一時停止無視の事故でも過失割合は10対0にならない!?点数・罰金は?

  • 一時停止無視,事故

この記事のポイント
  • 一時停止無視の事故の過失割合は状況により様々だが、10対0になることは少ない
  • 一時停止無視をした際の運転免許の違反点数は2点
  • 一時停止無視は、故意なら3ヵ月以下の懲役か5万円以下の罰金、過失なら10万円以下の罰金だが、反則金を納めれば免れられる

一時停止無視の事故の過失割合や違反点数・罰金などを確認したいという人におすすめの記事です。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

一時停止無視の車両にぶつけられた結果、ケガをしたり、自分の車が廃車になったりすれば、当然、慰謝料や賠償金を受け取れます。

しかし、交通事故で受け取れる慰謝料や賠償金は、被害者にも過失があると判断されるとその分減額されてしまいます。

そして、相手の一時停止無視による事故なのに、保険会社から過失割合が10対0ではないと言われると納得いかないかもしれません。

保険会社は、過去の判例を基に作成された基準の基本過失割合から状況に応じて修正要素を考慮して、過失割合を提示してきます。

そこで、一時停止無視による交通事故の基本過失割合や修正要素をケース別に確認していきたいと思います。

一時停止無視の事故のケース別過失割合

一時停止無視の事故のケース別過失割合

過失割合の判断における一時停止無視とは、道路交通法43条違反の場合を指すのが一般的です。

車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。

(以下略)

つまり、一時停止標識(いわゆる「止まれ」の標識)により、一時停止規制されている場所で、一時停止しなかったような場合です。

①自動車同士の一時停止無視の事故

一時停止無視の事故といっても、その発生状況は様々なものが想定されます。

そのため、基本過失割合や修正要素もその状況により異なります。

ここからは、ケースごとに分類した上で詳しく紹介していきます。

ⅰ信号機のない交差点における直進車同士の事故

このケースの中でも、事故発生時の双方の車の交差点進入時の走行速度によって、基本過失割合は以下の表のように違いがあります。

一時停止無視の車(A)と他方車(B)の基本過失割合
速度 A B
同程度の速度 80 20
A:減速なし
B:減速あり
90 10
A:減速あり
B:減速なし
70 30

別冊判例タイムズ38号104図参照

このように、一時停止規制のない被害者にも一定の基本過失割合があるとされています。

その理由は道路交通法第36条4項にあります。

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

つまり、交差点に進入する際には、一時停止規制のない側の車にも安全確認義務が求められているということです。

交差点の事故では、通常、一時停止規制のない側も交差道路を通行する車両に対する安全確認義務違反があったと判断されます。

そのため、原則として基本過失割合が10対0とはならないのです。

ただし、A車が減速していない一方で、B車が徐行していたケースの基本過失割合は10対0が相当と考えられています。

そして、このケースの修正要素は以下の表のとおりです。

一時停止無視の車(A)と他方車(B)の過失割合の修正要素
修正要素 A B
著しい過失 +10
重過失 +20

ⅱ信号機のない交差点における右折車と直進車の事故

このケースの中でも、

  • 右折車と直進車のどちらが一時停止無視をしたか
  • 直進車が一時停止無視をした場合、右折車は左方車か右方車か

などによって、基本過失割合は異なります。

具体的な数値は以下の表のとおりです。

右折車(A)と直進車(B)の基本過失割合
状況 A B
アAが一時停止無視 85 15
イBが一時停止無視
(Aが左方車)
30 70
ウBが一時停止無視
(Aが右方車)
40 60

別冊判例タイムズ38号120~122図参照

そして、このケースの修正要素は以下の表のとおりです。

右折車(A)と直進車(B)の過失割合の修正要素
修正要素 A B
B減速せず +10
A既右折
(イは適用外)
+15
B速度違反
(15㎞以上)
+10
B速度違反
(30㎞以上)
+20
A徐行なし +10
A右折禁止違反 +10
A早回り右折
(ウは適用外)
+10(ア)
+15(イ)
著しい過失 +10
重過失 +15(ア・イ)
+20(ウ)
+20

ⅲ信号機のない交差点における左折車と直進車の事故

このケースの基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。

一時停止無視の左折車(A)と直進車(B)の過失割合
A B
基本過失割合 80 20
A徐行なし +10
B減速せず +10
著しい過失 +10
重過失 +20

別冊判例タイムズ38号128図参照

ⅳ信号機のない交差点における右折車同士の事故

このケースの基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。

一時停止無視の右折車(A)と他方右折車(B)の過失割合
A B
基本過失割合 75 25
右折方法違反 +10
右折禁止違反 +10
著しい過失 +10
重過失 +20

別冊判例タイムズ38号132図参照

ⅴ丁字路交差点における直進車と右左折車の事故

このケースの基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。

直進車(A)と一時停止無視右左折車(B)の過失割合
A B
基本過失割合 15 85
著しい過失 +10
重過失 +20

別冊判例タイムズ38号141図参照

②車とバイクの一時停止無視の事故

車とバイクの事故の過失割合は、自動車同士の事故に比べ、バイクが有利に扱われます。

ⅰ信号機のない交差点における直進車同士の事故

このケースの中でも、

  • 車とバイクのどちらが一時停止無視をしたか
  • 双方の交差点進入時の速度

などによって、基本過失割合は異なります。

具体的な数値は以下の表のとおりです。

直進車(A)と直進バイク(B)の基本過失割合
一時停止無視 Aが無視 Bが無視
速度 A B A B
同程度の速度 85 15 35 65
A:減速なし
B:減速あり
90 10 45 55
A:減速あり
B:減速なし
75 25 20 80

別冊判例タイムズ38号169及び170図参照

そして、このケースの修正要素は基本的に以下の表のとおりです。

直進車(A)と直進バイク(B)の修正要素
修正要素 A B
著しい過失 +10
重過失 +20

ただし、一時停止無視のAが減速せず、Bが減速したケースでは、

  • Bの著しい過失は+5
  • Bの重過失は+10

とされています。

ⅱ信号機のない交差点における右折車と直進車の事故

このケースの中でも、

  • 右折車と直進車のどちらが一時停止無視をしたか
  • 直進車が一時停止無視をした場合、右折車は左方車か右方車か
  • 車とバイクのどちらが右折車・直進車か

によって、基本過失割合及び修正要素は異なります。

直進車一時停止無視・右折車右方
車(A)とバイク(B)の過失割合
A直進
B右折
A右折
B直進
A B A B
基本過失割合 65 35 55 45
右折車徐行なし +10 +10
右折禁止違反 +10 +10
直進車減速せず +10 +10
既右折 +10 +10
直進車速度違反
(15㎞以上)
+10 +10
直進車速度違反
(30㎞以上)
+20 +20
著しい過失
重過失
+10~20 +10 +10

別冊判例タイムズ38号201及び202図参照

このケースでは、一時停止無視をしたバイクの方が基本過失割合が低いことになります。

直進車一時停止無視・右折車左方
車(A)とバイク(B)の過失割合
A直進
B右折
A右折
B直進
A B A B
基本過失割合 75 25 45 55
右折車徐行なし +10 +10
右折禁止違反 +10 +10
早回り右折 +10 +10
直進車減速せず +5 +10
直進車速度違反
(15㎞以上)
+10 +10
直進車速度違反
(30㎞以上)
+20 +20
著しい過失
重過失
+5~10 +10 +10

別冊判例タイムズ38号203及び204図参照

右折車一時停止無視
車(A)とバイク(B)の過失割合
A直進
B右折
A右折
B直進
A B A B
基本過失割合 35 65 85 15
右折車徐行なし +10 +10
右折禁止違反 +5 +5
早回り右折 +10 +10
直進車減速せず +10 +10
既右折 +10
直進車速度違反
(15㎞以上)
+10 +10
直進車速度違反
(30㎞以上)
+20 +20
著しい過失
重過失
+10~20 +10 +5~10 +10

別冊判例タイムズ38号205及び206図参照

③車と自転車の一時停止無視の事故

車と自転車の事故の過失割合は、バイクよりもさらに自転車が有利に扱われます。

ⅰ信号機のない交差点における直進車同士の事故

このケースでは、

車と自転車のどちらが一時停止無視をしたか

によって、基本過失割合及び修正要素は以下のようになります。

直進車(A)と直進自転車(B)の過失割合
一時停止無視 Aが無視 Bが無視
A B A B
基本過失割合 90 10 60 40
夜間 +5
B右側通行・左方から進入 +5 +5
B児童等・高齢者 +5 +10
B自転車横断帯通行 +5 +10
B横断歩道通行 +5
著しい過失 +5 +10 +10 +10
重過失 +10 +15 +20 +15

別冊判例タイムズ38号243及び244図参照

このケースでは、一時停止無視をした自転車の方が基本過失割合が低いことになります。

ⅱ信号機のない交差点における右折車と直進車の事故

このケースの中でも、

  • 右折車と直進車のどちらが一時停止無視をしたか
  • 直進車が一時停止無視をした場合、右折車は左方車か右方車か
  • 車と自転車のどちらが右折車・直進車か

によって、基本過失割合及び修正要素は異なります。

直進車一時停止無視・右折車右方
車(A)と自転車(B)の過失割合
A直進
B右折
A右折
B直進
A B A B
基本過失割合 70 30 65 35
夜間 +5
B児童等・高齢者 +5 +10
A徐行なし +5 +10
Bの明らかな先入 +5 +10
右折禁止違反 +10
B自転車横断帯通行 +10
B横断歩道通行 +5
A速度違反
(15㎞以上)
+10
A速度違反
(30㎞以上)
+20
著しい過失
重過失
+10~20 +5~10 +5~10

別冊判例タイムズ38号277及び278図参照

直進車一時停止無視・右折車左方
車(A)と自転車(B)の過失割合
A直進
B右折
A右折
B直進
A B A B
基本過失割合 80 20 60 40
夜間 +5
B児童等・高齢者 +5 +10
A徐行なし +5 +10
Bの明らかな先入 +5 +10
右折禁止違反 +10
B自転車横断帯通行 +10
B横断歩道通行 +5
A速度違反
(15㎞以上)
+10
A速度違反
(30㎞以上)
+20
著しい過失
重過失
+5~10 +5~10

別冊判例タイムズ38号279及び280図参照

右折車一時停止無視
車(A)と自転車(B)の過失割合
A直進
B右折
A右折
B直進
A B A B
基本過失割合 55 45 90 10
夜間 +5
B児童等・高齢者 +10 +5
A徐行なし +5 +10
Bの明らかな先入 +10 +5
右折禁止違反 +10
B自転車横断帯通行 +5
A速度違反
(15㎞以上)
+10
A速度違反
(30㎞以上)
+20
著しい過失
重過失
+10~15 +5~10 +10~20 +5~10

別冊判例タイムズ38号281及び282図参照

どのケースでも、一時停止無視をした自転車の方が基本過失割合が低いことになります。

④自転車同士の一時停止無視の事故

自転車同士の一時停止無視の事故は、自動車と比較して

  • 一時停止規制が厳密に順守されていない
  • 低速かつ操作が比較的容易で事故の回避可能性が高い

という社会実態及び自転車の特性を考慮し、自動車同士の事故より一時停止規制側の自転車の過失を10%有利に修正しています。

具体的な基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。

ⅰ信号機のない交差点における直進車同士の事故

一時停止無視の自転車(A)と他方自転車(B)の過失割合
A B
基本過失割合 70 30
児童等・高齢者
(被害者の場合のみ)
–10
左側通行義務違反 +10~20
通行禁止の歩道通行 +10~20
高速度進入 +10
著しい高速度進入 +20
夜間無灯火 +5~10
著しい過失
重過失
+10~30

公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」参照

ⅴ丁字路交差点における直進車と右左折車の事故

このケースの基本過失割合及び修正要素は以下の表のとおりです。

直進車(A)と一時停止無視右左折車(B)の過失割合
A B
基本過失割合 25 75
児童等・高齢者
(被害者の場合のみ)
–10
左側通行義務違反 +10~20
通行禁止の歩道通行 +10~20
高速度進入 +10
著しい高速度進入 +20
夜間無灯火 +5~10
著しい過失
重過失
+10~30

公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」参照

ただし、上記の自転車同士の事故の過失割合の基準は、試案であるため、示談交渉ではこの基準の適用が争われる可能性があります。

一時停止無視の違反点数・罰金(反則金)

