女子高校生の交通事故慰謝料|2億1891万円の判例を弁護士が解説
このページでは、女子高校生の判例についてご紹介します。
交通事故は、場合によっては人生を大きく変えてしまうことになります。
こちらの女子高校生は、交通事故で一命は取りとめたものの、重い後遺障害が残り、以前までのような生活を送ることができなくなってしまいました。
この事故によって、2億1891万円以上の損害総額が認められましたが、算定のポイントはなんだったのか見ていきましょう。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
高校生(女・症状固定時18歳)損害額2億1891万1141円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の判決、平成16年(ワ)第1161号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷や脳内出血となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「対向車との衝突を避けようと左にハンドルを切り、路外逸脱し電柱に衝突し、同乗していた被害者が負傷した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 高校生 |
---|---|
性別 | 女 |
年齢 | 18歳(症状固定時) |
事故の内容 | 対向車との衝突を避けようと左にハンドルを切り、路外逸脱し電柱に衝突。同乗していた被害者が受傷。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、脳内出血等 |
入院 | 567日 |
被害者は、脳の損傷によって1級3号という非常に重い後遺障害が残り、将来にわたって介護が必要となってしまったようです。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 2億1891万1141円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3050万円 |
うち休業損害 | 0円 |
うち逸失利益 | 6341万4213円 |
損害総額は2億1891万1141円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額2億1891万1141円になりました。
- 慰謝料として、傷害慰謝料が400万円、後遺障害の慰謝料が2000万円、両親固有の慰謝料が各300万円、被害者の姉固有の慰謝料が50万円認められました。
- 逸失利益は、女子の全年齢平均賃金相当の収入を得られるとして、労働能力喪失率は100%、労働能力喪失期間は18歳から67歳まで49年間として算定し、6341万4213円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの18歳の女子高生は脳挫傷や脳内出血など頭に大きなけがを負われていますね。
この判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、事故後、被害者の父親が勤務先を退職したことにより、休業損害として1981万円を請求していました。
事故がなければ、被害者の父親は勤務を継続できていたはずだったので、裁判では、父親の休業損害が損害として認められるか否かが大きな争点となりました。
裁判所は、父親による介護が必要不可欠であったとはいえないとして、休業損害を損害として認めませんでした。
被害者家族からすると、納得のいかない結論かもしれませんが、交通事故において賠償される項目は限定されていますので、損害として認めてもらえるかどうかは各裁判所の裁量に委ねられている傾向があります。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
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高校生の慰謝料計算の特徴は?
高校生の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
後遺症が残った場合の慰謝料は、原則として後遺障害の等級によって決められます。
しかし、高校生の被害者に生涯にわたって続く後遺症が残った場合、後遺症で苦労する期間が長いため、慰謝料について相場水準より2〜3割増額して請求すべきという考え方もあり、その点は裁判などで争う余地があります。
また、慰謝料と並んで重要な項目である逸失利益については、高校生の進路によって計算方法が異なります。
高校卒業後に働くことを前提とすると18歳~67歳までの期間で計算し、大学への進学を前提とすると22歳~67歳の期間で算定することになります。
もっとも、一般的に計算の基礎となる収入は高卒で働く場合よりも大卒で働く場合の方が高くなることが多いので、被害者の具体的な進路の見込み等を踏まえた上で、被害者にとって最も有利な方法で保険会社に請求していく必要がありますね。
ただし、今申し上げたポイントは一般的・総論的なお話であり、上に挙げられている裁判例のように、事故に遭われた方のご事情はさまざまです。
まずは、弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ
この記事の監修弁護士
岡野武志弁護士
アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。