交通事故で歩行者が悪い場合は?飛び出し事故や信号無視の過失割合は?

  • 交通事故,歩行者

交通事故で歩行者が悪い場合は?飛び出し事故や信号無視の過失割合は?

交通事故歩行者だった家族死亡してしまったけど、利用できる保険にはどのようなものがあるのだろうか…」

「交通事故の歩行者が急に飛び出したことが事故の原因の場合は歩行者が悪いものとして過失割合が判断されてしまうのだろうか…」

「もし交通事故の歩行者が悪いとしたら慰謝料は一切もらえないのだろうか…」

交通事故に歩行者が巻き込まれた場合には、死亡してしまう確率も高く、受け取れる慰謝料がどうなるか気になる方も多いかと思います。

このページでは、そんな方のために

  • 交通事故での歩行者の特徴
  • 交通事故で歩行者が悪いと判断される場合があるか
  • 交通事故の歩行者の慰謝料

についてご紹介していきたいと思います。

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

交通事故は歩行者の方も常に巻き込まれてしまう危険性があるため、万が一の場合に備えて利用できる保険などを予め押さえておくことが重要です。

また、交通事故の歩行者の過失割合や受け取れる慰謝料についても予め理解しておけば、事故の解決の見通しを立てることが可能になります。

こちらで交通事故の歩行者に関する知識を確認し、もし実際に交通事故に歩行者として巻き込まれてしまった場合にも困らないようにしておきましょう。

交通事故の当事者に成りうるのは、歩行者以外にも自転車など様々です。

もっとも、交通事故における歩行者には他の当事者とは異なる特徴があります。

そこで、まずは交通事故における歩行者の特徴について確認していきたいと思います。

交通事故での歩行者の特徴

交通事故での歩行者の特徴

交通事故は歩行者の死亡が最多

交通事故歩行者が遭う場合、歩行者は事故による衝撃を直接体に受けることになります。

また、交通事故の歩行者の相手方となる自転車は歩行者よりもスピードを出していることがほとんどです。

そのため、交通事故での歩行者は死亡してしまう危険性が高いという特徴があります。

実際に、統計上、平成29年の交通事故死者数3694人のうち、歩行中の死者は1347人と、歩行中の死亡が最多になっています。

さらに、交通事故の死傷者数の中で占める死者の割合である致死率は歩行者が2.56と、交通事故全体の致死率の約5倍になっています。

つまり、交通事故の歩行者は、死亡の件数確率も最も高くなっているのが特徴といえます。

なお、交通事故状態別の死者数及び致死率の具体的な数値は以下の表のとおりになります。

交通事故状態別死者数及び致死率
状態 死者数(割合) 致死率※
自動車乗車中 1221人(33.1%) 0.32
自動二輪車乗車中 448人(12.1%) 1.45
原付乗車中 184人(5.0%) 0.61
自転車乗用中 480人(13.0%) 0.54
歩行中 1347人(36.5%) 2.56
その他 14人(0.3%) 1.56
全体 3694人(100%) 0.63

※致死率は死者数÷死傷者数×100で算出

※警察庁交通局「平成29年中の交通事故の発生状況」参照

交通事故の歩行者が使える保険

交通事故歩行者の方の中には、歩行中の事故の場合には自分やご家族の保険が利用できないと誤解されている方がおられます。

しかし、交通事故の歩行者であっても、自分やご家族の車の保険が利用できるんです!

ここからは、実際に交通事故の歩行者が利用できる可能性のある保険についてお伝えします。

人身傷害保険

人身傷害保険は、被保険者が自動車事故により傷病を負った場合に保険金が支払われる保険です。

そして、契約内容にもよりますが、被保険者が歩行中に自動車事故にあい、傷病を負った場合も補償の対象となります。

そのため、自動車事故の歩行者が人身傷害保険の被保険者である場合には、その保険から補償を受けられます。

ただし、人身傷害保険の内容が

契約自動車に搭乗中に範囲を限定

していた場合には、被保険者が歩行中の自転車事故で、人身傷害保険から保険金は支払われないので、契約内容をよく確認しておきましょう。

弁護士費用特約

また、自動車事故の歩行者やそのご家族の車に弁護士費用特約がついている場合、この特約を使用して、弁護士に依頼することができます。

歩行者の場合、ご自身やご家族のお車の保険会社は、相手方と交渉ができず、ご自身で相手方と交渉しなければいけない場合も多いです。

しかし、弁護士費用特約を利用できれば、ご自身の費用負担なく弁護士に交渉を依頼することができ、交渉の負担から逃れることができます。

それだけでなく、弁護士に依頼することにより慰謝料など損害賠償金の増額や過失割合の適切な主張・立証まで可能となります。

なお、弁護士費用特約については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

交通事故の歩行者は通常過失割合低い被害者

交通事故においては歩行者にも過失が認められる場合もあります。

しかし、過失が認められる場合であっても、交通事故の歩行者は通常、過失割合の低い被害者になることが多いのが特徴といえます。

その理由は、歩行者ととの力関係の差にあります。

歩行者と車の交通事故の場合、歩行者は死亡してしまったり、重傷を負う確率が高くなります。

そのため、歩行者と車の交通事故の場合、車側に重い注意義務が課せられている結果、過失割合も車側が高くなることが多いといえます。

交通事故において、歩行者は死亡の確率が最も高いなど弱い立場に置かれているといえます。

そのため、仮に過失がある場合でも、過失割合の低い被害者になることが多くなります。

また、歩行中でも自分や家族の車の保険が使えることが多いという点はよく覚えておき、交通事故の際には必ずご自身の保険会社に確認しましょう。

交通事故での歩行者の特徴
死亡の件数・確率が最も高い
自分や家族の車の保険が通常利用できる
過失割合の低い被害者になるのが通常

交通事故で歩行者が悪い例外的な場合は?

交通事故で歩行者が悪い例外的な場合は?

お伝えしたとおり、交通事故では、歩行者過失割合は通常低くなります。

もっとも、このことに対し、疑問を抱く一般の方も多いようです。

では、交通事故において歩行者が悪いといえるのはどのような場合になるのでしょうか?

歩行者の急な飛び出しが事故原因の場合は?

まず、考えられるのが歩行者飛び出しです。

に乗っている方からすると、急に飛び出してきた歩行者が悪いのではないかと感じることもあるようです。

twitter上では、こんな意見も聞かれます。

実際、統計上、交通事故の歩行者の違反には飛び出しが多く、特に子供の飛び出しが多いようです。

全国統計を用いて歩行者の違反を年齢層別に調べた(表1参照)。

その結果、子どもの方が大人より事故時の違反が多く(「違反なし」が少なく)、特に「飛び出し」違反が多かった。

(略)

表1 歩行者の違反(第1当事者:4,059 人、第2当事者:112,805 人、2007 年と 2008 年の計)

事故時の違反 歩行者の年齢

~6歳 7~15歳 16歳~ 全年齢

(略)

飛び出し 40.3  34.0   2.0   8.6

(以下略)


では、本当に交通事故の歩行者の飛び出しが事故の原因の場合歩行者が悪いといえるのでしょうか?

飛び出しであっても、その場所が横断歩道かどうかで車に求められる注意義務は変わってきます。

そのため、横断歩道上かそれ以外かにわけて歩行者の過失割合を検討していきたいと思います。

横断歩道上

まず、横断歩道での歩行者と車の交通事故の基本過失割合は0:100になります。

道路交通法上、横断歩道では歩行者が優先すると定められているからです。

そして、たとえ歩行者が渋滞車列の間や駐停車車両の間などから急に飛び出した場合でも、歩行者の過失割合は最大でも15%になります。

そのため、横断歩道上においては、たとえ歩行者が急に飛び出したことが事故の原因であっても歩行者が悪いとはいえません。

横断歩道以外

では、横断歩道以外の場所での歩行者の急な飛び出しが原因の場合はどうでしょう?

横断歩道ではないため、歩行者が急に飛び出してくることは予想できないという主張が車側からはありそうです。

しかし、横断歩道以外での歩行者と車の交通事故の基本過失割合は20:80になります。

そして、たとえ歩行者が急に飛び出した場合でも、歩行者に加算される過失割合は10%になります。

そのため、横断歩道以外の場合でも、歩行者が急に飛び出したことにより歩行者が悪いとは通常なりません。

ただし、横断禁止の規制のある幹線道路の夜間の飛び出しなどの場合には歩行者が悪いと評価される可能性があります。

歩行者が信号無視した場合は?

このように、交通事故歩行者の急な飛び出しが事故の原因でも、原則として歩行者が悪いことにはならないとわかりました。

では、歩行者が信号無視をした場合には、さすがに歩行者が悪いということになるのでしょうか?

ここでは、信号無視の典型である赤信号無視について、状況別に歩行者の過失割合を検討していきたいと思います。

歩行者と直進車の事故

の運転者としては、赤信号に違反して横断を開始する歩行者があることまで予見すべき注意義務まではありません。

そのため、赤信号無視の歩行者と直進車の事故の場合、主な原因は歩行者の過失によるものといえ歩行者が悪いということになります。

もっとも、事故の原因には、車の軽度の前方不注視や不適切なブレーキ操作などが基本的には影響しているといえます。

そのため、この場合でも100%歩行者が悪いということにはならず、基本過失割合は歩行者70:車30になります。

ただし、歩行者が車の直前に急に飛び出したという事情が重なるような場合には100%歩行者が悪いということになる可能性があります。

歩行者と右左折車の事故

歩行者は赤信号の場合には、道路を横断してはならず、この場合にも当然歩行者が悪いということになりそうです。

しかし、右左折車が青信号の場合、交差道路は赤信号であることもあってか、赤信号無視の歩行者もしばしばみられるのが実情です。

そのため、直進車の場合に比べ、右左折車の場合は赤信号無視の歩行者の存在を予見しやすいといえます。

さらに、右左折の際には、通常背一時停止、徐行又は相当な原則をしているため、直進車に比べ歩行者を発見・回避しやすいといえます。

そのため、この場合の基本過失割合は歩行者50:車50になり、必ずしも歩行者が悪いということにはなりません。

歩行者が赤信号無視の場合の基本過失割合について
状況 歩行者
歩行者と直進車 70 30
歩行者と右左折車 50 50

交通事故の歩行者が加害者になる場合とは?

このように、交通事故歩行者が悪いといえるような場合は、赤信号無視など極めて限定的な場合に限られます。

もっとも、仮に交通事故の歩行者が悪いといえる場合でも、自転車に乗っていた相手方には何ら損害が発生しないこともあります。

先ほどお伝えしたとおり、歩行者と車とには力関係に差があり、歩行者からの衝突の衝撃はそれほど大きなものではないことも多いからです。

このように、相手方に損害がない場合、歩行者損害賠償義務を負う加害者にはなりません。

では、歩行者が損害賠償義務を負う加害者になる場合とはどのような場合が考えられるでしょうか?

物損の損害賠償義務を負う場合

まず想定されるのは、歩行者が相手方の物損の損害賠償義務を負う場合です。

歩行者と車とが衝突した場合、車自身の衝撃も合わさって、車のボディが凹んだり、ウィンドガラスにヒビが入ったりすることがあります。

このような場合、相手方の車の修理費について、歩行者に過失が認められる場合、歩行者が過失割合分の損害賠償義務を負う加害者になります。

傷害の損害賠償義務を負う場合

このように、歩行者であっても、物損の損害賠償義務を負う加害者になる場合は、比較的想定しやすいといえます。

一方、歩行者と車が衝突した場合に、車に乗っていた方が傷害を負う事態は想定しにくいかもしれません。

しかし、例えば、歩行者との接触を避けようとして、ガードレールなどに衝突した場合、車に乗っていた方が傷害を負うことがあります。

また、二輪車や自転車が歩行者と接触した際、転倒して骨折してしまうという傷害を負うような場合もあります。

このような場合、相手方の治療費や慰謝料などについて、歩行者に過失が認められる場合、歩行者が過失割合分の損害賠償義務を負う加害者になります。

交通事故において、歩行者は最も弱い立場に置かれているため、歩行者が悪いといえるような場合は極めて限られます。

とはいえ、赤信号無視のような重大な過失がある場合には、歩行者が悪いと判断されるような場合もあるので、その点は注意しましょう。

また、歩行者であっても、過失があり、相手方に損害が発生している場合には、損害賠償義務を負う加害者になるので、その点も覚えておきましょう。

交通事故の歩行者の慰謝料

交通事故の歩行者の慰謝料

交通事故歩行者が気になるものの一つに慰謝料がどの位受け取れるのかという問題があるかと思います。

例えば、上記のツイートをされた方の慰謝料の相場はどれ位なのでしょうか?

また、歩行者であることは慰謝料に何か影響を及ぼすのでしょうか?

基準が同じでも慰謝料は多い?

慰謝料とは何か

まず、交通事故における慰謝料は、主に以下のように定義されます。

慰謝料

事故でのケガ等により辛い思いをすることになった精神的苦痛を填補するために支払われる金銭

慰謝料の種類や基準は変わらない

そして、事故でのケガ等により辛い思いをすることになった精神的苦痛は、歩行者であってもなくても変わらないので、

歩行者であることは慰謝料の種類や基準に影響を及ぼさない

ことになります。

慰謝料は種類も基準も三種類ある

慰謝料の種類

さらに、交通事故による慰謝料は大きく

  • 傷害慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

の三種類に分けられます。

それぞれの慰謝料は別個に請求できるので、混同しないよう注意しましょう。

慰謝料の基準

そして、慰謝料の基準にも

  • 自賠責保険に請求する場合の自賠責基準
  • 任意保険会社が提示する場合の任意保険基準
  • 弁護士が相手側や保険会社に請求する場合の弁護士基準

の三種類が存在します。

傷害慰謝料

自賠責基準

傷害慰謝料は自賠責基準では以下のように定められています。

3.慰謝料

(1) 慰謝料は、1日につき4,200円とする。

(2) 慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。

(以下略)

日額が4,200円というのは明確ですが、対象となる日数は基準を読んだだけではよくわかりませんね・・・。

実は通院分の慰謝料

  • 入院日数と実際の通院日数の2倍の合計
  • 総治療期間

いずれか少ない方を対象日数として計算するといわれています。

任意保険基準

続いて、任意保険基準は保険会社ごとに異なりますが、かつて保険会社が統一的に用いていた傷害慰謝料の基準は以下のとおりです。

旧任意保険支払基準による入通院慰謝料

旧任意保険支払基準による入通院慰謝料

弁護士基準

そして、弁護士基準の傷害慰謝料は、むちうちなどの軽症かそれ以外の通常の場合かで基準が異なります。

むちうちなどの軽症の場合の弁護士基準の傷害慰謝料は以下のとおりになります。

軽症・むちうちの慰謝料算定表

軽症・むちうちの慰謝料算定表

先ほどのツイートの方のように、むちうちで180日間治療された方の場合、傷害慰謝料は弁護士基準で計算すると89万円になります。

また、通常の場合の弁護士基準の傷害慰謝料は以下のとおりになります。

重傷の慰謝料算定表

重傷の慰謝料算定表

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料については、どの基準でも等級ごとに基準となる金額が定められています。

そして、それぞれの基準ごとの後遺障害慰謝料を比較した表が以下のものになります。

各基準ごとの後遺障害慰謝料※1
後遺障害等級 自賠責基準※2 任意保険基準※3 弁護士基準
1 1100
1600
1300 2800
2 958
1163
1120 2370
3 829 950 1990
4 712 800 1670
5 599 700 1400
6 498 600 1180
7 409 500 1000
8 324 400 830
9 245 300 690
10 187 200 550
11 135 150 420
12 93 100 290
13 57 60 180
14 32 40 110

※1 単位:万円

※2 被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがある。

  ()内は要介護の場合の金額。

※3 旧任意保険支払基準による。

死亡慰謝料

最後に死亡慰謝料についても、3つの基準ごとにまとめてみましたので、ご覧になってみてください。

自賠責基準による死亡慰謝料
被害者本人一律 遺族※ 被扶養者がいる場合
350万円+ 1 550万円 200万円
2 650万円
3人以上 750万円

※ 被害者の両親、配偶者、子のみ

任意保険基準と弁護士基準による死亡慰謝料
任意保険基準 弁護士基準
一家の支柱 1700 2800
母親・配偶者 1400 2500
その他 12501450 20002500

※1 単位:万円

※2 旧任意保険支払基準による

ご覧いただいてお分かりになるかと思いますが、三つの基準のうち、弁護士基準が最も高い基準になっています。

歩行者の慰謝料は多くなる?

先ほどお伝えしたとおり、交通事故において、歩行者であることは用いる慰謝料の基準に影響を及ぼしません。

しかし、ご覧いただいたとおり、どの基準を用いるにしても

  • 傷害慰謝料は入通院期間が長いほど多くなる
  • 後遺障害慰謝料は重い等級が認定されるほど多くなる
  • 死亡慰謝料の金額は他の種類の慰謝料より多くなる傾向にある

ところ、歩行者の場合には、衝撃が体に直接加わることから

  • 重傷となり、入通院期間が長くなる結果、傷害慰謝料も多くなる
  • 重傷となり、重い等級が認定される確率が高まる結果、後遺障害慰謝料も多くなる
  • 死亡の確率が高い結果、死亡慰謝料を受け取れる確率も高まる

ため、結果的に慰謝料が多くなる傾向にあると考えられます。

慰謝料を弁護士基準で計算するなら

先ほどお伝えしたとおり、慰謝料は弁護士基準で計算するのが最も高額になります。

そして、慰謝料などの損害賠償額を弁護士基準で簡単に計算したい方におススメなのが、以下の慰謝料計算機のサービスになります。

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歩行者が悪い場合も傷害があれば慰謝料発生

先ほどお伝えしたとおり、交通事故では歩行者が悪い場合も例外的ではありますが存在します。

しかし、歩行者が悪い場合であっても、歩行者の場合には、衝撃が体に直接加わることから傷害を負ってしまうことが多くなります。

そして、赤信号無視のところでお伝えしたとおり、歩行者が悪い場合でも、100%歩行者が悪い場合は極めてまれとなります。

100%歩行者が悪い場合を除き、歩行者が悪い場合も、歩行者が傷害を負い、入通院をしたり、後遺障害が認定されれば、慰謝料を受け取れます。

ただし、受け取れる慰謝料の金額は、当然、歩行者の過失割合分を差し引いた金額にはなります。

歩行者が悪い場合自賠責の方が高額の可能性

先ほどご覧いただいたとおり、慰謝料弁護士基準で計算するのが最も高額になります。

一方、自賠責基準は最低限の補償を受けられるようにするための自賠責保険の基準であり、慰謝料の基準は三つの基準の中で最も低額です。

しかし、自賠責基準の方が弁護士基準よりも有利な部分があります。

それは、過失割合についての取扱いです。

具体的には

  • 過失が7割未満であれば過失相殺されない
  • 過失が7割以上ある場合でも、減額割合が過失割合に比べて低い

という点に特色があります。

これは、過失割合の大きい被害者であっても、損害が出ている以上、被害者として最低限は保障しようとする政策的判断に基づくものです。

詳しい減額割合は下記の表のとおりになります。

自賠責保険における過失減額の取扱
被害者の過失割合 減額割合
後遺障害又は死亡 傷害
7割未満 減額なし 減額なし
7割以上8割未満 2割減額 2割減額
8割以上9割未満 3割減額 2割減額
9割以上10割未満 5割減額 2割減額

この取り扱いの結果、歩行者が悪い場合、受け取れる慰謝料が自賠責基準の方が弁護士基準よりも高くなる可能性があります。

自賠責基準の方が高くなる具体例

具体例として、赤信号無視した歩行者の児童が直進車と衝突し、骨折した事故で、過失割合が歩行者60%とされ

  • 治療費 60万円
  • 通院6か月(180日)
  • 通院日数90日

だった場合を想定してみましょう。

自賠責基準

自賠責基準ですと、慰謝料は

4,200円×180日=756,000円

となります。

そうすると、総額は1,356,000円となります。

そして過失割合は60%ですが、自賠責保険の取り扱いにより過失相殺はされません

もっとも、自賠責保険の傷害による損害の限度額は120万円ですので、自賠責の基準で受け取れる金額は1,200,000円となります。

そして、治療費が優先して支払われることになりますので、受け取れる慰謝料は

1,200,000円−600,000円=600,000円

となります。

弁護士基準

弁護士基準ですと、慰謝料は上記の表のとおり、通院6か月の事故として1,160,000円となります。

そうすると、総額は1,760,000円となりますが、過失割合が60%あるので、

1,760,000円×60%=1,056,000円 が過失相殺され、弁護士基準で受け取れる金額は704,000円となります。

そして、治療費が優先して支払われることになりますので、受け取れる慰謝料は

704,000円−600,000円=104,000円

となります。

自賠責基準の方が受け取れる慰謝料が高い場合
自賠責基準 裁判基準
治療費 600,000 600,000
慰謝料 6月分 756,000 1,160,000
総額 1,356,000 1,760,000
過失相殺 0 1,056,000
限度額 1,200,000
病院へ支払われる金額 600,000 600,000
受け取れる慰謝料 600,000 104,000

※過失割合が60%の骨折事故を想定

お伝えしてきたとおり、歩行者が悪い場合でも、歩行者の過失が100%でなければ、歩行者は慰謝料を受け取ることができます。

そして、 歩行者が悪い場合には、自賠責基準の方が弁護士基準よりも受け取れる慰謝料が高額になる場合があります。

そのため、歩行者が悪い場合には、慰謝料をどの基準に基づいて請求するかを慎重に検討する必要があります。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

交通事故の歩行者は衝撃が体に直接加わることから、重傷となったり死亡する確率が高いため、慰謝料が多くなる傾向にあります。

また、通常は過失割合も低くなりますが、例外的に歩行者が悪いとされた場合には、過失割合の交渉や用いる慰謝料の基準の検討が必要になります。

弁護士基準で慰謝料を受け取るなど、適正な金額の損害賠償金を受け取りたい歩行者の方は、一度専門家である弁護士に相談してみて下さい。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 交通事故での歩行者は死亡の件数及び確率が最も高く、通常は過失割合の低い被害者になる
  • 交通事故で歩行者が悪いと判断される場合も例外的にある
  • 交通事故の歩行者の慰謝料の基準は変わらないが、重傷となったり死亡する確率が高いため、慰謝料が多くなる傾向にある

ことについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。

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また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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