交通事故の過失相殺とは?計算方法や判例タイムズの基準を事例を基にご紹介!

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弁護士事務所の掲載順と弁護士の力量とは無関係です。相性を考慮して、ご自身に合った弁護士をお探しください。

交通事故の過失相殺とは?計算方法や判例タイムズの基準を事例を基にご紹介!

交通事故過失相殺とはどういうものなの?」

「交通事故の過失相殺はどう計算されるの?」

「交通事故の過失相殺と判例はどういう関係にあるの?」

交通事故で任意保険に損害賠償請求をした際、任意保険から過失相殺を主張されたものの、その意味が詳しくわからない方もいるかもしれません。

そこで、このページでは、

交通事故の過失相殺とは何か

交通事故の過失相殺の計算方法

交通事故の過失相殺における判例の意味合い

についてご紹介していきたいと思います!

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

交通事故の過失相殺は、被害者が最終的に受け取れる損害賠償額の計算において重要な役割を果たすことになります。

そのため、賠償額の見込みを立てたり、受け取れる賠償金が不当に少なくなったりするのを防ぐために、計算方法をしっかりと理解する必要があります。

また、交通事故の過失相殺において、判例が重要な意味合いを持つこともあわせて理解しておく必要があります。

交通事故の過失相殺についてしっかりわかってもらえるよう、できるだけわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

交通事故過失相殺というものがあるということは何となくご存知の方も多いかもしれません。

もっとも、交通事故の過失相殺とは何かを正確にご存知という方はそれほど多くないのではないでしょうか?

そこで、まずは、交通事故の過失相殺とは何かについてお伝えしていきたいと思います!

交通事故の過失相殺とは?

交通事故の過失相殺とは?

過失相殺は公平な損害賠償の金額の計算に必要

交通事故という不法行為により被害者に損害を与えた加害者は、その交通事故により生じた損害を賠償する責任を負います。

(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

この不法行為制度の趣旨は損害の公平な分担にあると考えられています。

そして、交通事故の原因や損害の発生につき、被害者側にも過失がある場合にまで、加害者に全損害賠償責任を負わすのは、上記の趣旨に反します。

そこで、民法は、不法行為に基づく損害賠償額の算定につき、被害者の過失を考慮するという過失相殺を行い計算する方法を認めています。

(損害賠償の方法及び過失相殺)

2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

つまり、交通事故の過失相殺は、加害者が被害者に支払うべき公平な損害賠償の金額を計算するために必要な制度といえます。

過失相殺における被害者の過失

そして、交通事故過失相殺における被害者の過失の意義について、判例では以下のような判断がなされています。

民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎない

(略)

被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しない

つまり、損害賠償の金額の計算にあたり、公平の理念に基づいて減額することが妥当といえるような不注意で足りるとしています。

そして、判例で述べられている「事理を弁識するに足る知能」とは、通常の交通事故の場合、例えば

道路でサッカーをすると車にひかれる危険がある

程度の認識を持っていれば足りると考えられています。

過失相殺に備えて健康保険を利用すべき場合も

この交通事故過失相殺は、損害賠償額全体に対して一括して行われます。

つまり、慰謝料だけではなく、治療費なども過失相殺の対象となります。

交通事故の過失相殺が治療費に対しても行われるということは、過失相殺により減額された治療費は被害者の自己負担になるということです。

そのため、交通事故において、被害者にも過失がある場合には、過失相殺に備えて健康保険を利用すべきといえます。

健康保険を利用することにより、自己負担割合は3割で済み、治療費自体も自由診療の場合よりも安くなることがほとんどだからです。

自由診療と健康保険診療との比較
自由診療 健康保険診療
自己負担割合 10 3
1点単価 自由※
(平均20円程度)
10

※自賠責保険に診療報酬基準はあるが拘束力はない

その結果、交通事故で最終的に受け取れる損害賠償額も、過失相殺される場合には、健康保険を使用したほうが高額になるといえます。

詳しくは、後ほど計算方法のところでお伝えしたいと思います。

なお、交通事故における健康保険の利用については、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!

休業補償や治療費は労災では過失相殺されない

また、勤務中や通勤中の交通事故の場合、労災が使えますが、被害者に過失がある場合でも、労災の給付金に対し過失相殺は行われません。

労災の保険給付は、労働者の迅速かつ公正な保護を目的としたものであり、不法行為に基づく損害賠償とは異なるからです。

労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い(略)ことを目的とする。

交通事故の原因や損害の発生につき、被害者側にも過失がある場合でも、労災では過失相殺されず、治療費が全額支給されることになります。

また、労災から支給される休業補償についても、同様に過失相殺されず、支給されることになります。

交通事故で労災から給付される休業補償給付は、給付基礎日額の60%(加えて給付基礎日額の20%の休業特別支給金)になります。

そのため、日額の100%を請求できる交通事故の休業損害の方が本来は高額になります。

しかし、お伝えのとおり、休業補償は過失相殺されない結果、休業損害の過失相殺後の金額よりも高額になる場合があります。

つまり、交通事故でも労災からの給付金は過失相殺されないため、被害者に過失がある場合には特に労災を利用するメリットが大きいといえます。

なお、交通事故における休業損害と休業補償については、以下の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってみて下さい!

交通事故の過失相殺の立証責任

交通事故のような不法行為に基づく損害賠償における過失相殺につき、判例では、当事者の主張がなくとも職権で行えるとしています。

不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり、(略)民法722条の規定(略)によると、被害者の過失は賠償額の範囲に影響を及ぼすべき事実であるから、裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもつてこれをしんしゃくすることができると解すべきであつて、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しない

(以下略)

ただし、上記判例にも

「訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合」

とあるとおり、過失を基礎づける具体的な事実については、当事者に立証責任があるといえます。

加害者が支払うべき損害賠償額を減額させる効果を持つ過失相殺は、加害者に有利な事実なので、基本的には加害者が立証責任を負います。

ただし、後ほど詳しくお伝えしますが、過失相殺には一定の基準が設けられており、その基準にはさらに修正要素が定められています。

この修正要素には、加害者だけでなく被害者に有利に働く修正要素も存在します。

そして、被害者に有利に働く修正要素に関する事実については、被害者が事実上の立証責任を負うことになります。

交通事故の過失相殺とは公平な損害賠償額を計算することを目的とした制度といえます。

そして、過失相殺が行われる結果、被害者が最終的に受け取れる損害賠償額が減額するところ、減額幅を抑えるには、健康保険や労災の利用が必要です。

また、交通事故の過失相殺を基礎づける事実の立証責任は、事実上被害者がその一部を負うことになる点にも注意が必要です。

交通事故の過失相殺とは
目的 公平な損害賠償額の計算
効果 被害者の受取損害賠償額の減額
立証責任 基礎づける事実につき原則加害者
(一部修正要素の事実につき事実上被害者)

交通事故の過失相殺の計算方法をご紹介!

交通事故の過失相殺の計算方法をご紹介!

交通事故の過失相殺の計算の例

交通事故における過失相殺とは何かを確認したところで、続いては、計算方法をお伝えしていきたいと思います。

交通事故の過失相殺の計算方法は簡単に言うと以下のとおりです。

交通事故の過失相殺の計算方法

損害賠償総額×(1-損害賠償請求者の過失相殺率)

損害賠償総額から、損害賠償請求者の過失相殺率を差し引いて損害賠償額を計算すれば、損害の公平な分担という目的を果たせるからです。

交通事故の過失相殺の計算方法だけをお伝えしても、イメージが掴みにくいかと思いますので、ここからは事例を交えてご説明したいと思います。

例えば、損害賠償額が治療費休業損害慰謝料などの総額で100万円になったとします。

このとき、完全な追突事故などで被害者にまったく過失がない場合であれば、損害賠償総額の100万円をそのまま受け取れます。

これに対し、被害者の過失相殺率が10%なら、被害者が受け取れる損害賠償の金額は、

100万円×(1-0.1)=90万円

となります。

さらに、被害者の過失相殺率が30%なら、被害者が受け取れる損害賠償の金額は、

100万円×(1-0.3)=70万円

にまで減額されてしまいます。

損害賠償総額と過失相殺の関係性

そして、損害賠償総額が高額になるほど、過失相殺が及ぼす影響も強くなるといえます。

例えば、損害賠償総額が10万円の事例と損害賠償総額が1億円の事例とでは、過失相殺により減額される金額は以下のように違います。

損害賠償総額と過失相殺の関係性
損害賠償総額 10万円 1億円
過失相殺率10 1万円の減額 1000万円の減額
過失相殺率30 3万円の減額 3000万円の減額

上記表のとおり、損害賠償総額が10万円の場合、被害者の過失相殺率が10%なら、受け取れる金額の減額は1万円になります。

もちろん、1万円でも多く受け取りたいとは思いますが、1万円くらいであれば、諦めがつくという方も多いかと思います。

しかし、損害賠償総額が1億円の場合、同じ被害者の過失相殺率が10%の場合でも、受け取れる金額の減額は1000万円になります。

1000万円も受け取れる金額が減額されることについては、中々諦めがつかないという方が多いかと思います。

また、損害賠償総額が10万円の場合、被害者の過失相殺率が20%違うことによる減額の差は3万円-1万円=2万円になります。

2万円程度であれば、争って受け取りまでに時間が掛かるのであれば、諦めて早期に解決を図るという判断をされる方もいらっしゃるかと思います。

しかし、損害賠償総額が1億円の場合、被害者の過失相殺率が20%違うことによる減額の差は3000万円-1000万円=2000万円になります。

減額幅が2000万円も違うのであれば、たとえ争いになり受け取りまでに時間が掛かるとしても、諦めずに争われる方が多いかと思います。

損害賠償金より過失相殺が重要!?

交通事故で最終的に受け取れる損害賠償の金額の計算において主に争いになるのは、損害賠償の金額と過失相殺率といえます。

そして、最終的に受け取れる賠償金の計算においては、損害賠償の金額自体よりも過失相殺率の方が重要になることも多いといえます。

例えば、被害者が加害者に対し、損害賠償総額500万円を請求している事例において

① 休業損害50万円の相当因果関係

② 被害者の過失相殺率(被害者は20%主張・加害者は30%主張)

の2点が主な争点だったとします。

そして、上記の2点のどちらか一つだけ被害者の主張が認められた場合の、最終的に受け取れる賠償金は以下の表のとおりになります。

被害者の主張の一方だけが認められた場合の賠償金
①だけが認められた場合
500万円×(10.3)=350万円
②だけが認められた場合
450万円×(10.2)=360万円

上記の事例では、50万円の休業損害よりも、過失相殺率を10%有利に認められた方が、被害者の受け取れる賠償金は10万円高くなります。

過失相殺により被害者が支払い!?

交通事故では、被害者だけでなく、加害者にも損害が発生する場合もあります。

その場合、交通事故の被害者にも一定の過失があれば、加害者であっても、被害者に対し、過失相殺後の損害賠償の金額を請求できます。

その際、本来であれば、被害者・加害者が過失相殺後の損害賠償金を互いに支払うことになります。

もっとも、実務上は、被害者が受け取るべき損害賠償金から被害者が支払うべき損害賠償金を相殺して(差し引いて)支払われることが多いです。

具体的なとして、当事者双方に物損が発生した交通事故で、

過失割合はA90:B10

Aの損害額100万円

Bの損害額150万円

の場合、下記表のとおり、被害者Bが最終的に受け取れる金額は125万円になります。

損害賠償で双方過失相殺する事例
被害者Bが受け取るべき賠償金
150万円×(10.1)=135万円
加害者Aが受け取るべき賠償金
100万円×(10.9)=10万円
最終的な賠償
Bが135万円-10万円=125万円受取

しかし、物損の過失相殺を双方行う際、加害者が高級車であったような場合、被害者が逆に支払わなければならないような場合もあります。

具体的なとして、当事者双方に物損が発生した交通事故で、

過失割合はA90:B10

Aは高級車で損害額300万円

Bは中古の軽自動車で損害額20万円

の場合、下記表のとおり、被害者であるはずのBがAに対し12万円を支払わなければならなくなります。

被害者が最終的に支払をする事例
被害者Bが受け取るべき賠償金
20万円×(10.1)=18万円
加害者Aが受け取るべき賠償金
300万円×(10.9)=30万円
最終的な賠償
Bが30万円-18万円=12万円支払

健康保険を使った場合の計算方法

先ほど、交通事故で最終的に受け取れる損害賠償額も、過失相殺される場合には、健康保険を使った方が高額になるとお伝えしました。

そこで、具体的に

過失相殺率が10%の骨折事故

6か月通院し、診療報酬点数は月10,000点

という事例をもとに、最終的に受け取れる損害賠償額が、過失相殺される場合に、健康保険を使用したほうが高額になるという計算をしたいと思います。

自由診療の場合

治療費:10,000点×20円×6ヶ月=1,200,000円

慰謝料:いわゆる裁判基準(赤本別表Ⅰの基準)で、1,160,000円

となります。

そうすると、損害賠償総額は2,360,000円となりますが、2,360,000円×10%=236,000円が過失相殺されます。

さらに、治療費が優先して支払われることになりますので、受け取れる慰謝料は、

2,360,000円−236,000円−1,200,000円=824,000円

となります。

健康保険を使用した場合

治療費:10,000点×10円×6ヶ月×3割=180,000円

慰謝料:いわゆる裁判基準(赤本別表Ⅰの基準)で、1,160,000円

となります。

そうすると、総額は1,340,000円となりますが、1,340,000円×10%=134,000円が過失相殺されます。

さらに、治療費が優先して支払われることになりますので、受け取れる慰謝料は、

1,340,000円−134,000円−180,000円=1,026,000円

となります。

健康保険を使用した方が受け取れる慰謝料が高い場合
自由診療 健康保険使用
治療費 1,200,000 180,000
慰謝料6ヶ月分 1,160,000 1,160,000
総額 2,360,000 1,340,000
過失相殺 336,000 134,000
病院へ支払われる金額 1,200,000 180,000
受け取れる慰謝料 824,000 1,026,000

※過失相殺率が10%の骨折事故

交通事故の被害者であっても、過失相殺される分の治療費は自己負担となるため、過失相殺される場合、基本的には健康保険を使った方がいいでしょう。

労災の休業補償と休業損害の比較

また、先ほどは労災休業補償過失相殺されない結果、休業損害の過失相殺後の金額よりも高額になる場合があることもお伝えしました。

具体的な例としては、

被害者の収入が日額1万円

被害者の過失相殺率が45%

の場合、労災の休業補償としては、過失相殺されないため

1万円×60%=6000円(加えて休業特別支給金として1万円×20%=2000円)

が日額として受け取れます。

一方、休業損害は、過失相殺されるため、

1万円×100%×(1-0.45)=5500円

しか日額として受け取れないことになります。

自賠責保険と任意保険の過失相殺の計算の違い

ここまでお伝えしてきたのは、交通事故任意保険や裁判における過失相殺計算方法になります。

実は、交通事故の自賠責保険においては、上記の過失相殺の計算方法とは異なる計算方法が用いられています。

具体的には、

過失が7割未満であれば過失相殺をしない

過失が7割以上ある場合でも、減額割合を実際の過失割合より低い割合で過失相殺する

という計算方法が用いられています。

これは、過失割合が大きくとも、損害が発生している以上、被害者として最低限は保障しようとする自賠責保険の政策的判断に基づくものです。

より具体的な減額割合は以下の表のとおりになります。

自賠責保険における過失相殺の計算
被害者の過失割合 減額割合
後遺障害又は死亡 傷害
7割未満 減額なし 減額なし
7割以上8割未満 2割減額 2割減額
8割以上9割未満 3割減額
9割以上10割未満 5割減額

自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障するための保険のため、損害賠償額は任意保険や裁判で認められる金額よりも低額になることが通常です。

しかし、上記の自賠責保険における過失相殺の計算方法の特殊性により、自賠責の過失相殺後の損害賠償金の方が高額になる場合があります。

例えば、被害者が死亡した場合、自賠責保険から支払われる損害賠償金は3000万円が上限になります。

一方、死亡した場合に任意保険や裁判で認められる損害賠償額は3000万円を超えることが一般的です。

しかし、仮に死亡した場合に任意保険や裁判で認められる損害賠償総額が5000万円であったとしても、被害者の過失相殺率が90%の場合、

5000万円×(1-0.9)=500万円

しか最終的に受け取ることができません。

一方、自賠責保険では、被害者の過失相殺率が90%であっても、減額割合は50%として計算される結果

3000万円×(1-0.5)=1500万円

を受け取ることができ、任意保険や裁判に請求した場合に最終的に受け取れる損害賠償額よりも高額になります。

過失相殺の計算|同乗者の場合

交通事故における過失相殺計算は、事故車両の同乗者に損害が発生した場合にも問題になることがあります。

交通事故の同乗者は、通常、交通事故や損害の発生・拡大に関与していないため、過失相殺されないのが原則です。

しかし、交通事故では、損害賠償義務者から、

同乗者と運転者との人的関係

同乗の経緯や態様

を理由に、過失相殺の主張がされることがあります。

そこで、ここからは、交通事故の過失相殺の計算が同乗者に対しても行われる場合についてお伝えしていきたいと思います。

被害者側の過失

交通事故の過失相殺の計算が同乗者に対しても行われる場合として、一番多いのがいわゆる「被害者側の過失」が認められる場合です。

「被害者側の過失」とは、判例上、以下のように定義されています。

民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべき

(略)

被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいう

(以下略)

「被害者側の過失」を被害者自身の過失と同様に過失相殺を認めるのは

加害者がいったん被害者に損害賠償全額を支払った後に被害者側に求償するというのは煩雑

被害者が得た損害賠償金を実質的に被害者側の人間が使えることになるのは、損害の公平な分担の理念に反する

といった理由によるものと考えられています。

具体的に、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある」と認められる被害者側のとしては

監督義務者である父母

配偶者・内縁配偶者

雇用関係にある被用者

などが考えられます。

経済的な一体性が認められるかどうかが重要な判断の基準になっているものと考えられます。

好意(無償)同乗減額

好意(無償)同乗減額とは、一般的に以下のように定義されています。

好意(無償)同乗減額

同乗者が自らの意思(無償)で同乗していた場合に、同乗の事実又はその経緯、態様に即し、公平の見地から当該同乗者に対する賠償額を減額する考え方

ただし、現在では、単に同乗者が自らの意思(無償)で同乗していたという事実があるだけでは過失相殺は基本的に認められていません。

好意(無償)同乗者に対する過失相殺の計算が認められるためには、さらに

危険な運転状態を容認した上で同乗した

同乗者が危険な運転行為に関与・助長した

ような事情が必要であると考えられています。

より具体的なとしては

運転者の飲酒・過労ないし睡眠不足・無免許又は未熟な運転技術を容認した上での同乗

原動機付自転車への同乗や窓枠から上半身を出した同乗(いわゆる箱乗り)

ドリフトのような危険な運転行為をやってみようと唆す

などが考えられます。

過失相殺の計算方法|共同不法行為の場合

交通事故過失相殺計算は、複数の加害者が存在する共同不法行為の場合には、計算方法に注意が必要となります。

交通事故の共同不法行為は大きく

① 自動車同士が衝突して同乗者または第三者(歩行者など)に損害を負わせるような各加害行為が同一場所で同時に行われる「同時事故」

② いわゆる玉突き事故のように、各加害行為が時間的場所的に近接して行われる「同時類似事故」

③ 交通事故の治療中に再び交通事故にあうなど、各加害行為が時間的場所的に離れて行われる「純粋異時事故」

に分けられます。

そして、①の類型の共同不法行為の過失相殺につき、判例は以下のように判断しています。

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う

つまり、この場合の過失相殺の計算は、まず、被害者と複数の加害者全員で一つの過失割合を決定することになります。

その上で、被害者は、損害賠償総額から自身の過失相殺率を差し引いた金額を各加害者どちらにも請求することができます。

また、②の類型の共同不法行為の過失相殺は、争いがあるものの、実務上は①の類型と同じ計算方法を取ることが多いようです。

一方、③の類型の共同不法行為の過失相殺は、被害者と複数の加害者全員で一つの過失割合を決定することができません

そのため、被害者と各加害者ごとにそれぞれ過失相殺率を決定することになります。

訴状における過失相殺の計算方法の注意点は?

交通事故の裁判を起こす際には訴状を記載する必要があります。

そして、その訴状における過失相殺計算方法を間違えてしまうと、適正な過失相殺後の損害賠償の金額を計算できません。

そこで、ここからは交通事故の訴状における過失相殺の計算方法についてお伝えしていきたいと思います。

過失相殺と損益相殺控除との順序

まず、交通事故損害賠償請求額を計算するには、損益相殺による控除を行う必要があります。

交通事故の損益相殺とは、以下のように定義することができます。

交通事故の損益相殺

交通事故の被害者が、交通事故を原因として受領した一定の利益の額を損害賠償から控除すること

いわゆる被害者の損害賠償金の二重取りを防ぐために、損益相殺は必要となります。

損害賠償金の二重取りを防ぐという目的から、損益相殺されるのは、損害の填補としての性質を持つ利益に限られます。

を挙げると、自賠責保険金任意保険金労災保険金などは損益相殺の対象となります。

ただし、労災の休業補償特別支給金は損益相殺されない点には注意が必要です。

一方で、搭乗者傷害保険金、自損事故保険金、生命保険金などは、損害の填補としての性質を持つものではないため、損益相殺の対象外とされます。

損益相殺の当否
控除の対象となるもの
・加害者による内払金(既払い金)
・自賠責保険金
・任意保険金
・労災保険金(特別支給金等除く)
・国民年金・厚生年金
控除の対象とならないもの
・加害者が支払った見舞金・香典
。労災の特別支給金等
・搭乗者傷害保険金
・自損事故保険金
・生命保険金

そして、交通事故の訴状において、過失相殺と損益相殺の両方を記載する場合には、その順序に注意する必要があります。

同じ損害賠償総額、過失相殺率及び損益相殺額でも以下の表のとおり、順序が違うと損害賠償請求額が変わってきてしまうからです。

過失相殺率と損益相殺の順序による金額の違い
事例
・損害賠償総額:1000万円
・過失相殺率:20
・損益相殺額:500万円
過失相殺を先にした場合
1000万円×(10.2)-500万円=300万円
過失相殺を後にした場合
1000万円-500万円)×(10.2)=400万円

上記表のとおり、過失相殺が後の順序の方が被害者にとって有利ですが、実務上は、過失相殺が先の順序で計算されることが多いようです。

少なくとも、加害者の内払金、自賠責保険金、任意保険金、労災保険金については、過失相殺が先の順序になります。

つまり、損害賠償総額に対し、過失相殺を行い、過失相殺後の金額から損益相殺控除することにより、請求すべき損害額を計算することができます。

そして、上記の計算を行うためには、訴状に

すべての損害と全ての既払額を記載

する必要があります。

損益相殺され、請求できないからといって既払額を訴状に記載しないと、正確な請求すべき損害額を計算できないので、その点注意が必要です。

損益相殺は損害項目の制限がある

また、損益相殺控除は、損害賠償項目による制限がある点にも注意が必要です。

を挙げれば、自賠責保険金は人損にのみ損益相殺控除され、物損からは損益相殺控除されません。

また、労災保険金は複数の給付がありますが、それぞれの給付の趣旨から損益相殺控除することができる損害賠償の項目に制限があります。

損害賠償による項目による制限を意識せずに、損益相殺控除してしまうと、本来損害賠償できる金額に足りない訴状の請求額になってしまいます。

この損害賠償項目の制限の問題は、過失相殺がされ、かつ労災保険金の損益相殺控除がされる場合に現れることが多いといえます。

この場合の計算方法順序は以下のようになります。

① 労災保険の損益相殺控除がされない慰謝料も含み、損害賠償項目ごとの損害額を計算する

② 各損害賠償項目ごとに過失相殺による減額の計算をする

③ 各損害賠償項目ごとの過失相殺後の金額から、損害項目ごとに対応する労災保険金を損益相殺控除する

④ 労災保険金を損益相殺控除後の金額を合計し、その金額から、自賠責保険金や任意保険金などの既払金を損益相殺控除する

過失相殺・損益相殺と弁護士費用

交通事故の裁判では、弁護士に依頼した場合の弁護士費用の一部を相手方に請求することができます。

もっとも、裁判で認められる弁護士費用としては、最終的な損害賠償認容額の10%程度であることが多いです。

そのため、訴状記載の段階で、過失相殺及び損益相殺計算をした後の金額の10%を弁護士費用として請求するのが望ましいです。

もちろん、過失相殺や損益相殺前の損害賠償総額を基準に弁護士費用を請求すること自体は自由です。

ただし、裁判の印紙代は弁護士費用を含む請求額を基準に定められるところ、印紙代が余計に掛かる結果になってしまう可能性が高いと考えられます。

交通事故の過失相殺の計算は、自賠責保険の計算方法が違ったり、損益相殺との順序に気を付ける必要があるなど非常に複雑です。

しかし、交通事故の過失相殺は、正確に計算しないと、損害賠償額の見通しが狂ったり、損害賠償の請求漏れを起こしたりする可能性があります。

交通事故の過失相殺の計算に疑問や不安がある場合には、そのままにせず、弁護士に相談するなどして、しっかり解決しておきましょう。

交通事故の過失相殺の判例タイムズの基準

交通事故の過失相殺の判例タイムズの基準

交通事故の過失相殺は過去の判例を基準に行う

交通事故における過失相殺計算方法についてはお分かりいただけたのではないかと思います。

しかし、実際に過失相殺の計算を行うには、過失相殺率がどれくらいかを判断する必要があります。

この点、過失相殺率については、警察が判断するものと思われている方もいらっしゃるようです。

しかし、交通事故の過失相殺率の認定には、警察は関与しないことになっています。

交通事故の過失相殺は、民事上の公平な損害賠償額を計算するために行われるところ、警察は民事上の問題には介入しない(民事不介入)からです。

ただし、交通事故の過失相殺率は、通常、警察が行う実況見分調書に記載された事故態様を基に認定されることになります。

その意味では、交通事故の過失相殺率の認定にあたって、警察が全く無関係であるとはいえません。

そのため、交通事故の過失相殺率の認定において、警察の実況見分調書に事故の正確な状況や自分の言い分を記載してもらうことが重要といえます。

交通事故の過失相殺は、民事上の公平な損害賠償額の計算のために行われるもののため、最終的に判断するのは民事事件の裁判官になります。

そして、本来であれば、交通事故の過失相殺は、個々の交通事故の事情に即して、個々の裁判官がその都度決定することになります。

しかし、個々の裁判官の自由な判断ですべて一から過失相殺を判断するとなると

裁判が長期化し、迅速な解決が図れない

同一類型の事故でも、裁判官により過失相殺率が大きく変わる可能性があり不公平が生じるおそれがある

という問題点があります。

そこで、交通事故の過失相殺は、迅速・公平に判断するため、過去の判例から作成された一定の基準をもとに、実務上行われています。

交通事故の過失相殺率基準は判例タイムズ掲載

その、交通事故過失相殺についての過去の判例から作成された一定の基準

別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」

という書籍に掲載されています。

こちらの書籍には、交通事故の場所・主体・状況といった事故類型に応じた基本的な過失相殺率が掲載されています。

さらに、その事故類型ごとにできるだけ具体化した修正要素に一定の数値を与えることにより、迅速かつ公平な判断を行えるようにしています。

裁判だけではなく、任意保険会社との過失相殺の示談交渉も、こちらの基準をベースに行われています。

こちらの基準は、法改正や社会情勢の変化に応じて、順次改訂が行われています。

一点注意が必要なのは、こちらの書籍に掲載されているのは、過失相殺「率」であるということです。

例えば、歩行者と車両との事故類型の事故につき、この書籍では、車両の過失は示されず、歩行者の過失相殺率だけが掲載されています。

仮に、歩行者の過失相殺率が10%と記載されていた場合、歩行者が損害賠償請求できる金額は、過失相殺により10%減額されることになります。

しかし、車両にも物損が生じた場合に、歩行者が10%の損害賠償責任を負うことまでも定めているわけではないということです。

このように、判例タイムズ掲載の過失相殺率と、損害賠償責任を負う過失割合は必ずしも一致しないという点には注意が必要です。

過失相殺の判例タイムズの基準|場所別の基準

交通事故過失相殺判例タイムズの基準は、交通事故の場所・主体・状況等の事故類型に応じ、過失相殺率が定められています。

まず、交通事故の過失相殺率の認定基準は、道路交通法に基づく優先関係を前提として作成されていると考えられています。

その上で、具体的に公平かつ妥当な結論を導き出すため、様々な事情を考慮した上で、具体的な過失相殺率が基準として定められています。

そこで、ここからは、具体的な場所・主体・状況などをにあげて、過失相殺の基準をお伝えしていきたいと思います。

まずは、場所別の基準についてお伝えしていきたいと思います。

過失相殺率の基準|交差点の場合

まず、道路交通法では、交通整理の行なわれていない交差点において、左方優先を定めています。

車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、(略)当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。

一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両(以下略)

そのため、交通整理の行なわれていない交差点における同程度の速度の直進四輪車同士の出合い頭の衝突事故の過失相殺率は

左方車40:右方車60

という基準が定められています。

ただし、上記の基準は、同幅員の交差点の場合の基準になっています。

道路交通法では、交差道路が、優先道路や幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害禁止を定めています。

車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、(略)交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

また、道路交通法は、交差道路に一時停止の規制があるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害禁止を定めています。

車両等は、交通整理が行なわれていない交差点(略)において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、(略)交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

そのため、上記の場合には、右方・左方を問わずに、車両等の進行妨害禁止が定められている方の過失相殺率が高く認定されています。

このように、同じ交差点という場所のくくりの中でも、その交差点の場所の規制に応じて、過失相殺率は変わってきます。

具体的な基本的過失相殺率は以下の表のとおりです。

交通整理の行なわれていない交差点における同程度の速度の直進四輪車同士の出合い頭の衝突事故の過失相殺率
交差点の場所(規制) Aの過失相殺率 Bの過失相殺率
同幅員・A左方・B右方 40 60
A広路車・B狭路車 30 70
A一時停止規制なし・B一時停止規制あり 20 80
A優先道路車・B劣後道路車 10 90

過失相殺の交差点と駐車場の違い

交通事故過失相殺率の基準は、同じ事故状況でも、場所によって違いが生じる場合があります。

を挙げると、交通整理の行なわれていない交差点における同程度の速度の直進四輪車同士の出合い頭の衝突事故の過失相殺率は

左方車40:右方車60

という基準が定められていると先ほどお伝えしました。

しかし、駐車場における道路の交差部分の同程度の速度の直進四輪車同士の出合い頭の衝突事故の過失相殺率は右方・左方を問わず50%です。

駐車場内の道路では、駐車区画の入退出のため、様々な動きが想定されるため、右方左方を問わず等しく注意義務が課されることになるからです。

このように、駐車場という場所においては、左方優先という原則が必ずしも妥当しない点に注意する必要があります。

交通整理の行なわれていない交差部分での同程度の速度の直進四輪車同士の出合い頭の衝突事故の過失相殺率
場所 左方車 右方車
交差点 40 60
駐車場 50 50

過失相殺率の基準|駐車場の場合

また、交通事故過失相殺につき、駐車場では、通常の道路と異なり、駐車区画を入退出する車両が存在するという特殊性があります。

そして、判例タイムズ掲載の基準では、駐車区画退出車と進入車とで、過失相殺率を以下の表のように区別しています。

駐車場の通路進行車と駐車区画車との過失相殺率
駐車区画車の状況 通路進行車 駐車区画車
退出時 30 70
進入時 80 20

駐車区画退出車は、通路進入前の段階では、停止しており、通路進行車よりも容易に安全確認し、衝突回避できるため、高い過失相殺率となっています。

一方、駐車場は駐車のための施設であり、駐車区画への進入は、駐車場の設置目的に沿った行動のため、優先度が高く、低い過失相殺率となっています。

このように、同じ駐車区画でも進入時か退出時かで大きく過失相殺率が異なる点には注意が必要です。

過失相殺の判例タイムズの基準|主体別の基準

続いては、交通事故主体に着目した過失相殺率の判例タイムズ基準事例を交えてご紹介したいと思います。

優者の危険負担

交通事故過失相殺率の認定基準は、「優者の危険負担」という考え方も考慮して作成されています。

優者の危険負担

交通事故により、大きな結果を発生させるおそれの高い者は、その分高度の注意義務が課せられるという考え方

交通事故においては

四輪車>単車>自転車>歩行者

の順序で、過失相殺率が高く認定される傾向にあります。

歩行者の過失相殺率が一番低いことは、歩行者は他の主体と異なり、道路交通法の規制を受けないことなどから説明がつきます。

しかし、その他の主体は「車両」として道路交通法の規制を等しく受けるため、道路交通法に基づく優先関係では過失相殺率の差を説明できません。

しかし、四輪車と自転車との事故では、生じる結果に大きな違いが出る可能性が高いにもかかわらず、同様に扱うとなると公平な結論になりません。

そこで、上記の「優者の危険負担」という考え方も考慮し、公平な結論が導き出せるよう、過失相殺率の基準が定められています。

を挙げると、同じ

交通整理の行なわれていない交差点における同程度の速度の直進車両同士の出合い頭の衝突事故

でも、右方四輪車の相手方が四輪車か単車か自転車かにより、過失相殺率は以下の表のような違いがあります。

交通整理の行なわれていない交差点における同程度の速度の直進車同士の出合い頭の衝突事故の過失相殺率
左方車の主体 左方車 右方四輪車
四輪車 40 60
単車 30 70
自転車 20 80

幼児等要保護者の過失相殺の修正

さらに、交通事故では幼児、児童、高齢者、身体障害者など、社会的に保護すべき要請が高い者の過失相殺率を有利に修正しています。

上記の者は、通常よりも車の接近に気付かず横断したりしてしまう可能性が高いため、車両運転側がそのことを認識・予見して運転すべきとされます。

このように、同じ歩行者という主体であっても、その属性に応じてさらに細かく過失相殺率の基準が設けられています。

自転車同士の交通事故の過失相殺

お伝えしてきたとおり、交通事故過失相殺率認定基準は基本的に判例タイムズに掲載されています。

しかし、自転車同士の交通事故の過失相殺率の認定基準は、別冊判例タイムズには掲載されていません。

もっとも、日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会が、試案ではありますが、自転車同士の事故の過失相殺基準を公開しています。

かかる基準では、車両同士の事故の過失割合を基準にしつつ、自転車の特殊性に応じて一部修正を加えています。

車両同士の事故と自転車同士の事故で基本過失割合が異なる事故類型を抜粋して表にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

車両同士の事故と自転車同士の事故で基本過失割合が違う事故類型
車両同士 自転車同士
一時停止のある交差点の出合い頭衝突 2080 3070
一時停止のある丁字路の衝突 1585 2575
交差点の出合い頭衝突 左方40:右方60 左方45:右方55
丁字路の衝突 直進30:右左折70 直進40:右左折60
追越車と被追越車 先行20:後続80 先行0:後続100
進路変更車と後続直進車 先行90:後続10 先行60:後続40

※先行者に進路変更の合図がない場合

このような修正は

一時停止規制は自転車の場合、必ずしも厳密に順守されていない社会実態

自転車は車両に比べて低速であることから、回避可能性が車両よりやや高い

自転車は免許制度ではないため、左方優先という道路交通法の規制を知らないことも多い

自転車にはバックミラーがなく、後方車の認識が困難

などの、自転車の特殊性を考慮した修正と考えられます。

過失相殺の判例タイムズの基準|状況別の基準

最後に、交通事故状況に着目した過失相殺率の判例タイムズ基準事例を交えてご紹介したいと思います。

信号の状況による過失相殺の基準

道路交通法においては、交差点における直進車と右折車とでは、直進車が優先することを定めています。

車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し(略)ようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

しかし、信号機により交通整理が行われている場合、具体的な過失相殺率は、信号の状況により、以下の表のように違いがあります。

信号機のある交差点での右直事故の過失相殺率※
信号の状況 直進車 右折車
双方青信号 20 80
双方黄信号 40 60
双方赤信号 50 50

※同程度の速度の四輪車同士の場合を想定

双方赤信号の場合には、直進車も同様の信号違反があるため、過失相殺率は右折車と同じ50%になります。

一方、黄色信号の場合も信号違反ではあるものの、右折車は直進車との関係で青の間は右折が難しいため、黄色になってから右折することが多いです。

そのような運転慣行から、赤信号の場合よりは、直進車の過失相殺率をたかく、右折車の過失相殺率を低くした基準となっています。

細かな状況は過失相殺の修正要素

上記のように、交通事故の具体的状況は、基本的過失相殺率の基準に直接反映されているものもあります。

しかし、細かな状況をすべて過失相殺率に反映させるとなると、基準が多くなりすぎて、かえって基準としての役割を果たせない可能性が出てきます。

そこで、判例タイムズ掲載の基準では、交通事故の細かな状況を修正要素という形で考慮することで、迅速・公平な解決を図ろうとしています。

過失相殺|シートベルトを不着用

もっとも、交通事故過失相殺率の判例タイムズ掲載の基準も、すべての交通事故の状況を網羅しているわけではありません。

そういった判例タイムズに掲載されていない事故状況の中で、よく問題になるのがシートベルトを着用していなかった場合です。

交通事故の過失相殺としては、怪我をした後部座席の同乗者がシートベルトを着用していなかったという形で問題になることが多いです。

シートベルトが同乗者の生命・身体を保護するためのものであることは、一般的によく知られていることであると考えられます。

この点を重視すれば、シートベルトの不着用により、自ら損害の発生・拡大を防ぐ努力を怠ったとして、過失相殺率を認定してもよいように思えます。

しかし、道路交通法上、同乗者のシートベルト着用は、運転者の義務として規定されており、同乗者に着用を義務付ける規定はありません

自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(略)に乗車させて自動車を運転してはならない。

この点、判例でも、同乗者のシートベルト不着用を理由とする過失相殺については、判断が分かれているようです。

過失相殺による減額を否定した判例をその理由に着目して大別すると、

① シートベルト不着用と同乗者の損害との因果関係が認められないとして減額を否定した例

② 後部座席同乗者にシートベルトを着用させる義務は努力義務に過ぎないとして減額を否定した例

③ (同乗車両の運転者からの過失相殺の主張に対し、)運転者自身が同乗者にシートベルトを着用させる義務を怠ったとして減額を否定した例

に分けることができます。

ただし、②については、上記の条文記載のとおり、現在は、後部座席同乗者にもシートベルトを着用させるのは法的義務になっています。

シートベルト不着用を理由とする過失相殺は、損害の発生又は拡大を防ぐ努力を怠ったという点に被害者の落ち度を求めるものです。

そのため、シートベルト不着用という過失があっても、損害の発生又は拡大とは無関係であることを立証できれば、過失相殺による減額を免れられます。

なお、シートベルト不着用を理由とする過失相殺を認めた判例も、その点のみを理由とする過失相殺の程度はおおむね5%~10%程度のようです。

シートベルトの不着用は、交通事故発生の直接的な原因ではないこと

シートベルトの着用が、道路交通法上、同乗者に直接課された義務ではないこと

からすれば、判例でも大幅な過失相殺を認めることは難しいと考えているようです。

このように、具体的な過失相殺の計算は判例を踏まえた専門的な知識と経験が必要であるため、お困りであれば、弁護士へ相談するとよいでしょう。

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、交通事故でお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

交通事故の過失相殺とは、公平な損害賠償額を計算するために必要となるものです。

しかし、判例を踏まえた計算方法をしっかりと理解しておかないと、受け取れる損害賠償額の正しい見込みを立てられないことになります。

正しい見込みを立てられず、思わぬ不利益を受けることがないよう、こちらの記事で交通事故の過失相殺についてしっかりと理解をしておきましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

交通事故の過失相殺とは公平な損害賠償額を計算するためのもの

交通事故の過失相殺の計算方法

交通事故の過失相殺は過去の判例を参考にして作成された一定の基準を基礎に行われる

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

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