運転手が飲酒運転で暴走 同乗の20代女性が深刻な後遺障害を負う
認容額 | 5825万7509円 |
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年齢 | 22歳 |
性別 | 女性 |
職業 | アルバイト |
傷病名 | 脳挫傷、弥漫性軸索脳損傷、外傷性脳内血腫、両鎖骨骨折、上部消化管出血、頸部打撲、多発外傷、外傷性歯牙欠損 |
障害名 | 両鎖骨変形 |
後遺障害等級 | 6級 |
判決日 | 平成14年8月14日 |
裁判所 | 名古屋地方裁判所 |
交通事故の概要
平成8年9月12日午後9時55分ころ、愛知県小牧市内の路上において、加害者が、被害者及びAとBを同乗させて、加害者の普通乗用自動車を運転して、交差点を右折するに際して、徐行もせず、ブレーキをかけることもなく高速度で右折したために、失速して右折先の道路左側の電柱に衝突し、同乗していた被害者やAとBに傷害を負わせた。
加害者は飲酒直後に運転したのであるが、本件事故直後に、警察において測定したところ、加害者のアルコール保有量は、呼気1l中に0.15mgであった。
なお、加害車の運転席後部に乗車していた被害者は、生死も危ぶまれるほどの重篤な傷害を負った。さらに、被害者と同じく後部座席に乗車していたBも、後部座席から前部座席を越えて、フロントガラスまで飛ばされ、そこに顔を突っ込み、急性硬膜外血腫、頭蓋骨陥没骨折、顔面多発骨折等と診断され、顔面の容貌が激変するほどの重篤な傷害を負った。
被害者の入通院治療の経過
被害者は、本件事故により、脳挫傷、弥漫性軸索脳損傷、外傷性脳内血腫、両鎖骨骨折、上部消化管出血、頸部打撲、多発外傷、外傷性歯牙欠損などの傷害を負った。さらに、肺炎、膀胱炎、遷延性意識障害、失語症、症候性てんかん、MRSA感染症、汎発性血管内凝固(DIC)、口内炎等を発症した。
被害者は、これら傷害の治療のため、平成8年9月12日から同年12月6日まで、K病院に入院した。また、その後少なくとも平成9年6月25日まで通院して治療を受けた。
本件事故当日にK病院に入院した際は、被害者の症状は甚だ重篤で、ICU(集中治療室)に収容され、生死も危ぶまれた程であった。その意識障害は高度で、話し掛けても全く反応のない日々が続いた。その意識障害による舌根沈下の恐れのために、10月2日は気管切開を行った。長い間話すこともできず、また、言葉を構成できず、構音ができず、途中から五十音表の文字を指で指し示して意思を通じる他ない状態が継続した。同年11月17日ころからようやく簡単な発声が可能となり、同月下旬ころから発音が聞き取りやすくなってきて、12月6日退院した。
後遺障害の内容
被害者は、K病院の脳外科の主治医による平成9年9月30日付け後遺障害診断書で、症状固定日を平成9年9月11日として、次のとおりの本件後遺障害が残存している旨診断された。
①構語・構音障害,失音楽,右片麻痺
②WAIS-R式知能検査による言語性検査結果は82、動作性検査結果は83
(Total 79で境界線という結果。検査日は平成9年3月31日)
③握力右20kg、左35kg
④滑車神経障害(両側)あり、正面視・左右上下視の複視あり
⑤両鎖骨変形
⑥頸部に気管切開創瘢痕醜状あり
なお、その後、平成9年10月20日に施行したWAIS-R式知能検査では、言語性検査結果は8283、動作性検査結果は83、Total 80で平均の下であった。
上記の診断に基づき、平成10年3月、自賠責保険において、上記①~③の障害は後遺障害等級7級4号の適用が妥当であり、④は12級相当に該当し、⑤は左右それぞれ12級5号に該当し、併合で11級相当となり、⑥はその大きさが鶏卵を超えないので認定基準に至らず以上を併合して、併合6級となる旨認定された。
判決の概要
加害者が飲酒直後に、被害者及びAとBを同乗させて、加害車を運転し交差点を右折するに際して、徐行もせずブレーキもかけることなく高速度で右折したために失速し、道路左側の電柱に衝突し、被害者や同乗者AとBに傷害を負わせた。被害者は、脳挫傷、弥漫性軸索脳損傷等の傷害を負い、後遺障害等級併合6級と認定された。本件について、裁判所は、被害者の過失割合を1割と判断した。
認容された損害額の内訳
治療関係費 | 62万7830円 |
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入院付添費 | 45万6000円 |
入院雑費 | 14万5790円 |
通院交通費 | 5万5040円 |
休業損害 | 290万5300円 |
逸失利益 | 4397万2810円 |
慰謝料 | 1180万円 |
加害者の一部弁済 | - 100万 8984円 |
弁護士費用 | 530万円 |
過失相殺 | - 599万6277円 |
※その他、既払い額や損益相殺がなされ、判決認容額となります。