20歳大学生の交通事故慰謝料|2億5809万円の判例を弁護士が解説
このページでは、20歳女子大生の判例についてご紹介します。
交通事故は一瞬で被害者の人生を変えてしまいます。
ご本人もご家族も、とてもつらく苦しい思いをしてしまうことになります。
被害者の気持ちを考えると、慰謝料は十分に支払われるのか不安になってしまいますよね。
ここでは、慰謝料算定のポイントを押さえながら判例の解説をいたします。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
大学生(女・20歳)損害額2億5809万9429円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第2900号事件です。
この事故での主な怪我は、脳挫傷や急性硬膜下血腫となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「第一車線を走行していた加害車両と第三車線を走行していた被害車両の双方が第二車線に変更したときに衝突した」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 大学生 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 20歳 |
事故の内容 | 第一車線を走行し、第二車線に進路変更した加害A車両の右前部と第三車線を走行し、第二車線に進路変更した被害B車両の左後部が衝突し、両車両とも南東に向けて逸走し、被害車両は、第一車線東側の導流帯に停止していたC車両の荷台後部に衝突し、その下に潜り込む形で停止し、加害A車両は、導流帯の東側の側壁に衝突して停止した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、頭蓋底骨折、右鎖骨骨折 |
入院 | 536日 |
頭部に大きな傷害を負った点、入院期間が500日以上の比較的長期間であったという点が特徴的といえます。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 2億5809万9429円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3900万円 |
うち休業損害 | 0円 |
うち逸失利益 | 7351万5032円 |
損害総額は2億5809万9429円でした。
ざっくりまとめると…
被害者は保険会社から総額2億5809万9429円の損害賠償金を受け取りました。
- 慰謝料として、傷害慰謝料が400万円、後遺障害の慰謝料が2700万円、両親固有の慰謝料が各400万円が認められました。
- 逸失利益として、3年に在学し、アルバイトにより月額4万3000円の収入。症状固定時(本件事故の1年後)から大学卒業時(本件事故の2年後)までの基礎収入は月額4万3000円、大学卒業時から原告が67歳に達するまで(本件事故の47年後)の基礎収入は453万1000円、労働能力喪失率はそれぞれ100パーセントとし、7351万5032円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、この判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、被害者である女子大学生を今後22年間にわたって介護していく母親の介護費用を日額1万5000円と認定したことが特徴的です。
通常、家族が被害者の介護を行う場合には、日額8000円の介護費用にとどまることが一般的です。
今回のケースでは、母親が介護のために教員の仕事を辞めた点が、介護日額を増額させる大きな理由になったといえるでしょう。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
また、慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと、慰謝料の計算が5秒で完了して便利です。
計算ソフトの利用をおすすめするのは、
- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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保険会社から低い金額を提示されている場合は、素人の知識不足に漬け込んで騙されている可能性があります。
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大学生の慰謝料計算の特徴は?
大学生の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
後遺症が残った場合の慰謝料は、原則として後遺障害の等級によって決められます。
しかし、大学生の被害者に生涯にわたって続く後遺症が残った場合、後遺症で苦労する期間が長いため、慰謝料について相場水準よりも20%ほど増額して請求すべきという考え方もあり、その点は裁判などで争う余地があります。
ポイントとしては、事故により生じた支障や就職状況等を具体的に主張していくことです。
事故の影響で、留年してしまったり、就職試験を受けられなかったことや内定を取り消されたこと等が証明できれば、賠償額が増額できる余地があります。
また、内定が決まっていたり、医大生のように将来就職する可能性が高い職種等を証明できれば、内定先の会社や将来就職する可能性が高い職種の平均賃金が逸失利益の計算の基礎となり、賠償額が増額する余地があります。
なお、内定などが決まっていなくても、大卒の平均賃金は、全体の平均賃金よりも高いため、大卒の平均賃金を基礎に計算することを主張する必要があります。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまですので、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがよいでしょう。