65歳高齢者・老人の交通事故の死亡慰謝料|4906万円の判例を弁護士が解説
このページでは、65歳女性の死亡事故の判例についてご紹介します。
被害者は交通事故によって、65歳というまだまだ身体も元気な年齢であったにも関わらず、これからの老後の楽しみを奪われてしまいました。
こちらの判例の損害総額は約4906万円となったようですが、算定のポイントはどのような点だったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
専業主婦(女・65歳)損害額4906万9306円の判例
こちらは、名古屋地方裁判所の民事第3部の判決、平成22年(ワ)第6257号、平成23年(ワ)第3697号事件です。
この事故で被害者の女性は、外傷性クモ膜下出血等の傷害により死亡しています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害車両が直進中、交差道路右方より交差点に進入した被害自転車に衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 高齢者 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 65歳 |
事故の内容 | 加害車両が直進中、交差道路右方より交差点に進入した被害自転車に衝突した。 |
傷害の内容 | 外傷性クモ膜下出血など |
入院 | 0日 |
この事故では、被告が8割、被害者が2割の過失とされたようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 4906万9306円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2400万円 |
うち葬儀関係費 | 150万円 |
うち逸失利益 | 2342万5276円 |
損害総額は4906万9306円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額4906万9306円になりました。
- 慰謝料としては、亡くなったことに対する本人への慰謝料が2000万円、夫の慰謝料が200万円、子2名の慰謝料各100万円認められました。
- 葬儀関係費は、150万円となりました。
- 逸失利益としては、被害者は夫と2人暮らしで家事に従事していたほか、毎日のように認知症で入院中の母親を見舞っていたこと、また、年金を年間67万6300円受給していたため、これらを考慮し、2342万5276円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの65歳女性は家事労働に加えて認知症のお母様のお見舞いも毎日されていたようですね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件では、被害者が自分だけではなく、母親の見舞いや夫のための家事労働を行っていた蓋然性が高い点が、基礎収入が認定されるポイントとなりました。
単に家族と同居しているだけではなく、他人のための家事を行なっていたことを裁判では立証していかなければならないことがわかりますね。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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高齢者・老人の慰謝料計算の特徴は?
高齢者・老人の死亡慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
高齢者や老人と一口にいっても、それぞれのケースに応じて立場は異なります。
一人暮らしの高齢者の場合、裁判例の傾向としては2000万円~2200万円が慰謝料相場といえそうです。
一方、配偶者と一緒に暮らしていたり、他の家族の扶養や家事全般を担っていたりする場合には、相場水準は2500万円~2800万円という高い基準として判断されることになります。
結局、死亡慰謝料の金額は,被害者の年齢というよりは、家庭内で果たしていた役割によって慰謝料の金額が大きく異なるということを理解しましょう。
また、逸失利益につき、年金を受給している場合には、受給している年金の内容によって、逸失利益として認められるかどうかが変わってくることにも注意が必要です。
さらに、被害者が亡くなられた場合の逸失利益を計算する場合には、生きていれば生活費として使われていたであろう割合が差し引かれますが、年金の場合は、差し引かれる割合を高くされる例が多いことにも注意が必要です。
ただし、今申し上げたポイントは一般的な話であり、生活費として使われていたであろう生活費は被害者の収入や貯金の状況によっても異なるといったように、事故にあわれた方の事情はそれぞれ別ですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがいいでしょう。