物損事故での保険の流れ|等級ダウンで保険料が上がるなら保険を使わない方が得?

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物損事故での保険の流れ|等級ダウンで保険料が上がるなら保険を使わない方が得?

「物損事故を起こしてしまった…。」

自動車などを運転していれば、どんなに注意していても、物損事故の加害者にも被害者にもなる可能性があります。

そういった事故に備えてしっかりと保険に加入されていらっしゃる方も多いでしょう。

しかし、いざ物損事故が発生すると、

  • 保険を使う場合の流れは?
  • 等級がダウンし、保険料上がるから使わない方が得?
  • 保険会社から連絡なしだが支払いはしてもらえるの?
  • 相手方が任意保険未加入の場合はどう対処すればいい?
  • 物損事故でも保険から治療費慰謝料は受け取れるの?

など物損事故と保険に関するさまざまな疑問が出てくることかと思います。

そこで今回このページでは、そういった物損事故と保険に関する疑問を徹底調査してみました。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

物損事故は起こる頻度が高いため、保険の適用が問題となってくるケースも多いかと思います。

しかし、保険の内容は複雑でどういった対応をするのが最も有効なのか分かりにくいことも多いです。

ここでは少しでも物損事故と保険の問題に関し、みなさまに有益な情報をお伝えすることができればと思っています。

どんなに注意していても、交通事故を起こしてしまう可能性はゼロではありません。

交通事故を起こしてしまい、幸い相手方にケガがない物損事故の場合でも、賠償額が高額になることがあります。

そんな場合、保険に入っていれば、ご自身で高額な損害賠償を支払わなくて済み、一安心ですね。

でも、物損事故で保険からしっかりと相手方に保険金が支払われるまでにはどのような流れになっているか、ご存知でしょうか?

その流れの中でしっかりとした対応をしていないと、保険の対応が遅れたり、最悪保険金が支払われなくなってしまう可能性があります。

しっかりと保険の対応をしてもらうため、物損事故での保険使用の流れを確認していきましょう!

まずは保険会社に連絡!物損事故での保険使用の流れ

まずは保険会社に連絡!物損事故での保険使用の流れ

物損事故発生直後

加害者の場合

物損事故を起こしてしまった場合、相手方の安否を確認した上で、まずは警察連絡しましょう。

物損事故でも警察への連絡を怠ると、道路交通法違反に問われます。

交通事故があつたときは、(略)当該車両等の運転者(略)は、(略)警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における(略)損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

その上で、ご自身の加入している保険会社連絡しましょう。

その際、保険会社から、

  • 事故の日時や場所
  • 相手方の連絡先
  • 壊れているもの

などを確認されます。

その場でわからなくても、後で担当者の方にお伝えすれば大丈夫ですので、落ち着いてから上記の情報を確認しましょう。

自損事故の場合

なお、いわゆる自損事故の場合でも、保険会社への連絡は必ず行いましょう

自損事故と思っていても、ガードレールや縁石は国や自治体の所有物として、損壊した場合には賠償義務が発生することがあります。

また、自己の車両について修理費などの損害が生じることがほとんどです。

これらの損害について、保険に加入していれば自損事故でも保険金を受け取れるようになっています。

しかし、保険会社に連絡をしておかないと、事故の発生を疑われ、最悪保険金が支払われなくなります。

警察への連絡は道路交通法上の義務であることはもちろんですが、連絡していないと交通事故証明書が発行されなくなります。

後日、保険会社から、保険使用のために交通事故証明書の取得を求められる場合があるので、その意味でも必ず警察へは連絡しましょう。

被害者の場合

物損事故の被害者の場合であっても、同様にまずは警察連絡をしましょう。

ただし、加害者の方が既に連絡したことを確認できていれば、重ねての連絡は不要です。

その上で、こちらも加害者同様ご自身の加入している保険会社連絡しましょう。

その際、保険会社から、

  • 事故の日時や場所
  • 相手方の連絡先
  • 壊れているもの

などを確認されます。

その場でわからなくても、後で担当者の方にお伝えすれば大丈夫ですので、落ち着いてから上記の情報を確認しましょう。

この後詳しく説明しますが、車両保険をしようとする際、連絡をしていないと事故の発生を疑われ、最悪保険金が支払われなくなります。

また、被害者の方でも、

  • 過失が一定程度ある
  • 相手方にも損害が発生している

ような場合には、過失割合分の損害賠償を支払う必要があり、自身の保険を使う必要が出てくる可能性があります。

その後の流れ

加害者の場合

保険会社に連絡を入れておくと、後日ご自身の保険会社の担当者から連絡が入ります。

その際、担当者から、

  • 事故の日時や場所
  • 相手方の連絡先
  • 壊れているもの
  • 事故の状況

などを確認されます。

その後は、保険会社の担当者が被害者の方とやり取りをすることになり、ご自身が被害者の方とやり取りをする必要はなくなります。

なお、物損事故の加害者の方でもご自身が車両保険に加入していれば、ご自身の保険会社から保険金を受け取れます。

車両保険

自分の車の修理費などを補償する保険のこと。

車両保険を使用してご自身が乗られていた車を修理に出そうとする場合、ご自身の保険会社に入庫の連絡をします。

保険金支払いにあたって、修理の内容や金額を修理工場と協議するためです。

そして、保険会社の担当者が相手方と損害額や過失割合について交渉し、加害者の方はご自身の保険会社の担当者から報告を受けます。

交渉の結果、賠償額が決まると、その賠償額を保険で支払うかどうかの確認を求められます。

この後詳しく説明しますが、保険を使わないで、自分で賠償額を支払う方が得なことがあるからです。

賠償額が保険から支払われ又はご自身で支払われることにより、相手方との賠償の問題は解決となります。

なお、車両保険を使用した場合には、ご自身の保険会社から保険金が支払われることになります。

被害者の場合

物損事故の加害者が保険に入っていた場合、相手方の保険会社の担当者から連絡が入ります。

通常、その相手方の保険会社の担当者から窓口は全てこちらになるので、連絡は保険会社にし、加害者本人には連絡しないよう依頼されます。

その後、乗られていた車を修理に出そうとする場合、相手方の保険会社の担当者に入庫の連絡をします。

保険金支払いにあたって、修理の内容や金額を修理工場と協議するためです。

そして、相手方の保険会社の担当者と損害額や過失割合について交渉していくことになります。

交渉の結果、賠償額が決まると、相手方(保険会社)と示談することになります。

相手方が保険を使わない場合には相手方から、保険を使う場合には相手方保険会社から賠償金が支払われることにより、解決となります。

なお、上記の被害者は過失割合の一切ない被害者を想定しています。

被害者の方でも、

  • 過失が一定程度ある
  • 相手方にも損害が発生している

ような場合には、過失割合分の損害賠償を支払う必要があるため、被害者にも保険会社の担当者がつくことになります。

そして、その後は基本的に保険会社の担当者同士のやり取りで話が進むことになります。

まとめ

物損事故での保険使用の流れ

加害者 被害者
発生直後 ・警察に連絡
・保険会社に連絡
・警察に連絡
・保険会社に連絡
連絡 自身の保険会社から連絡 相手方保険会社から連絡
修理 ・修理工場入庫
・自身の保険会社に連絡
・修理工場入庫
・相手保険会社に連絡
交渉 自身の保険会社から報告 損害や過失割合を相手方保険会社と交渉
解決 保険使うか確認 相手方(保険会社)と示談
入金 自身の保険会社から 相手方(保険会社)から

※10:0で双方修理、加害者車両保険加入を想定

当たり前のことかもしれませんが、物損事故が発生したら、すぐに保険会社連絡することが、保険使用にあたり、何より重要です。

保険会社にきちんと連絡さえすれば、あとは保険会社が対応してくれるので、加害者にとっては一安心ですね。

また、保険料との兼ね合いもありますが、車両保険は加害者の場合でも修理費が保険から支払われますので、加入していると便利ですね。

等級ダウンで保険料が上がるなら、物損事故では保険を使わない方がおトク?

等級ダウンで保険料が上がるなら、物損事故では保険を使わない方がおトク?

物損事故で保険を使うと等級がダウンし保険料が上がる

物損事故で保険を使用する場合の流れについてはよくわかりました。

これで、いざというとき、物損事故で保険を使うことができますね!

しかし、保険を使用することはいいことばかりではありません。

保険を使用すると等級がダウンし、保険料上がることになります。

具体的には…

物損事故を起こして、対物保険を使い、相手の車の修理費などを払ってもらった場合、次年度から等級が3等級ダウンします。

さらに、多くの保険会社では、物損事故を起こして、対物保険を使うと、次年度から3年間「事故あり」の扱いとなります。

その後、等級ダウンとなる保険を使用しなければ、1年ごとに等級が1つずつ上がっていきます。

保険料は、等級に応じて割引・割増率が定められ、等級が高いほど、割引率が大きくなり、同じ等級でも「事故あり」扱いの方が保険料が高くなります。

値上がりする保険料は、元々の等級や保険料、保険会社によって異なります。

以下のサイトでは、等級制度についてよくまとまっており、値上がりする保険料の概算も計算できるので、参考にしてみてください。

保険を使わないのと使うのではどちらがトク?

保険料が値上がりすることを考えると、賠償すべき物損事故の金額が小さい場合は、保険を使わない方が得になりそうですね。

確かに、賠償額よりも値上がりする保険料の方が高くなる場合があるので、両者を検証してどちらが得か検討する必要があります。

なお、対物保険や車両保険には免責金額というものが定められていることがあります。

免責金額とは、保険会社が保険金を支払う場合の被保険者の自己負担額のことをいいます。

免責金額が定められている場合には、保険を使用しても、免責金額分は自己負担となるので、そのことも考慮して検証する必要があります。

保険を使用することにより値上がりする保険料の計算は複雑でご自身ではなかなか分かりにくいと思います。

保険会社の担当者にお願いすれば、通常、値上がり保険料の見積もりを出した上で、保険を使わないのと使うのとどちらが得か教えてくれます。

保険を使わないかどうかの判断はまず、ご自身の保険会社の担当者の方に相談してみましょう。

また、一点注意が必要なのは、一つの事故について、何種類の保険を使用しても、等級は3等級ダウンまでしかしないということのようです。

具体的には、物損事故を起こした場合、相手方の車のみならず、自分の車も修理する必要があることが多いと思います。

そんな時、車両保険に加入していれば、自分の車の修理費が保険から支払われますが、対物保険と車両保険の両方を使用しても、等級ダウンは3等級ということです。

対物保険だけ使用して車両保険を使用しない場合と保険料の上がり幅は変わらないので、保険を使うのであれば、両方使用する方が得ということになります。

保険使用のメリット・デメリット
使用する 使用しない
メリット 賠償の自己負担なし 保険料据え置き
デメリット 次年度以降の保険料増加 自身で損害賠償支払

※免責金額0円の場合

物損事故で保険会社から連絡なし…保険から支払いを受けられるの?

物損事故で保険会社から連絡なし…保険から支払いを受けられるの?

ところで、物損事故で相手の保険会社から連絡なしという状況に不安を覚えてる方もいらっしゃるかと思います。

そういった状況では保険から支払いをしてもらえるのかもわからず、余計に不安になりますよね。

ここでは、考えられる連絡なしという状況の原因と対策、そういった状況で保険から支払いを受けられるのかについて調査しました!

物損事故で保険会社から連絡なしの原因と対策

相手方が自賠責保険にしか入っていない

原因:自賠責保険には示談代行をする担当者がいないため、相手の保険会社から連絡が来ることはありません。

対策:相手方本人に連絡するしかありません。

相手方が対人賠償の任意保険にしか入っていない

原因:この場合、物にしか損害が生じていなければ、相手の保険の適用外なので、相手の保険会社から連絡が来ることはありません。

対策:ケガをしている場合には、そのことを相手方本人に伝え、相手方の保険会社に伝言してもらうよう依頼する。

相手方が一切非を認めていない

原因:保険会社は、賠償義務がある場合にのみ、示談代行として相手方に連絡ができることになっています。そのため、保険会社の契約者(相手方)が一切非を認めていない場合、賠償義務がなく、示談代行できないので、連絡もありません。

対策:相手方本人に連絡し、相手方にも責任があることを認めてもらう。

相手方が保険会社に事故報告をしていない

原因:相手方保険会社は事故報告がない以上、事故を認識しておらず、当然連絡もできません。

対策:相手方本人に事故報告をしたか確認し、していないようであれば、すぐに報告するよう依頼する。

自身も保険に加入しており過失がある

原因:ご自身も保険に加入し、過失がある場合、当事者双方の保険会社の担当者がやり取りするため、ご自身へ相手の保険会社から連絡はきません。

対策:ご自身の保険会社の担当者に相手方の保険会社の担当者とやり取りをしているか確認する。

物損事故の損害について保険から支払いを受けられる場合

まず、相手方が自賠責保険にしか加入していない場合には、物損事故の損害につき保険から支払いは受けられません。

車両の修理費など物に関する損害は、自賠責保険では補償されていないからです。

自動車損害賠償保障法他人の生命又は身体を害したときの賠償責任に限定しています。

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。

また、相手方が任意保険に加入していても、その内容が対人賠償のみであれば、物損事故の損害につき保険から支払いは受けられません。

さらに、相手方が対物保険に加入していても、損害額が相手方の保険の免責金額の範囲内である場合には、保険から支払いは受けられません。

まとめると、物損事故の損害について保険から支払いを受けられる場合とは、

相手方が任意の対物保険に加入している

かつ、

損害額が免責金額を超えている

場合といえます。

物損事故で相手方任意保険未加入の場合の対処策

物損事故で相手方任意保険未加入の場合の対処策

それでは、相手方が任意の対物保険未加入の場合、被害者の方はどうすればいいのでしょうか?

任意保険未加入の相手方に請求するのは色々と難しそう…。

だけど、加害者がわかっているのに、自分の保険を使って保険料が値上がりするのは納得できない…。

そんな被害者の方のために、ここではそれぞれの請求方法のメリット・デメリットを調査してみました!

相手方本人に請求

この方法のメリットは、当然、損害額を相手方に負担させることができる点です。

具体的な請求方法としては、

  • 当事者間の話し合い
  • 調停
  • 裁判

などが考えられます。

当事者間の話し合いとしては、交通事故紛争処理センターに相談するという手もあるようです。

なお、紛争処理センターには、相手方が任意保険未加入の場合、原則申立できません。

しかし、相手方の同意があれば例外的に認められる余地があります。

もっとも、一般的に、任意保険に未加入の方は、金銭的に余裕のない方が多い傾向にあります。

そのため、例えば裁判を起こし、判決で支払いが命じられたとしても、お金がないため実質的に回収ができないというリスクがデメリットです。

ご自身の保険に請求

ご自身の車に車両保険が適用される場合、車両保険を使用すれば、確実に物損事故の損害を回収できます。

しかし、車両保険を使用してしまうと、次年度から等級が3等級ダウンしてしまいます。

そのため、車両保険を使うかどうかはまず、

  • 受け取れる保険金の金額
  • 翌年以降の保険料の値上がり額

を検証する必要があります。

保険料の値上がり分を加害者に請求できる?

では、車両保険を使用した場合、それにより値上がりした保険料分の金額を加害者に請求することはできるのでしょうか?

加害者が物損事故を起こさなければ、車両保険を使用して保険料が値上がりすることはなかったのですから、一見認められても良さそうです。

しかし、裁判例では、値上がりした保険料分の損害賠償を認めていません。

その理由としては、車両保険を使うか加害者に賠償請求するかは被害者が自由に選択できることを挙げています。

車両保険を利用するか否かは原告の自由に選択し得るところであり、被告らから賠償され得る修理代金相当の損害賠償金をもって、右修理費用に充てることも可能なのであるから、保険料の右増加額が本件事故によって通常発生すべき損害になるということは到底できず、右増加額が本件事故と相当因果関係のあるものということはできない

そのため、車両保険を使う場合には、値上がりする保険料分の自己負担を覚悟しなければなりません。

もっとも、ご自身に過失がない事故で、車両保険を使った場合、例外的に等級が下がらない車両保険無過失特約というものがあります。

一方的に追突された場合などで、車両保険金を受け取っても等級が下がりません。

この特約が付いていれば、保険料の値上がりの負担なく、車両保険を使用することができます。

どちらの方法を選択するか考える際には、この車両保険無過失特約の有無についての検討も忘れずに行ってください。

ご自身に非がないのに、保険を使用して保険料が上がるのは納得出来ないかもしれません。

しかし、任意保険に入っていない加害者から満足のいく賠償を得られることはかなり困難です。

相手方に請求するかご自身の保険を使うかは、このことを念頭に置いて考える必要があります。

また、相手方が任意保険に入っておらず当事者だけで話をする場合、うまくまとまらないことが多く、特に弁護士に依頼する必要性が高いといえます。

車両保険使用のメリット・デメリット
使用する 使用しない
メリット 確実に金銭受領 保険料据え置き
デメリット 次年度以降の保険料増加 回収不能のリスク

※相手方任意保険未加入の場合

物損事故でも保険から治療費や慰謝料は受け取れる?

物損事故でも保険から治療費や慰謝料は受け取れる?

治療費について

交通事故証明書上、物損(物件)事故扱いのままでも、人身事故証明書入手不能理由書という書類を添付すれば、自賠責保険に治療費を請求できます。

そのことを前提として、加害者側の保険会社も、物件事故扱いのまま、治療費や通院費の支払いに応じてくれることもあります。

ただし、あくまで事故と治療(けが)との因果関係が認められることが前提であることには注意が必要です。

  • ごく軽微な物損事故の場合
  • 事故から初診時までの期間が空いている場合

などは因果関係が否定され、治療費・通院費を請求できない可能性があります。

なお、加害者側の保険会社から物損事故扱いのままにしてくれれば、賠償額で考慮するという話を持ちかけられたという話を耳にすることがあります。

しかし、少なくとも、そのことを明示的な理由として賠償額が増えることはありません。

また、賠償の段階で、そのような話はしていないと言われてトラブルになっているという声もよく耳にします。

保険会社に惑わされず、物損事故として扱われている場合に、治療を受ける際は、診断書を警察に持参し、人身事故へ切り替えをした方が良いでしょう。

(ただし、人身事故に切り替えても、事故と治療(けが)との因果関係が問題となる可能性はあります。

慰謝料について

人身損害

治療費同様、交通事故証明書上、物損(物件)事故扱いのままでも、一定の書類を添付すれば、自賠責保険から通院慰謝料を受け取ることができます。

そのことを前提として、加害者側の保険会社から、物損(物件)事故扱いのまま、通院慰謝料を受け取れることもあります。

ただし、治療費同様、あくまで事故と治療(けが)との因果関係が認められることが前提となります。

通院慰謝料は、通常の人身事故の場合同様、用いる基準によって金額は異なりますが、原則として通院期間を基準として金額が決められます。

物的損害

残念ながら、基本的には、物損事故の被害者が、愛車が傷ついたことに対する慰謝料保険から受け取ることはできません。

慰謝料は、精神的苦痛を金銭で填補するものですが、通常、財産権侵害に伴う精神的苦痛は、財産的損害の填補により同時に填補されるものと考えられているからです。

例外的に裁判で認められているのも、極めて限定的です。

お伝えしてきた物損事故(扱いの場合)の治療費や慰謝料について詳しく知りたい方は
「物損事故ガイド|慰謝料・治療費・修理代・迷惑料の請求について弁護士が解説【決定版】」の記事をご覧ください。

物損事故に関するQ&A

物損事故に関するQ&A

①子供が車に傷をつけた場合に保険は使えないの?

子供がいたずらをして、他人のお車に傷をつけてしまうことがあるかもしれません。

この場合、残念ながら自動車の対物保険を使って補償してもらうことはできません。

自動車の対物保険は、ご契約のお車の使用(運転)などにより、他人の財物を破損した場合にしか適用されないからです。

もっとも、個人賠償特約というものに加入していれば、子供がいたずらをして、他人のお車につけた傷も補償の対象となります。

この個人賠償特約は、自動車保険だけでなく、ご自宅の火災保険などについている場合もあるので、よく確認してみてください。

②駐車場内での物損事故でも保険は使えるの?

こういった疑問は駐車場が道路交通法の適用される「道路」に該当しないということから生まれるものかと思われます。

しかし、結論からいうと、駐車場内の物損事故であっても保険を使えることが多いです。

ただし、道路交通法が適用されないため、交通事故証明書が発行されない場合があり、後日の事故の証明が困難になる場合があります。

保険会社に事故があったことを疑われないよう、事故後すぐに報告し、可能であれば事故直後の写真を撮影できるとよいでしょう。

③仕事中の物損事故の損害が保険で払われない場合、自分が払わなければいけないの?

労働者が仕事中のミスにより使用者(会社)に損害を与えた場合、賠償の責任はありますが、通常、全額負担の必要はありません。

どれくらい負担するかは、

  • 事業の性格、規模
  • 業務の内容、労働条件、勤務態度
  • 加害行為の態様
  • 加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度

などを考慮して判断されます(最判昭和51年7月8日参照)。

④乗っていたバイクに任意保険をつけていなかったら、物損事故の損害は自己負担?

自動車に比べてバイクの対物賠償保険の加入率は低く、半分程度となっています。

  • 自家用普通乗用車の対物賠償保険の普及率:82.3%
  • 二輪車の対物賠償保険の普及率:43.0%

もっとも、乗っていたバイクが対物保険に加入していなくても、相手方の物損事故の損害を保険から支払ってもらえる場合があります。

それは、バイクに乗っていた方やその家族の自動車保険にファミリーバイク特約がついている場合です。

ただし、ファミリーバイク特約が適用されるバイクとは、いわゆる原付バイクのみであることには注意が必要です。

また、ファミリーバイク特約ではご自身のバイクなどの物損は補償されないのでそのことも注意しましょう。

物損事故の保険に関する疑問は弁護士に無料相談を!

物損事故の保険に関する疑問は弁護士に無料相談を!

ここまで、物損事故の保険に関する疑問を調査・報告してきました。

しかし、読んだだけではわからない疑問が残っているという方もいらっしゃるかもしれません。

そのような方は、日本弁護士連合会の法律相談センターに相談してみると良いかもしれません。

全国に窓口があるようなので、連絡して、対応できる弁護士を探してみてください。

最後に一言アドバイス

では、岡野先生、最後にまとめの一言をお願いします。

保険の内容は複雑なので、本来使える有益な保険を見逃して、誤った判断をしてしまう可能性があります。

そうならないためにも、まずは弁護士に相談して、保険証券や保険の内容を確認してもらいましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?

このページを最後までご覧になってくださった方は、

  • 保険を使う場合の流れ
  • 等級がダウンし、保険料上がるから使わない方が得か
  • 保険会社から連絡なしだが支払いはしてもらえるか
  • 相手方が任意保険未加入の場合はどう対処すればいいか
  • 物損事故でも保険から治療費慰謝料は受け取れるのか

などについて、理解が深まったのではないかと思います。

このページだけではわからなかったことがあるという方は、下の関連記事もぜひ利用してみてください。

交通事故に遭われた方の少しでもお役に立てれば何よりです。

物損事故での保険の流れQ&A

物損事故を起こしたら、まず何をする?

相手方の安否を確認した上で、まずは警察に連絡しましょう。物損事故でも警察への連絡を怠ると、道路交通法違反に問われます。その上で、ご自身の加入している保険会社に連絡してください。なお、いわゆる自損事故の場合でも、保険会社への連絡が必要です。物損事故の被害に合われた場合も、同様に警察と保険会社に連絡してください。 物損事故での保険使用の流れ

物損事故では保険を使わない方がおトク?

賠償すべき物損事故の金額が小さい場合は、保険を使わない方が得になるケースもあります。対物保険を使って賠償を行った場合、多くの保険会社では、次年度から等級が3等級ダウンし、保険料も上がってしまいます。賠償額よりも値上がりする保険料の方が高くなるようであれば、保険を使わないほうが良いかも知れません。一度、保険会社の担当者に相談するのが良いでしょう。 物損事故で保険を使うと保険料が上がる

保険会社からその後連絡がない…なぜ?

物損事故のあと保険会社から連絡が来ない場合、①相手方が自賠責保険、あるいは対人賠償の任意保険にしか入っていない②相手方が一切非を認めていない③相手方が保険会社に事故報告をしていない、などの可能性が考えられます。相手方に状況を確認する必要があるでしょう。また、ご自身も保険に加入し、過失があるという場合も、当事者双方の保険会社の担当者がやり取りするため、相手の保険会社から連絡はきません。 保険会社から連絡なし…どうなってるの?

相手方が任意保険未加入だった場合の対処法は?

当事者間の話し合い、調停、裁判などを通じて相手方本人に請求するか、ご自身の車両保険を使って損害を回収することができます。一般的に任意保険に入っていない加害者から満足のいく賠償を得ることはかなり困難ですが、車両保険を使用した場合、次年度から保険料が上がってしまうというデメリットが発生します。そのため、どのような方法で損害を回収するかはよく検討する必要があります。 相手方任意保険未加入の場合の対処法

物損事故でも治療費や慰謝料は受け取れる?

交通事故証明書上、物損(物件)事故扱いのままでも、①一定の書類の添付があり②事故と治療(けが)の因果関係が認められた場合、自賠責保険から治療費や通院慰謝料を受け取ることができます。なお、慰謝料が発生するのは人身損害に対してのみであり、物的損害に対しては支払われないのが一般的です。 物損事故でも治療費や慰謝料は受け取れる?

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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