前方不注意|違反点数や罰金・過失割合・原因と対策などを弁護士が回答

  • 前方不注意

この記事のポイント
  • 前方不注意で交通事故を起こした加害者は、運転免許の違反点数加算・罰金や懲役・被害の金銭賠償といった責任を負う
  • 追突事故を車の前方不注意で起こした際の過失割合は原則100%であり、歩行者の前方不注意に過失が認められることもある
  • 前方不注意の原因他のことに気を取られてしまうことにあり、対策運転に集中できる状況を作り出すこと

前方不注意が原因で発生する交通事故に関する情報を知りたい方はこの記事をご覧下さい。

author okano
岡野武志弁護士
交通事故と刑事事件を専門とするアトム法律事務所の代表弁護士。

香川県警察のtwitterアカウントでは、こんな投稿がされています。

前方不注意により歩行者を見落とさないよう注意を呼び掛けるものです。

前方不注意は交通事故発生の主な原因の一つであり、特に死亡事故の原因になることが多いのが特徴です。

「令和元年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」(警察庁)によると、前方不注意は死亡事故の

✔29.5%

を占める危険な行為であり、重い責任を負う可能性もあるため、車を運転する方は、十分な対策を取る必要があります。

前方不注意で事故を起こした場合の責任

前方不注意で事故を起こした場合の責任

運転免許の違反点数加算(行政責任)

車の運転免許には、交通事故や前方不注意などの交通違反につき、一定の違反点数が定められています。

この点数は、減点方式ではなく加点方式となっており、一定の点数に達すると運転免許の取消し・停止処分を受けることになります。

そして、前方不注意により追突事故を起こした場合の違反点数は、

  • 被害者の負傷の程度
  • 加害者の責任の程度

によって決まります。

具体的には以下の表のとおりです。

前方不注意による人身事故での違反点数
安全運転義務違反 基礎点数
2
負傷の程度 責任の程度 付加点数
死亡事故 重い 20
軽い 13
・後遺障害が残る
・治療期間3月以上
重い
軽い 9
治療期間30日以上3月未満 重い
軽い 6
治療期間15日以上30日未満 重い
軽い 4
治療期間15日未満 重い 3
軽い 2

前方不注意は、道路交通法第70条の安全運転義務に違反する行為の一つです。

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

前方不注意により死亡事故を起こしてしまった場合には、加害者の責任の程度により22点又は15点の違反点数が加算されます。

前方不注意により死亡事故を起こしてしまった場合は、過去の交通事故や交通違反にかかわらず、運転免許が取り消しになります。

前方不注意で物損事故を起こした場合の違反点数は?

交通事故のうち、人的被害を起こさない物損事故は、行政責任上は交通事故として扱われません

そのため、前方不注意により事故を起こしてしまったケースでも、物損事故であれば違反点数は加算されないことになります。

このように、前方不注意により事故を起こした場合の違反点数は、その事故が人身事故か物損事故かで大きな違いがあります。

ただし、物損事故であっても

  • 損壊したのが建造物の場合
  • 当て逃げをした場合

には違反点数が加算されることになります。

違反点数を加算されることがないよう、軽微な物損事故であっても必ず警察に連絡するようにしましょう。

罰金・懲役・禁錮の科刑(刑事責任)

そして、前方不注意の過失が著しい場合や死亡事故・被害者に重い後遺障害が残るような場合には、

罰金や懲役・禁錮といった刑罰

を科される刑事責任を問われる可能性があります。

自動車やバイクが前方不注意により人身事故を起こした場合は

  • 100万円以下の罰金
  • 7年以下の懲役・禁錮

の刑に問われる可能性があり、加害者が自転車の場合には

  • 100万円以下の罰金
  • 5年以下の懲役・禁錮

の刑に問われる可能性があります。

前方不注意による人身事故での刑事責任
加害者 自動車
バイク
自転車
罰金 100万円以下
懲役・禁錮 7年以下 5年以下
条文 自動車運転処罰法第5 刑法第211

前方不注意により死亡事故を起こしてしまった場合でも、

  • 過失割合が小さいことを主張する
  • 宥恕(加害者を許し、処罰を求めない)条項の入った示談をする

ことで不起訴処分となり、刑事責任を負わない可能性もあります。

より具体的に知りたい方は、刑事事件に詳しい弁護士に相談をすることをおすすめします。

交通事故被害の金銭賠償(民事責任)

さらに、前方不注意により交通事故を起こした加害者は、被害者に

✔交通事故被害の金銭賠償

をしなければいけないという民事責任を負うことになります。

通常は示談金という形で支払われることになります。

示談金相場については当サイトの「交通事故示談金の相場はいくら?弁護士に頼むと慰謝料の相場は上がる!?」の記事をご覧下さい。

前方不注意の過失割合を事例別に回答!

前方不注意の過失割合を事例別に回答!

前方不注意で追突事故を起こした事例

前方不注意は、車間距離保持義務(道路交通法第26条)違反と並び追突事故発生の大きな原因の一つです。

最近でも、ある俳優の前方不注意が原因で追突事故を起こした事例がニュースになりました。

俳優の(略)が(略)乗用車を運転中に追突事故を起こしていたことが11日、警視庁北沢署への取材で分かった。

(略)同署は(略)さんの前方不注意が原因とみて状況を調べている。

前方不注意が原因で追突事故を起こした場合の過失割合は、前方車に追突した後方車の過失が100%になるのが原則です。

このことは、前方車が停止中であっても走行中であっても変わりはありません。

ただし、以下のように、追突事故であっても、前方車に過失割合が認められる事例も存在します。

特に理由なく急ブレーキ

道路交通法では、危険を防止するためやむを得ない場合を除いて、急ブレーキをかけることを禁止しています。

車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

そのため、前方車が理由のない急ブレーキをかけた事例は、前方車にも過失割合が認められます。

ただし、具体的な基本過失割合は前方車・後方車が自動車かバイクかによって、以下の表のとおり違いがあります。

急ブレーキをかけた追突事故の過失割合
後方車\前方車 自動車 バイク
自動車 7030 2080
バイク 6040 7030

車線変更の際の追突事故

また、前方車が車線変更をした際の追突事故の事例でも、前方車に過失割合が認められます。

道路交通法上、「車両は、みだりにその進路を変更してはならない」(26条の2第1項)とされているからです。

ただし、具体的な基本過失割合は前方車・後方車が自動車かバイクかによって、以下の表のとおり違いがあります。

車線変更をした際の追突事故の過失割合
後方車\前方車 自動車 バイク
自動車 3070 4060
バイク 2080 3070

表からもわかるとおり、この事例では前方車の過失割合の方が原則として大きいことになります。

ただし、上記2つの事例のどちらも脇見運転など前方不注意の程度が著しい場合には

後方車の過失割合が10%程度加算

されるので、その点には注意する必要があります。

前方不注意で停止線・信号無視の事例

前方不注意は、一時不停止や信号無視といった道路交通法上の義務違反の原因にもなります。

車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(略)で一時停止しなければならない。

この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号(略)に従わなければならない。

では、一時不停止や信号無視を原因とする交通事故の過失割合は、どのようになっているのでしょうか?

一時停止規制のある交差点での直進車同士の衝突事故

この事例では

  • 自動車かバイクか
  • どちら側に一時停止規制があったか

により基本過失割合は異なります。

具体的には以下の表のとおりです。

一時停止規制のある交差点での直進車同士の衝突事故の過失割合
規制なし\規制あり 自動車 バイク
自動車 2080 3565
バイク 1585 2080

※同程度の速度の事例

ただし、脇見運転など前方不注意の程度が著しい場合には、

過失割合が10%程度加算

されるので、その点には注意する必要があります。

信号無視事例の過失割合

一方、赤信号無視で交差点に進入した際に発生した交通事故の過失割合は、相手側の信号が青の場合

✔自動車・バイクにかかわらず信号無視をした方が100%

になるのが原則です。

歩行者の前方不注意が認められる事例

車両だけではなく、歩行者の歩きスマホなどが原因で前方不注意となり、交通事故が発生する事例もあります。

この場合、当然歩行者であっても、過失割合が認められる可能性はありますが、歩行者は車両より過失割合を有利に扱われます。

例えば、先ほどの信号無視の事例でも、赤信号無視が歩行者の場合

✔基本過失割合は70%

に留まります。

車の運転者としては、赤信号を無視する歩行者まで予見すべき注意義務はありません。

もっとも、前方に注意を払っていれば、歩行者を簡単に認識できたはずであり、交通事故が起こってしまったということは

車両の側にも軽度の前方不注意などの安全運転義務違反があった

と通常考えられます。

そのため、車両側にも30%の基本過失割合が認められるということになります。

前方不注意による交通事故を防ぐには?

前方不注意による交通事故を防ぐには?

頻発する前方不注意による交通事故を防ぐには何らかの対策を取る必要があります。

もっとも、前方不注意が具体的にどういった運転行為を意味するかが分からなければ、対策の取りようがありません。

そこで、まずは前方不注意の定義についてお伝えしていきます。

前方不注意の定義|脇見運転との関係

冒頭でお伝えしたとおり、前方不注意は、道路交通法第70条の安全運転義務に違反する行為の一つになります。

そして、前方不注意は

  • 心理的・生理的な要因による内在的前方不注意
  • 視覚的な要因による外在的前方不注意

に区分されます。

つまり、

  • 目線は前方を向いているものの、集中せず、ぼんやりして運転したこと(漫然運転)が原因の場合が内在的前方不注意
  • 道路上の女性に目が行ったり、携帯電話を見たりして、目線が前方以外を向いていたことが原因の場合が外在的前方不注意

となり、脇見運転は、外在的前方不注意の代表的なものの一つという関係になります。

なお、内在的前方不注意には居眠りも含まれますが、居眠りはより責任の重い過労運転として扱われる可能性があります。

内在的・外在的前方不注意の原因は?

前方不注意の対策を取るためには、まずその原因を知っておく必要があります。

前方不注意の原因は、内在的なもの(漫然運転)と外在的なもの(脇見運転)とでやや違いがあります。

漫然運転の原因としては以下のようなものが考えられます。

  1. ① 運転中に考え事をしてしまう
  2. ② 睡眠不足や疲労が溜まっている
  3. ③ 同乗者との会話に夢中になる
  4. ④ 携帯電話の音に気を取られる
  5. ⑤ 単調な道路を長時間運転している

⑥運転への慣れ

一方、脇見運転の原因としては以下のようなものが考えられます。

  1. ① 携帯電話やカーナビの操作
  2. ② 風景などに気を取られる
  3. ③ 運転中に下に落ちたものを拾う

また、日経の記事には花粉症が前方不注意の原因となった交通事故のニュースが取り上げられています。

愛媛県今治市の国道で2017年4月、花粉症のくしゃみなどの症状で追突事故を起こし、3人を死傷させた50代の男性に松山地裁今治支部は18年2月、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

男性は花粉症の薬を服用していたが、運転中に目のかゆみや連続するくしゃみなどの症状が激化。前方不注意のまま対向車線にはみ出し、軽乗用車と正面衝突した。

このように、前方不注意の原因には様々なものが考えられます。

もっとも、前方不注意は、心理的・生理的な要因か視覚的な要因かの違いはあるものの、それぞれ

何か他のことに気を取られるのが主な原因

となっているということがいえます。

前方不注意を犯さないための対策は?

内在的前方不注意(漫然運転)防止の対策としては、以下のようなものが考えられます。

  • 音楽を聴く(主に①・②・⑤への対策)
  • 休憩や仮眠を取る(主に②への対策)
  • 白熱しそうな話題は避ける(主に③への対策)
  • 携帯電話の電源を切る(主に④への対策)
  • ガムを噛む(主に②・⑤への対策)
  • 漫然運転の危険性を認識する(主に⑥への対策)

一方、外在的前方不注意(脇見運転)防止の対策としては、以下のようなものが考えられます。

  • 見たいものがある場合は車を止めてから見る
  • 脇見運転の危険性を認識する
  • 助手席やダッシュボードの上をきれいにしておく(③への対策)

上記のような対策を取り、前方不注意による交通事故を起こさないように心掛けましょう!

前方不注意を防止するための対策は様々ですが、一言でいうと

運転に集中できる状況を作り出す

事が重要といえます。

前方不注意の事故を弁護士相談する方法

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最後に一言アドバイス

それでは、最後に、前方不注意が原因で生じる交通事故に関して、一言アドバイスをお願いします。

前方不注意で交通事故を起こしてしまうと、免許の違反点数だけでなく、罰金や賠償金の支払いなどの責任も負う可能性があります。

また、前方不注意の過失割合は必ずしも10対0とはかぎらず、事例によっては被害者に過失割合が認められることもあります。

前方不注意についての疑問やお困りごとは、まず弁護士相談をしてみることをおすすめします。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 前方不注意で事故を起こした場合の責任
  • 前方不注意の過失割合
  • 前方不注意による交通事故の原因と発生防止の対策

などについて理解を深めていただけたのではないかと思います。

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また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

前方不注意で交通事故を起こした時のQ&A

前方不注意で事故を起こした場合の責任は?

前方不注意で交通事故を起こした加害者は、運転免許の違反点数加算(行政責任)・罰金や懲役(刑事責任)・被害の金銭賠償(民事責任)といった責任を負うことになります。運転中の前方不注意は、死亡事故の原因になることも多く、重い責任を追う可能性が非常に高いです。 行政・刑事・民事責任の具体的な内容

前方不注意による事故の過失割合は?

前方不注意が原因で追突事故を起こした場合の過失割合は、前方車に追突した後方車の過失が100%になるのが原則です。しかし、理由もなく前方車が急ブレーキをかけたり、無理な車線変更による事故の原因は様々で、事例によって過失割合は変動します。歩行者の前方不注意が認められる場合、歩行者の基本過失割合は70%に留まり、車両側にも軽度の安全運転義務違反があったことになり、30%の基本過失割合が認められます。 前方不注意の過失割合を事例別に紹介

前方不注意による事故を防止するには?

一言で言うと、運転に集中できる環境を作り出すことです。前方不注意は、心理的・生理的な要因か視覚的な要因かの違いはあるものの、それぞれ何か他のことに気を取られる事が主な原因となっています。事故を起こさないためには、リラックスすることにつとめたり、自身の運転技術を過信しないことです。そしてスマホやカーナビなどに気を取られて脇見運転しないように気をつけましょう。 前方不注意による事故の防止策

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