【交通事故の損害賠償請求】休業補償とは?休業損害と違う?労災の休業補償は遅い?
ある日突然、交通事故の被害者に…。
入院や通院のため、思った以上に仕事を休むことになってしまった。
仕事休んだ分、お給料を減らされてしまったけれど、その分はちゃんと補償されるの!?
事故による怪我で辛いところに、お金の心配という精神的な辛さも加わるなんて…考えたくもありません。
そんなときのために、休業損害や休業補償という補償制度があることは皆様もご存じではないでしょうか。
とはいえ、普段から慣れ親しんでいるという方は少ないハズです。
- 休業損害と休業補償って言葉は似ているけれど、同じもの?違うもの?
- もし別物であるならば、休業損害と休業補償の違いって何?
- 違うものならば、休業損害と休業補償どちらも受け取ることができるのでは?
といったように、わからないことだらけですよね。
そこで!!
このページでは、そんなお悩みや純粋な疑問をお持ちの方と一緒に、休業損害と休業補償の違いについて勉強していきたいと思います。
なお、専門的な部分の解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故の被害に遭われ、怪我の辛さ以外に金銭面での心配も加わってくると、ご本人への負担は非常に大きいものとお察しします。
しかし、いざ交通事故の損害賠償請求をしようと思っても、初めて聞く用語ばかりで戸惑ってしまう方が多いのも事実でしょう。
今回は、そのようなお悩みや純粋な疑問をお持ちの方のため、可能な限りわかりやすく解説していきたいと思います。
目次
交通事故で仕事を休んでしまった間の金銭的な損失を補償してもらうのは当然ですよね。
しかし、どの補償を受ければ良いのか!?
補償の種類や違いについてわかっていなければ、損をしてしまう可能性も考えられます。
そうならないためにも!!
まずは、そもそも「休業損害」や「休業補償」とは何なのか!?
基礎的な知識から学んでいきましょう。
「休業損害」と「休業補償」の違いとは!?知っておきたい基礎知識
インターネットで検索してみると、交通事故の損害賠償では「休業損害」と「休業補償」が混同して用いられているような気がします。
えっ!?同じものじゃなかったの!?
と思ったのは私だけではないハズ…。
確かにどちらも、
交通事故が原因の障害により、働けなくなった期間の損害を補償するもの
ではあります。
しかし実は、
- 休業損害⇒自賠責保険の請求
- 休業補償⇒労災保険の請求
に用いられる用語
ということで、そう。
つまり、まったくの別物なんです!
自賠責保険における交通事故の損害賠償請求に関しては、「休業損害」という言葉しか出てきません。
ではまず、その休業損害について詳しく見ていきましょう。
自賠責保険における「休業損害」について解説!
まず、交通事故の被害に遭ってしまった場合、いろいろな損害が発生してしまいますよね。
交通事故の損害を大きく分けると、
- 財産的損害:金銭面での様々な不利益
- 精神的損害:怪我の痛みに耐えるなどの不利益
の2つに分けられます。
精神的損害は、本来お金で解決できるものではありません。
たとえば、交通事故で手足を失ってしまった場合…どんなにお金をもらったとしても、失われた手足は戻ってきませんよね。
しかし、その分の精神的な苦痛を少しでも慰めるために、お金を受け取るのは当然のことです。
そして、それが慰謝料ということになるんですね。
一方の財産的損害とは、本来あるはずだったお金を実際に失ってしまうことになりますね。
それを補償するものの一つに、休業損害があるということですね。
積極損害とは、交通事故で出費せざるを得なくなった支出のこと。
主には、治療費や通院交通費が挙げられますね。
一方、消極損害とは、本来得られるはずだった収入や利益を交通事故により失うことです。
もうおわかりかと思いますが、休業損害は消極損害の一つです。
実際に生じた金銭面の不利益(財産的損害)を補償するものであり、慰謝料とは別物になります。
確かに、「休業損害」や「休業補償」の他に「慰謝料」という言葉もよく聞きます。
ここで、休業損害と慰謝料の違いについては理解できました。
下の表に、簡単にまとめておきます。
自賠責における交通事故の損害の種類
財産的損害 | 精神的損害 | ||
---|---|---|---|
積極損害 | 消極損害 | ||
補償の対象 | 通院による金銭的不利益 | 休業による金銭的な不利益 | 精神的な苦痛による不利益 |
補償するもの | 治療費 通院交通費 |
休業損害 | 慰謝料 |
「休業損害」と「慰謝料」は別々に請求できるってホント!?
ここで、気になるのは、「休業損害」と「慰謝料」は、どちらも別々に請求できるのかということですね。
別物ということなので、どちらも請求できるという認識で合っていますでしょうか!?
上記で述べた通り、慰謝料は入院や通院による精神的苦痛に対する補償です。
一方、休業損害は、本来得られるはずであった収入や利益を失ってしまう財産的損害に対する補償です。
よって、慰謝料と休業損害は異なる補償のため、別々に請求することが可能です。
ちなみに、休業損害は、必要書類を提出し、保険会社が内容を確認した後、問題がなければ振り込まれることになります。
しかし、自分の給料日よりも支払いが遅れるケースの方が多いようです。
また、提出書類の書き方がわからないなどの理由で、そもそも遅れてしまうことも考えられますよね。
休業損害の支払いが遅れるとなると、当面の生活資金が不足してしまうのですが…。
その場合は、保険会社との交渉により、慰謝料の前払いという形で対応してもらうことが可能です。
つまり、本来であれば最終的な示談の際に受け取る慰謝料の一部を、先に受け取ることができます。
慰謝料を先に受け取った場合、もちろん受け取った金額分は最終的な慰謝料の金額から差し引かれることになります。
しかし、先に受け取った分はあくまで慰謝料であって、まだ休業損害については受け取っていませんよね。
ということで、休業損害については別途請求できるので、忘れないようにしてくださいね!
労災保険における「休業補償」について解説!
では、一方の休業補償とはなんですか?
今のところ、労災保険から支給される補償で、休業障害とは別物であるということしかわかっていません。
「休業補償」という言葉は、正式には「休業(補償)給付」というもので、労災に関係する用語です。
自賠責での休業損害とは違うものにも関わらず、
”一般人には馴染みのない「損害」という言葉よりも「補償」の方が聞こえが良い”
という理由で区別することなく使われているのが現実です。
確かに、“損害を請求する”というよりも“補償を請求する”と言った方が、我々一般人としては理解しやすいです。
休業補償については、以下の条件をすべて満たす場合、労災保険から休業(補償)給付と休業特別支給金が支給されるということです。
・業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
・労働することができないこと
・賃金を受けていないこと
出典:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-13-02.pdf
ちなみに、休業特別支給金とは、労災保険の給付に付加して支給されるものです。
何はともあれ、繰り返しになりますが、
- 自賠責保険などの請求に関しては休業損害
- 労災保険での請求に関しては休業補償
という違いがあることは覚えておきましょう!!
休業補償 | 休業損害 |
---|---|
自賠責保険などにおける用語 | 労災保険における用語 |
交通事故による障害で働けなくなった期間の損害を補償するもの |
【注目】自賠責の「休業損害」と労災保険の「休業補償」で受け取れる損害賠償の違い
労災保険における「休業(補償)給付」の計算方法
では、休業補償についてもう少し詳しく見てみましょう。
勤務中や通勤中の交通事故の場合は、労災保険の適用を受けることが可能となっているんですよね。
勤務中または通勤中の交通事故による負傷のため労働が不可能となり、そのために賃金を受け取れないケースを見てみます。
この場合、
- 業務中の場合は休業補償給付
- 通勤中の場合は休業給付
が、休業が始まってから4日目から支給されます。
「休業(補償)給付」の金額は、事故前の直近3ヶ月の平均給与の日額を給付基礎日額とし、その60%と定められているということです。
つまり、こういうことですね。
《休業(補償)給付の計算式》
休業(補償)給付=給付基礎日額の60%×休業日数
給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことです。
平均賃金とは、直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を日数で割った1日当たりの賃金額のことです。
特別支給金の計算方法は?
これとは別に、休業特別支給金が支給されるということでしたね?
休業(補償)給付に加え、休業特別支給金として休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が支給されます。
これは、交通事故が業務中であっても通勤中であっても支給されるということです。
つまり、休業特別支給金の計算式はこのようになりますね。
《休業特別支給金の計算式》
休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数
まとめると、勤務中や通勤中に交通事故に遭った場合、合計で給付基礎日額の80%が受け取れるということになります。
自賠責における「休業損害」の計算方法
一方、自賠責での休業損害を請求する場合は、どのように計算されるのでしょうか?
ちなみに、休業損害は任意保険などにも請求できますが、今回は自賠責の場合だけを見てみたいと思います。
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りとなっています。
2.休業損害
(1)休業損害は、休業による収入の減収があった場合・・・1日につき原則として5,700円とする。
(2)休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし・・・治療期間の範囲内とする。
(3)立証資料等により1日につき5,700円を超えることが明らかな場合は、自動車損害賠償保障法施行令第3条の2に定める金額を限度として、その実額とする。出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
つまり、計算式で表すと以下のようになりますね。
《休業損害の計算式》
休業損害=5,700円×休業日数
ただし、1日の休業損害が5,700円を超えることを資料などで証明できれば、最大で19,000円まで日額の増額が認められているということです。
上限がある一方、
日額が5,700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば日額5,700円で計算される
ため、収入の低い人にとっては有利ですね。
【参考】休業損害や示談金の計算機
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注意点としては、この計算機で計算できるのは、任意保険での裁判基準の休業損害です。
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自賠責の「休業損害」と労災の「休業補償」は”二重取りできない”は真実!?
【結論】休業損害と休業補償は二重取りできない!
ここまでで、「休業損害」と「休業補償」の違いについて理解していただけましたでしょうか?
しかしここで、
休業損害と休業補償は別物であり、違うところから給付されるのであれば、どっちも受け取ることができちゃうの!?
なんて、嬉しい疑問が浮かんできたのですが^^;
休業損害と慰謝料はどっちも受け取ることができるということでしたし…。
実際にはどうなのでしょうか?
自賠責保険と労災保険はまったく別物と思われがちですが、いずれも国が補償を行う制度です。
よって、重複して損害が填補されることがないよう調整が行われることになります。
…つまりは、
休業損害と休業補償の二重取りはできない
ということですね。
厚生労働省からは、自賠責保険を先行させるといった通達が出されています。
しかし、拘束力はないため、どちらの補償を受け取るか自由に選択することは可能です。
二重取りはできないけれど、どちらを受け取るかは自分で決めることができるということですね。
次に気になるのは、どちらを受け取った方がより高額な補償を受け取れるかということです。
二重取りはできないだけで、2つの金額に差がある場合、差額分は請求できる?
「休業損害」と「休業補償」を受け取る際の注目ポイント
もっとも、労災保険の「給付基礎日額」と自賠責の「日額」はほぼ近い金額になるハズです。
とはいえ、支給される休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%にとどまります。
また、休業(補償)給付では、休業の初日から3日目までの待機期間は支払の対象になりません。
そのため、支給される休業(補償)給付の額が休業損害の金額を下回ることが多いということです。
ただし、支給される休業(補償)給付の額が休業損害の金額を下回る場合、その差額については別途休業損害としてもらえることになります。
一方、休業特別支給金は、労働福祉の増進を図るために行われるものであり、休業損害と異なる性質を有します。
そのため、休業特別支給金分は休業損害から差し引かれません。
なお、判例においても同趣旨のことが述べられているようです。
特別支給金の支給は、労働福祉事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、
(略)
保険給付と特別支給金との差異を考慮すると、特別支給金が被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者が労災保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできない。出典:最判平成8年2月23日
つまりは、
- 休業補償よりも休業損害の方が高い分は差額をもらえる
- 休業特別支給金分については、いわゆる休業損害とは別個にもらえる
ということですね。
通常、休業損害の方が高額なことが多いということでしたが、もしも休業補償の方が高い場合があったとします。
その場合も、先に休業損害を受け取っていた場合、休業損害との差額分は休業補償も受け取れるということになるそうです!
休業(補償)給付は休業損害から控除されますが、差額が発生することが多いので、差額分も忘れずに請求しましょう。
また、休業特別支給金分は休業損害から差し引かれず、別個に請求できるので、その点にも注意が必要です。
事故の過失割合や相手方の保険の状況により、相手方(自賠責)と労災(健保協会)のどちらへの請求を先行させたほうがいいかは異なります。
その判断は、ケースバイケースで、判断が難しいことも多いので、お悩みの方はまず弁護士さんに相談してみた方が良いかもしれませんね!
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まとめ
いかがだったでしょうか?
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- 自賠責の休業損害と労災保険の休業補償の違い
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この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。