交通事故の労災保険|自賠責・任意保険と比べたメリット・デメリット及び申請の手続き
「交通事故で労災保険が使えるっていう話と使えないっていう話の両方を聞くけど、どちらが正しいの?」
「交通事故で労災を使うメリットやデメリットは、自賠責や任意保険と比較してどんな点にあるの?」
「交通事故で労災保険を申請する場合の手続きはどうなっているの?」
出勤途中・帰宅途中・勤務中の交通事故で、労災を使えるかや、メリット・デメリット、申請の手続き等を知らない方も多いと思います。
そこで、このページでは、
- 交通事故の労災保険について
- 交通事故の労災を使う自賠責・任意保険と比較したメリット・デメリット
- 交通事故での労災保険の申請の手続き
についてご紹介していきたいと思います!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故で労災保険を使える場合には、被害者の方にとって大きなメリットがあります。
もっとも、交通事故で労災を使うことにはデメリットも考えられるので、その点も踏まえて自賠責や任意保険とうまく使い分ける必要があります。
そして、交通事故において労災保険から実際に給付を受けるためには、その申請の手続きについても理解しておく必要があります。
こちらで、交通事故における労災保険についてしっかりと理解し、しっかりと慰謝料や休業補償などを受け取れるようにしましょう。
そもそも、交通事故における労災保険の利用につき、twitter上では様々な声が聞かれます。
交通事故によるケガの治療で健康保険や労災保険使えるのに、使えないと案内する医療機関があるのね…。
— S.IMAI (@imaisat0) June 24, 2017
このように、交通事故で労災保険を使えるという意見と使えないという意見があるようです。
また、仮に使えるとしても、自賠責保険との優先関係や併用が可能かどうかが別途問題になります。
このように、交通事故における労災保険の使用については、分からないことが多いのではないでしょうか?
そこで、まず交通事故における労災保険の基礎知識から確認していきたいと思います!
交通事故の労災保険について
交通事故で労災保険を使える・使えないケース
まず、交通事故で労災保険が使えるか使えないかについては、結論から言うと使えます。
通勤途中の交通事故が労災保険の給付対象になることは、厚生労働省の労災保険給付の概要についてのパンフレットにも記載があります。
労災保険給付の対象となる「業務上の事由または通勤による労働者の傷病等」の中には(略)通勤途中に交通事故に遭うなどの災害によるものがあります。
(以下略)
出典:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12-03.pdf
ただし、労災保険が使える業務災害・通勤災害としての交通事故に該当するかどうかについて、争いが生じる場合があります。
業務災害として該当する交通事故
まず、勤務中の交通事故については、業務災害として労災保険を使えることになります。
ただし、勤務時間内でも、昼休みなどの休憩時間に発生した交通事故は、勤務中の交通事故とはいえず、労災は使えないことになります。
また、勤務時間中であっても、業務をさぼって私用を行っていた最中の交通事故については、勤務中の交通事故とはいえず、労災は使えません。
通勤災害として該当する交通事故
上記のような勤務中の交通事故として労災保険を使えるかどうかが争いになるケースはそれほど多くはありません。
それよりも、労災保険が使えるかが争いになるのは、通勤災害としての交通事故に該当するかどうかというケースです。
具体的には、出勤途中や帰宅途中の交通事故については、基本的に労災が使えるケースといえます。
しかし、通勤災害に該当するためには、その出勤や帰宅を①合理的な経路と方法で行っていたといえる必要があります。
また、その経路を②逸脱し、又は中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはいえなくなります。
①合理的な経路と方法
合理的な経路と方法とは、移動を行う場合に、一般的に労働者が用いると認められる経路及び方法のことをいいます。
合理的な経路及び方法は、複数存在する場合には、平常用いているかどうかにかかわらず、いずれも合理的な経路及び方法になります。
合理的な経路や方法といえないのは、交通事情などの特段の理由なく、著しく遠回りとなるような経路や方法をとるような場合をいいます。
②逸脱し、又は中断した場合
「逸脱」とは、通勤途中・帰宅途中に就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいいます。
「中断」とは、通勤経路・帰宅経路上で、通勤・帰宅と関係のない行為を行うことをいいます。
具体的には、通勤・帰宅途中に映画館で映画を見たり、飲酒をするなどするために寄り道したような場合には労災は使えないことになります。
もっとも、通勤経路・帰宅経路上のコンビニでジュースを買うなどのささいな行為を行う場合には、逸脱・中断にはあたりません。
また、下記の行為をやむを得ない事由により、最小限度の範囲で行う場合には、逸脱・中断中を除き、合理的な経路に戻った後は通勤になります。
逸脱・中断の例外となる行為の例
- 日用品の購入その他それに準ずる行為
- 病院や整骨院などへの通院
- 要介護状態にある親族の介護(反復継続的に行われるものに限る)
交通事故では労災保険より自賠責保険が優先!?
労災保険は通勤中などの交通事故でも使えることはおわかり頂けたかと思います。
もっとも、通勤中の交通事故であっても、労災保険ではなく加害者の任意保険や自賠責保険に請求することができます。
では、交通事故において、労災保険と自賠責保険や任意保険との間に優先順位はあるのでしょうか?
https://twitter.com/by_pino/status/631430491648843776
結論から申し上げますと、交通事故において、労災保険と自賠責保険や任意保険との間に優先順位はありません。
このことは、厚生労働省東京労働局のホームページにも以下のように記載されています。
自動車事故の場合、労災保険の給付と自賠責保険等(略)による保険金支払の(略)どちらを先に受けるかについては、被災者等が自由に選べます。
(略)
なお、自賠責保険等に引き続いていわゆる任意保険(略)による保険金支払を受けるか、若しくは労災保険の給付を先に受けるかについても、自賠責保険等と同様に、被災者等が自由に選べます。
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/ro-3.html
交通事故で、労災と相手の保険のどちらを優先させるかは、後ほどお伝えするメリット・デメリットを考慮して決める必要があります。
交通事故において労災と自賠責の併用は可能?
交通事故において、労災保険と加害者の自賠責保険や任意保険との間に優先順位がないことはお分かり頂けたかと思います。
もっとも、優先順位はないとしても、交通事故において労災と自賠責の併用は可能なのでしょうか?
交通事故において、被害者が労災を使える場合であっても、加害者の自賠責保険や任意保険からいわゆる二重取りはできません。
交通事故における被害者側の労災保険の給付は、元々人身損害の填補を目的としてるものですから、民事損害賠償と同様の性質をもっています。
そして、交通事故により被害者が負った人身損害を最終的に填補すべき者は、民事上の損害賠償責任を負う加害者であると考えられます。
そのため、交通事故で労災から給付を先に受けた場合、同一の事由については相手の保険に請求できず、差し引かれ(損益相殺され)ます。
そして、交通事故の労災の給付は、加害者がすべき損害賠償を政府が肩代わりした形となるため、その分を政府が加害者や相手の保険に求償します。
なお、反対に交通事故で加害者や相手の保険からの損害賠償が先に行われた場合は、同一の事由について労災保険の給付額から控除されます。
また、交通事故の労災の給付は、加害者がすべき損害賠償の政府による肩代わりといえるので、加害者との示談後には給付を受けられません。
このように、交通事故において、労災と相手の保険から二重取りはできませんが、二重取りにならない範囲では併用できるといえます。
交通事故でも労災保険は使えますが、使えるケースか使えないケースか争いになる場合もありますので、その点は注意する必要があります。
また、労災保険と自賠責保険や任意保険との優先順位は決まっていないため、メリット・デメリットを考慮してどれを先に使うか決める必要があります。
さらに、労災保険と自賠責保険や任意保険とは二重取りにならない範囲では併用できるので、全ての保険を最大限利用できるようにしましょう。
使用 | 可能 |
---|---|
相手の保険との優先順位 | 特になし |
相手の保険との併用 | 二重取りにならない範囲で可能 |
労災のメリット・デメリット|自賠責・任意保険との比較
交通事故における労災保険の基礎知識についてはお分かり頂けたのではないかと思います。
先ほど、交通事故における労災保険と加害者の自賠責保険や任意保険との間に優先順位はないとお伝えしました。
そのため、どの保険に申請・請求するかはそれぞれのメリット・デメリットを考慮した上で決める必要があります。
そこで、ここからは交通事故における労災のメリット・デメリットを自賠責・任意保険と比較する形でお伝えしていきたいと思います。
まずは、交通事故における労災のメリットには以下のようなものがあります。
労災のメリット①治療費の負担
交通事故における労災保険のメリットとして、まず挙げられるのが、治療費の負担金額がないということです。
交通事故において、自賠責保険や任意保険から自由診療により治療費が支払われる場合には、全額負担になります。
