交通事故で打撲・打ち身!人身事故の慰謝料は通院期間に比例する?
このページをご覧になっているということは、交通事故によって打撲のけがを負ってしまったということでしょうか…
「打撲」と聞くと、骨折をしているわけでもないし、すぐ治るだろうと思われがちですよね。
しかし、打撲の場合、骨に異常は無くても筋肉などの皮下組織に異常が出ていることもあるため、しっかりと治療をしなければなりません。
仕事や学校もある中、通院するのはとても負担となってしまいます。
辛い思いをしている分慰謝料はしっかり支払われるのか不安になりますよね。
このページでは、交通事故による打撲でお困りの方のお役に立てるようにと、高校生の交通事故の慰謝料相場を判例をもとにまとめてみました。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
交通事故による打撲の慰謝料相場を判例をもとにまとめました!
それでは、慰謝料の相場をみてみましょう。
そもそも交通事故の慰謝料はどうやって決まるの?
交通事故にあった場合、慰謝料がもらえるというのは、ある程度一般的な知識だと思います。
でもちょっと待ってください。
そもそも慰謝料って何なんでしょうか?
交通事故による打撲の慰謝料の決まり方なんて、普通の人はなかなか知らないですよね。
慰謝料の金額がどうやって決まるか、専門家の先生に聞いてみましょう。
慰謝料の決まり方には、3つの種類があります。
①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準と呼ばれるものです。
慰謝料の計算方法を自賠責保険の基準に拠るのか、任意保険の基準に拠るのか、弁護士(裁判所)の基準に拠るのかによって①②③の違いが生じます。
慰謝料の計算の基礎になるのは、けがや後遺障害の程度といった事実関係です。
慰謝料の計算の仕方にもいろいろとあるのですね。
打撲によって後遺障害が残る可能性もありますし、十分に慰謝料が支払われるべきですよね。
交通事故の被害者としては、被害者にとって一番有利な基準を採用して欲しいものです。
簡単に慰謝料の計算をしてみたい方は、以下の「交通事故慰謝料の相場計算機」を試してみてください^^
この相場計算機は、③の弁護士基準を採用するものなので、保険会社が提示する慰謝料よりも大きな金額になる可能性が大きいです!
任意保険基準と慰謝料相場の関係は?
慰謝料の決まり方には3つの種類があるということが分かりました。
ここで興味があるのは、私たち事故の被害者にとって一番有利な基準はどれなのか?ということですよね。
打撲による症状で苦しんでいる被害者にとって一番有利な慰謝料の基準を教えてください。
裁判所でも採用される弁護士基準が被害者の方にとって一番有利です。
③の弁護士基準は、民事裁判になった時も採用される、一番公平で、かつ公正な基準です。
これに対して、②の任意保険基準は、保険会社が業界で勝手に採用する基準です。
任意保険基準は、支払われる慰謝料などが低くなる点で、被害者にとって不利です。
慰謝料や示談金の増額が可能なのは、弁護士が示談交渉をすることで、②の任意保険基準から③の弁護士基準に慰謝料の計算方法を変えることが可能だからです。
裁判所も採用する弁護士基準が、私たち事故の被害者にとっては一番有利ということなんですね。
弁護士基準だと、民事裁判になったときも採用されるということで、安心ですよね。
慰謝料の計算基準についてより詳しく知りたい方のために、以下に関連ページをまとめておきました。
それでは、本題です。
交通事故による打撲の慰謝料相場を判例にもとづいてみていきましょう。
打撲の慰謝料の計算で、ポイントとなるのはどのような点でしょうか?
