交通事故加害者の刑事処分|不起訴になる?人身事故は過失運転致傷になる?

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交通事故加害者の刑事処分|不起訴になる?人身事故は過失運転致傷になる?

  • 交通事故の加害者になってしまった!刑事処分が下される?」
  • 「刑事処分を受けたくない!不起訴の可能性は?」

交通事故の加害者となってしまったとき、事故の態様によっては刑事責任も生じます。

ご覧の記事では、

  • 交通事故の刑事処分確定までの流れ
  • 交通事故の刑事処分確定の時期や確認方法
  • 交通事故の刑事処分の具体的な内容

について徹底解説していきます。

なお専門的な解説は刑事事件化した交通事故にくわしい岡野弁護士にお願いしています。

弁護士の岡野です。

よろしくお願いします。

刑事責任の生じた交通事故においては、前科がつく可能性も否定はできません。

今回は図も使いながらより具体的に刑事手続の流れを解説していきたいと思います。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

交通事故の刑事処分確定までの流れ

交通事故の刑事処分確定までの流れ

交通事故において刑事責任が生じた時には、刑事手続が進められていくことになります。

窃盗や傷害などを犯したときと同じように警察や検察の捜査をうけることになるのです。

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捜査の後には、検察官によって起訴不起訴の判断がくだされることになります。

まずはこの刑事処分確定までの流れについて解説していきます。

刑事処分の流れを図解|起訴・不起訴の判断

交通事故が発生したとき、その事故が

道路交通法や自動車運転処罰法などの法律

に違反する態様だった場合、刑事責任が発生することになります。

刑事責任の生じる交通事故が発生したとき、警察はまず

事故加害者を逮捕するべきかどうか

を判断します。

逮捕・勾留の可能性

逮捕の要件は以下の通り定められています。

逮捕の要件

一般的に、以下のような要素があると

  • 逃亡のおそれ
  • 証拠隠滅のおそれ

はないと判断される可能性があがるようです。

  • 事故態様が悪質でない
  • 家庭を持っている
  • 職に就いている

など

通常、刑事責任の生じた交通事故の多くは在宅事件として手続きが進み、逮捕が行われるケースは稀です。

ただ、

危険運転の末、人を死傷させている

など犯行態様が悪質な場合、逮捕が行われる可能性は高いようです。

起訴・不起訴までの流れ

在宅事件の場合

交通事故の加害者は、

  • 警察署に呼び出されて取調べを受ける
  • 事故現場にまで再度連れていかれる

などして、警察の捜査を受けることになります。

また刑事訴訟法上、警察は捜査を開始したとき事件を検察送致する決まりとなっています。

送致とは以下のような手続きのことをいいます。

送致

事件の証拠物や書類などを検察に送り届ける手続き

事件の証拠物などを受け取った検察官は、警察が捜査した内容を元に

  • 起訴するか
  • 不起訴にするか

を決定します。

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不起訴の流れ

起訴された場合、裁判開廷となりほぼ確実に前科がつくことになってしまいます

不起訴となった場合、その時点で刑事手続は終了し

  • 裁判は開かれず
  • 刑事罰は科されず
  • 前科もつかない

ということになります。

逮捕・勾留された場合

逮捕・勾留された場合は、以下のイラストのような流れとなります。

起訴前改

在宅事件の場合、送致をするのにタイムリミットはありません。

しかし逮捕が行われた場合には、身体を拘束してから48時間以内に送致しなければならない規定となっています。

事件を送致された検察官は、事故の加害者について

勾留請求するかしないか

を判断します。

勾留というのは、

逮捕後、起訴まで最大20日間にわたり身体拘束を継続する

という手続きです。

以下の要件に当てはまった場合に請求され、認容されます。

勾留の要件

原則的には、逮捕から勾留期間終了までの23日間に、起訴・不起訴の判断がくだされます。

  • 逮捕後、勾留までは行われなかった場合
  • 勾留期間満了後、処分保留となった場合

は釈放後に通常の在宅事件と同じあつかいとなります。

起訴・不起訴までの流れ
在宅事件 逮捕・勾留された事件
①「送致」
検察官に事件を送る
期限なし 逮捕後48時間以内
②「勾留」
逮捕に引き続き身体拘束を継続
送致後24時間以内
③「起訴・不起訴」の判断
起訴・不起訴を検察官が判断
期限なし 原則、勾留期間中に

刑事処分の流れを図解|起訴後

起訴後は通常、裁判が開廷することになります。

事故の態様によって

  • 略式裁判
  • 正式裁判

のどちらかの裁判の様式がとられます。

略式裁判の流れ

略式裁判はより簡易的な裁判です。

以下の要件に当てはまる事故加害者について、検察官の判断で略式裁判の請求(略式起訴)が行われます。

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略式裁判では

  • 検察官と裁判官が主張を争わせるようなことはなく
  • 100万円以下の罰金刑のみが言い渡される

ことになります。

  • 事実に争いがある場合
  • より重大な事故の場合

には正式裁判が開かれることでしょう。

略式起訴は、あくまで簡易的な手続きで済ませられる事故において適用されるのです。

略式起訴の流れは以下の通りです。

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これら手続きは、通常

  • 逮捕・勾留が行われている事案では1日のうちに
  • 在宅事案の場合は数週間以内に

処理が終了します。

正式裁判の流れについて知りたい方はコチラ

  • 略式裁判では済まないほど事故の態様が重大
  • 事実の認定などに争いがある

そのような場合には正式裁判が開かれます。

正式裁判というのは、皆さんが「裁判」ときいて思い浮かべるであろう様式の裁判です。

検察側と弁護側がお互いにそれぞれの立場から主張をし、裁判官が最終的な判断をくだします。

正式裁判のくわしい流れについて知りたいという方はコチラの記事をご覧ください。

交通事故の刑事処分確定の時期|いつ通知が来る?確認方法は?

交通事故の刑事処分確定の時期|いつ通知が来る?確認方法は?

ここまで刑事処分の流れについて詳解してきました。

では、起訴不起訴が確定するまでの期間というのはどれくらいなのでしょうか?

起訴・不起訴の確定時期はいつ?

逮捕・勾留が行われた事件については、

原則逮捕後23日以内

に起訴・不起訴の判断がくだされます。

在宅事件の場合、時期の判別は困難

ただ、交通事故事案の大半をしめる「在宅事件」では、起訴・不起訴の確定時期は一切不明となってしまいます

そもそも刑事訴訟法上、

「○○日以内に起訴・不起訴の判断をしなくてはならない」

などといった規定はありません。

慣例的に目安となる時期が設定されているわけでもありません。

結論としては、

必要な捜査が終わり次第

となります。

起訴・不起訴判断の実際

検察官の業務は多忙を極めます。

実務上、より簡単な事件は後回しにしがちだと言われています。

交通事故関連の事件では、

事故発生から1年以上経ってようやく起訴・不起訴の判断がなされる

といったケースも珍しくないようです。

起訴・不起訴の確定時期
在宅事件 逮捕・勾留された事件
必要な捜査が終わり次第 原則逮捕後23日以内*

*処分保留などを除く

起訴・不起訴の通知のされ方、確認方法

  • 起訴された事実
  • 不起訴となった事実

はどのように事故加害者本人に伝えられるのでしょうか?

起訴・不起訴の通知

逮捕・勾留されている事案の場合、

  • 起訴されたら場合は身体拘束が継続されるほか、起訴状が届けられる
  • 不起訴・処分保留の場合は釈放されて自由の身になる

といった違いがありますから起訴・不起訴の事実がわかります。

実務上「起訴」「不起訴」「処分保留」の事実は、警察官や検察官が知らせてくれるケースも多いです。

他方、在宅事件の場合は事情が異なります。

在宅事件で起訴された場合

在宅事件で起訴された場合、裁判所から自宅に対して起訴状が届けられます。

事故加害者はこの書類の送達により起訴された事実を知ることになります。

在宅事件で不起訴の場合

不起訴の事実は、通常検察官の方から積極的に教えてくれることはありません

事故加害者の方から問い合わせをして知ることになるケースがほとんどでしょう。

刑事訴訟法上、検察官は

請求があった場合には』不起訴の事実を告げなければならない

とされています。

自ら不起訴の事実を告げなければならないという法的な規定はありません。

いつまでたっても起訴状が届かないと思ったら、実はずいぶん昔に不起訴となっていたことが判明した

といった事例は珍しいものではありません。

起訴・不起訴の通知
在宅事件 逮捕・勾留された事件*
起訴の事実 起訴状の送達によって知る ・起訴状の送達によって知る
・身体拘束が継続することで知る
不起訴の事実 自ら問い合わせて知る 釈放で知る

*実務上、警察官や検察官が知らせてくれるケースもある

不起訴処分告知書とは?

