアップ動作や足を投げだして座る動作ができるようになることが重要で、まずは上肢の筋力アップ訓練が必要です。
四肢麻痺の場合には、他にも、食事や着替え、車椅子の駆動訓練や工夫も必要となります。
慢性期のリハビリ
日常生活への復帰を目指す段階(慢性期)になると、麻痺した手足のつっぱり(痙縮)という症状が強く現れることがあるそうです。
その場合、内服薬の投与や、筋肉の緊張を和らげるための神経ブロック療法などがリハビリと合わせて行われます。
心のケア
また、身体の麻痺により、以前はできていたことができなくなる精神的負担により、うつ状態になってしまう方も多いようです。
リハビリでは、そういった状態からの克服に向けて、心のケアも行われるそうです。
心が回復しなければ、他のリハビリ効果も得られないため、重要な訓練の1つとなっているそうです。
症状 | 対処やリハビリ方法 | |
---|---|---|
運動麻痺・感覚障害 | 筋力アップや日常生活訓練を行う | |
排尿・排便障害 | 尿道カテーテルの使用や適切な排尿手段を選択 | |
自律神経症状 | 自律神経過反射 | 膀胱障害を取り除く |
起立性低血圧 | 座位や立位に身体を慣れされる訓練を行う | |
合併症 | 床ずれ | 早期から起き上がり手足を動かす |
痰づまり | 早期から呼吸訓練を行う |
交通事故による四肢麻痺の後遺症の等級認定
以上のように、交通事故による怪我が原因で四肢麻痺の後遺症が残ってしまった場合、そのことに対する損害賠償請求をしっかりと行うべきです。
交通事故による四肢麻痺で後遺症等級は認定される?
その場合、まずは後遺症の等級認定を受ける必要があるということです。
では、四肢麻痺の場合、どのような等級が認定されるのでしょうか?
「麻痺の範囲」は、四肢麻痺ということになります。
「麻痺の程度」に関しては、厚生労働省の通達により、後遺症等級基準よりもさらに具体的な基準が定められているそうです。
その通達によると、麻痺の程度は「高度」・「中等度」・「軽度」に分けられます。
通達の内容は、以下の表に簡単にまとめられています。
麻痺の程度:高度 |
---|
障害のある部位の運動性・支持性がほぼ失われ、その部位の基本動作ができない。 【具体例】 ・完全硬直 ・物を持ち上げられない ・歩けない ・その他上記のものに準ずる場合 など |
麻痺の程度:中等度 |
障害のある部位の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限がある。 【具体例】 ・約500gの物を持ち上げられない ・字が書けない ・足の片方に障害が残り、杖や歩行具なしでは階段を上れない又は両足に障害が残り、杖や歩行具なしでは歩行が困難 |
麻痺の程度:軽度 |
障害のある部位の運動性・持続性が多少失われ、基本動作に制限がある。 【具体例】 ・文字を書くことが困難 ・足の片方に障害が残り、歩行速度が遅く、不安定又は両足に障害が残り、杖や歩行具なしでは階段を上れない |
四肢麻痺の後遺症等級の認定基準
ここで、後遺症の等級は1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。
残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。
では、四肢麻痺の場合の等級認定の基準はどのようになっているのでしょうか?
上で紹介した麻痺の程度の基準を前提として、後遺症等級の認定基準を下の表にまとめてありますのでご覧ください。
1級1号(別表1) |
---|
・高度の四肢麻痺 ・中等度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する |
2級1号(別表1) |
・中等度の四肢麻痺 ・軽度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する |
3級3号(別表2) |
・軽度の四肢麻痺(2級1号に該当するものは除く) |
5級2号(別表2) |
・軽度の四肢麻痺 |
表を見ておわかりいただけるかと思いますが、「麻痺の程度」として、介護の要否なども考慮されることになるんですね。
交通事故による四肢麻痺に対する慰謝料などの損害賠償
以上、四肢麻痺の後遺症等級について見てきました。
後遺症の等級認定を受けた後は、いよいよ加害者側(相手側の保険会社)に損害賠償請求を行うことになります。
損賠賠償①治療費
まずは、四肢麻痺の後遺症の原因となった怪我の治療をすることになります。
その場合、治療費が発生しますよね。
実は、交通事故による怪我の治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
治療費について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧になってみてください。
支払いが困難な場合には…
しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。
損賠賠償②入通院慰謝料
そして、怪我の治療を行った場合、治療費の他に、怪我の痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。
この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。
適正な慰謝料獲得に向けて知っておきたい3つの慰謝料相場の基準
ところで、慰謝料には、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているそうなのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
そして、弁護士基準における入通院慰謝料の相場を示しましたので、ご覧になってみてください。
ちなみに、自賠責基準での入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
そして、任意保険基準では以下のようになっています。
見ておわかりいただけた通り、弁護士基準での入通院慰謝料を獲得すべきですよね!
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係
では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。
しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。
通院頻度と慰謝料の関係
- ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
- ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合
の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。
もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、①のケースを考えてみます。
極端な例ですが、通院期間が半年で、実通院日数が8日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準であるならば、半年通院=慰謝料116万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、8×3.5=28日(≒1ヶ月)が適用され、慰謝料は28万円ということになってしまうのです。
原則 | 例外 |
---|---|
通院期間により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 |
このように、慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。
適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、やはりぜひ弁護士に相談してみてください。
損害賠償③休業損害
そして、四肢麻痺を負うほどの大怪我の場合、治療中に仕事を休まなければならないことがほとんどのはずです。
その場合、仕事を休んだことで失われた収入について、休業損害を請求することができます。
休業損害
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。
では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。
自賠責保険での計算方法
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。
上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。
任意保険での計算方法
一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
損害賠償④後遺症慰謝料
そして、四肢麻痺の後遺症が残ってしまった場合には、後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対しても慰謝料が支払われます。
四肢麻痺の後遺症の等級についてはすでにお伝えしました。
その等級に応じて、後遺症慰謝料の金額が決まっているということです。
後遺症慰謝料についても、3つの基準が存在しており、それぞれの相場について以下の表に示しました。
後遺症等級 | 自賠責基準※1 | 任意保険基準※2 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級1号 | 1600 | 1300 | 2800 |
2級1号 | 1163 | 1120 | 2370 |
3級3号 | 829 | 950 | 1990 |
5級2号 | 599 | 700 | 1400 |
※1 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
※2 旧任意保険支払基準による。
こちらも一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談してみてください。
損害賠償⑤逸失利益
また、四肢麻痺の後遺症が残った場合、将来仕事ができなくなってしまったり、仕事を変えなければならないことになるはずです。
その場合、逸失利益という損害賠償も請求することができます。
逸失利益
後遺症により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。
まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。
後遺症認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。
また、四肢麻痺の後遺症が原因で、
- 会社の部署を異動させられた
- 職業選択の幅が狭くなった
- 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった
など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。
四肢麻痺の場合、その時点で収入が減少していたり、今後仕事に影響が出ることは明らかなので、認められることがほとんどでしょう。
逸失利益の計算方法などについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事もご覧になってみてください。
ただし、逸失利益に関しても、保険会社は低く見積もってくることが多いそうです。
この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!
損害賠償⑥将来の介護費
また、四肢麻痺の後遺症が残ってしまった場合、家族の方などの介護が必要となってしまうでしょう。
自賠責保険では認められませんが、任意保険会社と交渉する場合には、将来介護費が認められるケースもあるようです。
将来介護費が認められれば、保険会社から医療費の支払いなどが終わってしまった後も、介護をする際にかかる費用の負担を軽減できることになります。
将来介護費は、医師の指示または症状の程度により必要性が認められる場合に請求可能となっています。
四肢麻痺の場合には、将来介護が必要なことが明白なため、将来介護費が認められるケースが多いでしょう。
ご家族の方が介護を行う場合、金額の相場は8000円/日程度となっているそうです。
職業付添人に介護を依頼する場合には、1日8000円ではなく、実費全額を請求することになります。
ご家族の方が介護をされる場合でも、症状の程度によって増減される可能性はあります。
そして、次に問題となるのが、将来介護費をもらえる期間についてです。
通常、その期間については、平均余命を基準とすることが多いそうです。
余命を認定するには、平均余命が大きな役割を果たすのが一般的です。
ただし、この点について保険会社と争うケースも多く発生しています。
平均余命に関してなど、保険会社との間で争いが生じた場合には、やはり弁護士に相談してみることをお勧めします。
金額 | 支払いの期間 |
---|---|
・近親者による介護の場合:8000円/日 ・職業付添人による介護の場合:実費全額 |
・平均余命を基準とすることが多い ・保険会社と争いになることが多いので注意 |
将来の介護費用についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみてください。
自分で慰謝料を計算してみたい
ここまで読んで、自分やご家族の方の事故ではどれほどの損害賠償が受け取れるものなのか…。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 交通事故による四肢麻痺の症状やリハビリ方法
- 四肢麻痺の後遺症の等級認定
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について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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交通事故による四肢麻痺に関するQ&A
四肢麻痺で起こる症状とは?
四肢麻痺で起こる症状は様々です。例えば、運動麻痺・感覚障害であれば残存している頸髄によって、身体の動かせる部位が異なります。運動麻痺の中でも、身体を全く動かすことができない完全麻痺と、少しは動かせる不完全麻痺があります。その他にも、排尿・排便障害などが起こります。また、自律神経に障害が残ることもあります。自律神経に障害が残ると、冷や汗や血圧上昇といった症状が見られます。 四肢麻痺の症状とは
四肢麻痺に対するリハビリとは?
頸髄損傷を負うと、横隔膜の麻痺も生じ、人工呼吸器を使用する必要があります。その他にも、腹筋が使えなくなるため、痰を出すのが困難になり、痰詰まりや肺炎を起こしやすくなります。排尿障害がある場合は、適切な排尿手段を選択する必要があります。身体の麻痺によって、うつ状態になる人も多く、心のケアも同時に必要です。急性期・回復期・慢性期と、タイミングごとに適切なリハビリが重要です。 急性期・回復期・慢性期のリハビリ
交通事故による麻痺は後遺障害認定はされる?
麻痺の範囲と程度をもとに後遺症の等級が認定されます。麻痺の程度は、高度・中等度・軽度に分かれています。軽度とは、障害のある部位の運動性・持続性が多少失われ、基本動作に制限がある状態を指します。中等度とは、障害のある部位の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限がある状態を指します。高度とは、障害のある部位の運動性・支持性がほぼ失われ、その部位の基本動作ができない状態を指します。 四肢麻痺の後遺障害認定とは
四肢麻痺の後遺障害慰謝料相場は?
後遺障害慰謝料は後遺障害等級ごとに目安金額が設定されています。最も相場の高い弁護士基準で計算すると、1級1号:2800万円、2級1号:2370万円、3級3号:1990万円、5級2号:1400万円です。もっとも、相手方の保険会社から提案される金額は弁護士基準では算定されませんので、もっと低額になる可能性が高いです。 四肢麻痺|後遺障害等級と慰謝料
麻痺の後遺症が残ったとき介護費用は認定される?
将来介護費というかたちで認められる可能性があります。<家族介護:1日8000円>が弁護士交渉の相場です。職業付添人に介護を依頼する場合は、依頼にかかった実費全額を請求することになります。将来介護費は、通常であれば平均余命までが受けとる期間となります。 交通事故での介護費用について
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。