また、労災保険を使った場合の診療報酬点数単価は12点ですが、自由診療の場合の診療報酬点数単価は20点程度になります。
このメリットは、この後お伝えするメリットにも大きく影響してきます。
なお、交通事故においては、治療費の負担金額を減らすために、3割負担で済む健康保険を使用することがあります。
しかし、交通事故で労災が使える場合には、健康保険は使えないことになっている点に注意する必要があります。
仕事中や通勤途中に被ったケガは、労災保険の給付対象となりますので、健康保険を使用することができません。
負傷された方や事業主の方が労災保険と健康保険のどちらを使用するか選択することはできないので、必ず労災保険へ手続きを行ってください。
そのため、交通事故で労災を使える場合に、間違って健康保険を使用してしまった場合には、労災への切り替えの手続きをする必要があります。
労災のメリット②限度額がない
また、交通事故における労災保険のメリットには、支払の金額に限度額がない点も挙げられます。
自賠責保険には、傷害による損害について支払われる金額には120万円という限度額があります。
責任保険の保険金額は、政令で定める。
法第十三条第一項の保険金額は、死亡した者又は傷害を受けた者一人につき、次のとおりとする。
(略)
三 傷害を受けた者(略)
イ 傷害による損害(略)につき
百二十万円
この限度額は、慰謝料・治療費・通院交通費・休業損害など傷害による損害全体の限度額になります。
そのため、治療費がかさんでしまうと、治療費だけで自賠責保険の限度額を使い切ってしまう可能性があり、慰謝料等が受け取れないおそれがあります。
この点、労災を使えば、治療費の負担金額がないため、120万円の限度額を治療費以外の慰謝料等の受け取りに回せるというメリットがあります。
加害者が自賠責保険にしか加入していない場合は、自賠責保険以外からの回収が困難なことも多いため、特にこのメリットが大きいと考えられます。
一方、加害者が任意保険にも加入していた場合、任意保険は支払額が無制限の場合が多くなっています。
もっとも、任意保険にも限度額が設定されている場合があり、その場合には、自賠責保険と同様のメリットがあるといえます。
また、任意保険の支払額が無制限の場合でも、任意保険は自賠責保険からの支払いを超える部分について、損害賠償義務を負います。
そのため、自賠責の限度額を治療費に使ってしまうと、その分、任意保険が負うことになる治療費や慰謝料等の損害賠償金が増加することになります。
その結果、自由診療による治療が長引き、治療費がかさむと、高額な支払を嫌う任意保険から通院治療費打ち切りを迫られる可能性が高まります。
この点、労災保険から治療費が支払われる場合、任意保険から通院治療費打ち切りを迫られる心配なく、安心して通院できるのがメリットといえます。
労災のメリット③過失相殺なし
さらに、交通事故における労災保険のメリットとしては、過失相殺されないという点が挙げられます。
交通事故について、被害者側にも過失割合が認められる場合、損害賠償を請求できる金額は過失相殺により減額されてしまいます。
特に、治療費や通院交通費などの実際の出費を伴う積極損害については、過失割合分が被害者の自己負担ということになります。
しかし、労災保険からは、交通事故について、被害者側にも過失割合が認められる場合でも、過失相殺されることなく全額受け取れるのがメリットです。
なお、自賠責保険では、過失相殺はされるものの、
- 適用範囲は被害者の過失が7割以上の場合
- 適用される場合の減額割合
について制限がされています。
これは、自賠責保険の被害者の損害を最低限度保障するという趣旨を果たすために認められている扱いです。
具体的な適用範囲や減額割合については以下の表のとおりです。
被害者の過失割合 | 減額割合 | |
---|---|---|
後遺障害又は死亡 | 傷害 | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
なお、任意保険の場合は、被害者の過失割合どおりに過失相殺が行われます。
労災のメリット④後遺障害認定
交通事故では、労災にも自賠責にも後遺障害の申請をすることが可能です。
そして、交通事故では労災の後遺障害の障害認定基準を準用しています。
しかし、労災と自賠責とでは審査方法について違う部分があります。
具体的には、労災保険の場合、顧問医が直接被害者と面談した上で、後遺障害の等級認定を判断します。
