後遺障害12級13号の頑固な神経症状とは|14級との違い・慰謝料や逸失利益の金額

  • 後遺障害,12級13号

後遺障害12級13号の頑固な神経症状とは|14級との違い・慰謝料や逸失利益の金額

後遺障害12級13号ってどういう場合に認定されるの?」

「後遺障害の12級13号が認定された場合に受け取れる慰謝料逸失利益金額相場いくらくらいなの?」

労災交通事故とでは後遺障害12級13号の金額や号数にどんな違いがあるの?」

後遺障害の12級13号は、特にむちうちでMRI画像上もヘルニアの所見が確認できるような場合に、認定されるかどうかが大きく争われます。

そこで、このページでは、

  • 後遺障害等級12級13号の認定基準
  • 後遺障害等級12級13号の慰謝料・逸失利益の金額の相場
  • 労災と交通事故の後遺障害等級12級13号の金額や号数の違い

についてご紹介していきたいと思います!

専門的な部分や実務的な部分は交通事故と刑事事件を数多く取り扱っている岡野弁護士に解説をお願いしております。

弁護士の岡野です。よろしくお願いします。

交通事故の後遺障害として神経症状が残った時、12級13号と14級9号のどちらが認定されるか又は非該当かで受け取れる金額は大きく違います。

そして、後遺障害第12級13号が認定された場合に受け取れる慰謝料や逸失利益の金額の相場にも争いがあります。

さらに、労災と交通事故とでは、後遺障害等級12級13号について様々な違いがあります。

こちらで、後遺障害等級12級13号についてしっかりと理解し、適切な慰謝料や逸失利益の金額を受け取れるようにしましょう。

交通事故により深刻な症状が残った場合、後遺障害等級の認定を申請されることになるかと思います。

その結果、12級13号という認定結果が帰ってくる場合もあります。

もっとも、後遺障害の12級13号とは何かについて具体的にはよくわからないという方も多いかと思います。

しかし、後遺障害の12級13号とはどういう場合に認定されるかを知らないと、適正な慰謝料逸失利益を受け取れない可能性があります。

そこで、まずは、後遺障害等級12級13号とはどんな認定基準になっているかについてお伝えしていきたいと思います。

後遺障害の12級13号とは?

後遺障害の12級13号とは?

後遺障害12級13号は神経症状

まず、後遺障害12級13号は、

「局部に頑固な神経症状を残すもの」

自賠責では定められています。

神経症状とは、末梢神経が損傷・圧迫されることにより、その神経の支配する身体各部の器官に生じる痛み、痺れ、麻痺等の症状のことをいいます。

交通事故により神経症状が発生することになる原因としては、主に以下のようなものが考えられます。

その①むちうち

交通事故により神経症状が発生する原因として、最も考えられるのはむちうちです。

追突等により、頭部が鞭のように前後に過度の屈伸をし、頸部に強い衝撃を受けた際、脊髄から枝分かれをした末梢神経も損傷を受けることがあります。

末梢神経を損傷した場合には、その神経の支配する部分の肩~手指にかけて、痛みや痺れなどの症状が発生します。

その②骨折

また、交通事故により骨折した場合も、その時の衝撃で骨折部位周辺の末梢神経を同時に損傷し、神経症状が発生する場合があります。

この場合、骨折部位付近の関節可動域が制限されない場合でも、骨の不完全癒合が原因で、疼痛等の神経症状が後遺障害として残存することがあります。

この場合、機能障害としては後遺障害が認定されなくても、神経障害として後遺障害が認定される可能性があります。

その③靭帯損傷

交通事故では関節にある前十字靱帯、後十字靱帯を断裂および損傷するケースが多く、その際に、膝周辺の末梢神経を損傷する場合があります。

この場合、リハビリなどにより、膝関節の関節可動域には障害が残らない場合でも、疼痛などの神経症状が後遺障害として残存することがあります。

この場合も、機能障害としては後遺障害が認定されなくても、神経障害として後遺障害が認定される可能性があります。

12級13号と14級9号の違いは?

もっとも、後遺障害には12級13号以外にも、神経症状として14級9号認定される可能性があります。

では、後遺障害の12級13号と14級9号は、どのような点に違いがあるのでしょうか?

自賠責の認定基準

まず、後遺障害の14級9号は、

「局部に神経症状を残すもの」

自賠責では定められており、12級13号との違いは「頑固な」神経症状かどうかという点になります。

自賠責実務の考え

もっとも、「頑固な」神経症状かどうかを判断するのは困難です。

そこで、自賠責実務においては

  • 12級13号:神経系統の障害の存在が他覚的に証明できる場合
  • 14級9号:神経系統の障害の存在が医学的に説明可能な場合

という考え方が採用されており、障害の存在が証明できるかそれとも説明可能なものにとどまるかが12級13号と14級9号の違いになります。

https://twitter.com/yuuu_kiiiii/status/830345852992397313

具体的認定要件

「頑固な」ものかどうかよりは判断しやすいものの、他覚的に証明できるかどうかの判断もやはり困難かと思います。

実際に後遺障害12級13号が認定される要件としては、主に

  1. ⅰ (一定以上の)自覚症状
  2. ⅱ  ⅰに一致する画像所見又は電気生理学的所見
  3. ⅲ ⅰ・ⅱに一致する神経学的所見

になります。

一方、14級9号が認定されるには、ⅱ・ⅲは必須の要件とまではいえない点が違いになります。

後遺障害等級12級13号と14級9号の認定基準の違い
1213 149
自賠責認定基準 頑固な神経症状 神経症状
自賠責実務の考え 他覚的に証明 医学的に説明
具体的認定要件 ⅰ 自覚症状
ⅱ ⅰに一致する画像所見(電気生理学的所見)
ⅲ  ⅰ・ⅱに一致する神経学的所見
ⅰ自覚症状※

※14級9号も②又は③がある方が認定されやすい

12級13号が認定されるには?

お伝えしたとおり、後遺障害12級13号として残存する神経症状認定されるには、上記の要件を満たす必要があります。

もっとも、画像所見、電気生理学的所見、神経学的所見とはいったい何のことなのかなど、具体的にどういうことかわからない方も多いかと思います。

そこで、ここからは、各要件について、さらに具体的にお伝えしていきたいと思います。

自覚症状

まず、後遺障害として認められる神経症状は

  1. ① 受傷時の状態や
  2. ② 治療の経過などから
  3. ③ 連続性、一貫性が認められ、
  4. ④ 単なる故意の誇張ではないと医学的に推定される
  5. ⑤ 将来的にも残存すると考えられる常時性のある医学的に説明可能な症状

である必要があり、この点は12級13号と14級9号とで違いはありません。

画像所見

画像所見とは、具体的には、レントゲン、MRI、CT画像等から判断できる異常のことなどをいいます。

もっとも、むちうちや靭帯損傷の場合には、レントゲン画像では確認できないため、MRI画像から判断できる異常になります。

より具体的にいうと、むちうちの場合、MRI画像等において、脊髄や神経部分への椎間板突出(ヘルニア)が明らかに確認できることをいいます。

ただし、ヘルニアの多くは、加齢に伴って生じるものがほとんどなので、ヘルニア所見が確認できても、事故との因果関係が否定される場合があります。

ヘルニアの画像所見が、交通事故により生じたものかどうかは、主に

  • 被害者の年齢(40代以上だと加齢によるヘルニアが生じている可能性高い)
  • ヘルニア画像の色(新鮮なヘルニアだと水分含有量が多く白く映る)
  • ヘルニア病変の数(多数の椎間板にヘルニア病変がある場合には加齢によるものの可能性高い)

などにより判断されます。

なお、新鮮なヘルニアかをMRI画像から判断するためには、可能な限り交通事故直後にMRI画像を撮影する必要があります。

交通事故とヘルニアとの因果関係
判断要素 肯定されやすい 否定されやすい
被害者の年齢 30代以下 40代以上
ヘルニア画像の色 白く映っている 黒く映っている
ヘルニア病変の数 1、2箇所 多数

※あくまで一般的傾向にとどまる

電気生理学的所見

もっとも、末梢神経の損傷・圧迫が実際にある場合でも、画像上は判断が困難な場合もあります。

そこで、筋肉や神経に電気的刺激を与えることにより、筋肉や神経に生じた電気的活動の記録から筋肉や神経の異常の有無を調べる検査方法があります。

具体的には、

  • 筋肉に細い電極針を刺し、興奮時の筋肉の電気的活動を記録することで、筋力低下の原因が神経にあるのか,筋肉にあるのか判断する針筋電図検査
  • 神経部分に皮膚の上から電気的刺激を与えることで、末梢神経を伝わる電気的活動の速度を記録し、神経の異常の有無を判断する神経電動速度検査

などの検査結果の異常のことを電気生理学的所見といいます。

この電気生理学的所見は画像所見と同程度の他覚的所見として扱われているようです。

神経学的所見

また、画像だけでは判断しかねる神経症状についても医学的に証明する様々な神経学的検査があり、その検査における異常が神経学的所見になります。

むちうちの場合によく行われる神経学的検査としては以下のようなものがあります。

スパーリングテスト

神経根(脊髄から枝分かれした頸髄神経)の障害を調べる神経学的テストのことをいいます。

具体的には、医師が患者の頭部を押さえ、下方に押し付けることにより、神経根の出口を狭めます。

この際、神経根に異常があれば、神経根の支配領域(肩から指先にかけた上肢)に放散痛や痺れが生じ、患者は通常以上の違和感や痛みを訴えます。

このことにより、神経根の障害の有無を検査することができます。

なお、同じ目的の検査として、ジャクソンテストというものもあります。

ラセーグテスト

腰髄・仙髄付近の神経根の障害の有無を調べる神経学的テストのことをいいます。

具体的には、患者を仰向けに寝かせた状態で、片脚を上に挙げていくことにより、神経根の出口を狭めます。

神経根に障害がある場合には、神経根を支配している領域に放散痛や痺れが生じ、患者は通常以上の違和感や痛みを訴えます。

このことにより、神経根の障害の有無を検査することができます。

なお、同じ目的の検査として、SLRテスト、FNSテストというものもあります。

知覚検査

知覚検査の方法は様々ですが、医療の現場では馬の毛でできた筆を使用して表在知覚のみを検査するのが一般的なようです。

神経に異常をきたすと、知覚障害を起こす場合があるため、知覚検査により、神経の障害の有無を検査することができます。

ただし、知覚検査は、後遺障害の認定の関係では、あまり重視されないようです。

深部腱反射テスト

末梢神経である神経根に異常が認められる場合、その神経根が支配する筋の筋収縮が低下、消失します。

そのため、深部腱反射検査により、神経の障害の有無を検査することができます。

具体的には、腱をゴムハンマーで叩き、筋に進展刺激を与えることにより、その反射の反応を診ることになります。

この反射の反応が鈍く又はなくなっていれば、神経根の異常を示す有効な他覚的所見(本人以外が確認出来る状態)となります。

反射は生理的なもので、被害者の意思ではコントロールできないため、後遺障害の認定の関係でも深部腱反射の結果は重視されているようです。

筋萎縮検査

神経の障害により、麻痺が起きている状態が長時間続いてしまうと筋は萎縮してしまいます。

そのため、筋萎縮検査により、神経の障害の有無を検査することができます。

具体的には、両腕の肘間接の上下10cmのところに位置する上腕部と前腕部の周囲をメジャーで測定します。

この部位が痩せていれば有効な他覚的所見(本人以外が確認出来る状態)となります。

被害者の意思や検査者の主観に左右されるものではないため、後遺障害の認定の関係でも、筋委縮検査の結果は重視されているようです。

むちうちで行われる神経学的検査
名称 内容
スパーリングテスト 頸髄付近の神経根の出口を狭めるテスト
ラセーグテスト 仰向けに寝かせ、片脚を上に挙げていくテスト
知覚検査 皮膚の感覚に異常がないかを確認する検査
深部腱反射 むちうちに関わる神経箇所を叩き、異常を確認する検査
筋萎縮検査 両方の腕や足の周径を計測する検査

※必ずしもすべての検査が行われるわけではない

症状と画像・神経学的所見の一致

そして、12級13号が認定されるには、自覚症状と画像所見や神経学的所見が一致することが求められています。

上記が一致していない場合には、症状を他覚的に証明できたとはいえないからです。

例えば、左側の首~左手に痛みを感じている被害者の方のMRI画像の右側頚椎にヘルニアが確認できても、症状を他覚的に証明したことにはなりません。

お伝えしたとおり、後遺障害等級12級13号は他覚的に証明できる神経症状であり、具体的な認定には、画像所見があることなどが求められます。

そのため、後遺障害等級12級13号は、画像所見が得られにくいむちうちでは、認定される確率は一般的には高いとはいえないのが正直なところです。

後遺障害等級12級13号をむちうちで認定されるために異議申し立てを検討している方は、その見込みにつき、まずは弁護士に相談すべきでしょう。

12級13号の慰謝料・逸失利益の金額の相場

12級13号の慰謝料・逸失利益の金額の相場

では、後遺障害12級13号認定された場合、その後はどうなるのでしょうか?

後遺障害の12級13号が認定されると、まず自賠責から

  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

についての保険金を受け取ることが可能になります。

その後、さらに加害者側の任意保険との交渉や裁判により、自賠責からの保険金を超える部分の金額についても受け取ることが可能です。

なお、後遺障害の12級13号が認定されると、いわゆる身体障害者として扱われることになるのではないかと心配される方も多いようです。

しかし、自賠責保険で後遺障害の12級13号が認定されても、直ちに障害者手帳が交付されるわけではなく、両社は別物になります。

では、交通事故で後遺障害の12級13号が認定された場合に受け取れる金額の総額いくら位になるのでしょうか?

まずは、後遺障害等級12級13号の慰謝料の相場についてお伝えしていきたいと思います!

後遺障害等級12級13号の慰謝料の相場とは?

お伝えしたとおり、交通事故後遺障害12級13号認定されると、後遺障害慰謝料を受け取れることになります。

しかし、12級13号が認定された場合に受け取れる後遺障害慰謝料の具体的な金額相場は、用いられる基準によっても違いがあります。

そこで、ここからは、代表的な後遺障害の12級13号が認定された場合の慰謝料の基準の種類及び基準ごとの金額の相場をご紹介したいと思います。

後遺障害第12級13号慰謝料の基準

自賠責基準

まず、加入が義務付けられている自賠責保険から支払われる保険金の金額を算出する際に用いる自賠責基準というものがあります。

自賠責保険は、被害者の損害を最低限度保障する保険のため、自賠責基準で計算された後遺障害の慰謝料の相場は低額になっています。

後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに、慰謝料の金額が自賠責基準で定められています。

任意保険基準

次に、各任意保険会社が慰謝料などの損害賠償の金額の提示額を計算する際に用いる任意保険基準というものがあります。

任意保険基準は、保険会社ごとに基準が異なり、かつ非公開とされているので、詳細はわかりません。

もっとも、かつては各任意保険会社共通の基準が存在し、現在もその基準が基礎になっていると考えられています。

旧統一任意保険基準では、自賠責基準で計算された金額よりも若干高い程度の相場になっていました。

旧統一任意保険基準でも後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が任意保険基準で定められています。

裁判基準

そして、交通事故の後遺障害の慰謝料などについて裁判で認められる相場である裁判基準というものがあります。

この裁判基準は、通称赤い本(赤本)と呼ばれている本に掲載されています。

交通事故の赤本については、以下の記事に詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

裁判基準は、3つの基準の中で慰謝料の金額の相場が最も高額になっています。

後遺障害の1級~14級までの各等級ごとに慰謝料の金額が裁判基準でも定められています。

このように、後遺障害の慰謝料の相場は自賠責で認定される等級と用いられる基準によって決まってきます。

なお、裁判基準は、弁護士が相手方任意保険会社と交渉する際にも用いられているため、弁護士基準とも呼ばれます。

そして、弁護士に依頼することにより、裁判をすることなく、裁判基準での慰謝料の金額を前提とする示談交渉が可能になります。

後遺障害の慰謝料を計算する基準
基準 いつ用いられるか 金額
自賠責基準 自賠責への請求 低い
任意保険基準 任意保険の提示 自賠責基準よりは高い
裁判基準
(弁護士基準)
・裁判
・弁護士の交渉
最も高い

後遺障害12級13号の慰謝料の相場

では、後遺障害等級12級13号が認定された場合の慰謝料の金額の相場は各基準ごとにいったいいくら位になるのでしょうか?

自賠責基準

交通事故で後遺障害の12級13号が認定された場合の慰謝料として、自賠責保険から受け取れる金額は93万円になっています。

後遺障害の等級が12級13号の場合、自賠責保険からは上記の金額以上の慰謝料を受け取ることはできません。

後遺障害の等級の12級13号は、頑固な神経症状が残る重い症状であることからすれば、上記の金額では少ないと思われるかもしれません。

任意保険基準

先ほどお伝えしたとおり、現在の任意保険基準は各会社ごとに異なり、非公開なので、ここでは旧統一任意保険基準を前提にお伝えします。

後遺障害が12級13号の場合の慰謝料の旧統一任意保険基準の金額の相場は100万円になっています。

自賠責基準の慰謝料の相場よりは増額していますが、その増額幅が7万円ではまだまだ不十分と思われる方もいるでしょう。

裁判基準

そして、後遺障害が12級13号の場合の慰謝料の裁判基準(弁護士基準)の相場は290万円になっています。

比較していただければわかりますが、自賠責基準の3倍以上、任意保険基準の3倍近くの高額な相場になっています。

さらに、自賠責基準の場合と異なり、裁判基準の慰謝料はあくまで相場であり、絶対的なものではありません。

そのため、裁判などでは、上記の相場の金額とは異なる慰謝料が認められる場合もあります。

なお、以下の記事では、後遺障害等級12級が認定された場合の判例が紹介されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害第12級の基準別の慰謝料
基準 金額
自賠責基準 93万円
任意保険基準※ 100万円
裁判基準
(弁護士基準)
290万円

※ 旧統一任意保険基準

後遺障害等級12級13号の逸失利益の計算方法

そして、後遺障害12級13号認定された場合の逸失利益計算方法は、基本的に以下のようになります。

後遺障害12級13号の逸失利益の計算方法

(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

12級の労働能力喪失率14%自賠責で定められており、この労働能力喪失率は他の基準でも基本的に準用されています。

また、逸失利益の計算方法の各項目の簡単な意味は以下の表のとおりです。

逸失利益の計算方法の項目と意味
項目 意味
基礎収入 後遺障害が残らなければ、得られていたであろう収入
労働能力喪失率 後遺障害が残ったことによる減収の割合
労働能力喪失期間 後遺障害によって減収が発生する期間
中間利息控除係数 逸失利益を症状固定時の金額にするための係数

12級13号の逸失利益は喪失期間や喪失率が争点

もっとも、後遺障害12級13号逸失利益計算では、喪失期間喪失率が争点になることが多いようです。

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間は、症状固定時から一般的な就労可能年数である67歳までの年数で計算されるのが原則です。

しかし、むちうちによる神経症状は一生続くものとは考えられないとして、労働能力喪失期間の年数が制限される場合が多いです。

具体的には、任意保険の提案では5年裁判では10年程度に制限されることが多いです。

もっとも、具体的な症状や労務への支障の程度によっては、上記の年数以上の労働能力喪失期間を認めた判例も多数あります。

ただし、12級13号の労働能力喪失期間の年数が制限されるのは、あくまでむちうちによる神経症状の場合を想定しています。

そのため、12級13号でも、骨折部位の神経症状などの場合には、労働能力喪失期間の年数を制限するのが適当ではない場合も多いと考えられます。

実際、下記の判例では、骨折に伴う神経症状で12級13号が認定された被害者の喪失期間の年数を10年以上認めています。

なお、上記の判例の被害者は症状固定時に58歳であり、原則どおり67歳までの年齢で計算すると9年とむしろ期間が短くなってしまいます。

そのため、58歳男性の平均余命の1/2である12年を労働能力喪失期間の年数として計算しています。

もっとも、任意保険会社は、12級13号のむちうち以外の神経症状の場合も労働能力喪失期間の年数を制限することが多いので、注意が必要です。

後遺障害12級13号の逸失利益を計算するための年数
症状 年数※ 備考
むちうち 10 むちうちの神経症状は一生続くとは考えられていない
むちうち以外 10年より長い むちうちの場合より神経症状が長く続くと考えられている

※一般的な相場であり、例外あり

労働能力喪失率

また、神経症状は徐々に慣れていくとも考えられていることから、12級13号の場合、労働能力喪失率も争われる場合があります。

特に、労働能力喪失期間の年数を10年以上認める場合には、10年目以降の期間の労働能力喪失率を14%以下で計算することもあるようです。

実際に、10年目以降の期間の労働能力喪失率を14%以下で計算した判例に以下のようなものがあります。

12級13号の金額の総額の相場は?

また、後遺障害の12級13号が認定された場合、交通事故で入通院を余儀なくされたことに対する慰謝料や休業損害も別途請求することができます。

これらの金額総額を計算するのはかなり手間が掛かると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方におすすめなのが、以下の慰謝料計算機のサービスです。

こちらは、いくつかの項目を入力するだけで、12級13号が認定された場合に受け取れる弁護士基準での金額の総額の相場を知ることができます。

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実際に計算していただければわかりますが、後遺障害等級12級が認定された場合の慰謝料は、裁判基準とその他の基準とでは大きく金額が違います。

また、後遺障害等級12級13号は逸失利益が争いになることが多いですが、逸失利益の金額は受け取れる金額の総額に大きく影響します。

12級13号が認定された場合に適正な慰謝料や逸失利益の金額を受け取る可能性を高めるには、弁護士への依頼が有効な手段であるといえます。

労災と交通事故の後遺障害12級13号の金額や号数の違い

労災と交通事故の後遺障害12級13号の金額や号数の違い

自賠責の後遺障害12級13号は労災だと12級14号

交通事故が勤務中や通勤中に発生した場合、労災にも後遺障害の申請をすることができ、12級13号認定される場合があります。

そして、実は自賠責保険は、労災保険の後遺障害の認定基準を準用しています。

等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。

もっとも、認定基準は基本的に同じですが、認定における審査方法には違いがあります。

それは、労災保険の場合、地方労災医員という医師が後遺障害の等級認定の判断にあたり、原則として被害者との面談を行います。

それに対し、自賠責保険の場合、醜状障害等一部の例外を除き、原則書面審査であり、提出された資料から後遺障害の等級認定を判断します。

面談にて書面で伝わりづらい症状を正確に把握し、その点が書面よりも優先して考慮される結果、労災の方が高い等級が認定されやすいともいわれます。

特に、神経症状の場合、労災では、画像所見がない場合でも、面談の結果により12級が認定される場合もあるようです。

また、労災保険と自賠責保険とは、等級の号数が異なるところがあります。

自賠責保険でいうところの12級13号は、労災では12級14号になります。

以上のことから、自賠責では14級9号の認定にとどまる神経症状が、労災では12級14号として認定されるというような場合もあるようです。

労災の後遺障害等級12級の金額に慰謝料はなし

そして、労災後遺障害12級認定された場合に受け取れる金額には慰謝料が含まれないのが自賠責との違いです。

労災の保険金は、加害者の有無にかかわらず支払われるものだからです。

ここまでお伝えしてきた、労災と自賠責(交通事故)との後遺障害の違いをまとめると、以下のような表になります。

まとめ

労災と自賠責の後遺障害の違いについて

労災 自賠責
認定基準 労災の認定基準 労災の認定基準を準用
審査方法 原則面談審査 原則書面審査
慰謝料 含まれない 含まれる

労災で後遺障害等級12級が認定された時の金額

では、労災後遺障害12級認定された場合に受け取れる金額や内容はどうなっているのでしょうか?

まず、労災で後遺障害の等級が認定された場合、等級に応じて下記の内容の金額が受け取れることになります。

  • 障害(補償)給付
  • 障害特別金
  • 障害特別支給金

障害(補償)給付

そして、労災で後遺障害の12級が認定された場合の、障害(補償)給付の金額を計算する基準は以下のとおりです。

給付基礎日額×156日

給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことです。

平均賃金とは、直前3ヶ月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を日数で割った1日当たりの賃金額のことです。

障害特別金

次に、労災で後遺障害の12級が認定された場合の、障害特別金の金額を計算する基準は以下のとおりです。

算定基礎日額×156日

算定基礎日額とは、原則として、事故前1年間に労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った金額のことです。

特別給与とは、給付基礎日額の算定から除外されているボーナスなど3か月を超える金額ごとに支払われる賃金をいい、臨時で支払われた賃金は含まれません。

もっとも、特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する金額が算定基礎年額になります。

ただし、150万円が限度額になります。

なお、労災でも、後遺障害の等級が12級の場合には、年金ではなく、すべて一時金として支払われます。

障害特別支給金

さらに、労災で後遺障害の12級が認定された場合、障害特別支給金として20万円が支給されます。

労災と自賠責保険との支給調整

勤務中や通勤中交通事故により、後遺障害等級の12級が認定された場合、労災自賠責双方から一定の金額が受け取れます。

もっとも、あくまで対象は一つの交通事故のため、公平の観点から、いわゆる二重取りがなされないようにする必要があります。

そこで、労災と自賠責の後遺障害の認定により受給できる金額の調整をする必要が出てきます。

このことは実務上支給調整と呼ばれています。

もっとも、二重取りを防ぐためには、労災と自賠責から支払われる金額のうち、同一の性質を有するものだけ支給調整すれば足りることになります。

そして、自賠責保険と労災保険から支払われる金額の項目のうち、同一の性質を有するのは

自賠責保険の逸失利益と労災保険の障害(補償)給付のみ

ということになります。

労災の障害特別(支給)金の支給は、労働福祉事業の一環であり、労働者の損害を填補する性質のものではないからです。

したがって、支給調整されるのは自賠責保険の逸失利益の金額と労災保険の障害(補償)給付の金額だけということになります。

つまり、労災から先行して後遺障害に関する金額を受給していたとしても、その金額を自賠責の慰謝料から控除することはできないことになります。

また、労災の障害特別金や障害特別支給金は、自賠責の逸失利益の控除の対象とはならないことになるので、その点注意が必要です。

さらに、労災から受け取れる金額に慰謝料が含まれないため、労災を利用しても、慰謝料は別途自賠責などに請求する必要があります。

最後に、労災と自賠責との後遺障害の支給調整の対象となる項目について、表にまとめてみましたので、よろしければ参考にしてみて下さい。

労災と自賠責の後遺障害の支給調整の対象項目
労災\自賠責 慰謝料 逸失利益
障害(補償)給付 ×
障害特別金 ×
障害特別支給金 ×

なお、労災の後遺障害については、以下の記事により詳しく記載されていますので、興味のある方はぜひご覧になってみて下さい!

後遺障害の12級13号の問題を弁護士に相談したい方へ

後遺障害の12級13号の問題を弁護士に相談したい方へ

ここまで、後遺障害の12級13号に関する問題についてお伝えしてきましたが、読んだだけではわからないことがあった方もいるのではないでしょうか?

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最後に一言アドバイス

それでは、最後になりますが、後遺障害の12級13号の問題についてお悩みの方に一言アドバイスをお願いします。

後遺障害等級の12級13号の認定基準は、症状が他覚的に証明できるかどうかであり、基本的には画像所見があることが最低条件になります。

その上で、後遺障害12級13号が認定された場合の適切な受領金額を獲得するには、慰謝料の相場や逸失利益の喪失期間・喪失率にも注意が必要です。

後遺障害等級12級13号の認定基準を満たすかや受け取れる金額の総額について疑問がある場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

いかがだったでしょうか。

このページを最後までお読みの方は、

  • 後遺障害等級12級13号の認定基準
  • 後遺障害等級12級13号の慰謝料・逸失利益の金額の相場
  • 労災と交通事故の後遺障害等級12級13号の金額や号数の違い

について理解を深めていただけたのではないかと思います。

これを読んで弁護士に相談した方が良いと思った方も多いハズです。

自宅から弁護士と相談したい場合には、スマホで無料相談の機能を利用してみて下さい!

そうではなく、やっぱり直接会って話がしたいという場合は、全国弁護士検索を使って弁護士を探してみてください。

また、このホームページでは、交通事故に関する関連記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

皆さまのお悩みが早く解決するよう、お祈りしています。

この記事の監修弁護士

岡野武志弁護士

アトム法律事務所弁護士法人
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル9階

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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