交通事故の慰謝料(示談金)の内訳や相場について弁護士が解説
この記事の内容をまとめると以下の通りです
- 交通事故の慰謝料とは「示談金の一部」
- 自賠責保険からの示談金の内訳は、「治療費」や「休業損害」、「慰謝料」、「逸失利益」など様々
- 自賠責保険からの補償を超える分や車両に対する損害賠償は「任意保険」から支払われる
交通事故の被害に対する慰謝料の内訳について疑問をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
目次
交通事故が原因で怪我を負ったり、後遺症が残った場合には、加害者側(相手側の保険会社)に損害賠償請求をすることになります。
保険会社との示談交渉を進めていると、示談金や保険金、賠償金(損害賠償金)、慰謝料など、様々な用語が出てくるはずです。
まずは、それぞれの定義から見ていきたいと思います。
賠償金・保険金・示談金・慰謝料の違いとは
交通事故の慰謝料は「示談金の一部」
示談金や保険金、賠償金(損害賠償金)に慰謝料…。
どれも同じものと思いがちですが、実はそれぞれ違うものなのです。
それぞれの定義は、以下のようになっています。
まとめ
賠償金・保険金・示談金・慰謝料の違い
賠償金(損害賠償金) | ||
---|---|---|
加害者が法律上の賠償責任を負ったものに対して支払うもの | ||
保険金 | 示談金 | 慰謝料 |
加害者が保険に加入していた場合、保険を使って支払う賠償金 | 加害者側と被害者側が示談交渉で決めた賠償金 | 精神的な苦痛に対しての賠償金 |
つまり、交通事故の加害者が自動車保険に加入しており、その保険会社から提示された賠償金に被害者の方が納得すれば、賠償金=保険金=示談金ということになります。
その中の一部に、慰謝料が含まれているという関係なのですね。
交通事故の示談金の内訳について
慰謝料や示談金の意味合いがわかったところで、今度は示談金の内訳について見ていきましょう。
交通事故の被害に遭った場合、まずは自賠責保険から示談金が支払われます。
自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する人に加入が義務付けられた保険で、あくまでも事故被害者の方への最低限の補償を目的とした保険となっています。
しかし最低限とはいえ、「傷害」、「死亡」、「後遺症」、「死亡に至るまでの傷害」に対する示談金を受け取ることができます。
傷害に対する示談金の内訳とその相場
傷害に対する示談金としては、「治療費」や「休業損害」、「慰謝料」や「その他実費」などが支払われます。
詳しい内訳と、自賠責保険からの支払い基準は以下の通りとなっています。
治療費 |
---|
診察代や手術代、投薬代や入院代の費用など。 【支払い基準】 治療のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
看護料 |
原則として12歳以下のお子様に近親者の方が付き添った場合や、医師が看護の必要性を認めた場合の、入院中の看護料や自宅看護料、通院看護料。 【支払い基準】 ・入院の場合:4100(4200)円/日 ・自宅看護もしくは通院の場合:2050(2100)円/日 ・それ以上の収入減の立証で近親者の場合:19000円 ・それ以外:地域の家政婦料金が限度 |
諸雑費 |
入院中に要した雑費。 【支払い基準】 原則として1100円/日。 |
通院交通費 |
通院に要した交通費。 【支払い基準】 通院のためにかかった必要かつ妥当な実費。 |
義肢等の費用 |
義肢や義眼、めがね、補聴器、松葉杖などの費用。 【支払い基準】 必要かつ妥当な実費。 めがねの費用は50000円が限度。 |
診断書等の費用 |
診断書や診療報酬明細書などの発行手数料。 【支払い基準】 発行に要した、必要かつ妥当な実費。 |
文書料 |
交通事故証明書や印鑑証明書、住民票などの発行手数料。 【支払い基準】 発行にかかった必要かつ妥当な実費。 |
休業損害 |
怪我の治療などで失われた収入(有給休暇の使用、家事従事者を含む)。 【支払い基準】 原則として5700(6100)円/日。 それ以上の収入減の立証で19000円を限度として、その実費。 |
慰謝料 |
事故で怪我をしたことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 【支払い基準】 4200(4300)円/日。 対象日数は被害者の怪我の状態や実治療日数などを考慮して治療期間内で決められる。 |
※ 自賠責からの支払い限度額は、被害者1名につき合計で【120万円】まで。
※ ( )内の金額は2020年4月1日以降に発生の事故に適用
後遺症に対する示談金の内訳とその相場
そして、治療を行ったにも関わらず、残念ながら怪我が完治せずに後遺症が残ってしまった場合…。
その後遺症に対する示談金として、「慰謝料」や「逸失利益」が支払われます。
慰謝料 |
---|
後遺症が残ったことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 【支払い基準】 「等級ごとの支払い基準(単位:万円)と労働能力喪失率」の表参照 |
逸失利益 |
身体に残った障害による労働能力の減少で、将来発生するであろう収入減。 【支払い基準】 収入および障害の各等級に応じた労働能力喪失率で、喪失期間などによって算出。 |
ちなみに後遺症に対する示談金を受け取れるのは、自動車損害賠償保障法施行令の別表第1もしくは別表第2に該当する場合が対象となります。
該当内容について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
そして、具体的な等級ごとの支払い基準は以下の表のようになっています。
逸失利益の計算に必要となる労働能力喪失率も等級ごとに示してありますので、併せてご覧になってみてください。
等級 | 限度額 | 慰謝料 | 労働能力 喪失率 |
---|---|---|---|
第1級 (別表第1) |
4000 | 1600(1650) | 100% |
第2級 (別表第2) |
3000 | 1163(1203) | |
第1級 (別表第2) |
1100(1150) | ||
第2級 (別表第2) |
2590 | 958(998) | |
第3級 | 2219 | 829(861) | |
第4級 | 1889 | 712(737) | 92% |
第5級 | 1574 | 599(618) | 79% |
第6級 | 1296 | 498(512) | 67% |
第7級 | 1051 | 409(419) | 56% |
第8級 | 819 | 324(331) | 45% |
第9級 | 616 | 245(249) | 35% |
第10級 | 461 | 187(190) | 27% |
第11級 | 331 | 135(136) | 20% |
第12級 | 224 | 93(94) | 14% |
第13級 | 139 | 57 | 9% |
第14級 | 75 | 32 | 5% |
※ 限度額は、慰謝料と逸失利益を合計した額。
※ ( )内の金額は2020年4月1日以降に発生の事故に適用
ちなみに、逸失利益の計算方法は以下のようになっています。
後遺障害逸失利益
(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数)
それぞれの項目の意味は以下の通りです。
項目 | 意味 |
---|---|
基礎収入 | 後遺症が残らなければ、得られていたであろう収入 |
労働能力喪失率 | 後遺症が残ったことによる減収の割合 |
労働能力喪失期間 | 後遺症によって減収が発生する期間 |
中間利息控除係数 | 逸失利益を症状固定時の金額にするための係数 |
労働能力喪失率について、原則として就労可能な年齢を67歳として終期を一律に定めています。
また、中間利息控除係数については、基本的にライプニッツ係数が用いられています。
詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみてください。
死亡に対する示談金の内訳とその相場
また、非常に残念なことですが、被害者の方が死亡してしまった場合には、死亡に対する補償として、「被害者および遺族への慰謝料」や「逸失利益」、「葬儀代」が支払われます。
葬儀費 |
---|
通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用(墓地、香典返しなどは除く)。 【支払い基準】 60(100)万円 立証資料などにより60万円を明らかに超える場合は100万円までで妥当な金額。 |
逸失利益 |
被害者が死亡しなければ将来得られたはずの収入から、本人の生活費を控除したもの。 【支払い基準】 収入および就労可能期間、そして被扶養者の有無などを考慮のうえ算出。 |
慰謝料 |
事故で被害者の方を亡くしたことによる精神的・肉体的な苦痛に対する補償。 【支払い基準】 下記の表参照 |
※ 自賠責からの支払い限度額は、被害者1名につき合計【3000万円】まで。
※ ( )内の金額は2020年4月1日以降に発生の事故に適用
死亡慰謝料については、亡くなられたご本人に対する350万円(2020年4月1日以降に発生の事故は400万円)に加え、残されたご家族に対しても支払われることになります。
被害者本人一律 | 遺族※ | 被扶養者がいる場合 | |
---|---|---|---|
350+ | 1人 | 550 | +200 |
2人 | 650 | ||
3人以上 | 750 |
※ 被害者の両親、配偶者、子のみ
死亡に対する逸失利益の計算方法は以下のようになっています。
死亡逸失利益
(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
計算方法について詳しく知りたい場合は、こちらの記事もご覧になってみてください。
なお、亡くなられるまでに入院などで治療を受けたことに対する補償は、「傷害に対する補償」の規定が準用されることになります。
任意保険からの示談金の内訳
以上、自賠責保険から受け取れる示談金(慰謝料)の内訳について見てきました。
しかし、自賠責からの賠償金は最低限のものであり、限度額が定められています。
その自賠責からの賠償金の限度額を超える分については、加害者が任意保険に加入していれば、任意保険から支払われることになるのです。
怪我の治療や後遺症、死亡に対する示談金の内訳は、任意保険でも自賠責でもほぼ同じとなっています。
加えて、任意保険からは車両の損害に対する示談金も受け取れる可能性があります。
修理費 |
---|
交通事故によって破損した車両の修理代。 |
評価損 |
修理費用の予算によって車の外観や機能に欠陥が残ったままとなってしまったり、そもそも事故車(修理車)として扱われることによる価値の下落に対する補償。 |
代車使用料 |
車の修理中の代車使用料。 必要性がある場合のみ認められる。 |
休車損害 |
交通事故により損傷した車を修理、もしくは買い替えるための期間中に、車があれば本来得ることのできた利益の減少に対する補償。 トラック、バス、タクシーなどの営業車両(緑ナンバー)のみ対象。 |
登録費用 |
車両が全損となり、買替が認められる場合に発生する税金や廃車に関する費用、自動車検査登録手続費用、車庫証明手続費用、納車手数料など。 |
以上の通り、示談金の内訳としては、慰謝料以外にも、多くの種類の賠償金=保険金=示談金を受け取ることが可能なのですね。
【注意】慰謝料の基準は1つではない
ところで、慰謝料に関しては、自賠責保険からの基準以外に任意保険基準、弁護士基準というものが存在しています。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
例として、後遺症慰謝料のそれぞれの金額の違いを見てみましょう。
後遺症等級 | 自賠責基準※1 | 任意保険基準※2 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1100 (1600) |
1300 | 2800 |
2級 | 958 (1163) |
1120 | 2370 |
3級 | 829 | 950 | 1990 |
4級 | 712 | 800 | 1670 |
5級 | 599 | 700 | 1400 |
6級 | 498 | 600 | 1180 |
7級 | 409 | 500 | 1000 |
8級 | 324 | 400 | 830 |
9級 | 245 | 300 | 690 |
10級 | 187 | 200 | 550 |
11級 | 135 | 150 | 420 |
12級 | 93 | 100 | 290 |
13級 | 57 | 60 | 180 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
※1 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
()内は要介護の場合の金額。
※2 旧任意保険支払基準による。
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交通事故における慰謝料の内訳に関するQ&A
賠償金・保険金・示談金・慰謝料の違いとは?
それぞれ異なる意味を持ちますが、事故の加害者が自動車保険に加入しており、その保険会社から提示された賠償金に被害者の方が納得した場合は、賠償金=保険金=示談金という認識になります。その中の一部として慰謝料が含まれているという関係になります。各単語の意味については、以下で紹介しているページをご参照ください。 交通事故の慰謝料は「示談金の一部」
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慰謝料の相場は用いる基準で異なる?
慰謝料には①自賠責基準②任意保険会基準③弁護士基準、の3つの基準が存在します。それぞれの基準により慰謝料の相場は異なりますが、一般的に金額の大きさは①自賠責基準<②任意保険会基準<③弁護士基準の順になります。「しっかりとした補償を受けるために、弁護士基準での慰謝料を受け取りたい」という方はぜひ一度弁護士にご相談ください。 【注意】慰謝料の基準は1つではない
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
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