それに対し、自賠責保険の場合、醜状障害等一部の例外を除き、原則書面審査であり、提出された資料から後遺障害の等級認定を判断します。
そのような審査方法が違う影響もあるのか、実務上、労災保険の方が後遺障害の(上位)等級が認定されやすい傾向にあるのがメリットです。
なお、任意保険は基本的に自賠責保険で認定された後遺障害の等級認定の判断に従う流れになります。
このような傾向があるため、
先行して労災の後遺障害認定を行い、労災の認定結果を添付して自賠責に申請
する方法により、自賠責でも有利な後遺障害が認定される可能性が高くなるといえます。
かつては、この労災の認定結果を添付する方法により、自賠責も同様の後遺障害等級を認定していました。
もっとも、現在は独自認定を理由に異なる判断をすることもあるので、その点は注意が必要です。
労災のデメリット①慰謝料なし
お伝えしてきたとおり、交通事故における労災保険には様々なメリットがあります。
では、反対に、交通事故における労災保険に何かデメリットはないのでしょうか?
まず、考えられるのは、労災からは慰謝料に相当する金額を受け取れないという点です。
ただし、先ほどお伝えしたとおり、労災保険と自賠責保険や任意保険とは二重取りにならない範囲で併用が可能になっています。
そのため、交通事故で労災から給付を受けたとしても、別途自賠責保険や任意保険に慰謝料を請求することが可能といえます。
交通事故で労災保険から慰謝料を受け取れないというデメリットは、自賠責保険や任意保険に別途請求することで解消できるということですね!
労災のデメリット②休業補償額
また、交通事故における労災保険のデメリットとして考えられるのは、休業補償の金額の点です。
労災の休業補償
労災保険の休業補償として受け取れるのは、
- 休業が始まって4日目から
- 給付基礎日額の60%×休業日数
になります。
ただし、休業特別支給金として、別途
- 休業が始まって4日目から
- 給付基礎日額の20%×休業日数
を受け取ることができます。
自賠責保険・任意保険の休業損害
一方、自賠責保険や任意保険から損害賠償として受け取れるのは
- 休業日から
- 収入の日額×休業日数
になります。
上記の労災保険の「給付基礎日額」と自賠責・任意保険の「収入の日額」はほぼ同じ金額になるものと考えられます。
そして、労災保険の休業補償は、給付基礎日額の60%(と休業特別支給金として、別途給付基礎日額の20%)にとどまります。
また、休業補償では、休業の初日から3日目までの待機期間は支払の対象になりません。
そのため、労災保険の休業補償の金額が自賠責・任意保険の休業損害の金額を下回ることが多いのがデメリットと考えられます。
ただし、先ほどお伝えしたとおり、労災保険と自賠責保険や任意保険とは二重取りにならない範囲で併用が可能になっています。
そのため、交通事故の休業補償を労災から受け取った場合でも、自賠責・任意保険との差額分については別途請求することが可能になります。
さらに、労働福祉事業として支給される休業特別支給金は、休業損害と「同一の事由」のものとはいえないため、損害賠償額から控除されません。
つまり、交通事故では、労災の休業補償と自賠責・任意保険の休業損害の両方を請求した方が、休業特別支給金の金額分得ということですね!
最後に、ここまでお伝えしてきた労災保険と自賠責・任意保険との比較を表にまとめてみました。
よろしければ、参考にしてみて下さい。
項目 | 労災保険 | 自賠責保険 | 任意保険 |
---|---|---|---|
治療費負担 | なし | あり | あり |
限度額 | なし | あり | なし※ |
過失相殺 | なし | (制限的に)あり | あり |
後遺障害認定 | 自賠責より認定されやすい | 労災より認定されにくい | 自賠責に原則従う |
慰謝料 | 受け取れない | 受け取れる | 受け取れる |
休業補償の金額 | 60%(+20%) | 100% | 100% |
※一部ある場合も
交通事故における労災保険のメリットは上記のとおり数多くあります。
また、交通事故における労災保険のデメリットは、自賠責保険や任意保険との併用により解決できるといえます。
そのため、交通事故で労災保険を使える場合には、基本的に使った方が得であることが多いと考えられます。
交通事故の労災保険の申請の手続きとは?
交通事故で労災保険を使える場合には、メリットが大きいことはおわかり頂けたのではないかと思います。
もっとも、実際に、交通事故で労災保険から給付を受けるためには、申請の手続きを取る必要があります。
そこで、最後に、交通事故の労災保険の申請の手続きについてお伝えしていきたいと思います。
労災の申請の手続きは労基署で
まず、交通事故の労災保険の申請の手続きは労働基準監督署で行う必要があります。
どの労働基準監督署でもいいわけではなく、被害者の所属事業場の所在地を管轄する労働基準監督署で申請の手続きを行う必要があります。
具体的には、一定の様式にしたがった必要書類に必要事項を記載した上で申請するという手続きの流れになります。
交通事故の労災保険の申請の手続きの必要書類
労災保険からの給付の申請の手続きは、その給付の内容ごとに必要書類の様式が異なります。
治療費の申請の手続き
労災保険に対する治療費の申請の手続きは、通院する病院が労災保険指定医療機関がどうかにより違いがあります。
労災保険指定医療機関の場合は、
療養補償給付たる療養の給付請求書(業務災害の場合)または療養給付たる療養の給付請求書(通勤災害の場合)
を通院する病院に提出する必要があります。
その請求書の様式は以下のものになります。
請求書は病院を経由して労働基準監督署長に提出されます。
このとき、治療費を病院の窓口で支払う必要はありません。
なお、別の労災保険指定医療機関に転院する場合には、下記の様式の必要書類を提出する必要があります。
一方、労災保険指定医療機関でない場合は、いったん治療費を病院の窓口で立て替える必要があります。
その後に、
療養補償給付たる療養の費用請求書(業務災害の場合)または療養給付たる療養の費用請求書(通勤災害の場合)
を直接労働基準監督署に提出すると、立て替えた分の治療費が支払われるという流れになります。
その請求書の様式は以下のものになります。
休業補償の申請の手続き
労災保険に対する休業補償の申請の手続きは、
休業補償給付支給請求書(業務災害の場合)または休業給付支支給請求書(通勤災害の場合)
を管轄の労働基準監督署に提出することになります。
その請求書の様式は以下のものになります。
なお、休業特別支給金の支給申請も、原則として休業補償給付の申請と同時に行う手続きになっており、様式も同一です。
交通事故の場合の必要書類
そして、交通事故による労災保険の申請の手続きにあたっては、上記の書類に加えて、
- 第三者行為災害届
- 交通事故証明書または交通事故発生届
- 念書(同意書)
も必要書類として提出が必要になります。
第三者行為災害届は、労災保険支給分の求償や自賠責・任意保険からの受領分の控除といった支給調整のために必要となります。
具体的な様式は以下のものです。
また、交通事故証明書は、自動車安全運転センター)において交付証明を受けたものを提出する必要があります。
なお、交通事故を警察へ届け出ていない等の理由により証明書の提出ができない場合には、代わりに「交通事故発生届」の提出が必要となります。
交通事故発生届の様式は、以下のものです。
さらに、
- 加害者と示談する際には事前に労働基準監督署に報告すること
- 加害者との示談後には労災保険からの給付が受けられなくなる可能性があること
- 労災保険から被害者が給付を受けた分については、政府が求償権を有するようになること
などが記載された念書(同意書)も必要書類として提出が必要になります。
念書(同意書)には被害者・加害者双方とも本人の署名が必要になります。
念書(同意書)の様式は、以下のものです。
なお、死亡事故の場合の労災への申請手続きは上記と異なるところがあるので、その点は注意しましょう。
労災保険の後遺障害の申請の手続きの必要書類
また、交通事故での労災保険に対する後遺障害の等級認定の申請は、障害(補償)給付申請の手続きの流れで行われます。
そして、障害(補償)給付を請求するには、所轄の労働基準監督署(長あて)に障害(補償)給付支給請求書という申請書類を提出します。
その障害(補償)給付支給請求書とは、以下のような様式になります。
勤務中・仕事中の業務災害の場合は障害補償給付支給請求書、出勤途中・帰宅途中の通勤災害の場合は障害給付支給請求書を用います。
障害(補償)給付支給請求書には以下のような事項を記載する必要があります。
- 労働保険番号
- 労働者の氏名・住所・生年月日や所属事業場の名称・所在地
- 事故日
- 治癒(症状固定)日
- 災害の原因及び発生状況(業務災害の場合)
- 平均賃金や特別給与の年額
- 振込希望口座
そして、支給請求書に事業主からの証明をもらう必要があります。