不起訴処分となった事実を証明する書類として

不起訴処分告知書

というものがあります。

たとえば会社に検挙された事実が知られてしまった場合、この告知書の提出を求められる場合があります。

不起訴処分告知書は自動で発行されるものではありません。

発行を望む場合は、自ら検察庁に発行の申請をする必要があります。

申請の方法は検察庁ごとに微妙に違いがありますから、まずは事故担当の検察庁に電話で問い合わせてみるのがよいでしょう。

交通事故加害者にくだされる刑事処分|不起訴の可能性

交通事故加害者にくだされる刑事処分|不起訴の可能性

具体的に

  • どんな事故の態様でどのような刑事罰に問われるのか
  • 不起訴の可能性はどれくらいなのか

についても解説しましょう。

物損と人身|交通事故で刑事罪を科される可能性とは?

まずは交通事故で刑事罰が科されるケースを、

  • 物損事故の場合
  • 人身事故の場合

それぞれに分けて見ていきます。

物損事故の刑事罰

物損事故で刑事責任が発生するケースというのは稀です

ただ、事故の過程で道路交通法などに違反していた場合には刑事罰を科される可能性もあります。

物損事故で刑事責任が発生する一例
当て逃げ
(物損事故後に警察へ報告しなかった)
・道路交通法72条に違反
3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
建造物を損壊
(・業務上必要な注意を怠った
・私生活上の重大な過失をおかした
どちらかの態様で他人の建造物を損壊した)
・道路交通法116条に該当
6か月以下の禁錮または10万円以下の罰金
酒気帯び運転
( 呼気1L当たりのアルコール量0.15mg以上で運転)
・道路交通法65条に違反
・酒酔い(正常な運転ができない状態)の場合:5年以下の懲役100万円以下の罰金
・上記以外の場合:3年以上の懲役50万円以下の罰金
過労運転
(・過労
・病気
・薬物
などにより正常な運転ができないおそれがあるのに運転)
・道路交通法66条に違反
・違法薬物による場合:5年以下の懲役100万円以下の罰金
・上記以外の場合:3年以上の懲役50万円以下の罰金

事故の発生後には、警察によって事故の発生原因などが捜査されます。

捜査の過程で運転者の道路交通法違反などが発覚するケースもあるのです。

人身事故の刑事罰

人身事故の場合は、ほぼすべてのケースが刑事事件化してしまいます

運転により人が死傷したときには、

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

略称「自動車運転処罰法」によって取り締まられることになります。

まずは、自動車運転処罰法の中の

過失運転致死傷罪

についてみていきましょう。

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は自動車運転処罰法の5条に規定されています。

過失運転致死傷罪とは
対象 自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた者
刑罰*2 7年以下の懲役か禁錮
or
100万円以下の罰金
刑罰
(無免許の場合)
10年以下の懲役

*1 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条より
*2 傷害が軽い場合、情状により刑の免除もあり得る

人を死傷させるような態様の事故では、そのほとんどについて

自動車の運転上必要な注意を怠った

と認められます。

判例上、過失がないと認められた事例としては以下のようなものがあります。

事例①
登り坂の直後に下り坂のある道路において、下り坂の開始地点に横たわって寝ていた人をはねた事例。
勾配や死角などを考慮すると回避することは困難だったと認められた。
事例②
被害者に当たり屋的な性質が認められた事例。
被害者について、
・加害者の運転する車側に倒れ込んでいる
・過去2年間に5件もの交通人身事故に遭っている(概算583958953分の1の確率)
などの事実が認められた。

これに匹敵するレベルの事故態様であれば、過失運転致死傷罪が成立しないと認められる場合もあるでしょう。

ただ現実的には、過失ありと認定されるケースが大半なのです。

危険運転致死傷罪

危険運転の末に人を死傷させた場合には、

危険運転致死傷罪

によって処罰されることになります。

危険運転致死傷罪とは
対象 危険運転を行い人を死傷させた者
刑罰 負傷:15年以下の懲役
死亡:1年以上20年以下の懲役
刑罰
(無免許の場合)
負傷:6か月以上20年以下の懲役

