漫画「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」と「コウノドリ」からの学び

  • 交通事故,漫画

漫画「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」と「コウノドリ」からの学び

交通事故は可能であれば遭いたくないものですが、いつ誰が巻き込まれてもおかしなものではありません。

たとえば、2012年に映画化もされたヘルタースケルターの作者である人気漫画家の岡崎京子さんも、その被害者の一人です。

たくさんの人気漫画を世に送り出してきましたが、1996年に交通事故に遭い、そこから新作を描くことができていません。

今もリハビリ中ということですが、心から回復をお祈りしております。

このようにこれまでの人生を奪ってしまう可能性がある交通事故…。

交通事故により、人生が変わってしまったことをテーマに取り上げている漫画も多くありますね。

そこで今回は、

  • 実録漫画「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」
  • 産婦人科を舞台にした漫画「コウノドリ」

以上の、交通事故を題材として扱っている2つの漫画から、交通事故による後遺症損害賠償などについて学んでいきたいと思います。

上記の漫画と併せて、被害に遭われた皆様の今後に少しでも役立てれば幸いです。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

交通事故の被害に遭い、さらに事故後の対応や怪我の治療、保険会社との交渉に追われ、大きな不安やストレスを感じていらっしゃる方が多いはずです。

今回は、これまでに多くの相談を受けてきた経験も踏まえ、具体的な事例も紹介しながら、わかりやすく解説させていただきます。

少しでも被害に遭われた皆様のお役に立てればと思っております。

交通事故は、漫画の中だけの話ではなく、現実にも起こり得るものなのです。

まずは、実際に交通事故の被害に遭われ、重症の怪我と後遺症から立ち直っていく過程を描いた、実録漫画から見ていきたいと思います。

実録漫画「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」からの学び

実録漫画「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」からの学び

「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」を読んで…

皆さまは、交通事故に関する「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」という実録漫画をお読みになったことがありますでしょうか?

同じように交通事故による後遺症に悩んでいらっしゃる方や、そのご家族の方がお読みになると、共感する部分や励みになる部分があるのではないかと思います。

この漫画の作者であるエクループ(大和ハジメ)氏は、19歳の時に、トラックと衝突し頭を強打するという交通事故に遭いました。

その結果、脳挫傷びまん性軸索損傷の怪我を負ってしまいます。

脳外科専門病院の医師からは、「ここまで酷いのは見たことがない」と言われるほどの重症だったそうです。

幸い一命はとりとめ、36日後にはっきりと意識が回復したものの、高次脳機能障害による失語症や視覚障害(斜視)、左片麻痺などの後遺症が残ってしまいました。

それでもしっかりと大学も卒業され、仕事にも就き、戸惑いながらも自分に障害があることを理解していきます。

そして障害を受け入れ、立ち直るまでが実体験に基づき描かれています。

ではここからは、漫画の中では描かれていない、怪我や後遺症の詳しい内容や、慰謝料などの損害賠償について解説していきます。

脳挫傷の症状とは

まず、作者であるエクループ氏が負った脳挫傷についてです。

脳挫傷:

頭部への強い衝撃により、脳に損傷や出血が発生している状態

脳挫傷については、挫傷した脳を治す根本的な治療法はないそうです。

出血が多い場合には、手術により脳内の圧力が上がり過ぎないようにする対処療法が行われるとのこと。

●脳挫傷そのものに対する根本的な治療はない

〇出血や脳浮腫などに対する対症療法(手術や薬物療法)が中心となる

〇その後、ハビリテーションで徐々に脳機能の回復を目指す

●血腫が小さい、もしくは脳浮腫が軽度の場合

〇出血が引くのを待つため、治療を行わずに様子を見ることもある

〇薬物療法

・脳圧降下薬(グリセオールやマンニトール)の点滴注射

・血腫に対する漢方薬での対症療法

●出血がひどく血腫が大きい場合、もしくは脳浮腫が強い場合は手術を検討することがある

〇手術:頭蓋骨の一部を切り取ることで、内部の圧力が高まり過ぎないようにする

交通事故で脳挫傷を負った場合の治療法やリハビリ、残ってしまう可能性のある後遺症損害賠償請求に関しては、こちらの記事で詳しく解説されています。

良ければご覧になってみてください。

びまん性軸索損傷の症状とは

続いて、あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、びまん性軸索損傷についてです。

びまん性軸索損傷:

頭に外傷を負ったあと、頭部CTを撮影しても脳出血などの異常は認めないが、意識障害が数時間以上続く病気

びまん性軸索損傷についても、特にこれといった治療法はなく、自然回復を待つしかないようです。

回復することも多いですが、エクループ氏のように高次脳機能障害という後遺症が残ることも多く、その後のリハビリが非常に重要となってくるそうです。

●びまん性軸索損傷に対する特別な治療はなく、時間が経つにつれ少しずつ回復していく

●脳挫傷や脳内出血がない場合は、時間と共に回復はしていくが、後遺症が残ることが多い

交通事故でびまん性軸索損傷を負った場合の治療法やリハビリ、残ってしまう可能性のある後遺症や、損害賠償請求に関しては、こちらの記事で詳しく解説されています。

良ければご覧になってみてください。

どちらも脳に障害を受けるものです。

よって、高次脳機能障害や身体の麻痺といった後遺症が残ってしまう可能性が高いと言えるでしょう。

また、損傷した脳の場所によっては、エクループ氏のように視覚障害が残ってしまう可能性もあるようです。

交通事故で頭を強打した場合の後遺症例①高次脳機能障害

ここまでで、何度も高次脳機能障害という病名が出てきました。

普段の生活ではあまり馴染みがないのではないかと思いますが…。

エクループ氏のように脳に損傷を負ってしまった場合、記憶力や人格が変わってしまうという後遺症が残ることがあり、それが高次脳機能障害と診断されることになります。

人格が変わってしまうほど重い後遺症であり、ご本人だけでなく、ご家族の方にも大きな影響が出てくるでしょう。

主な症状としては、以下のようなものが挙げられるそうです。

高次脳機能障害の症状例
症状 症状の例
失語症 ・相手の言葉を理解できない
・うまく言葉が出てこず、なめらかに話せない
記憶障害 ・自分が何者でどこにいるのかわからない
・今がいつなのかわからなくなる
病識欠如 ・以前の人格と違うことに気づかない
失行症 ・体を思うように動かせず、道具をうまく使えない
失認症 ・物の形や色、触っているものが何かわからない
意欲・発動性低下 ・以前と比べてやる気が沸かない
・すぐ眠ってしまう

先ほどもお伝えしましたが、治療法としてはリハビリがメインとなってくるようです。

高次脳機能障害に対するリハビリ

高次脳機能障害の症状は、記憶障害人格変化など様々となっています。

よって、症状に応じたリハビリが必要となってきます。

そこで、

  • 記憶力、集中力、判断力などの認知機能や対人関係を回復するための「作業療法」や「言語聴覚療法」
  • 心理療法による「認知リハビリテーション」や「ソーシャルスキルトレーニング」
  • 日常生活動作や交通機関の利用などに関係する障害に対する「生活訓練」
  • 就労に関するカウンセリングや訓練を行う「職業的リハビリテーション」

などが行われるとのこと。

国立障害者リハビリテーションセンターによると、

訓練を受けた障害者で障害尺度に改善のみられた人の74%が6か月で、97%は1年でその成果が得られています。

と報告されています。

高次脳機能障害について、より詳しく知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。

交通事故で頭を強打した場合の後遺症例②視覚障害

また、エクループ氏のように、目には直接怪我を負っていなくても、脳に損傷を負った場合、

損傷した脳の部位によっては、失明などの視力障害が後遺症として残ってしまう

可能性もあるのだそうです。

具体的には、以下のような障害が考えられます。

目の後遺症
  1. ① 視力障害
  2. ② 調節機能障害
  3. ③ 運動機能障害
  4. ④ 視野障害

エクループ氏が負った斜視は、傷病名としては外転神経麻痺動眼神経麻痺滑車神経麻痺と呼ばれ、「③運動機能障害」として後遺症認定されることになるでしょう。

具体的な治療法や等級認定については、こちらの記事をご覧になってみてください。

交通事故で頭を強打した場合の後遺症例③身体の麻痺

脳に損傷を負った場合、身体に麻痺が残ることは、何となく想像ができるのではないでしょうか。

脳の損傷の仕方により、麻痺の種類は以下の4つに分けられるようです。

  • 片麻痺:身体の左右どちらか片側に起こる麻痺
  • 対麻痺:両側の上肢または下肢の麻痺
  • 四肢麻痺:両側の上肢と下肢の麻痺
  • 単麻痺:左右どちらかの上肢または下肢だけの麻痺

麻痺の種類

麻痺の原因となるのは、脳損傷の他に脊髄損傷なども挙げられます。

エクレール氏は、左半身の片麻痺が残ったとありましたね。

麻痺が残った場合にも、基本的にはリハビリを行い、麻痺が残った身体で日常生活を送っていくための訓練が行われます。

麻痺に対するリハビリ

身体の大部分に麻痺が残ってしまった場合には、術後、まずはベッドのリクライニング角度を上げていく訓練が行われるそうです。

というのも、長時間寝ていたことで、血圧が低下しているため、急に体を起こすと脳貧血を起こす恐れがあるということです。

その後は、ケースによって車椅子に移る訓練なども行われます。

車椅子上でも脳貧血を起こさないようになれば、本格的なリハビリが開始となります。

理学療法

筋力の強化や持久力の強化、指先の機能回復に向けた訓練などが行われます。

また、トイレや入浴、掃除などに関する訓練も行われるそうです。

漫画では描かれていない後遺症に対する慰謝料などの損害賠償

ところで、漫画の中では詳しく解説されていませんが、作者は併合8級という後遺症認定を受け、自賠責から約800万円の損害賠償を受け取ったそうです。

その800万円は両親に返して自分で仕事に就き、「自分の力で800万円を稼ぐことができたら、障害を乗り越えたという自信を持とう」という目標を決め、実際にその目標を達成したという話には思わずグッときました。

ではまず、自賠責とは何でしょうか?

正式には「自動車損害賠償責任保険」と言います。

自動車損害賠償保障法により、自動車やバイクの所有者が加入することが義務付けられている保険となっています。

自賠責保険の限度額と保証内容

以上のように加入が義務付けられている自賠責保険ですが、あくまでも事故被害者の方への最低限の補償を目的とした保険となっているようです。

エクレール氏のように、交通事故による怪我で入院し、治療を受け、後遺症が残ってしまったようなケースでは、以下のような補償が成されることになります。

傷害に対する補償

傷害に対する補償としては、「治療費」や「休業損害」、「慰謝料」や「その他実費」などが支払われます。

限度額は、被害者1名につき合計で120万円までとなっているそうです。

傷害に対する補償
治療費
診察代や手術代、投薬代や入院代の費用など。
【支払い基準】
治療のためにかかった必要かつ妥当な実費。
看護料
原則として12歳以下のお子様に近親者の方が付き添った場合や、医師が看護の必要性を認めた場合の、入院中の看護料や自宅看護料、通院看護料。
【支払い基準】
・入院の場合:4100円/日
・自宅看護もしくは通院の場合:2050円/日
・それ以上の収入減の立証で近親者の場合:19000
・それ以外:地域の家政婦料金が限度
諸雑費
入院中に要した雑費。
【支払い基準】
原則として1100円/日。
通院交通費
通院に要した交通費。
【支払い基準】
通院のためにかかった必要かつ妥当な実費。
義肢等の費用
義肢や義眼、めがね、補聴器、松葉杖などの費用。
【支払い基準】
必要かつ妥当な実費。
めがねの費用は50000円が限度。
診断書等の費用
診断書や診療報酬明細書などの発行手数料。
【支払い基準】
発行に要した、必要かつ妥当な実費。
文書料
交通事故証明書や印鑑証明書、住民票などの発行手数料。
【支払い基準】
発行にかかった必要かつ妥当な実費。
休業損害
怪我の治療などで失われた収入(有給休暇の使用、家事従事者を含む)。
【支払い基準】
原則として5700円/日。
それ以上の収入減の立証で19000円を限度として、その実費。
慰謝料
事故で怪我をしたことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。
【支払い基準】
4200円/日。
対象日数は被害者の怪我の状態や実治療日数などを考慮して治療期間内で決められる。
後遺症に対する補償

治療を行ったにも関わらず、残念ながら怪我が完治せずに後遺症が残ってしまった場合…。

その後遺症に対する補償として、後遺症障害の程度に応じた「慰謝料」や「逸失利益」などが支払われます。

後遺症の程度は、1級~14級に分けられた等級という形で判断されるそうです。

ちなみに後遺症としては、自動車損害賠償保障法施行令の別表第1もしくは別表第2に該当する場合が対象となります。

該当内容について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

そして、それぞれの限度額は以下のようになっているそうです。

後遺症に対する補償
慰謝料
後遺症が残ったことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。
【支払い基準】
下記の表参照※
逸失利益
身体に残った障害による労働能力の減少で、将来発生するであろう収入減。
【支払い基準】
収入および障害の各等級に応じた労働能力喪失率で、喪失期間などによって算出。