なお、事業主が証明を出してくれないという場合も考えられます。
実務上は、このような場合でも労働基準監督署は申請を受理した上で、事業主に「証明拒否理由書」という書類の提出を求めるようです。
その上で、労働基準監督署が労災の認定をするかどうか判断するため、事業主が証明を出してくれない場合でも、労災認定がなされる可能性はあります。
また、通勤災害の場合には、別途下記の「通勤災害に関する事項という書類を提出する必要があります。
そして、障害(補償)給付支給請求書には、所定の様式の医師からの診断書を必ず添付する必要があります。
また、必要に応じてレントゲンなどの添付書類・資料も同時に提出することになります。
そして、労災の後遺障害診断書は、自賠責に提出するものとは書式が異なります。
労災の後遺障害診断書の書式は自賠責と比較して簡易な書式となっています。
まず、同じ交通事故であっても、労災保険と自賠責・任意保険とでは、手続きが全く異なるという点に注意する必要があります。
労災の場合は、一定の様式の必要書類を労基署に提出する必要があり、交通事故の場合はさらに一定の必要書類を提出する必要があります。
また、労災と自賠責の双方に後遺障害の申請をする場合、各様式ごとに合計2通、後遺障害診断書を作成してもらう必要がある点は注意が必要です。
申請先 | 所轄の労働基準監督署 |
---|---|
必要書類 | ・給付を求める内容ごとに一定の様式あり ・交通事故の場合は第三者行為災害届等も必要 |
後遺障害申請の手続き | ・自賠責とは別様式の後遺障害診断書必要 |
申請により受け取れる障害(補償)給付は、認定される労災の後遺障害等級別に金額が異なります。
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交通事故で労災保険を使える場合、被害者にとってメリットが大きいため、自賠責や任意保険と併用しつつ、積極的に利用すべきと考えられます。
もっとも、労災への申請の手続きは自賠責や任意保険への請求とは別個に行う必要があり、様式も異なるため、分かりにくい点もあるかと思います。
交通事故における労災保険の手続に関し、お悩みのことがあれば、まずは専門家である弁護士などに相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
このページを最後までお読みの方は、
- 交通事故でも労災保険は使えることができ、二重取りにならない範囲で自賠責・任意保険との併用も可能
- 交通事で労災保険を使える場合、被害者のメリットは大きく、デメリットも自賠責・任意保険との併用により解決可能
- 交通事故での労災保険の申請の手続き
について理解を深めていただけたのではないかと思います。
これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。
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皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。
交通事故での労災利用についてのQ&A
労災保険はどんな時に利用できる?
労災保険は、通勤中・勤務中に交通事故に遭った場合に使えます。ただし、休憩時間中の事故や通勤中に寄り道していた場合の事故などでは使えません。なお、労災保険を利用する場合でも、二重取りにならない範囲で加害者側の自賠責保険や任意保険に賠償請求することは可能です。 労災保険利用の条件と自動車保険との関係
労災保険のメリット・デメリットは?
労災保険のメリットは、①労災が治療費をすべて負担する②損害に対する支払限度額がない③過失相殺されない④後遺障害等級認定の審査時に面談があるということです。デメリットは、①慰謝料がもらえない②休業補償が少ないということです。しかしこのデメリットは、自賠責保険や任意保険を併用することで解消できます。 労災保険のメリット・デメリットの詳細
労災保険の申請手続きはどうやる?
交通事故で労災保険の利用申請をする場合は、所属事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に必要資料を提出します。必要資料は、①第三者行為災害届②交通事故証明書または交通事故発生届③念書(同意書)④治療費や休業補償など請求したい保険金に応じた書類です。 保険金別・労災保険利用のための必要資料
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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