後遺障害4級の交通事故慰謝料|1億938万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害4級の判例についてご紹介します。
こちらの被害者の女性は、交通事故によって足の切断など、身体に重い後遺障害が残ってしまいました。
以前のように生活が送れなくなってしまうことは、非常につらいものです。
被害者としては納得のいく慰謝料が支払われるのか気になりますよね。
実際の裁判ではどのようにして損害賠償金が支払われたのか、弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見てみましょう。
障害等級4級(女・29歳)損害額1億0938万5436円の判例
こちらは、福岡高等裁判所那覇支部の民事部の判決、平成23年(ネ)58号・平成23年(ネ)93号事件です。
この事故でのお怪我の内容は、右下腿骨骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「加害者車両が前方の被害者車両に衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 医学部2年生 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 29歳 |
事故の内容 | 加害者車両が前方の被害者車両に衝突した。 |
傷害の内容 | 右上腕骨骨折、右下腿骨骨折 |
後遺障害等級 | 併合4級(右下腿切断:5級5号、右肩関節機能障害:12級6号、骨盤変形障害:12級5号) |
入院 | 748日 |
被害者は、事故により右足の切断となり、748日間という長期間の入院が必要となったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億0938万5436円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2410万円 |
うち付添看護費 | 177万2000円 |
うち逸失利益 | 7808万1933円 |
損害総額は1億0938万5436円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億0938万5436円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が410万円、後遺障害の慰謝料が2000万円認められました。
- 付添看護費としては、入院雑費112万2000円については争いがなく、被害者が入院中に食事や着替えについて介助を要するほど重篤な状態であったこと、被害者の婚約者が入院中に付き添った上で介助を行っていたことが認められ、日額6500円として65万円が認められました。
- 逸失利益は、被害者は症状固定時に大学医学部の2年生であり、医師国家試験に合格した上で医師として働くことが予測されるので、医師の平均賃金を基礎収入として後遺障害逸失利益を算定すべきと認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの女性は右足の切断や右肩の機能障害などによって後遺障害が残ってしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
こちらの判決で特に注目したいのが、後遺障害慰謝料の金額です。
裁判実務上、後遺障害4級の慰謝料基準は1670万円といわれていますが、本件では2000万円が認められております。
増額が認められた事情としては、症状固定までに長期間を要しその間に度重なる手術を余儀なくされた点、学業・資格取得上への大きな影響のみでなく、加害者の不誠実な対応を指摘しています。
このように慰謝料の増額要因は様々なものがありますので、これらを効果的に主張・立証することが非常に重要といえるでしょう。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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また、慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと、慰謝料の計算が5秒で完了して便利です。
計算ソフトの利用をおすすめするのは、
- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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後遺障害4級の慰謝料計算の特徴は?
4級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に4級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、4級の場合、裁判基準では1,670万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、4級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を92%としていますが、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることもあります。
上に挙げられている裁判例のように、職務内容により、片腕や片脚を失った(4級4号及び5号)としても、仕事がほとんどできなくなったとまでは言えない場合がある反面、運転手の両目の視力が0.06以下(4級1号)になれば、運転手は続けられないなど、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張することが必要となります。
ただし、以上のポイントは一般的なお話にとどまり、被害者の個々の事情によって慰謝料金額が増減します。
そこで、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがよいでしょう。