交通事故の評価損|事故車の査定落ち・格落ち損害は賠償請求できる!?判例は?

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交通事故の評価損|事故車の査定落ち・格落ち損害は賠償請求できる!?判例は?

交通事故に巻き込まれた場合、自分が怪我をしてしまうこともありますが、大切な愛車損害を受けてしまうのも非常に辛いことですよね。

そのような車の物損については、修理費のほかに評価損(査定落ち・格落ち損害)を賠償請求できることがあるそうです。

と言われても、

  • そもそも評価損ってなに?
  • 評価損としてはどれくらいの金額が認められるの?評価損が認められた判例ではどうなっている?
  • 新車中古車では評価損の金額も違う?

など、わからないことがたくさんあるはずです。

そこで今回このページでは、交通事故による車の評価損の計算方法について、過去の裁判例なども見ながら、一緒に勉強していきたいと思います。

なお、専門的な解説は、テレビや雑誌でお馴染みの岡野武志弁護士にお願いしています。

よろしくお願いします。

物損事故は起こる頻度が高いため、保険の適用が問題となってくるケースも多いかと思います。

中でも評価損については、決まった計算方法もないことから、争いに発展することも多くなっています。

ここでは少しでも物損事故と保険の問題に関し、みなさまに有益な情報をお伝えすることができればと思っています。

大切な愛車が事故で損害を受けた場合…損害賠償はしっかりと請求したものの、車の評価損がどれくらいのものなのか、自分では検討もつきませんよね。

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愛車の評価損は損害賠償として認められるのか…。

そして、どれくらいの金額が認められるのか…。

ここから一緒に勉強してみましょう。

交通事故による車の評価損(格落ち)は相手に損害賠償請求できる?

交通事故による車の評価損(格落ち)は相手に損害賠償請求できる?

ところで、「評価損」という言葉は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで改めて説明しておきます!

そもそも「評価損」とは?

交通事故に巻き込まれた場合、通常は人が怪我をするだけでなく、にも何かしらの損害が発生します。

そのように、交通事故により被害を受けた車両は、修理すれば完全に元通りというものではありません。

修理費用の予算によっては、車の外観や機能に欠陥が残ったままとなってしまうこともあるでしょう。

また、そもそもそういった事故歴修理歴があると、事故車(修理車)として扱われることになってしまい、車両価値(査定額など)が下がってしまうことになります。

これを、評価損査定落ち・格落ち損害)と言うのです。

修理歴による評価損は相手に請求できる?

以上のように、事故歴・修理歴による評価損が発生した場合、交通事故が原因ならば、相手側に損害賠償として請求したいと思いますよね。

実際のところ、相手側に損害賠償として請求することは可能なのでしょうか?

交通事故により車両を修理したことによる交換価値の下落を補償するための評価損については、加害者側に請求することは可能です。

評価損は、精神的な損害である慰謝料的な側面もありますが、あくまで車両の交換価値の下落という財産的な損害と言えます。

評価損も相手側に損害賠償請求できるということがわかって安心しました!

しかし、評価損を支払ってもらうためには、評価損を支払うべき理由を理論的に説明し、それを証拠立証する必要があるそうです。

つまり、評価損については、保険会社との示談交渉の段階では認められないことが多いのでしょうか…。

裁判にならないと認められないのでしょうか?

示談の段階でも評価損が認められる可能性はありますが、保険会社によっては、示談交渉の段階では一切評価損を認めないところもあるようです。

そうでないところでも、一般的には保険会社は、非常に制限的にしか評価損を認めようとはしません。

特に、被害者ご自身で示談交渉する場合には、評価損を認めてもらうのはかなり困難であると考えられます。

示談交渉の段階では認められない可能性も高いということですが…。

裁判になれば、認められる可能性も多いに考えられるんですね!

事故車の査定がどの位下がるかの立証は事故減価額証明書で!?

では、評価損が認められる場合、具体的にはどのように計算されるのでしょうか?

評価損が認められる場合、その具体的な額をどのように決めるのかが問題になりますが、過去の裁判例を見渡してみるとその計算方法は様々です。

具体的には、

  1. 事故前の車の価格から修理後の車の価格を控除する方法
  2. 事故前の車の価格の○%とする方法
  3. 修理費の○%とする方法

などがあります。

①の計算方法の金額については、一般財団法人社団法人日本自動車査定協会(JAAI)に依頼すれば、事故車の査定額がどのくらい下がる見込みかについて、「事故減価額証明書」という書面を発行してくれるそうです。

この書面を、裁判で証拠として提出すれば、評価損の具体的な金額を決めるための一資料にはなるはずです。

もっとも、実際にはその査定の基準が明確でないなどの理由から、「事故減価額証明書」の額より低めの評価損を認定する裁判例が多いのが現状だということです。

過去の裁判例では、③の計算方法を採用している事例が比較的多いです。
割合としては、修理費の30%程度の金額を認めることが多くなっています。

とはいえ、評価損の、具体的な金額の計算方法は裁判上も明確に決まっているわけではないようです。

ですので、評価損の賠償請求にあたっては、最も高い額が算出される方法によって、具体的に請求する金額を決定すれば良いのかもしれません。

評価損の計算方法
計算方法 補足
事故前の車の価格から修理後の車の価格を控除する
事故前の車の価格の○%とする
修理費の○%とする 修理費の30%程度とすることが比較的多い

事故の評価損は修復歴が付かないと賠償請求できない?

では、評価損(格落ち損害)を加害者に請求できるかどうかの基準はあるのでしょうか?

評価損は車両を修理したことによる交換価値の下落の補償ですので、いわゆる全損で買い替えが必要な場合には認められません。

なるほど…!!

全損の場合については、修理費や評価損ではなく、車の買い替えの費用について相手側と争うことになるのですね。

では、全損以外の場合で評価損を加害者に請求できるかのどうかの基準はありますか?

裁判例では、

  • 初度登録からの期間
  • 走行距離
  • 損傷の部位
  • 車種

などを、総合的に考慮して評価損が認められるか判断しているようです。

考慮要素についてはわかりましたが、各要素がどのような場合、評価損が認められなくなるのでしょうか?

明確な基準があるわけではありませんが、裁判例では、

  • 初度登録からの期間→外国車、国産の人気車種:5年以上/国産車:3年以上
  • 走行距離→外国車、国産の人気車種:6万km以上/国産車:4万km以上
  • 損傷の部位→一般財団法人社団法人日本自動車査定協会(JAAI)が示す修復歴判断基準を満たさない
  • 車種→国産大衆車・原動機付自転車

の場合は、評価損が認められにくい傾向にあるようです。

修復歴判断基準については、こちらを参考になさってみてください。

お伝えしてきた内容を表にまとめると以下のようになります。

評価損が認められにくいケース
初度登録からの期間 外国車・国産の人気車種:5年以上
国産車:3年以上
走行距離 外国車・国産の人気車種:6万km以上
国産車:4万km以上
損傷の部位 社団法人日本自動車査定協会が示す修復歴判断基準を満たさない
車種 国産大衆車・原動機付自転車

新車と中古車では評価損の金額が違う?

車両価値の下落に対する損害賠償ということで、新車の方が価値の低下が大きいような気もします。

新車と中古車を比較した場合、新車の方が評価損の金額が大きくなるようなことはないのでしょうか?

裁判例では、新車と中古車で特に評価損の計算方法を変えてはいないようです。

つまり、登録からの期間(新車か中古車か)も考慮はされますが、それ以外にも要素がたくさんあるため、一概には言えないのですね。

中古車であっても、車種がいわゆる高級車であれば、評価損は大きくなる可能性があります。

一方、新車であっても走行距離が非常に長い場合には、評価損が小さくなる可能性も考えられるということです。

交通事故で評価損を弁護士が争った判例を見てみよう

交通事故で評価損を弁護士が争った判例を見てみよう

以上、明確な基準が存在しているわけではない評価損の金額…。

ここからは、過去の裁判でどれくらいの評価損が認められているのか、判例を見ながらイメージをつかんでみましょう。

修理費の約1割程度の評価損が認められた判例

平成26年12月3日/東京地方裁判所/判決/平成25年(ワ)第10634号

普通乗用車(被害者)と、業務用貨物自動車(加害者)との出合い頭衝突の事例です。

つまり、損傷部位としては前方部分と考えられますね。

本件事故によって車両に生じた取引上の評価損については、上記のほか、塵芥車について一般的な中古車市場が存在しないことその他本件に顕れた一切の事情を考慮して、修理費の約1割である42万6000円を相当と認める。

平成26年2月6日/大阪高等裁判所/第9民事部/判決/平成25年(ネ)2398号/平成25年(ネ)3059号

高速道路の追越車線を走行中の車両(被害者)に、追越車線へ進路変更してきた車両(加害者)が衝突した事例です。

つまり、損傷部位としては前方から後方にかけての側面部分と考えられますね。

評価損については、被害車両の諸費用込み価格(支払額)は2382万7370円であったこと、被害者は被害車両を事故時までの約1年8か月の間に約3万キロメートル走行させていたこと、本件事故による被害車両の修理費は1504万6500円であること、本件事故時の被害車両の時価額は約1675万円であることを考慮すると、修理費の1割である150万円相当と認められる。

修理費の約2割程度の評価損が認められた判例

平成25年4月19日/名古屋地方裁判所/民事第3部/判決/平成22年(ワ)8655号

普通自動車(被害者)と普通自動車(加害者)が交差点で衝突した事例です。

つまり、損傷部位としては前方部分と考えられますね。

被害車の評価損につき、被害車はレクサスで初年度登録から本件事故まで約1年2か月経過していること、事故による修理費が約230万円であることから、評価損として修理費の2割に該当する40万円を認める。

修理費の約3割程度の評価損が認められた判例

平成25年6月14日/大阪地方裁判所/第15民事部/判決/平成23年(ワ)14543号

直進車線を走行中の車両(被害者)に、車線変更してきた車両(加害者)が接触した事例です。

つまり、損傷部位としては前方から後方にかけての側面部分と考えられますね。

評価損については、被害車両は新車価格が3700万円という高級外車であること、生産台数が80台の限定車であったことなどからすれば、被害車両には、本件事故による価値の下落が認められ、評価損が発生しているといえるが、本件事故後である平成22年9月時点での、被害車両の走行距離は約1万5000キロメートルであり、一定程度の走行距離が認められること、被害車両の修理箇所は、躯体などの構造部分に及んでいないことなどを踏まえて、修理費用の約3割に当たる36万円。

修理費の約5割程度の評価損が認められた判例

平成24年10月29日/横浜地方裁判所/第6民事部ろ係/判決/平成23年(ワ)1769号

普通自動車(被害者)が丁字路にて歩行者の横断を待つため停止していたところ、後方から普通自動車(加害者)に追突された事例です。

つまり、損傷部位としては後方部分と考えられますね。

評価損については、被害車が納車直後であったことから、車両の評価損は通常よりも大きいと考えられ、少なくとも修理代金の5割とするのが相当。

以上、いくつかの裁判例を見てきましたが、修理費の1割~5割程度の評価損を認めているものまで幅広く存在していました。

また、金額決定の理由についてもやはり、納車からの期間や走行距離、車の希少性や価格が考慮されているということがわかりました。

とはいえ、統一的な基準を示す裁判例はなく、具体的にどのような要素が存在すれば金額が高くなるのか、導くことは難しいように感じます。

よって、どれほどの金額が認められるかは、実際に裁判になってみないとわからないのが実情なんですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

最後までお読みいただけた方には、

  • 交通事故における評価損の金額や計算方法
  • 評価損が認められた判例

について、理解を深めていただけたのではないかと思います。

このページだけではわからなかったことがあるという方は、下の関連記事もぜひ利用してみてください。

交通事故の被害にあわれた方にとって、少しでもお役に立てれば何よりです。

交通事故の評価損についてのQ&A

評価損とは?

交通事故により被害を受けた車両は、修理すれば完全に元通りというものではありません。修理費用の予算によって、車の外観や機能に欠陥が残ったままとなってしまうことも少なくありません。そういった事故歴や修理歴があると、事故車(修理車)として扱われることになってしまい、査定額などの車両価値が下がってしまいます。これを、評価損(査定落ち・格落ち損害)といいます。 車の評価損は相手に損害賠償請求できる?

判例で評価損は認められる?

実際の裁判で修理費の1割〜5割低度の評価損が認められています。納車からの期間や走行距離、車の希少性や価格が考慮され、金額が決定されるようです。しかし基準は裁判でも統一的ではないため、どれほどの金額が認められるかは実際の裁判になってみないと判断ができません。 交通事故の評価損に関する判例のご紹介

示談交渉で評価損の請求は認められる?

一般的に保険会社は、示談の段階で極めて制限的にしか評価損を認めようとはしません。さらに保険会社によっては示談交渉の段階では一切評価損を認めないところもあるようです。一方、裁判では加害者側に評価損を交換価値の下落の保証として請求することは可能です。 修理歴による評価損は相手に請求できる?

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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