男子高校生の交通事故慰謝料|2億2032万円の判例を弁護士が解説
このページでは、男子高校生の判例についてご紹介します。
交通事故は、被害者の生活を一変させてしまったり、今後の人生に大きく影響することがあります。
こちらの判例の男子高校生も九死に一生の事故に遭ってしまいました。
未来への影響を考えると、納得のいく示談金を得られるのか不安になってしまいますよね。
ここでは、慰謝料算定のポイントを押さえつつ判例の解説をしていきます。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
高校生(男・症状固定時19歳)損害額2億2032万6087円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成18年(ワ)第8973号事件です。
こちらの事故での主な怪我は、脊髄(胸髄)損傷となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「カーブにおいて、自動車対原付自転車の対向車同士で衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 高校生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 19歳(症状固定時) |
事故の内容 | カーブにおける自動車対原付自転車の対向車同士の事故。 |
傷害の内容 | 脊髄(胸髄)損傷、第8胸椎脱臼骨折、右腕神経叢引き抜き損傷、両中手骨骨折など |
入院 | 342日 |
脊髄(胸髄)損傷によって両下肢完全麻痺等の後遺障害が残ってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 2億2032万6087円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3635万円 |
うち将来の付添看護費 | 7115万7480円 |
うち逸失利益 | 9902万7613円 |
損害総額は2億2032万6087円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2億2032万6087円になりました。
- 慰謝料として、入院・通院に対する慰謝料が435万円、後遺障害の慰謝料が2800万円、両親固有の慰謝料が各200万円認められました。
- 将来の付添看護費としては、原告父が65歳に達するまでの10年間は近親者介護として日額8000円、その後の48年間は職業介護人による介護を想定すべきとして、日額1万2000円が認められました。
- 逸失利益は、基礎収入を男子の全年齢平均賃金547万8100円とし、労働能力喪失期間を67歳まで48年間、100%労働能力を喪失したものとして算定し、9902万7613円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男子高校生は脊髄損傷などの大怪我を負っていますが、ポイントはどのような点になりますか?
この判例では、1級の後遺症を追った高校生の被害者の慰謝料として、傷害部分と後遺障害部分、両親の慰謝料を合計して3635万円が認められた点が特徴的です。
裁判所は、将来を楽しみにしていた息子が非常に重篤で回復の見込みのない障害を負うに至ったことに大きな精神的苦痛を受けるとともに、介護の負担を余儀なくされたことを、慰謝料の算定の際の理由として挙げています。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
また、慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと、慰謝料の計算が5秒で完了して便利です。
計算ソフトの利用をおすすめするのは、
- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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代表岡野武志(第二東京弁護士会)
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高校生の慰謝料計算の特徴は?
高校生の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
後遺症が残った場合の慰謝料は、原則として後遺障害の等級によって決められます。
しかし、高校生の被害者に生涯にわたって続く後遺症が残った場合、後遺症で苦労する期間が長いため、慰謝料について相場水準より2〜3割増額して請求すべきという考え方もあり、その点は裁判などで争う余地があります。
また、慰謝料と並んで重要な項目である逸失利益については、高校生の進路によって計算方法が異なります。
高校卒業後に働くことを前提とすると18歳~67歳までの期間で計算し、大学への進学を前提とすると22歳~67歳の期間で算定することになります。
もっとも、一般的に計算の基礎となる収入は高卒で働く場合よりも大卒で働く場合の方が高くなることが多いので、被害者の具体的な進路の見込み等を踏まえた上で、被害者にとって最も有利な方法で保険会社に請求していく必要がありますね。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまです。
まずは、弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。