鼻骨骨折の後遺症の示談金|症状や手術は?治療費や後遺障害慰謝料の相場は?
ある日突然、交通事故で鼻骨骨折の後遺症が残ってしまったとしたら…。
治療中の生活に関して、
- 鼻骨骨折から回復するために支払う治療費
- 怪我をしたことや後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料を含む示談金
- 将来の平穏な暮らしを確保するための生活費
の問題を避けて通ることはできません。
さて、ここで問題です。
鼻骨骨折の後遺症との関係で、
治療中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
※ 知っている人はみんな利用している方法です!
生活費や治療費の悩みを解決する方法を次の中から選んでください。
選択肢①:
鼻骨骨折との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
鼻骨骨折によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
鼻骨骨折を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
裁判、増額請求、再計算…。
正解は、この記事の後半で弁護士の先生に詳しく解説してもらいましょう!
それでは、鼻骨骨折の後遺症でお悩みの方へ。
鼻骨骨折による負担や、相手側の保険会社との交渉によるストレスから解消される方法についてまとめてみました。
ぜひご一読ください。
目次
なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
交通事故の被害に遭われ、心身ともにお辛い日々を送られているとお察しします。
また、鼻骨骨折の後遺症が残ってしまった場合、日常生活への影響も大きく、負担を感じていらっしゃるはずです。
実際に、後遺症でお悩みの方から、これまでに相談を受けてきた経験があります。
今回はその経験も踏まえ、具体的な事例も紹介しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
まず、鼻骨骨折とは、なんとなくどのような状態のことなのか想像できるかと思います。
鼻骨骨折:
鼻の骨折のこと。鼻の先端の部分は骨ではなく軟骨でできており、こちらも骨折するが、厳密には軟骨でない部分の骨折を指す
しかし、具体的な症状や治療法にまで詳しいという方は少ないかもしれません。
まずは、鼻骨骨折についての基礎知識から詳しく見ていきましょう。
鼻骨骨折の症状や治療法…後遺症が残るケースもあり得る!?
鼻骨骨折の症状について
鼻骨骨折は、その名の通り、鼻の骨折のことです。
鼻の先端の部分は、軟骨でできており、その軟骨が骨折することもありますが、基本的には軟骨でない骨の部分の骨折のことになります。
出典:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/01/Nasal_bone.png
鼻は顔面の中でも飛び出ているため、外傷を負いやすい部分になります。
また、鼻骨は薄い骨のため、比較的弱い力でも簡単に折れてしまうことがあります。
交通事故やスポーツで鼻を強打したり、殴られることが主な原因となるようです。
では、鼻骨を骨折した場合、どのような症状が現れるのでしょうか。
調べてみたところ、以下の通りということです。
●止まりづらい鼻血
●皮下出血
●鼻の変形
●鼻の付け根部分がはれる
●鼻筋が「く」の字になったり、鼻の付け根部分が陥没することが多い
もちろんですが、痛みの症状も現れます。
交通事故などで鼻を強く打ち、上記のような症状が見られた場合には、まずは耳鼻科の受診が望ましいようです。
大きく骨折した場合には、鼻の状態からある程度診断が可能ということですが、見た目だけでは判断できない場合には、
- 骨折の状態を確認する画像検査
- 骨折の有無を確認するレントゲン検査
- 骨折の有無や程度を確認するCT検査
が行われるそうです。
鼻骨骨折の治療は早めが望ましい!
では、鼻骨骨折に対する治療法はどのようになっているのでしょうか??
実際に治療をした方の声を聞くと、結構痛そうなのですが…。
https://twitter.com/nikkan_n/status/872402001417469952
調べてみたところ、以下の通りということです。
●骨折してから間もなければ、局所麻酔で骨折部分を器具で持ち上げて整復する
〇整復後、1週間程度は固定をする
●1か月以上経過してしまうと、整復は難しくなるため、骨切り術で骨組みを作り直す
●骨折してから早ければ早いほど整復が容易
〇受傷直後であればすぐに整復可能
〇受傷後半日から数日間経過した時点では腫れがもっとも強いため、腫れの程度によっては正確に整復することが困難
〇そのような場合、逆に腫れが引くまで整復を待つ場合もある
受傷後1週間以内であれば、局所麻酔を行った後に、骨折部分を器具で持ち上げるという治療が行われるそうです。
ただし、骨折から1ヶ月以上経っていて、変形が目立つ場合には、手術により、骨組みを作り直すことが多いとのことです。
治療の実施が早ければ早いほど、元の状態に戻る可能性が高いそうなので、鼻骨骨折が疑われる場合には、早めに病院で診察を受けてください。
手術を行った場合も行っていない場合も、治療から1週間程度は、鼻を安静にすることが大事なのだそうです。
また、骨折による腫れが治まった時点で、鼻が曲がっていないことの確認も忘れないようにしてください。
【注目】鼻骨骨折に対する後遺症等級認定基準について解説
鼻骨骨折は、早めの治療を受け、安静にしていれば、完治することが多いようです。
しかし残念ながら、治療のタイミングが遅れたり、骨折の程度が非常に大きかった場合には、後遺症が残ってしまう可能性もあるということです。
後遺症としては、鼻の機能的な問題よりも、外見が問題となるようですね。
鼻骨骨折の後遺症としては、鼻が曲がったままになってしまったり、低くなったままになってしまうことが主に考えられます。
また、骨折部位に痛みが残る神経症状の後遺症も可能性として考えられます。
さらに、嗅覚障害や鼻呼吸が困難になるといった後遺症も稀にではありますが残る可能性があります。
ここで、後遺症の等級は1級~14級まで定められており、等級ごとに認定基準が定められているということです。
残存する症状が重ければ重いほど、数字の低い等級に該当するとも聞きました。
鼻骨骨折の場合の等級認定の基準はどのようになっているのでしょうか?
鼻が曲がったままになってしまったり、低くなったままになってしまうことを外貌醜状と捉え、12級14号が認定される可能性があります。
この点、労災の認定基準では欠損のない鼻骨の変形については、直接の評価対象とされていないですが、実務上は柔軟な認定をしているようです。
また、骨折部位に痛みが残った場合に局部の神経系統の障害である12級13号、または14級9号が認定される可能性があります。
さらに、嗅覚障害につき、嗅覚脱失の場合には12級相当の、嗅覚減退の場合には14級相当の認定の可能性があります。
そして、鼻呼吸が困難になることにつき、12級相当の認定の可能性があります。
やはり多いのは外見に関する後遺症のようですが、嗅覚障害などが残ってしまうこともあるのですね。
下の表に、後遺症の認定基準をまとめてみましたので、良ければご覧になってみてください。
傷害の状態 | 後遺症等級 |
---|---|
外貌醜状 | 12級14号 |
局部の神経症状 | 12級13号 |
14級9号 | |
嗅覚脱失 | 12級相当 |
嗅覚減退 | 14級相当 |
鼻呼吸困難 | 12級相当 |
知らないと損する①鼻骨骨折の治療に対する慰謝料や治療費は?
鼻骨骨折の症状や治療法について理解を深めていただけましたでしょうか。
しかし、治療を続けるにあたっては、その間の生活費や治療費、仕事を休まなければならないことに対して、不安ばかりですよね。
最初に、
治療中の生活費や治療費の悩みを解決するためにできることがあるって知っていましたか?
とお聞きしました。
ここからは、その答えを、岡野弁護士に話を聞きながら、詳しく見ていきましょう。
治療費の支払いは誰が?
まずは、入通院中の治療費についてです。
交通事故によるケガの治療をする場合であっても、病院との関係では、治療費の支払義務は患者である被害者の方にあることになるそうです。
よって、原則的な治療費の支払い方法としては、被害者の方が病院に治療費を立替え、立替えた治療費を加害者側に請求するという形になります。
ただし、加害者側が任意保険会社に加入している場合、治療費を相手側の保険会社から治療機関に直接支払うという一括対応という手続きがあります。
この場合、被害者の方は病院の窓口で治療費を立て替える必要がなくなります。
交通事故でも健康保険で通院できる!?