一言に打撲といっても、打撲をした部位や打撲の程度によって症状は様々です。
頭部を強く打撲した場合には、経過によっては高次脳機能障害という重大な後遺症を残す場合もあります。
また、膝を打撲した場合にも、骨折にまで至らなくても、靭帯を断裂したり、骨挫傷という所見が残ることもあります。
慰謝料の算定においては、打撲の程度と後遺症の内容に応じて個別に検討していく必要がありますね。
判例から厳選した交通事故による打撲の慰謝料ランク5選
①画家(男・症状固定時61歳)損害額2608万9708円の判例
まず、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第8643号事件をご紹介します。
61歳の男性が右肩打撲などのけがを負った事故です。
属性 | 画家 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 61歳 |
事故の内容 | 加害車両が交差点を青信号に従って西から北へ左折したところ、交差点の北側の横断歩道を西から東へ横断中だった被害自転車に衝突し、被害者が転倒した。 |
傷害の内容 | 右肩、右肘、右膝打撲 |
後遺障害等級 | 併合11級(右肩関節運動機能は腱板損傷後の拘縮について12級6号、右手指症状は神経系統の障害について12級12号) |
入院 | 0日 |
損害総額 | 2608万9708円 |
---|---|
うち慰謝料 | 470万円 |
うち休業損害 | 254万円 |
うち逸失利益 | 1814万6213円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2608万9708円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が80万円、後遺障害の慰謝料が390万円認められました。
- 休業損害としては、被害者の画家としての売り上げや実績から、事故前年の売り上げの60%にあたる年収510万6000円を基礎収入とし、事故から症状固定日までの期間働くことができなかったとして算定されました。
- 逸失利益は、基礎収入は休業損害と同じく510万6000円、労働能力喪失率は50%、労働能力喪失期間は9年間として算定されました。
弁護士先生、こちらの男性は画家でありながら右腕に後遺障害が残ってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は画家として売上を立てて生活していましたが、確定申告の所得などについての立証はなされませんでした。
そこで、裁判所は必要経費が売上の約4割程度発生するとの前提のもと、休業損害や逸失利益の算定にあたっては、売上額の6割を年収として算定しました。
打撲であっても、腱板損傷や靭帯断裂など、MRI画像で所見を把握できるケガの場合には、このように12級以上の等級がつき、高額な賠償が認められることがあります。
②カラオケボックス店員(女・症状固定時27歳)損害額1771万6393円の判例
次に、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第7070号事件をご紹介します。
カラオケボックス店員の女性が左膝打撲などのけがを負った事故です。
属性 | カラオケボックス店員 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時27歳 |
事故の内容 | 被害者が助手席に乗っていた車がトンネル前でスリップし、トンネルの壁に衝突し回転し、更に壁に衝突した。 |
傷害の内容 | 左膝打撲、頚部捻挫 |
後遺障害等級 | 12級12号 |
入院 | 10日 |
損害総額 | 1771万6393円 |
---|---|
うち慰謝料 | 413万3000円 |
うち休業損害 | 449万1674円 |
うち逸失利益 | 838万4608円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1771万6393円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が153万3000円、後遺障害の慰謝料が260万円認められました。
- 休業損害としては、事故直前3か月の収入から基礎日額を算定し、事故日の翌日から職場復帰の前日まで114日と退職の翌日から症状固定日まで557日を休業日数として認められました。
- 逸失利益としては、左膝の後遺障害による労働能力喪失期間は一般的な就労可能期間である67歳になるまで40年、労働能力喪失割合は14%、基礎収入は女性の学歴計全年齢平均賃金である349万0300円とし算定されました。
弁護士先生、こちらの女性は事故で左膝の打撲によって12級の後遺障害が残ってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、左膝の打撲の結果、タナ障害が発生したため12級の等級認定を受けました。
タナ障害とは、外傷によつて膝蓋内側滑膜壁(タナ)に断裂、出血、瘢痕化が生じた場合に発現するものです。
単なる打撲と軽く考えずに精密検査を行うと、レントゲンには写りにくい異常が判明し、本件のように12級以上の等級が得られることもあります。
③専業主婦(女・46歳)損害額1671万7844円の判例
3つ目に、東京高等裁判所の第19民事部の判決、平成25年(ネ)3807号事件をご紹介します。
46歳の専業主婦が、左肘打撲のけがを負った事故です。
属性 | 専業主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 46歳 |
事故の内容 | 交差点内で被害者の同乗する普通車と加害車(貨物車)が出会い頭に衝突した。 |
傷害の内容 | 左肘打撲 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
入院 | 不明 |