具体的な等級ごとの限度額は以下の表のようになるそうです。

逸失利益の計算に必要となる労働能力喪失率も等級ごとに示してありますので、併せてご覧になってみてください。

※ 等級ごとの賠償限度額と労働能力喪失率
等級 限度額 労働能力喪失率
1
(別表第1
4000万円 100
2
(別表第2
3000万円
1
(別表第2
2
(別表第2
2590万円
3 2219万円
4 1889万円 92
5 1574万円 79
6 1296万円 67
7 1051万円 56
8 819万円 45
9 616万円 35
10 461万円 27
11 331万円 20
12 224万円 14
13 139万円 9
14 75万円 5

また、逸失利益の計算方法については、こちらの記事もご覧になってみてください。

エクレール氏が受け取った全ての金額はわかりませんが、確かに「8級」の後遺症が残った場合には、最高で約800万円の損害賠償金を受け取ることになります。

ちなみに、事故の相手が任意保険にも加入していた場合、自賠責の限度額を超える分の損害賠償を受け取れる可能性があるということです。

任意の自動車保険と自賠責の関係

ただし、その可能性があると言っても、被害者の方だけで任意保険会社と交渉した場合には、低い示談金しか提示されないことがほとんどなのだそうです。

ところが、弁護士と一緒に交渉すれば、大幅に金額が増額される可能性があるということです!

保険会社との交渉では、一人で悩まず、ぜひ弁護士などの専門家に相談してみてくださいね。

等級の併合とは

ところで、エクレール氏は、高次脳機能障害や左片麻痺、視覚障害の後遺症が残り、併合で8級という認定がなされていました。

そのように、身体の別の部位に異なる後遺症が残った場合には、それぞれの等級を併合して認定されるのだそうです。

等級の併合ルールは以下の通りになっています。

等級併合のルール

ケース 等級併合の方法 具体例
13級以上の後遺症が2つ以上ある場合 重い方の後遺症を1級繰り上げる 11級と12級の後遺症
⇒併合10
8級以上の後遺症が2つ以上ある場合 重い方の後遺症を2級繰り上げる 8級と7級の後遺症
⇒併合5
5級以上の後遺症が2つ以上ある場合 重い方の後遺症を3級繰り上げる 5級と4級の後遺症
⇒併合1

ちなみに、1つが14級の認定であった場合には、等級は繰り上がらず、重い方の等級のまま認定されるということです。

たとえば、14級11級の後遺症を負った場合には、併合11級の認定を受けることになります。

後遺症の等級に応じて、慰謝料や逸失利益の金額が変わってくることになります。

つまり、後遺症の等級認定は非常に重要なものとなります。

適正な等級認定に向けては、弁護士に相談することも検討してみた方が良いのかもしれません。

漫画「コウノドリ」妊娠中の母親が交通事故に遭う話からの学び

漫画「コウノドリ」妊娠中の母親が交通事故に遭う話からの学び

「コウノドリ4巻12話」を読んで…

次に、皆さまは漫画「コウノドリ」をお読みになったことがありますでしょうか?

ドラマ化をされたことで、ご存知の方も多いはずです。

https://twitter.com/lUKjAqiYg5XaHDk/status/1132637551380951040

その4巻で、妊娠36週の妊婦さんが交通事故の被害に遭ってしまう話が出てきます。

妊婦さんは左側頭部の硬膜下血腫脳挫傷を負い、意識不明の重体となります。

しかし、お腹の中にいる赤ちゃん(胎児)と胎盤は奇跡的に無事です。

胎児が無事なうちに、分娩誘発を行い、出産させようとすれば母体の脳圧が上がり、脳ヘルニアにより死亡してしまう可能性がある…。

しかし、このままでは胎児の命も危険にさらされる…。

旦那さんは、奥さんの意識回復の可能性が低いことを説明されるも、母親の命を優先するか、お腹の中にいる赤ちゃんの命を優先させるかの選択を迫られる…という話です。

硬膜下血腫の症状とは

以上は漫画のフィクションですが、実際にも十分起こり得る話です。

というのも、通常、交通事故にあった場合、人は頭部をかばう傾向にあるそうです。

しかし、妊娠している方の場合、無意識にお腹をかばう方がほとんどなのだそうです。

よって、妊婦さんの場合、交通事故により重い頭部外傷を負ってしまう可能性が高いということになるのです。

この漫画の場合は、硬膜下血腫脳挫傷でしたね。

脳挫傷については、先ほどご紹介した通りです。

急性硬膜下血腫:

怪我が原因で、硬膜下(硬膜と脳の間のスペース)で出血している病気。出血量が多くなり脳を圧迫すると、手足の動かしづらさや意識が悪いといった症状があらわれる

硬膜下血腫となった場合、血腫の量によっては、救命はできても、意識が戻らない、寝たきりになるなどの後遺症が残ってしまうこともあるそうです。

症状が重い場合には、以下のような手術が行われます。

●手術

〇血腫除去術

・血腫がある側の頭皮を大きく切り、頭蓋骨の一部を外して、硬膜の下の血腫を吸引して除去する

・出血している部位があれば止血を行う

〇外減圧術

・手術後脳が腫れることが予想される場合に、外した頭蓋骨を戻さない状態で頭皮を縫合する

・頭蓋骨が一部ないので、脳が腫れても圧力を逃げていき脳の圧迫されにくくなる

〇緊急穿孔術

・急激に意識状態が悪化していく場合に、手術室に行く前に救急外来で行うことが多い

・頭蓋骨と硬膜に2cm程度の小さな穴をあけ、圧力を逃がすことで救命を試みる

・圧力を逃がすと少し時間の猶予が生まれるので、その後手術室に行って通常の血腫除去術を行う

交通事故で硬膜下血腫となってしまった場合の治療法やリハビリ、残ってしまう可能性のある後遺症や損害賠償請求に関しては、こちらの記事で詳しく解説されています。

良ければご覧になってみてください。

では、実際に漫画「コウノドリ」のように妊婦さんが交通事故の被害に遭ってしまった場合…。

母体と胎児に関わることなので、通常の交通事故における対応とは異なる部分も多いのではないかと思います。

よってここからは、妊婦さんが交通事故に関して詳しく見ていきたいと思います。

妊婦さんの交通事故①胎児は無事でも母親が死亡してしまった場合

漫画「コウノドリ」の12話では、最終的に赤ちゃんは無事に帝王切開で出産されましたが、お母さんは亡くなってしまうという結末でした。

では、もしも本当にそのような状況に陥ってしまった場合…。

漫画では描かれていない損害賠償の点にスポットを当てると、相手側に死亡慰謝料を請求することになります。

死亡慰謝料

ところで、慰謝料と一言で言っても、実は、

  • 自賠責保険に請求する場合
  • 任意保険会社が提示する場合
  • 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合

で、別の3つの基準が存在しているのだそうです。

慰謝料金額の基準
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準
内容 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの 営利企業の保険会社が支払うもの 裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの
金額 金額は低め 自賠責基準よりは高いが、金額は低め 自賠責基準や任意保険基準よりも高い

まず、自賠責については、被害者の方が死亡した場合の支給額があらかじめ決められているそうです。

また、被害者のご遺族の方に対しても、決められた慰謝料が支払われることになります。

たとえば、コウノドリのように、亡くなられた被害者の方に、旦那様とお子様が1人いた場合には、

本人慰謝料350万円+遺族2人の慰謝料650万円=1000万円

の慰謝料が支払われるということになります。

自賠責基準による死亡慰謝料
被害者本人一律 遺族※ 被扶養者がいる場合
350万円+ 1 550万円 200万円
2 650万円
3人以上 750万円

※ 被害者の両親、配偶者、子のみ

続いて、任意保険と弁護士基準における死亡慰謝料の相場も見てみましょう。

死亡慰謝料は、本来は誰に対しても同じ金額であるはずです。

しかし、たとえば、一家の大黒柱が亡くなってしまった場合、奥さんやお子様の今後の収入が失われてしまうことになります。

その分も考慮して、慰謝料の相場は高くなっているようです。

また、主婦が亡くなった場合にも、家事や育児など、家庭内での役割が大きい存在であるだけに、慰謝料の相場は高くなっているとのことです。

任意保険基準と弁護士基準による死亡慰謝料
任意保険基準 弁護士基準
一家の支柱 1700 2800
母親・配偶者 1400 2500
その他 12501450 20002500

※1 単位:万円

※2 旧任意保険支払基準による

見ておわかりいただけたと思いますが、保険会社の死亡慰謝料は、弁護士基準よりもだいぶ低い慰謝料額となっています。

しかし、ご遺族の方だけで保険会社と交渉した場合には、死亡事故という凄惨な事態にもかかわらず、弁護士基準を大幅に下回る金額しか支払ってもらえないそうなのです。

弁護士に依頼すれば、弁護士基準の適正な慰謝料に近い金額を受け取ることができます。

そのことを知らずに、保険会社の言われるがままに示談してしまうのは、二次被害とも言える事態ですよね。

慰謝料の増額は?

上記のような死亡慰謝料は受け取れたとしても、残された旦那さんは、これから一人で子育てをしていくことになります。

その精神的ショックは計り知れませんよね…。

その分、慰謝料の増額などはできないのでしょうか?

上記の金額はあくまで基準であり、裁判などでは具体的な斟酌事由により、慰謝料は増減されることがあります。

そして、「子供が生まれたばかりであること」は、慰謝料の増額事由になる可能性があると言えます。

ただし、保険会社などが直ちに増額には応じないことも十分考えられるので、まずは、専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

妊婦さんの交通事故②生まれた子供に影響があると慰謝料は増額される?

コウノドリの話では、残念ながらお母さんは亡くなってしまいましたが、幸い生まれた赤ちゃんは健康でした。

しかし、中には、生まれてきた赤ちゃんに何らかの障害が発生してしまうケースも考えられます…。

実際に、過去の裁判で争われているケースがありました。

一 本件は、玉突き追突事故で頚椎捻挫等の傷害を負った妊娠中の女性(A)が事故から約二か月後に男児(原告)を出産したが、妊娠第八月の早産で仮死状態で出生した原告に難聴及び精神発達遅滞の後遺障害が生じたとして、加害車両の運転手とその所属会社(運行供用者)に対し右障害に伴う損害の賠償を請求し、障害と事故との相当因果関係が争われた事案である。

以上のように、お腹の中にいる赤ちゃん(胎児)に交通事故が直接影響してしまうことも実際にあるようです。

もしも生まれてきた赤ちゃんに後遺症が残った場合、そのことに対し慰謝料などを請求することは可能なのでしょうか?

生まれてきた赤ちゃんに後遺症が残ったことに対する慰謝料などの請求は、「交通事故との相当因果関係」が認められるかどうかが問題となるでしょう。

というのも、交通事故に関係なく赤ちゃんが障害を持って生まれてくる場合もあるからです。

よって、「交通事故のせいでそうなった」と言えるだけの証拠を揃える必要があります。

交通事故との相当因果関係が立証できれば、障害を持って生まれてきたことに対する慰謝料などの請求は可能となり、過去の裁判例でも認められています。

生まれてきた子供に障害が残った場合、それが交通事故によるものだと証明できれば、慰謝料を増額することが可能なのですね。

とはいえ、ただでさえショックな状況の中、ご自身だけで争うのは相当困難でしょう。

お困りの場合は、ぜひ弁護士まで相談してください。

加害者側との交渉というストレスからも解放されるはずです。

妊婦さんの交通事故③切迫早産、子宮破裂、骨盤骨折などになった場合

また、お子様に障害が残ってしまうよりも起こる確率が高いのが、切迫早産のようです。

というのも、妊娠中期以降には子宮も大きくなっており、いくらかばったとしても外傷を受ける可能性が高くなってしまいます。

子宮が外傷を受けた場合、子宮内筋層への出血によって子宮が収縮し、結果として切迫早産の可能性が高くなってしまうそうです。

私は、今妊娠(35w)しています。

そして、2週間前(33w)に交通事故でぶつけられ【10:0】切迫早産になり、入院しています。

2人目の妊娠ですが、1人目の時も妊娠35wぐらいのときにぶつけられ【10:0】同じ切迫早産で入院しました。

1人目.2人目どちらも入院のきっかけは交通事故でそのまま入院です。

1人目の時の事故を思い出し、怖くて怖くて

最近は、夜になるとすすり泣きをしながら眠りにつく毎日。切迫早産だとトイレ洗面台以外の身動きは駄目で生き地獄です。

この他にも、子宮破裂骨盤骨折胎児への直接外傷なども懸念されます。

それでもお子様が無事に生まれれば良いですが…帝王切開となったり、次の妊娠に影響が出てくる可能性も考えられます。

このような場合にも、慰謝料は増額できるのでしょうか?

切迫早産となっても、幸い生まれてきた子供への影響がなければ、そのこと自体が直ちに慰謝料の増額事由になるわけではありません。

もっとも、切迫早産により、本来味わう必要のなかった痛みや苦しみを味わったと言えれば、慰謝料が増額される余地はあります。

また、子宮破裂や骨盤骨折に伴い、生殖器の障害や骨盤骨の変形障害などの後遺症が認定されれば、そのことに対する慰謝料などが請求できます。

そのような状況にならないことを心から願いますが、いざというときのために、慰謝料増額の可能性があるということは覚えておきたいですね。

妊婦さんの交通事故④流産してしまったらお腹の中の子供にも慰謝料は認められる?

