交通事故の慰謝料計算は主婦だと何か違う?主婦手当も別にもらえるの!?
「交通事故の慰謝料計算って主婦だと何か違いがあるのかしら・・・」
「私が交通事故で重い障害が残ってしまい、子供らがとても悲しんでいるけれど、その分の慰謝料は支払ってもらえないの?」
「交通事故のせいで家事や育児ができなくなったのだから、通常の慰謝料以外に主婦手当はもらえないの?」
交通事故にあわれた主婦の方の中には、そんな不安やお悩みを抱いてらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
交通事故に巻き込まれるというのは、はじめての方が多いでしょうから慰謝料が主婦の場合に違いがあるかなんて知らなくて当然かと思います。
このページでは、そんな方のために
- 交通事故の慰謝料は主婦だと何が違うか?
- 交通事故の慰謝料を主婦の家族がもらえることがあるか?
- 通常の慰謝料以外に主婦手当はもらえないのか?
といった疑問を解消すべく、徹底的に調査してきました!
専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。
弁護士の岡野です。よろしくお願いします。
交通事故の慰謝料計算は主婦の場合に違いがあるかという疑問にしっかり回答していきたいと思います。
また、主婦の方が特に気になっているであろう主婦手当のことについてもしっかり解説できればと思っております。
適切な金額の賠償額が受け取れるよう、一つ一つしっかりと理解していきましょう。
とりあえず、交通事故でもらえる金額の相場を知りたいという方は、以下の慰謝料計算機をご利用ください。
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主婦の方でも計算できるようになっています。
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目次
一般の社会人の方と専業主婦の方との違いは収入がないということですよね。
収入の有無が慰謝料に影響するのかどうか、まずは、慰謝料がどんな損害かを確認していきましょう。
交通事故の慰謝料計算は主婦だと違う?
慰謝料は精神的損害についてのもの
交通事故が発生した場合、様々な損害が発生しますが、損害は大きく
- 財産的損害
- 精神的損害
に分けられます。
交通事故が発生すると、お金の面で様々な不利益が生じることになります。
これを財産的損害といいます。
また、事故にあうと、けがの痛みに耐えなければならなくなるなどの不利益も生じます。
この不利益は、それ自体でお金の面での不利益が生じているわけではないですが、精神的な苦痛を負っているといえます。
これを精神的損害といいます。
そして、精神的損害は本来金銭では評価できないものですが、精神的苦痛をなぐさめるために支払われる金銭を慰謝料といいます。
慰謝料は精神的損害についてのものであり、財産的損害ではないため、収入の有無は慰謝料に影響しないといえます。
なお、財産的損害は
- 積極損害
- 消極損害に分けられます。
積極損害とは、交通事故によりせざるを得なくなった支出のことをいいます。
代表的なものとしては、治療費や通院交通費などがあります。
それに対して、消極損害とは、交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失ったことをいいます。
この消極損害の一つとして休業損害があります。
積極損害 | 消極損害 | |
---|---|---|
財産的損害 | 治療費など | 休業損害など |
精神的損害 | 慰謝料など |
慰謝料には三種類ある
そして、慰謝料は
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
の三種類に分けられます。
それぞれの慰謝料は別個に請求できるので、混同しないよう注意しましょう。
入通院慰謝料の計算方法は原則同じ
入通院慰謝料とは
被害者が交通事故の怪我の治療のために入通院をしなければならなかった精神的苦痛をなぐさめるために支払われる金銭
のことをいいます。
入通院をしなければならなかった精神的苦痛は主婦であってもなくても変わらないので、他の場合と同じように
入通院慰謝料の計算方法は入通院期間を基礎に計算される
ことになります。
むちうちの場合の慰謝料相場も、主婦であるかどうかで特に違いはありません。
ただし、幼児を持つ主婦(母親)が育児のために入院期間を短縮した場合には入院慰謝料を増額する場合があります。
そういった事情がある場合には、本来の怪我の状況からすればもっと入院期間が必要であったと考えられるため、入院慰謝料が増額します。
後遺障害慰謝料の相場も同じ
後遺障害慰謝料とは
事故によるケガが原因で後遺障害が残存したことにより、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛に対して支払われる金銭
のことをいいます。
後遺障害が残存したことによる生活上の不便は主婦であってもなくても変わらないので、
後遺障害慰謝料の相場は同じ
といえます。
ただし、裁判になった場合には、もう少し個別の事情を考慮することがあるので、主婦であることを理由に慰謝料が増減する可能性はあります。
死亡慰謝料の主婦の相場はやや高い
死亡慰謝料とは
被害者の死亡に伴う精神的苦痛に対して支払われる金銭
のことをいいます。
死亡した場合の慰謝料には
- 死亡してしまった被害者本人の慰謝料
- 遺族の慰謝料
の二種類があります。
弁護士基準の死亡慰謝料は二種類を合計した金額であるところ、主婦の場合、独身の方に比べて
- 家庭内で果たしてた役割が大きい
- 配偶者や子供ら遺族の精神的苦痛が大きい
ことから死亡慰謝料の相場がやや高めの2500万と定められています。
上記の金額は弁護士基準の金額ですので、保険会社からの提示額はもっと低い金額であることが多いです。
死亡慰謝料は弁護士を依頼することによる増額幅が大きいので、示談する前に弁護士に相談することをおすすめします。
最後にここまで見てきた主婦とそれ以外の人との三種類の弁護士基準の慰謝料の表を作ってみましたので、ご参照下さい。
主婦 | それ以外の人 | |
---|---|---|
入通院慰謝料 | 入通院期間を基礎に計算 | |
後遺障害慰謝料 | 認定された等級に応じて一定額 | |
死亡慰謝料 | 2500万 | 2000〜2500万※ |
※一家の支柱以外の人
慰謝料を主婦の家族がもらえる場合
自賠責保険編
先ほどお伝えしたとおり、死亡した場合の慰謝料には
- 死亡してしまった被害者本人の慰謝料
- 遺族の慰謝料
の二種類があります。
そして、自賠責保険においては、下記表のとおり、遺族固有の慰謝料を定めています。
① | 請求権者 | 父母、配偶者、子 |
---|---|---|
② | 金額 | 1人の場合:550万 2人の場合:650万 3人以上の場合:750万 |
弁護士基準の死亡慰謝料は二種類を合計した金額なのに対し、自賠責基準は二種類を別個に規定するという基準の定め方の違いによるものです。
裁判編
また、裁判においては、主婦に重度の後遺障害が残った場合、親族固有の慰謝料を認めているケースが見られます。
具体的な裁判例を3つほど表にまとめてみましたので、ご覧下さい。
事件番号 | 後遺障害 | 金額 |
---|---|---|
東京地裁平成15年(ワ)第13195号 | 併合1級 | 夫:400万 子2名:各200万 両親:各100万 |
神戸地裁平成20年(ワ)第592号 | 夫:200万 同居の子:100万 別居の子:80万 |
|
東京地裁八王子支部平成16年(ワ)第269号 | 2級3号 | 夫:200万 子3名:各100万 |
これらの裁判例では
- 夫:200万〜400万
- 子:各自100万〜200万程度
というそれなりに大きい金額の固有の慰謝料が認められていることがわかります。
なお、上記の裁判例のより詳しい情報を知りたい方は、「交通事故の慰謝料相場|専業主婦・兼業主婦(追突事故を含む)【判例5選】」の記事をご覧になってみて下さい。
反対にいうと、保険会社は、本人や遺族による裁判前の示談交渉では親族固有の慰謝料を認めない傾向にあります。
死亡事例や重度の後遺障害事例では、裁判まで行かなくても、弁護士への依頼により、親族固有の慰謝料が認められる場合もあります。
死亡事例や重度の後遺障害事例では、示談する前に弁護士に相談だけでもしてみることをおすすめします。
交通事故は慰謝料も主婦手当ももらえる
主婦手当は休業補償(損害)の一種
主婦の方は、交通事故により、家事や育児ができなくなったことによる主婦手当がもらえるのか気になっている方も多いと思います。
結論から申し上げると、主婦手当は冒頭の損害の種類で学んだ休業損害として支払われることになります。
主婦の家事労働には賃金は発生していませんが、社会的に金銭的に評価されうるものと考えられているからです。
下記の最高裁判例でも同様のことが述べられています。
家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げている
出典:最判昭和49年7月19日
いわゆる家政婦の方に家事をお願いする場合、金銭を支払わなければならないことを考えれば、当然のことかもしれませんね。
自賠責の支払基準においても、主婦(家事従事者)の休業損害は認められています。
家事従事者については、休業による収入の減少があったものとみなす。
出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf
なお、休業補償と休業損害とが同じものなのか別物なのかがよくわからないという方もいるようです。
休業補償とは様々な意味で用いられることがありますが、一般的にはその名のとおり休業したことによる損害をつぐなうことをいいます。
一方、休業損害もその名のとおり、休業したことにより発生した損害(収入の減少)をいいます。
つまり、休業損害を金銭によりつぐなう(補填する)行為が休業補償という意味で用いられていることが多いです。
この意味で用いられている場合には、休業補償と休業損害はほぼ同じものと考えてしまって問題ありません。
また、主婦手当というのも休業補償や休業損害とほぼ同じものと考えてしまって問題ありません。
ただし、休業補償が労災保険の休業補償給付のことを意味している場合があるので、その場合には注意が必要です。
主婦の休業損害の計算方法
自賠責基準の計算方法
具体的な主婦の休業損害の計算方法ですが、計算方法自体は他の方の場合同様
日額×休業日数
となりますが、主婦の場合には特有の問題があります。
それは、実際に収入が発生しているわけではないため、日額をどうするかということです。
この点、自賠責では日額を5,700円として計算することとしています。
※追記:2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合、日額は6,100円で計算します。
弁護士基準の計算方法
他方、弁護士基準では、事故前年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額を365日で割ったものを日額として計算します。
賃金センサスとは、厚生労働省が実施している「賃金基本構造の統計調査」の結果をまとめたものです。
平成29年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は377万8200円であり、365日で割った日額は10,351円です。
※追記:平成30年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は382万6300円であり、365日で割った日額は10,483円です。
なお、休業日数については、実通院日数を基礎にすることが多いです。
事故から一定期間経過後の通院時には、家事には支障がないものとして休業日数には含めないと相手方が主張してくることがあるので注意しましょう。
主婦がパートをしている場合には?
主婦がパートをしているいわゆる兼業主婦であっても、週30時間未満であれば、主婦として扱われます。
この場合、現実の収入額と主婦としての日額を検証して、いずれか高い方を日額として計算します。
ここまで見てきた主婦の休業損害について表にまとめてみましたので、ご参照下さい。
専業主婦 | 兼業主婦※ | |
---|---|---|
自賠責基準 | 5,700円 | ・5,700円 ・事故前3ヶ月の収入の平均 のいずれか高い方 |
弁護士基準 | 事故前年の賃金センサスを基準 | ・事故前年の賃金センサスの日割り額 ・事故前3ヶ月の収入の平均 のいずれか高い方 |
※週30時間未満のパートをしている主婦
相手方保険会社は、金額の低くなる自賠責基準で計算して主婦の休業損害を提示してくることが多いです。
場合によっては、主婦の休業損害の項目をなくして損害賠償額を提示してくることもあります。
主婦の方の場合、実際にお金が入ってこなくなるわけではないため
- 休業損害の請求を忘れてしまっていることや
- 適正な賠償額がよくわからず、相手方保険会社の提示額で示談
してしまうことも多いようです。
主婦の方は、相手方保険会社からの損害賠償の提示があってもすぐには示談せず、示談する前に弁護士に相談してみましょう。
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主婦の方が安易に保険会社の提示額で示談してしまうと、大変な家事労働に対する適正な賠償金を受け取れない可能性があります。
主婦の方の賠償額は、その他の方の場合に比べて、提示額からの大幅な増額が見込めることが多いです。
主婦の方は示談される前に一度、弁護士に相談だけでもしてみることをおすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか?
このページを最後までご覧になってくださった方は
- 交通事故の慰謝料は主婦でも基本的には同じだが違う部分も若干ある
- 死亡事故や重度の後遺障害が残る事故の場合、親族固有の慰謝料を受け取れる場合がある
- 通常の慰謝料以外に休業損害という形で主婦手当が受け取れる
ことについて、理解が深まったのではないでしょうか。
このページだけではわからなかったことがあるという方は
も利用してみてください。
このページが、少しでも交通事故に遭われた方のお役に立てれば何よりです。
交通事故時の主婦の慰謝料計算Q&A
交通事故の慰謝料計算は主婦だと違いがある?
主婦の場合、独身の方に比べて死亡慰謝料のみ、やや高い計算となります。慰謝料には他に2種類あり、入通院慰謝料の計算方法は原則同じですが、幼児を持つ主婦(母親)が育児のために入院期間を短縮した場合には入院慰謝料を増額する場合があります。後遺障害慰謝料という事故によるケガが原因で後遺障害が残存したことにより、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛に対して支払われる金銭の相場も同じとなっています。 主婦の交通事故の慰謝料は?
交通事故の慰謝料は主婦の家族ももらえる?
もらえる可能性はあります。死亡した場合の慰謝料には、①死亡してしまった被害者本人の慰謝料②遺族の慰謝料の2種類があります。そして自賠責保険においては、遺族固有の慰謝料を定めています。また、裁判においては、主婦に重度の後遺障害が残った場合、親族固有の慰謝料を認めているケースがあります。 交通事故の慰謝料は主婦の家族も?
交通事故の慰謝料以外にもらえる主婦手当とは?
主婦が交通事故にあい、家事や育児ができなくなったことにより支払われる手当の事です。家事労働に賃金は通常発生しませんが、社会的にも金銭的に評価されうるものと考えられているので休業損害として支払われます。主婦がパートをしているいわゆる兼業主婦であっても、週30時間未満であれば、主婦として扱われます。 主婦手当は交通事故の休業損害に該当?
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
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第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。