75歳高齢者・老人の交通事故の死亡慰謝料|5264万円の判例を弁護士が解説
このページでは、75歳女性の死亡事故の判例についてご紹介します。
交通事故の中でも、高齢者・老人の方が関与するケースは非常に多いといわれています。
こちらの判例では、約5264万円の損害額が認められたようですが、どういう点が考慮され、金額がされたのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
主婦(女・75歳)損害額5264万7962円の判例
こちらは、千葉地方裁判所の民事第3部の判決、平成22年(ワ)第1228号事件です。
被害者の女性はこの事故で、多発外傷を原因とする出血性ショックにより死亡しております。
交通事故の基本情報
事故の内容「被害者が道路を横断中に、普通乗用自動車が衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 高齢者 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 75歳 |
事故の内容 | 被害者が道路を横断中に、普通乗用自動車が衝突した事故。 |
傷害の内容 | 多発外傷 |
入院 | 0日 |
被害者は、多発外傷を原因とする出血性ショックにより亡くなったそうです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 5264万7962円 |
---|---|
うち慰謝料 | 2600万円 |
うち葬儀関係費 | 150万円 |
うち逸失利益 | 2506万1654円 |
損害総額は5264万7962円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額5264万7962円になりました。
- 慰謝料としては、亡くなったことに対する本人への慰謝料が2000万円、夫の慰謝料が300万円、子2名の慰謝料が各150万円認められました。
- 葬儀関係費は、150万円となりました。
- 逸失利益は、基礎収入は女性労働者学歴計346万8800円の8割である277万5040円とし、就労可能期間は8年、年金のほか約212万円の不動産所得があること、継続的に生命保険料60万円余りを支払っていたことを考慮し、2506万1654円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの75歳の女性は年金の受給に加えて不動産所得もあったようですが、この判例のポイントはどのような点になりますか?
今回は、被害者が家事労働を行っていたことから、平均賃金をもとにして基礎収入が算出されました。
不動産所得については、被害者の死亡後は相続されますので、逸失利益の基礎収入の対象とはなりません。
ただし、生前に不動産所得があったことにより、生活費控除率が通常よりも低く認定されたため、その点は被害者にとって有利な事情として考慮されました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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高齢者・老人の慰謝料計算の特徴は?
高齢者・老人の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
高齢者や老人と一口にいっても、それぞれのケースに応じて立場は異なります。
一人暮らしの高齢者の場合、裁判例の傾向としては2000万円~2200万円が慰謝料相場といえそうです。
一方、配偶者と一緒に暮らしていたり、他の家族の扶養や家事全般を担っていたりする場合には、相場水準は2500万円~2800万円という高い基準として判断されることになります。
結局、死亡慰謝料の金額は,被害者の年齢というよりは、家庭内で果たす役割によって慰謝料の計算方法は異なるということを理解しましょう。
また、逸失利益につき、年金を受給している場合には、受給している年金の内容によって、逸失利益として認められるかどうかが変わってくることにも注意が必要です。
さらに、被害者が亡くなられた場合の逸失利益を計算する場合には、生きていれば生活費として使われていたであろう割合が差し引かれますが、年金の場合は、差し引かれる割合を高くされる例が多いことにも注意が必要です。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、生活費として使われていたであろう割合は被害者の収入や貯金の状況によっても異なる等、事故に遭われた方のご事情は様々ですので、まずは一度弁護士等の専門家に相談してみるのがよいかと思います。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。