ところで、妊婦さんが交通事故に遭い、それが原因で流産してしまったというニュースも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

妊娠中の妻の定期検診のために、自動車で病院に行く途中に交通事故に遭いました。

助手席に座っていた妻は、交通事故の時の衝撃で切迫流産となりました。

不妊治療を3年続けてやっとできた妊娠だったため、私も妻も今回の交通事故での流産に大きなショックを受けています。

特に妻のショックは計り知れず、交通事故の流産のためにまだ入院していますが、ボーッとしているかと思ったら急に泣き出したり、癇癪を起こしたりと情緒不安定になっています。

まだこの世に生まれていなかったとしても、お腹の中に宿った大切な命。

どのような損害賠償を受けることができるのでしょうか。

慰謝料とは、被害や苦しみを受けた人に対する精神的損害に対して支払うものです。

しかし法的には、胎児の段階では「母体の一部」という認識となり、人としては扱われません。

よって、胎児が生まれてこなかった場合には、胎児の損害賠償請求権は認められないことになります。

法的に決められているとはいえ、厳しい判断ですね…。

しかし、確かに生きていたお子様を失ったという悲しみは計り知れません。

流産の苦しみは、慰謝料に考慮されないのでしょうか。

実は、このようなケースでは、流産という事実を被害者女性に対する「不法行為」として扱い、損害賠償請求額を通常よりも増額するという措置になります。

つまり、母親に対する慰謝料が増額されます。

胎児に対する慰謝料は認められませんが、「大切な子供を失ったことに対する精神的苦痛」として、母親への慰謝料増額という形が取られるのですね。

お金ですべてが解決するものではありませんが、大きな悲しみに対する補償は加害者からしっかりと受け取るべきです。

ただし、この慰謝料増額分は、妊娠時期に応じて変わってきます。

通常は、妊娠後期になればなるほど、慰謝料の増額分は高くなる傾向にあります。

また、流産の場合、夫も大きな精神的苦痛を受けたと言えるでしょう。

よって、場合によっては父親に対する慰謝料も認められる可能性があります。

まとめ

交通事故により流産してしまった場合の慰謝料

慰謝料の増額
お腹の中のお子様 認められない
母親 認められる
父親 場合によっては認められる

その他、お子様が流産してしまった場合に、慰謝料が増額される事例などはありますか?

たとえば、長年不妊治療をしていてやっと妊娠した子供であれば、それまでの苦労もあるはずです。

よって、適切に主張することでさらに増額できる可能性はあると言えるでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、こういった慰謝料の増額は、加害者側から提案してくれることはほとんどないでしょう…。

お金がすべてではないですが、加害者側への戒めの意味も含め、適切な慰謝料獲得に向けて、ぜひ弁護士に相談してください!

妊婦さんの交通事故⑤示談の時期は?

以上のような損害賠償を獲得するための保険会社との示談交渉の時期ですが、いつが適切なのでしょうか。

というのも、交通事故でも胎児が無事だった場合、生まれてくる赤ちゃんへの影響がわからない以上、「生まれるまで示談しない」というのも選択肢の一つとなるのではないかと思います。

事故後に元気に生まれたとしても、目に見えない障害などは、しばらく成長するまで判断できないこともありますよね。

お子様が無事に生まれてきた場合には、お子様に対する慰謝料などの請求ができます。

一方、残念ながら流産してしまった場合には、母親の慰謝料請求の問題となります。

よって、母親が妊娠中に示談するのであれば、「流産してしまった場合の慰謝料は別途協議する」などの文言を示談書に入れておいた方が無難でしょう。

また、生まれたお子様に障害があることが発覚した場合には、障害を知った時点から3年で時効となります。

時効については、「損害を知った時点」が起点となるのですね。

しかし、その時点が「いつ」なのかについて争いになる可能性があるようなので、その点も考慮して、示談の時期を検討する必要がありそうです。

大切な奥様とお子様の命がかかった妊婦さんの交通事故。

精神的に追い詰められ、何も考えられないかもしれません。

しかし、相手側の保険会社の言いなりになることは避けていただきたいです。

ぜひ弁護士などに相談して、一人で抱え込まないようにしてください!

交通事故に関する漫画に関連して弁護士に無料相談したい方はコチラ!

交通事故に関する漫画に関連して弁護士に無料相談したい方はコチラ!

以上、交通事故を題材とした漫画の内容に関連した、怪我や後遺症、慰謝料などの損害賠償について理解を深めていただけたでしょうか。

確実に適正な補償を受けるためには、弁護士に相談したいと思った方もいらっしゃるはずです。

最近では、無料相談を行っている弁護士事務所も多いです。

また、被害者の方の自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、保険から弁護士費用が支給されます。

賠償金や保険金の請求などについて、何か困っていることがあれば、ぜひ弁護士に相談してください!

しかし、弁護士の知り合いなんていないし、全国に約4万人いる弁護士の中から、誰に相談すれば良いのかなんてわかりませんよね。

今すぐスマホで相談したいなら

そんなときは、お手元のスマホで弁護士に無料相談してみることができます

24時間365日、専属スタッフが待機するフリーダイヤル窓口が設置されているので、いつでも電話できるのは非常に便利ですね。

また、夜間土日も、電話やLINEで弁護士が無料相談に順次対応しているので、会社が終わった後や休日にも弁護士と無料相談できます!

弁護士に無料相談はこちら

※無料相談の対象は人身事故のみです。
物損事故のご相談はお受けしておりません。

スマホで無料相談をやっているのは交通事故や事件など、突然生じるトラブルの解決を専門とする弁護士事務所です。

被害者の方に重い後遺症が残ってしまった場合など、弁護士事務所に訪問できない方などを対象に、無料出張相談も行っているそうです。

まずは、電話してみることから始まります。

きっと、被害者の方が取るべき対応について、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

地元の弁護士に直接相談したいなら

スマホを持っていない場合など、直接弁護士と会って相談されたいという方も当然いらっしゃると思います。

また、既に弁護士へのご依頼を決めていて、交通事故に強い地元の弁護士をお探しの方もいらっしゃるかもしれません。

そんなときには、以下の全国弁護士検索サービスがおすすめです。

サーチアイコン弁護士を探す5秒で完了
都道府県から弁護士を探す
北海道
東北
北陸
甲信越
関東
東海
関西
中国
四国
九州
沖縄

都道府県をお選びください

都道府県をお選びください

都道府県をお選びください

都道府県をお選びください

  1. ① 交通事故専門のサイトを設け交通事故解決に注力している
  2. ② 交通事故の無料相談のサービスを行っている

弁護士を特選して、47都道府県別にまとめています。

何人かの弁護士と無料相談したうえで、相性が良くて頼みやすい弁護士を選ぶ、というのもお勧めの利用法です。

最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが漫画に出てきたような交通事故による後遺症や損害賠償でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします!

交通事故の被害に遭われ、後遺症が残ったり、大切なご家族が亡くなられてしまった場合、その悲しみは想像以上だと思います。

さらに加害者や保険会社との交渉で辛い思いをされていることと思います。

そんなときは、迷わず弁護士に相談することをお勧めします。

なぜなら、辛い思いをした分、適正な金額の補償を受けるべきだからです。

しかし、示談金を提示され、書類にサインしてしまうと、あらためて損害賠償請求を行うことは極めて困難になります。

そうなる前に、ぜひ弁護士無料相談を活用してみてください。

面倒な手続きや交渉などのお力にもなれるはずです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただけた方には、

  • 交通事故漫画に出てきたような高次脳機能障害などの後遺症が残った場合の慰謝料相場
  • 妊婦さんが交通事故にあった場合特有の損害賠償請求

などについて、理解を深めていただけたのではないかと思います。

また、保険会社との示談交渉に際しては、弁護士に相談した方が良いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

自宅から出られない方や、時間のない方は、便利なスマホで無料相談を利用するのがおすすめです!

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故の損害賠償などに関するその他関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください!

交通事故で頭を強打した場合のQ&A

事故で頭を強打した場合の後遺症例は?

交通事故によって頭を強打した場合の後遺症例には、①脳挫傷②びまん性軸索損傷③高次脳機能傷害④視覚傷害などがあります。どの後遺症も根本的な治療法が無いため、その後のリハビリが非常に重要となっていきます。 頭を強打した場合の後遺症の詳細

交通事故で妊婦が死亡した場合の慰謝料の相場は?

交通事故で妊婦が死亡した場合(胎児は無事)の慰謝料の相場は、詳しい状況によって異なりますが、弁護士基準で約2500万円となっています。また、主婦が亡くなった場合にも、家事や育児など、家庭内での役割が大きい存在であるだけに、慰謝料の相場は高くなっているとのことです。 妊婦さんの交通事故の慰謝料

赤ちゃんに後遺症が残った場合はどうすべき?

弁護士に相談することをおすすめします。赤ちゃんに後遺症が残ってしまった場合、「交通事故との相当因果関係」や「交通事故のせいでそうなった」と言えるだけの証拠が揃えば、事故の相手に慰謝料の請求をすることができます。 生まれた子供に影響がある場合の慰謝料請求

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

交通事故の関連記事

慰謝料/示談のまとめ