後遺障害8級の交通事故慰謝料|6444万円の判例を弁護士が解説
このページでは、後遺障害8級の判例についてご紹介します。
もし、交通事故によって後遺障害8級が認定された場合、45%の労働能力が喪失されたとみなされ、仕事に大きな影響を与えることになってしまいます。
今後の生活のことを考えると、納得できる慰謝料は支払われるのか不安になりますよね。
この判例では、総額6444万円の損害賠償金が認められましたが、金額算定においてどのような点が考慮されたのか、弁護士の先生の解説とともに見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
障害等級8級(女・症状固定時50歳)損害額6444万2248円の判例
こちらは、東京地方裁判所の判決、平成11年(ワ)第8211号事件です。
この事故による主な怪我の内容は、右大腿骨開放性骨折となります。
交通事故の基本情報
事故の内容は「T字路交差点で、加害者1の車両が横道から後退して、加害者2の車両が走行する車線上に進出したため、対向車線上に出た加害者2の車が、対向車線を走行してきた被害自動二輪車に衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 有職主婦 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 症状固定時50歳 |
事故の内容 | T字路交差点で、加害者1の車両が横道から後退して、加害者2の車両が走行する車線上に進出したため、対向車線上に出た加害者2の車が、対向車線を走行してきた被害自動二輪車に衝突した。 |
傷害の内容 | 右大腿骨開放性骨折、右頸骨高原骨折(開放性)、右膝ACL(前十字靭帯)・PCL(後十字靭帯)断裂、右膝腸頸靭帯断裂、右膝関節襄損傷、右脛骨腓骨開放性骨折など |
後遺障害等級 | 併合8級(右膝関節機能障害、右足関節機能障害、右下肢醜状障害) |
入院 | 284日 |
被害者は右足の負傷によって約36本ものボルトを右足に挿入したようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 6444万2248円 |
---|---|
うち慰謝料 | 1390万円 |
うち休業損害 | 1741万5769円 |
うち逸失利益 | 1444万5150円 |
損害総額は6444万2248円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額6444万2248円になりました。
- 慰謝料としては、傷害慰謝料が440万円、後遺障害の慰謝料が950万円が認められました。
- 休業損害としては、入院期間については100%の休業損害を認め、通院期間に関しては、労働能力喪失率は80%とするのが相当とされました。
- 逸失利益としては、基礎収入は女性の学歴計50歳ないし54歳平均年収額366万0800円とし、就労可能年齢である50歳より67歳までの17年間、9級の35%程度労働能力を喪失したものとして、1444万5150円認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの女性は、右足の後遺障害によって日常生活にも大きな支障が出てしまったようです。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
本件被害者は、上記障害により右膝、右足首に相当重度の機能障害を負ってしまいました。
後遺障害の慰謝料という面からみれば、後遺障害の部位や程度と日常生活への支障等から一般的な8級の相場よりも増額され認定されています。
一方、醜状障害は直接労働能力に影響を与えないとして、労働能力喪失率は、醜状障害を除いた9級相当の基準で算定されています。
このように、特に醜状障害は労働能力喪失が認められないことが多いので注意が必要です。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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後遺障害8級の慰謝料計算の特徴は?
8級の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
一口に8級と言っても各号ごとに症状は様々ですが、原則として慰謝料は等級に応じて定められ、8級の場合、裁判基準では830万円となっております。
特に争いになりやすいのは逸失利益の項目であり、8級の場合、自賠責基準では計算の基礎となる労働能力喪失率を45%としています。
しかし、実際にはそこまでの仕事への支障がないとして、保険会社が自賠責基準よりも低く主張してくることも多いです。
そのような場合には、職務内容や職務にどのような支障が出ているかを具体的に主張する必要があることがポイントです。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話ですので、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情によっては変わることもあります。
交通事故のお悩みについて、より詳しいアドバイスがお聞きになりたい場合は、まずは弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。