男子高校生の交通事故慰謝料|1億9817万円の判例を弁護士が解説
このページでは、男子高校生の判例についてご紹介します。
交通事故に遭ってしまったことで、今までのような生活が送れなくなってしまうことがあります。
こちらの男子高校生もその1人です。
これからの長い人生を重い後遺障害とともに生きていかなければいけない状況は、本人にとってもご家族にとっても、非常につらいものです。
この判例では、2億円近い損害額が認められたようですが、どのような点がポイントとなったのでしょうか。
法律的な部分の解説は、テレビや雑誌でもおなじみの岡野武志弁護士にお願いしています。
よろしくお願いします。
これまで事務所で取り扱った実例と、裁判所が判断した判例にもとづいて、しっかりと解説していきたいと思います。
目次
それではまず、交通事故の内容から見ていきましょう。
高校生(男・症状固定時17歳)損害額1億9817万0964円の判例
こちらは、大阪地方裁判所の第15民事部の判決、平成20年(ワ)第3271号事件です。
この事故での主な怪我の内容は、脳挫傷、外傷性くも膜下出血となっています。
交通事故の基本情報
事故の内容は「被害者同乗の二輪車が第1通行帯を走行中、同一方向に走行していた加害タクシーが第2通行帯から第1通行帯に車線変更を開始した際に、衝突した。」というものです。
交通事故の基本情報は?
属性 | 高校生 |
---|---|
性別 | 男 |
年齢 | 17歳(症状固定時) |
事故の内容 | 被害者同乗の二輪車が第1通行帯を走行中、同一方向に走行していた加害タクシーが第2通行帯から第1通行帯に車線変更を開始した際に、衝突した。 |
傷害の内容 | 脳挫傷、外傷性くも膜下出血、意識障害、顔面挫創、鼻骨骨折、両肺挫傷、右大腿骨骨折、歯牙脱落脱臼、歯槽骨骨折 |
入院 | 356日 |
被害者は全身に大きな怪我を負い、介護が必要な状態になってしまいました。
判例で認められた賠償金・慰謝料
それでは、認められた損害額を見てみましょう。
判例で認められた賠償金・慰謝料は?
損害総額 | 1億9817万0964円 |
---|---|
うち慰謝料 | 3230万円 |
うち付添看護費 | 170万8800円 |
うち逸失利益 | 9556万7230円 |
損害総額は1億9817万0964円でした。
ざっくりまとめると…
被害者の損害額は総額1億9817万0964円になりました。
- 慰謝料として、入院に対する慰謝料が370万円、後遺障害の慰謝料が2460万円、父の慰謝料が150万円、母の慰謝料が250万円認められました。
- 付添看護費としては、日額6000円が認められました。
- 逸失利益は、基礎収入は男子の全年齢平均賃金552万3000円、高校中退は事故後なので考慮されず、労働能力喪失率は100%、労働能力喪失期間は18歳から67歳までとして算定し、9556万7230円が認められました。
弁護士による解説
弁護士先生、こちらの男子高校生はバイクに同乗中の事故に遭ってしまったようですが、判例のポイントはどのような点になりますか?
この判例では、被害者の入院期間中の病院が完全看護体制をとっていたことから、家族による入院時の付添看護費が認められるか否かが争点となりました。
裁判所は、医学的観点からは家族による付添看護は不要であるものの、家族による声掛けやタッチングなどがリハビリや監視に一定程度の効果があったとしました。
その上で、日額6000円の限度での付添い看護費を損害として認めました。
交通事故の慰謝料の計算方法をおさらい
はじめての慰謝料計算
交通事故の慰謝料の計算方法、よく分からないですよね。
ポイントを整理すると、
- 保険会社が提示する慰謝料と、弁護士や裁判所が認定する慰謝料は、大きく異なる。
- 法律的に正しい慰謝料は、弁護士や裁判所が認定する慰謝料の方。
- 正しい慰謝料を請求するためには、法的な手続きを利用する必要がある。
の三点が重要です。
慰謝料の計算方法については、このページがよくまとまっています。
記事の構成は、
- 弁護士介入後に慰謝料が増額する理由
- 交通事故被害者の慰謝料はどのようにして決まるの?
- 慰謝料よりも高額な「逸失利益」とはどういうもの?
となっています^^
慰謝料自動計算機(計算ソフト)を使うと便利
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計算ソフトの利用をおすすめするのは、
- 保険会社と話し合う前に、自分の慰謝料の概算を知りたい
- 保険会社から提示されている金額が、法律的に正しいかどうか知りたい
- 相手方に請求できる(または相手方から請求される)慰謝料の金額を知りたい
といった人たちです。
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高校生の慰謝料計算の特徴は?
高校生の慰謝料を計算するにあたって、ポイントとなる点はありますか?
後遺症が残った場合の慰謝料は、原則として後遺障害の等級によって決められます。
しかし、高校生で若くして後遺症を負ってしまった場合、その後の人生も長いので、慰謝料について相場水準より2〜3割増額して請求すべきという考え方もあり、裁判などで争う余地があります。
また、慰謝料と並んで重要な項目である逸失利益については、高校生の進路によって計算方法が異なります。
高校卒業後に働くことを前提とすると18歳~67歳までの期間で計算し、大学への進学を前提とすると22歳~67歳の期間で算定することになります。
もっとも、一般的に計算の基礎となる平均賃金は高卒で働く場合よりも大卒で働く場合の方が高くなることが多いので、被害者の具体的な進路の見込み等を踏まえた上で、被害者にとって最も有利な方法で保険会社に請求していく必要がありますね。
ただし、今申し上げたポイントはあくまで一般的な話に留まりますので、被害者の個々の事情を考慮して正確な見通しを立てるため、まずは弁護士等の専門家に相談してみるのがよいでしょう。