また、交通事故の治療に健康保険などの保険を使用するかどうかを決める必要があります。
ところで、交通事故では健康保険を使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですね。
そうそう、交通事故で、
怪我しても、健康保険使えないから、100%
自腹か、自動車の、任意保険、
強制保険で、— Suzuki…hide (@try05255tyrgut) August 13, 2019
しかし、厚生労働省は、以下のように交通事故でも健康保険を使えるという通達(通知)を出しています。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています
ただし、健康保険を使用する場合には、病院に対して健康保険証を呈示し、健康保険を使用する意思を伝える必要があるとのことです。
健康保険証の呈示だけではなく、使用の意思をはっきりと伝えるのがポイントということです。
ここで、健康保険を使わない自由診療と、健康保険診療との違いをまとめてみましたので、良ければ参考にしてみてください。
自由診療 | 健康保険診療 | |
---|---|---|
費用 | 高額 | 低額 |
治療方法 | 制限なし | 制限有り |
病院によっては、健康保険の使用を拒否したり、一括対応に応じてくれないところもあります。
そういった場合に、弁護士が介入することにより、病院の対応が変わった事例もあります。
病院での対応にお困りの方は、弁護士に相談だけでもしてみた方が良いかもしれませんね!
支払いが難しい場合には…
しかし、交通事故による怪我の治療が長引いた場合、支払いが困難になってしまうことも考えられます。
そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか?
被害者ご本人が傷害保険に加入している場合、過失割合に関係なく契約に応じた保険金が支払われます。
また、加害者が加入している自賠責保険の仮渡金制度を利用するという方法もあります。
仮渡金制度とは、
損害賠償金の確定前に、被害者の方が相手側の自賠責保険会社に前もって治療費を請求できる
という仕組みのことです。
ただし、最終的な賠償額よりも多い金額を受け取ってしまった場合には、差額を返却する必要がある点には注意が必要です。
入通院慰謝料の相場について解説
治療費の他に、ケガの痛みや治療による苦痛に対する補償である入通院慰謝料というものも支払われます。
この入通院慰謝料は、治療にかかった期間が、慰謝料のほぼ唯一の基準となっているということです。
以下に、入通院慰謝料の相場を示しましたので、ご覧になってみてください。
表の見方としては、たとえば入院を5ヶ月、通院を12ヶ月した場合には、280万円の入通院慰謝料が支払われることになります。
ちなみに、自賠責保険からの入通院慰謝料の計算方法は、以下のいずれか短い方に、4200円をかけるという方法になるそうです。
- 入院日数と、実通院日数の2倍の合計
- 総治療期間
長期間通院すれば良いワケじゃない!?通院頻度と慰謝料の関係をお教えします!
では、治療の日数により慰謝料が決まるということであれば、通院頻度を低く、長い期間通った方が高い慰謝料をもらえるのか!?という疑問があります。
しかし、通院頻度が少ない場合には、慰謝料が減額されてしまうケースもあるということなのです。
通院頻度と慰謝料の関係
- ① 通院が1年以上にわたり、通院頻度が1ヶ月あたり2~3回程度にも達しない場合
- ② 通院を継続しているものの、治療よりも検査や治癒経過観察の意味合いが強い場合
の場合には、通院期間を限度にして、実治療日数の3.5倍程度の日数を基準として慰謝料を計算する。
もう少し具体的に説明しますね。
たとえば、①のケースを考えてみます。
極端な例ですが、通院期間が1年で、実通院日数が17日しかなかったとしましょう。
通院期間が基準であるならば、1年間通院=慰謝料154万円もらえるのかというと違います。
この場合、通院頻度が1ヶ月あたり2回に達していないので、17×3.5=59.5日(≒2ヶ月)が適用され、慰謝料は52万円ということになってしまうのです。
原則 | 例外 |
---|---|
通院期間により算定 | 通院期間を限度として、実治療日数の3.5倍程度により算定 |
このように、慰謝料の算定には例外ルールなどもあり、被害者ご本人だけではわからないことも多くあると思います。
適正な慰謝料獲得に向けて、少しでも不明点がある場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
知らないと損する②鼻骨骨折の後遺症に対する後遺障害慰謝料、示談金は?
治療中の費用の補償については、わかってきました。
ではここからは、最初の質問に対する回答について解説してもらおうと思います!
選択肢①:
鼻骨骨折との関係で、後遺症認定を獲得し、保険会社に慰謝料の増額請求をする。
選択肢②:
鼻骨骨折によって失った将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求める。
選択肢③:
鼻骨骨折を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こす。
費用に関する悩みを解決するための正解は、上記の選択肢のうちのどれなのでしょうか…。
正解は、上記の選択肢①~③のすべてになります。
そうなのですね!?
では、正解の内容について、詳しく解説してもらいましょう。
選択肢①後遺症の等級認定を獲得し、慰謝料を増額請求する
すでにお伝えの通り、鼻骨を骨折した場合、外見などに後遺症が残ってしまう可能性があります。
鼻骨骨折に対する後遺症の等級についてはすでにお伝えしました。
実はその等級に応じて、後遺障害慰謝料の金額が決まっているそうなのです。
その前に、慰謝料には3つの基準があるってご存知でしたか?
慰謝料増額に向けて知っておきたい基礎知識~3つの慰謝料相場の基準~
慰謝料には、
- 自賠責保険に請求する場合
- 任意保険会社が提示する場合
- 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合
の3つの基準が存在しているそうなのです。
自賠責基準
自賠責保険会社の慰謝料とは、自賠法に基づく省令により設定されているものです。
自賠法は、交通事故の被害者が最低限の補償を受けるためのものであり、その金額は低く設定されています。
任意保険基準
保険会社でも、任意保険会社による慰謝料基準も存在しています。
ただし、任意保険会社は営利企業のため、もちろん少ない金額で済ませたいと考えているハズですよね。
よって、自賠責の基準よりは高いものの、慰謝料の金額は少ないことが多いということです。
弁護士基準
保険会社の基準と比較して、最も高い基準となっているのが、裁判所や弁護士の基準です。
これは、裁判を行った場合や相手側と示談をする場合に用いられる基準のこと。
ただし、自分ひとりで裁判を起こし、相手側と争うのは、どう考えても難しいですよね…。
よって、高額の慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をして示談や裁判を行うことが必要ということになるのです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
内容 | 交通事故被害者が最低限の補償を受けるためのもの | 営利企業の保険会社が支払うもの | 弁護士を付けて裁判や相手側との示談をする場合に用いられるもの |
金額 | 金額は低め | 自賠責基準よりは高いが、金額は低め | 自賠責基準や任意保険基準よりも高い |
では、それぞれの基準ごとの後遺障害慰謝料の相場について、以下の表に示しました。
後遺障害等級 | 自賠責基準※2 | 任意保険基準※3 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
12級 | 93 | 100 | 290 |
14級 | 32 | 40 | 110 |
※1 単位:万円
※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。
※3 旧任意保険支払基準による。
一目瞭然ですが、しっかりとした補償を受けるためには、弁護士基準での慰謝料を受け取るべきですよね。
ただし、被害者ご本人だけで保険会社と交渉しても、低い示談金しか提示してもらえないことがほとんどということです。
これは、入通院慰謝料についても同じことが言えるということです。
加害者が任意保険に入っている場合には、弁護士に依頼して交渉してもらうと、弁護士基準の慰謝料を回収できることがほとんどだということです。
弁護士基準の慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弁護士に相談いただければと思います!
自分で慰謝料を計算してみたい
ここまで読んで、自分の事故ではどれほどの慰謝料が受け取れるものなのか…。
今すぐに知りたいと思った方も多いのではないでしょうか。
このホームページでは、後遺障害慰謝料だけでなく入通院慰謝料も含めた賠償金総額がわかる計算機を設置しています。
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選択肢②失った収入(休業損害・逸失利益)を主張する
治療費や慰謝料以外にも、鼻骨骨折によって失った現在・将来の給与・収入を主張し、賠償金や保険金の再計算を求めるという方法もあるのですね。
主には、休業損害と逸失利益の主張をするということになるそうです。
治療中に失った収入「休業損害」
まずは、休業損害について見てみましょう。
休業損害
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益を失うこと。
では、休業損害の計算方法について見ていきたいと思います。
自賠責保険での計算方法
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は、5700円×休業日数ということです。
ただし、1日の休業損害が5700円を超えることを資料などで証明できれば、19000円までは日額の増額が認められています。
上限がありますが、日額が5700円以下の方でも、休業による収入の減収さえあれば、日額5700円で計算されるので、収入の低い人にとっては有利となりますね。
任意保険での計算方法
一方、任意保険や裁判所に対して、休業損害を請求する場合の計算方法は以下の通りということです。
1日あたりの基礎収入×休業日数
1日あたりの基礎収入をどうやって割り出すかは職業別に異なります。
日額5700円未満の人は実際の日額で計算される反面、証明できれば、19000円を超える日額も認められるので、収入の高い人にとって有利となります。
この話の中で誤解されがちですが、休業損害の請求において、日額が最低5700円になるわけでは必ずしもないということは注意しましょう。
よく自賠責保険は最低限の補償をする保険と言われるため、日額が自賠責で定められた5700円以下になるのはおかしいとおっしゃる方がいます。
しかし、自賠責保険の基準が用いられるのは、治療費や慰謝料などを合わせた損害賠償の総額が120万円以内の場合のみとなります。
損害賠償の総額が120万円を超えた場合には自賠責保険の基準は用いられなくなり、任意保険基準や弁護士基準が用いられることになるそうです。
「他の項目では任意保険基準や弁護士基準を用い、休業損害の項目だけ自賠責保険の基準を用いる」というように、良い基準だけ採用することはできないので注意が必要です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
---|---|---|
原則 | 5700円 | 1日あたりの基礎収入 |
上限 | 19000円 |
職業別の基礎収入など、休業損害についてはこちらの記事で詳しく説明されていますので、良ければご覧ください。
失った将来の収入「逸失利益」
次に、逸失利益とは、以下のようなものになります。
逸失利益
後遺症により労働能力が失われてしまった場合に、本来得られるはずだった収入の減額分を補償するための損害賠償。
まず、逸失利益で最初に争いになるのは、現在、現実に収入の減額が発生しているかどうからしいですね。
後遺症認定の時点ですでに減収が発生している場合には、将来的にもその減収の継続が見込まれるため、逸失利益は認められやすいです。
また、鼻骨骨折による後遺症が原因で、
- 会社の部署を異動させられた
- 職業選択の幅が狭くなった
- 積極的な対人関係や対外的な活動が不可能になった
など、労働環境や能力に支障が出ていることが認定されれば、逸失利益が認められることになります。
一方で、実際に後遺症が残っていても、労働能力に与える影響が小さく、逸失利益が十分に得られないこともあるそうです。
すると、被害者の方は逸失利益を得られず、実際に残っている後遺症に対する補償として明らかに不十分になってしまいます。
そのような場合には、後遺症の慰謝料を相場よりも増額させることで、賠償のバランスが取られることもあるそうです。
ただし、そのような証明や交渉を自分ひとりで行うのは難しいですよね。
この場合も、弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらえると思います!
選択肢③損害賠償請求の裁判を起こす
ここまでで、保険会社との交渉にあたっては、弁護士に入ってもらうことで弁護士基準の賠償が受け取れるということがわかってきました。
しかし、保険会社と争いのある部分については、裁判でしっかり主張立証しなければ、増額が認められない場合があるそうなのです。
実際、示談交渉だけの場合と、裁判を起こした場合で、弁護士基準の賠償額がどれほど受け取れるのかまとめた表があります。
弁護士基準の 賠償額との比較 |
|
---|---|
弁護士が保険会社と交渉 | 9~10割※1 |
弁護士をつけて裁判 | 10割 + 弁護士費用※2 |
※1 保険会社との争いの度合いや、弁護士の方針により異なるケースもある。
※2 交通事故の損害賠償請求においては、その裁判のための弁護士費用も損害として認められる場合がある。
また、休業損害や逸失利益についても、裁判を起こさなければ、増額を認めてもらえないことも多いようです。
つまり、確実に賠償額を受け取りたい場合には、鼻骨骨折を負う原因となった相手に対して、損害賠償を請求する裁判を起こすことも一つの方法となります。
実際の裁判例を見てみよう
ではここで、鼻骨骨折の損害賠償について、実際に裁判で争われた事例を見てみましょう。
ケース① |
---|
職業:女子大生(23歳女性) 傷害:鼻骨骨折その他 後遺症:顔面部醜状障害(12級14号)その他 《損害賠償》 傷害慰謝料:320万円 後遺傷害慰謝料:830万円 休業損害:422万4930円 逸失利益:2465万64円 付添看護費:141万2666円 |
ケース② |
職業:中国籍留学生(26歳男性) 傷害:鼻骨骨折その他 後遺症:外鼻の偏位(14級11号)その他 《損害賠償》 入通院慰謝料:350万円 後遺障害慰謝料:800万円 休業損害:418万5000円 逸失利益:5295万7773円 |
もちろん、これ以外に、治療費や治療器具の購入費などの実費も認められています。
また、付添看護費などが認められているケースもあります。
個別の事情にもよりますが、裁判で損害賠償請求の根拠をしっかりと主張することができれば、休業損害や逸失利益も認められています。
しかし、すでにお伝えの通り、被害者ご本人やご家族だけで裁判を起こすのは困難が多いはずです。
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まずは、医師の診断を受け、じっくり療養し、お大事になさってください。
それでも残念なことに鼻骨骨折の後遺症が残ってしまった場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後までお読みいただけた方には、
- 鼻骨骨折の症状や治療法などの基礎知識
- 鼻骨骨折による後遺症の等級や認定基準
- 鼻骨骨折に対する慰謝料などの示談金の相場
について、理解を深めていただけたのではないかと思います。
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鼻骨骨折の後遺症の示談金についてのQ&A
交通事故の鼻骨骨折は後遺障害に認定される?
後遺障害認定の可能性は高いです。例えば鼻が曲がったままになってしまったり、低くなったままになってしまうことを外貌醜状と捉え、12級14号が認定される可能性があります。また骨折部位に痛みが残った場合、局部の神経系統の障害である12級13号、または14級9号が認定されることもあります。嗅覚に後遺症が残った場合も12級、14級相当の認定がされる可能性があります。 鼻骨骨折の後遺障害等級認定基準
鼻骨骨折の治療に健康保険は使える?
使えます。交通事故では健康保険が使用できないと誤解されていらっしゃる方も多いようですが、厚生労働省は交通事故でも健康保険を使えるという通達を出しています。健康保険を使用する場合には、健康保険証を提示するだけでなく、使用する意思を伝えることが重要なポイントといえそうです。ちなみに、健康保険を使わない診療を自由診療と言います。 健康保険診療と自由診療の違いも解説
鼻骨骨折の後遺症が残ったら慰謝料は増える?
慰謝料増額を目指すことができます。後遺障害認定を受けることで、慰謝料の増額請求をすることができます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて金額がおよそ決まります。後遺障害慰謝料を算定する時には、自賠責保険の基準・任意保険基準・弁護士基準と3つの基準がありますが、弁護士基準で算定する時、慰謝料の相場は最も高くなります。 後遺障害慰謝料の獲得を目指す
鼻骨骨折の治療で会社を休んだ場合の補償は?
休業損害として請求しましょう。休業損害とは、交通事故により本来得られるはずだった収入や利益を失ったことをいい、相手方に請求すべき損害です。また、後遺障害による労働能力が失われ、減収へつながった場合も受けとれます。将来の減収は逸失利益として請求しましょう。 休業損害・逸失利益をわかりやすく解説
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
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第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。