*自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条より

法律上、危険運転というのは以下の6通りの態様を指します。

危険運転の種類
  1. ① アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で運転
  2. ② 制御困難となるほどの高速度で運転
  3. ③ 運転する技能がないのに運転
  4. ④ 重大な交通の危険が生じる速度で煽り運転
  5. ⑤ 重大な交通の危険が生じる速度で信号無視

⑥重大な交通の危険が生じる速度で通行禁止道路を運転

これらの運転により人を死傷させた場合、過失運転致死傷罪よりも重く処罰されることになるわけです。

交通事故の主な刑事処分|不起訴で罰金や懲役回避の可能性

刑事事件化した交通事故の、刑罰の重さは上記の通りです。

ただ繰り返しになりますが、刑事事件は一から十まで全ての事件について裁判が開廷されるわけではありません

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検察官によって

  • 裁判開廷を要請し刑事責任を追及するべきか起訴
  • 裁判を開くまではないとして刑事手続を終了させるか不起訴

が判断されるのです。

不起訴件数の統計

交通犯罪の起訴率を見ていくことにしましょう。

まずは

  • 過失運転致傷罪
  • 過失運転致死罪

の起訴率です。

過失運転致死傷罪の起訴率(H29)
過失運転致傷罪 過失運転致死罪
起訴件数 46,371 2,302
不起訴件数 395,703 1,103
起訴率 10.5 67.6

*検察統計 17-00-09「最高検,高検及び地検管内別 自動車による過失致死傷等被疑事件の受理,既済及び未済の人員」より

ご覧の通り相手を負傷させただけという態様では、そのほとんどが不起訴となっているのがわかります。

ただし、その事故が起訴されるか不起訴となるかはあくまで個別に判断されることです

犯行態様の悪質な事故の場合、起訴される確率は上がります。

あくまで統計のデータは目安程度に考えてください。

続いて、

危険運転致死傷罪

の起訴率です。

危険運転致死傷罪の起訴率(H29)
危険運転致死傷罪
起訴件数 408
不起訴件数 86
起訴率 82.6

*検察統計 17-00-08 「罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員」より

過失運転致死傷罪と比較し、起訴される割合が高いことがわかります。

道路交通法違反

最後に道路交通法違反の起訴率を見てみます。

交通事故に関連しない違反も統計に組み込まれていますので、あくまで参考値としてみてください。

道路交通法違反の起訴率(H29)
道路交通法違反
起訴件数 378,043
不起訴件数 115,129
起訴率 76.7

*検察統計 17-00-10「検察庁別 道路交通法等違反被疑事件の受理,既済及び未済の人員」

道路交通法違反についても、起訴される割合はそうとう高いようです。

交通事故加害者がうける行政処分とは?刑事処分との違い

交通事故を起こしてしまったときには、刑事処分のみならず

行政処分

をも受けることになるでしょう。

行政処分は免許に対する処分

行政処分とは免許に対して科される処罰であり、事故態様に応じて規定された点数が加算されます。

点数が一定の値までたまると、免許停止免許取消の処分が科されます。

交通事故における点数は、

  • 交通違反に対する基礎点数
  • 交通事故に対する加算点数

に分けられます。

まず交通違反に対する基礎点数は、以下の通りです。

多くは「安全運転義務違反」として2点が加算されることでしょう。

この点数に足す形で、以下の「交通事故の付加点数」が加算されます。

そして点数の合計値が規定された値を超えたとき、

  • 免許停止
  • 免許取消

などの処分がくだされます。

点数に対する処罰の規定は以下の通りです。

行政処分歴なしの場合、6点以上から免許停止など具体的な処分が科されることになります。

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まとめ

ここまで交通事故における刑事処分について解説してきました。

まとめ
  • 刑事処分の確定時期は、在宅事件の場合予測がつかない。
  • とくに人身事故の場合、刑事事件化する可能性はそうとう高い。
  • 過失運転致傷罪は、一般的に起訴率が低い。検挙=即有罪というわけではない。

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