損害総額 | 1671万7844円 |
---|---|
うち慰謝料 | 309万円 |
うち休業損害 | 355万7432円 |
うち逸失利益 | 135万1258円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1671万7844円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が199万円、後遺障害の慰謝料が110万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は主婦であるので、女性の全年齢平均額349万9900円を基礎収入として、事故から症状固定までの期間371日分につき算定されました。
- 逸失利益は、休業損害と同じく349万9900円を基礎収入とし、10年にわたって5%の労働能力を失ったものとして算定されました。
弁護士先生、こちらの主婦の方は左上肢に神経症状が残ったとして後遺障害14級が認定されたようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
被害者は、本件事故によって激しい疼痛を伴うCRPSを発症したと主張していましたが、裁判所はCRPSを認めませんでした。
最終的には、左上肢の神経症状として14級9号の等級が認定されました。
通常、14級9号の後遺障害の逸失利益は、5%の労働能力を5年にわたり失うものとして計算することが一般的です。
しかし、今回の判決では、被害者の症状を勘案して、5%の労働能力を10年にわたり失ったものとして算定されました。
その点で、被害者側と加害者側の主張の中間をとった結果となりました。
④准看護師(女・62歳)損害額777万0755円の判例
4つ目に、京都地方裁判所の判決、平成24年(ワ)837号事件をご紹介します。
准看護師の女性が右肩関節打撲などのけがを負った事故です。
属性 | 准看護師 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 62歳 |
事故の内容 | 被害者がバスに乗車する際、バスの閉じるスライドドアの先端部が、被害者の右肩背部に衝突した。 |
傷害の内容 | 頸椎捻挫、右肩関節打撲、右前腕部打撲 |
後遺障害等級 | 12級6号(右肩痛・可動域制限) |
入院 | 0日 |
損害総額 | 777万0755円 |
---|---|
うち慰謝料 | 440万円 |
うち休業損害 | 12万6468円 |
うち逸失利益 | 264万3462円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額777万0755円になりました。
- 慰謝料としては、通院に対する慰謝料が150万円、後遺障害の慰謝料が290万円認められました。
- 休業損害としては、被害者は病院の准看護師として非常勤で勤務していましたが、本件事故により12日休業したと認められ、基礎収入は事故前の収入から日額1万0539円として算定されました。
- 逸失利益としては、事故前の収入244万5300円を基礎収入とし、労働能力を10年間、14%喪失したとして算定されました。
弁護士先生、こちらの准看護師の女性はバスの乗車時に事故に遭われてしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件の被害者は、バスのドア開閉操作の誤りによって右肩を打撲した後、断続的に痛みが継続し、最終的に肩の可動域制限と痛みの後遺症(12級6号)が残りました。
被害者は事故前にも肩の痛みを訴えて病院での治療を受けていた点が問題となりましたが、裁判所は損害額から3割減額することで賠償額の調整を図りました。
⑤会社員(男・年齢不明)損害額584万9493円の判例
最後に、横浜地方裁判所の第6民事部の判決、平成23年(ワ)3249号事件をご紹介します。
会社員の男性が腰部打撲や骨盤打撲などのけがを負った事故です。
属性 | 会社員 |
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性別 | 男 |
年齢 | 不明 |
事故の内容 | 停車していた被害車両に、加害車両が衝突した。 |
傷害の内容 | 腰部打撲、骨盤打撲、頭蓋内出血の疑いとの診断 |
後遺障害等級 | 14級(仙骨部痛) |
入院 | 22日 |
損害総額 | 584万9493円 |
---|---|
うち慰謝料 | 205万円 |
うち休業損害 | 0円 |
うち逸失利益 | 374万6713円 |
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額584万9493円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が95万円、後遺障害の慰謝料が110万円認められました。
- 逸失利益は、事故前までの同会社における給与および賞与は601万2924円であったことが認められ、これを基礎収入とし、労働能力喪失率は5%、後遺障害は20年間続くとして算定されました。
弁護士先生、こちらの男性は打撲による仙骨部痛によって後遺障害14級が認定されました。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
この事案では、事故後に脳脊髄液減少症を発症したとして高額な賠償金を請求していましたが、裁判所は脳脊髄液減少症は認めず、仙骨部の神経症状のみ後遺症として認めました。
14級ではありますが、労働能力喪失期間として20年間認定されましたので、金額は比較的高額となっています。
このように、14級の場合でも裁判をすれば高額な賠償を認められることもあります。
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まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。