後遺障害11級の交通事故慰謝料|3909万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害11級の判例についてご紹介します。
もし交通事故によって後遺障害が残ってしまったとしたら、被害者はその後遺障害と一生付き合っていかなくてはなりません。
今後の生活や仕事への影響を考えると、納得のいく慰謝料が支払われるのか不安になりますよね。
この判例では、総額3909万円の損害賠償金が認められましたが、どのような点がポイントになったのか、弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
障害等級11級(男・症状固定時36歳)損害額3909万5338円の判例
こちらは、東京地方裁判所の民事第27部の判決、平成23年(ワ)16353号・平成24年(ワ)3023号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、右大腿部顆上部開放骨折・腰椎脱臼骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者運転の普通自動二輪車が信号機のある丁字交差点を直進しようとしたところ、対向車線から交差点を右折しようとした加害者運転の普通自動車と衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 水道設備施工 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 症状固定時36歳 |
事故の内容 | 被害者運転の普通自動二輪車が信号機による交通整理の行われている丁字交差点を直進しようとしたところ、対向車線から交差点を右折しようとした加害者運転の普通自動車に衝突した。 |
傷害の内容 | 右大腿部顆上部開放骨折、偽関節、右大腿四頭筋断裂、腰椎脱臼骨折、変形癒合、左母指中手骨骨折 |
後遺障害等級 | 11級7号 |
入院 | 266日 |
ケガによる腰の痛みは水道設備施工の仕事に支障を与え、休業せざるを得なかったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 3909万5338円 |
---|---|
うち慰謝料 | 770万円 |
うち休業損害 | 1177万6768円 |
うち逸失利益 | 1538万8222円 |
損害総額は3909万5338円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額3909万5338円になりました。
- 慰謝料としては、入院・通院に対する慰謝料が350万円、後遺障害の慰謝料が420万円認められました。
- 休業損害としては、基礎収入が日額1万6448円であることに争いはなく、症状固定時期までの欠勤日数は合計716日であることが認められ、1177万6768円となりました。
- 逸失利益としては、基礎収入を493万4400円とすること、労働能力喪失率を20%とすることに争いはなく、労働能力喪失期間は症状固定時(36歳)から67歳までの31年間とするのが相当として、1538万8222円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男性は脊柱の変形障害により連続して30分以上の歩行ができなくなってしまったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
本判決は、脊柱の変形の後遺症による労働能力喪失率を67歳までの長期間にわたり一貫して20%と認定しました。
腰椎の激しい痛みにより、連続して30分以上の歩行ができず、仕事中1時間おきぐらいに5分程度の休憩が必要とされている実態を重視したものと思われます。
裁判所は、脊柱の変形障害に関しては、必ずしも後遺障害等級の通りの逸失利益を認めてくれるわけではないので、注意が必要です。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害11級の慰謝料計算の特徴は?
11級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に11級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、11級の場合、裁判基準では420万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、11級4号の歯科補綴や11級7号の変形障害の場合、仕事には支障がないとして、逸失利益を保険会社が否定してくることも多いです。
また、11級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を20%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、これらのポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまです。
交通事故のお悩みについて具体的なアドバイスがお聞きになりたい場合は、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみるのが良いかと思います。