一時停止無視の違反点数・罰金(反則金)

一時停止無視やそのことが原因で相手方にケガをさせる事故(人身事故)をした人は、慰謝料等の支払い(民事責任)だけでなく

  • 免許の違反点数の加算(行政責任)
  • 懲役や罰金などの罰則(刑事責任)

も問題になります。

最後に、具体的な違反点数や懲役・罰金の数字をご紹介します。

一時停止無視をした違反点数は2点

一時停止無視、つまり、指定場所一時不停止等(道路交通法第43条違反)の違反点数は2点です。

(その他の違反行為の点数も知りたい方は

警視庁HP「交通違反の点数一覧表」をご確認ください。)

そのため、2回以上の行政処分歴がない限り、一時停止無視をしただけで直ちに免停になることはありません。

(違反点数・前歴と行政処分の関係を詳しく知りたい方は警視庁HP「行政処分基準点数」をご確認ください。)

また、過去2年以上無事故・無違反であれば、一時停止無視による違反点数は、その後3か月間無事故・無違反なら累積されません。

点数制度における点数の計算は、過去3年以内の違反行為等の点数を合計することとされていますが、無事故・無違反の方の優遇措置として、次の場合には合算されません。

(略)

2年以上無事故・無違反・無処分で、1点、2点又は3点の違反行為をし、その後3か月以上無事故・無違反で経過したときは、その点数は累積されません。

ただし、この場合であっても、この点数は消えるのではなく、違反歴として残っています。

上記のとおり、違反歴は残るので、ゴールド免許を持つドライバーは次回更新時からブルー免許になる点には注意が必要です。

一時停止無視により人身事故を起こした際の点数

一時停止無視が原因で人身事故を起こした場合、免許の違反点数は死傷や責任の程度に応じて以下の付加点数が加算されます。

違反行為に付する付加点数(交通事故の場合)
死傷/責任の程度 責任重い それ以外
被害者死亡 20点 13点
・被害者に後遺障害残存
・加療期間90日以上
13点 9点
加療期間30~89日 9点 6点
加療期間15~29日 6点 4点
加療期間14日以下 3点 2点

警視庁HP「交通事故の付加点数」参照

そのため、一時停止無視をした上、人身事故まで起こしてしまうと、ゴールド免許の方も一発免停の可能性があります。

一時停止無視は大きな事故に繋がりやすい危険な違反行為ですので十分に注意しましょう。

一時停止無視した場合の懲役・罰金

一時停止無視に対する刑罰は

  • 故意の場合3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金
  • 過失の場合10万円以下の罰金

になります。(道路交通法第119条)

一時停止無視の刑罰を免れる方法

ただし、比較的軽微な違反にあたる一時停止無視に対する刑罰は、反則金というお金を納めることにより、回避することができます。

罰金と異なり、反則金の納付は前科がつくことにはなりません。

一時停止無視に対する反則金の金額は以下の表のとおりです。

一時停止無視の反則金
車種 金額
大型車 9000円
普通車 7000円
二輪車 6000円
原付 5000円

道路交通法施行令別表第六参照

反則金の納付により刑罰を免れられるのは一時停止無視のみの場合であり、人身事故に発展した場合は、反則通告制度の適用外です。

一時停止無視により人身事故を起こした際の刑罰

一時停止無視が原因で人身事故を起こした場合の刑罰は、

7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

になります。(自動車運転処罰法第5条 過失運転致死傷罪)

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最後に一言アドバイス

それでは、最後に、一時停止無視による事故に関して、アドバイスを一言お願いします。

相手の一時停止無視による事故でも、過失割合は10対0にならないことが多いのが実情です。

とはいえ、相手の保険会社との示談交渉で、不利な過失割合が認定されないよう、不明点があれば示談前に弁護士に相談しましょう。

一方、一時停止無視をしてしまった人は、慰謝料だけでなく免許の違反点数や罰金などの刑罰に対する検討や対応も必要になります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 一時停止無視による交通事故の過失割合
  • 一時停止無視に対する運転免許の違反点数
  • 一時停止無視に対する罰金などの刑罰

などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

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